月曜日, 6月 23, 2025
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「たなごころ」「絵ごころ」《続・平熱日記》177

【コラム・斉藤裕之】「たなごころ」という優しい言葉があって、元は「手の心」から来た掌(てのひら)を指す言葉。この「こころ」を英語に訳そうとすると、spirit? Soul? mind? どれもちょっと違うような気がする。漢字よりもひらがなの「こころ」が似つかわしいと思う。

似た言葉に「絵ごころ」という言葉がある。日本語にはこの「こころ」が付いた言葉がたくさんあることに改めて気づく。母心、真心、幼心、気心、出来心…。

思い起こせば私自身、現代絵画に背伸びしながら首を突っ込もうとしていたころは、「こころ」なんていうおセンチな要素はあまり出番がなくて、それは当時「ナラティブ」とか「リリカル」などといわれて敬遠されたり、「メタファー」なんて曖昧な言葉でくくられたり、用語として使われる言葉はほとんどがカタカナや難しい漢字ばかり。

では、この「絵ごころ」というのは何かというと、それは俳句などの「詩ごころ」にも通じる「こころ」なんだと思う。普段何気なく見ている風景や季節、人の営みなどの中に何か見つけ、言葉にしていくような…。例えば、印象派の絵画が日本人にウケる理由のひとつは、この「絵ごころ」を感じ取れるからじゃないか。

「ええころじすと」

転じて、私が日々ダラダラと描いている「平熱日記」も、実は「絵ごころ」が描かせているのではないかと思えてきた。

そこで、「絵ごころ」というやや抽象的でモヤっとしたものと「ロジック」を合わせて、「えごころじー」というのを思いついた。ちょっと安っぽい造語だけど、我ながら気に入った。ついでに、「いいかげん」のことを私の故郷では「ええころかげん」と言うのだが、これをいい意味で「ええころじー」と名付けた。

自称「えごころじすと」とは恥ずかしくて言えないが、「ええころじすと」の資格は十分にある。

さて、国内屈指の現代絵画のコレクションで知られる川村記念美術館(千葉県佐倉市、半夏生の季節に妻とよく訪れた思い出深い場所)。折しも縮小移転が物議を醸している最中、友人に誘われるも体調不良でキャンセル。我々世代にとってのスーパースター達の絵画を「えごころじすと」の眼で改めて鑑賞したかったのだが…。

三寒四温。なじみのカフェで、温かいコーヒーの入った器に両手を添える。すると、それを作った人の「たなごころ」を感じる。「ピカソよりラッセンが好き…」というお笑い芸人のネタが頭に浮かんだ。(画家)

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上曽トンネル9月27日開通へ 一般道で県内最長

筑波山北側の石岡市上曽(うわそ)と桜川市真壁町山尾を結ぶ上曽峠に、全長3538メートルの「(仮称)上曽トンネル」が9月27日に開通する。一般道としては県内最長となる。 上曽峠は道路幅が狭く、急傾斜や急カーブが連続する。豪雨時や冬期の積雪・凍結時は道路封鎖が行われるなど、交通難所の解消が期待される。 想像を絶する硬さ トンネル整備は県事業で2001年に着工したものの、取付道路の用地取得などで難航し、財政難による見直しで停滞していた。その後石岡市と桜川市が「合併市町村幹線道路緊急整備支援事業」の指定を受け事業主体となり、18年から新たに工事が開始された。両市の取り付け道路も併せ全体で約5.6キロのバイパスが整備される。 上曽トンネルが掘削されている筑波山、加波山、足尾山一帯は、約6000万年前に形成された山塊が連なり、主な地質は花崗岩だ。岩質は、掘削当時の工事現場で「想像を絶する硬さ」といわれた。 石岡市側のトンネル入り口付近は唯一、土石流堆積物の軟弱地層。桜川市の地山は良質な「真壁の御影石」が産出する花崗岩帯。工事は石岡市側、桜川市側の両方から掘り進められ、石岡側は崩落防止のための補助工法が併用された。一方、真壁側の坑口付近では一日あたり1メートル程度しか掘削できないほどの硬さだったという。 トンネル区間の90%はダイナマイトによる発破掘削が採用され、岩盤に発破のための穴を空けるドリルジャンボなどを駆使して岩盤を砕き、2023年7月にルートを貫通させた。石岡市道路建設課によると、「現在はトンネル内の照明や消火設備設置、トンネルに至る取り付け道路の仕上げ工事も終盤で、いよいよ待望の路線開通となる」と展望する。 開通すれば、2012年11月に開通した全長1784メートルの朝日トンネルを超える超大トンネルとなる。これまで最短時間でも15分を必要としていた峠越えが、約7分に短縮される見通し。時間短縮以上に、通年の通行に対する安全性の向上が期待される。つくば市や土浦市側からアクセスして利活用するにはなじみが薄いが、筑波山麓でこれだけの規模の道路整備が進んだこと、太古の地層を貫いたトンネルであることは、今後話題を集めるかもしれない。(鴨志田隆之)

未払い残業代3851時間 860万円に つくば市社会福祉課 3年間で24人

生活保護業務などを担当するつくば市社会福祉課で昨年5月、市職員の残業代(時間外勤務手当て)などの未払いが明るみに出た問題で(24年5月9日付)、未払いだった残業時間は、請求権がある2021年1月から24年3月分まで3年3カ月間で、職員24人に対し計3851時間あり、未払い金額は計860万6522円だったことが分かった。5月9日までにすでに支払われたという。 3年3カ月間の平均は一人当たり160時間だった。24人についてはいずれも申請額と同額が支払われたが、昨年5月の発表から支払いを終えるまでちょうど1年かかった。 同市は長時間労働是正のため、残業時間の上限を月45時間、年360時間と定めている。未払いがあった職員24人のうち、最も多かった未払い残業時間について市人事課は、個人情報なので答えられないとし、市が定める上限を超えて残業を実施した職員がいたかどうかについては、規定通り支払われた残業代もあり、未払い分と足し合わせてないので分からないとしている。 残業代の未払いが発生した理由について市は昨年5月、できるだけ申請しないよう管理職が不適切な指導を行っていたため、職員が申請しにくい状況になっていたと説明し、不適切な指導をした管理職に対しては今後、処分を実施するとしていた。市によると2021年1月から24年3月まで社会福祉課の課長を務めた管理職は3人。 未払いに対しては監督責任を重く受け止めるとして昨年、五十嵐立青市長が給料を2カ月間10%減給し、飯野哲雄(当時)、松本玲子副市長2人が1カ月間10%の減給を実施した。一方、管理職の処分の検討はこれからになる。 社会福祉課以外の5課でも残業代の未払いがあることが分かったことから(25年3月12日付)、市は今後、5課の職員に対しても未払い分を支払う予定だ。 一方、昨年5月に明るみに出た市社会福祉課の残業代などの未払い問題は、同市の生活保護行政における一連の不適正業務が表面化する始まりになり、生活保護費の過払い(24年7月20日付)や不適正な不納欠損処理(同8月21日付)、県の監査に対する虚偽報告(25年3月13日付)などが次々に明らかになった。市福祉部は、一連の不適正業務がなぜ発生したのかなどを検証した報告書を6月中にまとめ発表するとしている。(鈴木宏子)