国立環境研究所(つくば市小野川、木本昌秀理事長)に、初の研究所発ベンチャーが誕生した。株式会社組織の「野生動物医科学ラボラトリー」(大沼学社長)で、鳥インフルエンザウイルスの病原性検出をはじめ、野生動物の各種疾病に関する検査や研究、技術開発を専門とする。先月末、法人登記を完了し、新年1月6日から事業を開始する。
同社は、国環研の生物多様性資源保全研究推進室長が社長となり、資本金100万円で立ち上がった。国環研で開発された鳥インフルエンザウイルスの迅速な検出と病原性判定技術を活用し、感染拡大の早期警戒や防疫対策に貢献するとしている。
野鳥などからの高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染は近年、世界規模で拡大しており、哺乳動物への感染事例も見られるようになった。感染症は養鶏産業への経済的な被害をもたらすばかりではなく、生物多様性へも影響を与えかねない脅威となっていることから、環境省では発生を把握するために、野鳥における高病原性鳥インフルエンザの監視活動を恒常的に行ってきた。
鳥インフルエンザを疑われる野鳥の死骸から採取された検体はこれまで、自治体などを通じ国環研に持ち込まれ、病原性の判定を行っていた。検体を卵に接種してウイルスを増やした上で判定するため、従来は最終的に10~14日間かかっていたという。この作業が迅速化できれば、地域の感染拡大の早期警戒や効果的な防疫対策の立案につながることから、大沼室長らが技術開発に取り組んだ。
その結果、卵で増やす過程をなくす2つの判定法を確立した。1つは遺伝子配列の情報から病原性を判定する方法で、3日間で鳥インフルエンザに特徴的な遺伝子配列まで確認できる。もう1つは蛍光色素によって病原性を判定する技術で、1日で陽性か陰性かを判定できる。蛍光色素による判定だと遺伝子データまでは取れないが、これまでの試験で100%の判定精度を得ている。「普通の実験室レベルで判定できることから海外の技術支援などにも使える」と大沼室長はいう。
迅速なウイルスの検出と病原性判定についての技術開発は、ほぼ研究の余地がなくなったことから、社会実装を目指しての企業化を図った。これまでも今後も農水省の所管となる養鶏場での防除には関与しないが、動物病院経由でペットなどの病原性の判定には応えていきたいとしている。
国環研では先にベンチャー支援規程を制定しており、第1号として同社を認定した。研究所内に事務室・研究室を確保し、判定機材の貸与などで企業活動を支援する。支援期間は5年とし、半年ごとに事業が適正に進められているかモニタリングを行っていくとしている。
同社によれば、来年1月から3月にかけては助走期間で、検査スタッフとして当初1人を雇用する。4月以降の初年度については200件ほどの利用を見込んでいる。利用料金は、遺伝子データ提供を含む判定で1検体当たり3万3000円(税込み)になる想定だ。(相澤冬樹)
鳥インフルエンザウイルスを迅速に検出 国環研発ベンチャー第1号
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チャリティーサンタ 夢を届けに今年も街へ
クリスマスイブの12月24日にサンタクロースにふんしたボランティアが各家庭を訪問し、プレゼントを届ける「チャリティーサンタ」が今年もつくばで実施される。一般家庭のほか、経済的な理由や病気などでクリスマスを楽しむことが難しい家庭にも手を差し伸べる企画で、2008年にNPO法人チャリティーサンタ(東京都千代田区)が立ち上げ、昨年までに全国33都道府県で5万人以上の子どもたちにプレゼントを手渡してきた。つくばでは同つくば支部ができた17年から活動みが始まり、「子どもたちに愛された記憶を残す」を合言葉に、社会人や学生のボランティアが今年も夢を届けに街に出る。
2018年から活動に参加する同つくば支部代表の会沢和敏さん(60)は、プレゼントを受け取る子どもの笑顔が心に残ると言う。「私たちも最初は、家庭を訪ねる際に不安や緊張があるが、子どもの純粋な笑顔や、家族の絆を感じる場面に出会うときに、こちらが豊かな気持ちになる」とやりがいを話す。
経済的困難を抱える家庭にも
会沢さんは、つくば支部代表(当時)で創設者の工藤咲希さんを取り上げた新聞記事を読み、経済的な理由でクリスマスを楽しめない家庭が身近にあることを知り、活動に加わった。「クリスマスにはそれぞれの過ごし方があっていい」とした上で、「それでもプレゼントを用意できない家庭の子どもには、クリスマスが厳しい1日になる。楽しみたいのにできないという家庭に対して、なんとかしたいと思った」と振り返る。
チャリティーサンタでは、事前に応募があった一般家庭を訪問し、各家庭が用意したプレゼントを事前にスタッフが受け取り、サンタクロースにふんしたボランティアが子どもに手渡す。同時に、家族から聞き取っていた情報を元に作成した子ども宛てのメッセージも手渡す仕組みだ。一方、経済的な困難を抱える家庭に対しては、参加する一般家庭から募る3000円の協力金を元に団体がプレゼントを用意する。集めたお金は、団体の「ルドルフ基金」として無償訪問のための運営準備費などにも充てられる。
団体ではその他に、様々な困難を抱える子どもに本を贈るために全国の書店と連携してスタートした「ブックサンタ」や、洋菓子店との協力で誕生日にホールケーキを届ける「シェアケーキ」などの支援企画を行っている。つくば支部では、地域で開かれる子ども食堂や、無料で子どもに勉強を教える「無料塾」などとも協力し、子どもたちと工作やダンスをする活動なども実施している。
ボランティアとして今年から活動に参加する筑波大4年の原悠子さん(21)は「貧困問題への関心から、つくば市内の子ども食堂の活動に関わったのが参加のきっかけ。ワクワクしている子どもの様子を間近に見ると、こちらが幸せな気持ちになれる。私が子どもの時に、両親が一生懸命、私を楽しませようとしてくれたクリスマスは、特別な日。自分も何かしらの形で子どもたちに喜んでもらいたい」と思いを語る。同じく、ボランティアの同大1年、井上もえなさん(20)は「大学入学前に『ブックサンタ』を書店で見たのがきっかけ。私が大好きだった本の思い出が、今度は違う子どもの思い出になるかもしれないと思いブックサンタに応募した。同じ団体が行うチャリティーサンタにも関わりたいと思った」と話す。井上さんは、途上国の貧困問題に関心があると言い、地域でのボランティア活動を通じて、将来は国際的な子ども支援活動にもつなげていきたいと目標を語る。
つくば支部では今年11人のボランティアが、応募があったつくば市や周辺地域で暮らす約20世帯にプレゼントを届ける予定だ。普段は市内の民間企業に務める会沢さんは、仕事の傍で続ける活動について「子どもたちにとってクリスマスの経験はほんの一瞬の体験。だがプレゼントを手渡される時に感じる豊かな気持ちは、子どもたちの中で大きい出来事になりうる。その豊かな気持ちが心に残り、将来彼らが作る未来へつながる何かのきっかけになれば」と言い、「誰かの幸せが誰かの幸せになる、思いがつながるのがこの取り組み。参加する学生たちも含めて、この活動に関わるすべての人が楽しく豊かな時間を過ごせたら」と語る。(柴田大輔)
サンタを呼びたい家庭、受付中
◆NPO法人チャリティーサンタつくば支部では、今年のクリスマス当日のボランティアフタッフの募集は締め切っている。来年度の募集は、2025年10月ごろから受け付ける予定。サンタクロースを呼びたい家庭の募集は受付中。詳細は、団体ホームページへ。また同団体つくば支部では、その他の活動に関わるボランティアスタッフを募集している。問い合わせはメール(tsukuba@vol.charity-santa.com)で。X(旧ツイッター)やインスタグラムで情報を発信している。
おいしいベーコンの焼き方《ことばのおはなし》76
【山口絹記】オトナになってからというもの、朝食を抜くことが多くなった。小難しい理由があるわけではなく、ただ朝が苦手なのだ。とはいえ、30代も半ばを越え、少し健康にも気を配らねばと思い、今年になってから朝食を作るようにしている。
基本的にはベーコンと目玉焼きにトースト、それからヨーグルトだ。これにコーヒーかオレンジジュースがつく。いつもたいてい同じようなメニューだ。
朝からメニューを考えるのが面倒、というのももちろんあるが、実はもう一つ理由があって、祖母が昔作ってくれた朝食を再現したいと試行錯誤しているのだ。ベーコンと目玉焼きとトーストに再現もなにもあるものか、と言われそうなのだが、これがどうにもうまくいかない。
そもそも、素材をそのまま焼くだけ、という料理はたいてい難しい。素材そのものに味が左右されるのはもちろんだが、ただ焼く、という調理法は存外、奥が深い。
サッと作る料理がおいしい
祖母は自分でも公言していたように、あまり料理が好きな人ではなかった。面倒だとケンタッキーやスーパーの刺身を買ってくることも多く、長時間キッチンに立っているタイプでもなかった。
しかし、「こんなものでいいかしら」とサッと作る料理がどうしようもなくおいしい。そして仕上がりは昔ながらの喫茶店のような安定感である。
いろいろなお店でベーコンを買ってきて比べてみたり、しまいには実家から当時祖母が使っていた鋳鉄(ちゅうてつ)の重いフライパンまでもらってきて試しているのだが、いまだにあの味にたどり着けないでいる。安定感とも程遠い。
カリカリのベーコンに、半熟の目玉焼き、たっぷりとバターののったトースト。私が作って朝食に出すと、こどもたちは無言で黙々と食べている。いつか私の味が思い出される日も来るのだろうか。コーヒーを飲みながら、朝からそんなことを考えたりする。(言語研究者)
今年は5人がプロ入り 筑波大蹴球部
筑波大学蹴球部からプロ入りする5選手の合同記者会見が2日、つくば市天王台の同大大学会館で開かれ、各人が抱負を語った。蹴球部は今季、関東大学サッカーリーグ1部準優勝、全日本大学サッカートーナメント3位、天皇杯本戦では2回戦で当時J1首位の町田ゼルビアをPK戦で破るなど、輝かしい成績を残した。選手たちの次のステージでの活躍が期待される。
J1ジュビロ磐田に内定した角昂志郎選手は東京都生まれ、FC東京U-18出身。身長165cmと小柄だが、圧倒的なスピードと局面を打開できるドリブルが武器のサイドアタッカー。ユース世代の日本代表歴も豊富。「先輩の三笘薫選手(英ブライトン)は同期の山川哲史選手(J1神戸)との1対1で高め合ってきたと聞いて、自分も福井啓太選手との自主練で攻撃の強さを磨いた。自慢のドリブルを発揮しチームを勝利に導きたい」と話す。
J1湘南ベルマーレに内定した田村蒼生選手は千葉県生まれ、柏レイソルの下部組織に9年間所属。圧巻のテクニックで、昨年度の関東リーグベストイレブンに選ばれたサイドハーフ。「狭いところに入ってドリブルでこじ開けてくる、相手にとって嫌な選手」と小井土正亮監督の評。「もっと相手に嫌がられる、ピッチ内で怖い選手になりたい。自分のプレーで会場を沸かせ、もっと見たいと思ってもらえるようになりたい」
J2水戸ホーリーホックに内定した沖田空選手は千葉県生まれ、鹿島アントラーズユース出身。フィジカルの強さを生かし、スピードとパワーでねじ伏せる攻撃的サイドバックだ。今年度は水戸の特別指定選手として、鹿島とのプレシーズンマッチ「いばらきサッカーフェスティバル」などにも先発出場。「縦の推進力が自分の強み。『苦しい状況でもあいつに預けておけば、一人で何とかしてくれる』とチームに思ってもらえる選手になりたい」という。
J2ロアッソ熊本に内定した半代将都選手は宮崎県生まれ。高体連の名門、熊本県立大津高校出身。プレー強度の高さと機動力を誇るパワー系のFWだ。好きな選手は岡崎慎司(元日本代表)。小柄だが誰よりもハードワークして点が取れる。本当はアルバレス(アルゼンチン代表)と言ったら小井土監督に「ふざけるな」と言われたそうだ。「これからもハードワークと強度にこだわり、ゴールやアシストなどの数字も出せるようになりたい」
J3大宮アルディージャに内定した福井啓太選手は埼玉県生まれ、大宮の下部組織に9年間所属。正確なロングフィードやビルドアップ、スピードなども併せ持つ現代的なセンターバックだ。「5人中で一番苦労してチャンスをつかみ取った選手。主将としてトップチームはもちろん部全体をまとめてくれた」と小井土監督。「相手の次のプレーを予測する力など、対人の守備が強み。1年目でスタメンに定着しチームを引っ張るのが目標」と話す。
例年は12月下旬に開かれていたこの合同記者会見だが、今年から全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)の開催方式が変更されたことにより前倒しされた。同大会で筑波大はグループステージから出場する(初戦14日、会場は福岡市黒崎播磨陸上競技場 in HONJO、対戦相手は未定)。決勝は28日、宇都宮市の栃木県グリーンスタジアム。プロ内定の5選手らも4年間で最後の日本一のタイトルを目指す。(池田充雄)
物事の要因は一つじゃないよ《続・気軽にSOS》156
【コラム・浅井和幸】私が代表をしているNPO法人があります。不登校・ひきこもり・ニート問題の解決を目的に活動をしている法人です。そこには、様々な立場の様々な悩みが持ち込まれます。
そこに、ある不登校の中学生の子どもの親からの相談がありました。小学校の時からの不登校で、暴力も少し出始めて、壁にも穴が開いているとのことでした。全てはこの子のせいで家族関係も悪くなり、仕事もうまくいかないとのことでした。全ての原因はこの子にあると。
因果応報という言葉があります。原因があるから結果があるということです。一つの結果はたった一つの原因からなっていると捉えすぎているなと、私は常日ごろ感じています。自分以外の何か一つの悪いところを責めてしまう気持ちも分からなくはないのですが、実際問題として、生活の中で起こる現象はたくさんの要因が絡まって起こってきます。
会社を辞めれば楽になれる。日本だから駄目なんだ。茨城だから駄目なんだ。フィンランドは幸せな国だから、そこに生まれたら自分は幸せだったのに。親が自分を生まなければよかったんだ。結婚さえできれば幸せになれる。金さえあれば何でもできる。
これらは、余裕がないとき、多くの方が感じたり口にしたりすることでしょう。きっかけさえあればという考えも、一つのよい原因があれば全てはよくなるという思い込みからくるものだと思います。ビックバンさえなければ、地球さえなければ、悩みなんてないのにと考えてもしょうがないですよね。
必要条件と十分条件
物事には必要十分条件というものがあります。例えば、ポークカレーは、豚肉・カレールー・水・調理器具・調理でできると仮に定義します。この5つの材料がそろったときにポークカレーが存在するので、どれか一つが抜けてもポークカレーは出来ません(玉ねぎやニンジンなどがあった方がおいしいというのは別の話です)。
豚肉があればポークカレーだとか、水があればポークカレーだとかと話すと、違和感がありますよね。それぞれの物や動きは必要条件ですが、十分条件にはならないのです。十分条件は、ポークカレーならば調理されているとか、ポークカレーならば豚肉が入っている(溶けているもあり?)です。
今現在起こっていることは、どのような材料で出来上がっているのか、大きな影響力がある要因は何かということを捉えることは大切なことです。ですが、もう一つの考え方として、今ある結果が次の材料の一つになるんだという考え方も持てるとよいですね。
あまりおいしく出来なかった肉じゃがの残り物にカレールーを足すと、おいしいポークカレーができるかもしれませんよ。砂糖を入れ過ぎたとか、じゃがいもに味がしみ込んでいないとか、過去の悪い要因を探し出すだけでなく、今あるものに新しい要素を加えることでおいしくなるかもしれません。
また、待つだけでも、じゃがいもに味がしみ込むという改善策があるかもしれませんね。ときには、あえて何もせずに待つことが良策であることもあります。(精神保健福祉士)