月曜日, 11月 18, 2024
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筑波山麓の「つくばワイナリー」《日本一の湖のほとりにある街の話》29

【コラム・若田部哲】霊峰筑波山のふもと、なだらかな斜面に広がるブドウ畑のパノラマ。爽やかな風が吹き抜ける、どこか日本でないような風景の中に、新進気鋭のワイン醸造所「つくばワイナリー」はあります。「日本ワイナリーアワード 2023」三つ星受賞、「日本ワインコンクール 2024」銅賞受賞など、着実に評価を固める同社。今月23日に新酒発表会を迎えるにあたり、食品事業部部長の大塚さんと、醸造責任者の大浦さんにお話を伺いました。 

ワイナリーがスタートしたのは2012年。小美玉市のみつお万寿や不動産事業を手がける、㈱カドヤカンパニーが土地を取得しますが、当初はワインをつくる予定はなかったそう。ところがワイン好きの社長がその素晴らしい景観にほれ込み、ブドウ栽培を行うことになったと言います。栽培にあたっては、山梨の志村葡萄研究所の指導のもと、研究所により開発された黒ブドウ「富士の夢」と、白ブドウ「北天の雫(しずく)」が主軸に据えられました。

「富士の夢」は、ふくよかでフルーティーな味わいが魅力のメルローと山ぶどうの交配種。「北天の雫」は、甘みと酸味のバランスが素晴らしいリースリングと山ぶどうの交配種で、いずれも日本の気候風土に合うよう作られた品種です。水はけがよい花崗岩質の土壌と、筑波山から吹き降ろす「つくばおろし」により熱気がこもらない地形はブドウ作りに最適で、現在は8種類7000本のブドウがその豊かな葉を茂らせています。

畑のブドウは鮮烈な酸味

さて、そんなワイン用のブドウ。10月の取材時にはまだ枝に少し残っており、生で食べさせていただきました。おいしいワインのもとになるブドウ、さぞやおいしかろうとワクワクしながら口にすると…甘みとともに、鮮烈な酸味。ふだん生食するものとはずいぶん味が違うことに驚きです。しかしこの酸味が発酵には重要で、甘いだけではおいしいワインにはならないそうです。おお、なにやら人生を感じるお話。

そしてワインの出来は、広大な畑にどれだけ手を入れられるかで大きく変わる、と大浦さん。春先には7000本ある樹を全て、良い枝2本だけを残し、その他の枝を切るそうで、想像するだに大変です。その後、お盆過ぎから収穫作業が始まり、平行して仕込み作業も行って行きますが、収穫は果実の状態と、天気の両方をにらみながらのスピード勝負! 圃場(ほじょう)に醸造所が併設されていることを生かし、ちょうどよく熟した房のみ摘み取り、順にワインにしていきます。

また、そのすばやい収穫を支えているのが、総勢60名にもなる「栽培サポーター」。老若男女・近隣から遠方まで、様々な人がぶどう畑の魅力に引かれ手伝いに来ており、すでに地域の中に溶け込んでいることを感じさせます。そうした地域とのつながりを深めつつ、地場に根付いたワインを生産していきたい、とお二人は語ります。筑波の風土に育まれた今年の新酒は、どんな表情を見せてくれるのでしょうか? 若いワイナリーが醸し出す味わいを、これからも楽しみにしたいと思います。(土浦市職員)

<注>本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。

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投票率上昇も衆院選・市議選の無効投票率が倍増 つくば市トリプル選挙 半数以上は白紙

トリプル選挙となった10月27日投開票の衆院選・つくば市長選・同市議選は、投票率が前回を上回り60%を超えた一方、衆院選と市議選では無効投票率が前回と比べ倍増し、無効票の半数以上が白紙投票だったことが分かった。 特に市議選の無効票は8658票(投票総数の7.2%)と投票者の14人に1人の票が無効となり、そのうち76.4%の6618人が白票を投じた。市議選の無効投票の割合は前回2020年と比べ2.8倍に増えた。一方、市長選の無効票の割合は前回とほぼ同じだった。 つくば市の衆院選小選挙区と比例区の投票率は60.66%(前回2021年は55.14%)と、戦後3番目に低かった全国平均の投票率53.85%(小選挙区)を6.81ポイント上回った。 一方、同市の小選挙区の無効票数は投票総数の5.49%にあたる6634票だった。前回2021年の無効投票率は2.01%で割合は2.7倍に増えた。無効投票の内訳は白紙投票が最も多く、無効票の57%の3794票だった。 同市の衆院比例区の無効投票率は4.18%の5060票で、こちらも前回の無効投票率2.16%の2倍となった。内訳は白紙投票が最も多く2817票と無効投票数の55%を占めた。 つくば市長選と同市議選の投票率は60.97%(前回2020年は51.60%)で前回より10ポイント近く上昇した。 市長選の無効投票数は3976票で、投票総数に占める割合は前回2020年の3.44%より若干減って3.31%のだった。内訳は白紙投票が最も多く61%の2448票だった。 これに対し同市議選の無効投票率(7.21%)は、前回2020年の無効投票率は2.55%と比べ2.8倍に増えた。8658票あった無効投票の内訳は76%の6618票が白紙だ。 用紙の取り違え数は不明 一方、トリプル選挙となった同市では今回、各投票所のスペースと投票に至るまでの動線確保のため、投票所での投票用紙の配布方法を、衆院選は小選挙区(浅黄色)・比例区(ピンク色)・最高裁国民審査(うぐいす色)の用紙を3枚一度に手渡し、別々の投票箱に入れてもらった。その後、つくば市長選(白色)・市議選(クリーム色)の用紙2枚を一度に渡し、いずれも別々の投票箱に入れてもらった。 市選管によると、衆院選小選挙区と比例区の用紙取り違えと、市長選と市議選の用紙取り違えはいずれもあったが、数は不明だという。一方、投票箱の取り違えは、開票の際に有効などとした。 トリプル選挙により投票率が上がったにもかかわらず、なぜ衆院選とつくば市議選で無効票が倍増し、半数以上が白票だったのか。 つくば市ではこれまで投票率に地域差があるのが特徴で、国政選挙は研究学園都市建設以降、転居してきたいわゆる新住民の投票率が高く、地方選挙は旧町村部の投票率が高くなる傾向にあり、例えば2012年の市長選は地区別(旧町村別)で14ポイントの開きがった。一方、トリプル選挙となった今回の投票日当日の地区別投票率に大きな開きはなかった。衆院選と市議選で無効票が倍増した理由について市選管は「調査していないので分からない」としている。

また名誉毀損で訴えるの? つくば市長《吾妻カガミ》196

【コラム・坂本栄】4年前の今ごろ、つくば市長2期目に入ったばかりの五十嵐氏は、選挙中に五十嵐市政を批判するミニ紙を発行した元市議を名誉毀損で提訴した。今回の選挙でも五十嵐市政を酷評するチラシが配られ、五十嵐氏はそれらに反論するチラシを出した。今回は紙上の反論で済ませ、批判チラシの正誤を司法の場で争わないのだろうか? 11月定例会見の際に聞いたところ、「(今回は提訴)しない。(チラシで)反論は済ませている」とのことだった。前回は裁判沙汰にしたものの、勝ち目がないと思ったのか、1年2カ月後に提訴を取り下げている。4年前の失敗に懲りたのかも知れないが、本音は論争を続けたくないようだ。 数字と定義を巧みに操作 市長選の終盤に出された五十嵐陣営のチラシでは、①市役所の人件費増、②洞峰公園の管理費、③五十嵐氏の政治資金、④市役所の管理職比率、⑤水道料金の値上げ、⑥市長支援者への便宜供与、⑦市の財政状況、⑧県立高の不足問題―について、批判チラシに反論した。市議に選出された酒井泉氏が執拗に追求している①と④の要点は、以下のように整理できる。 <人件費> ▼酒井氏:この8年間(2017年~2024年)で市役所の人件費は30.8%も増え、これは市の人口増加率を上回っている。 ▼五十嵐氏:算定方式の変更により人件費は増えたものの、最近の7年間(2016年~2022年)では20.8%増にとどまっている。 <管理職> ▼酒井氏:係長以上の管理職が市職員の53%も占め、現場の職員が不足している。これでは迅速な市民対応ができない。 ▼五十嵐氏:課長補佐以上の管理職は26%に抑えられている。土浦市の場合、係長以上は36.6%になっている。 それぞれの数字を比べて面白いのは、五十嵐氏は酒井氏の指摘に正面から反論せず、議論の前提を巧みにずらしていることだ。人件費問題では比較する年次を変え、伸び率を低めに操作している。管理職問題では、管理職の定義を「課長補佐以上」にすり替え、下位の係長級を除外している。こういった逃げの反論では、たとえ訴訟に持ち込んでも勝てないだろう。 ケチケチ・ボロボロ計画 ②の洞峰公園管理費問題は、議会会派・自民党政清クラブの市政報告(号外)を意識した反論と思われるが、ここでも正面から答えていない。 ▼政清クラブ:市営化された洞峰公園の維持管理費は20年で40億円かかるが、このほかに(体育館など建築物の)長寿命化改修工事に50億円が必要になる。 ▼五十嵐氏:プラス50億円は一部市議が計算した独自の数字であり、市の試算では年間3500万円(建て替えが30年先とすれば計10億円強)にとどまる。 洞峰公園市営化に伴う財政負担がどのくらいになるか、議会で論争があった。市は市営化に伴う新規支出を少なく見せようと、体育館などが老朽化しても修理~修理で済ませ、器機類などを新規更新しない「ケチケチ・ボロボロ」計画を立てた。これに対し有力市議は、他市営施設の長寿命化計画を参考にして、計50億円という改修費用を算出した。 20~30年先、公園内の建物を快適に使えるようにするには長寿命化が必須であり、市が予算化した年3500万円では体育館などの使い勝手が悪くなる。五十嵐氏の反論は、20~30年先の利用者に思いをはせない無責任な予算の立て方といえる。 論争は新しい議会の場で 人件費の割合、市職員の構成、公園の管理費、いずれも市政の大事な問題であり、新議会は選挙戦での論争を引き継ぐ必要があるだろう。新しく市議に選ばれた酒井氏、トップ当選した塚本洋二氏(政清クラブ)らの鋭い追求を楽しみにしている。(経済ジャーナリスト) <参考> 名誉毀損騒動については「…その顛末を検証する」(2022年2月7日掲載)をご覧ください。

子供会解散、老人会が招待し多世代交流【シルバー団地の挑戦@つくば 桜が丘】2

つくば市茎崎地区の住宅団地、桜が丘の公園で17日「秋の収穫祭&2024交流会」が催され、幼児から90代まで多世代の団地住民約50人がゲームや食事などを楽しみながら交流を深めた。 同団地の老人会「桜寿会」(佐藤恵美子会長)が3年前から、団地の子供会「育成会」を招待して開催してきた。今年3月、子供の数が少なくなり育成会が解散。前の育成会役員を通して改めて子どもたちを招待した。 参加者はゲームやマジックを楽しんだり、近くの畑で収穫したサツマイモで作った石焼き芋や手作りの菓子を味わったり、ホットドックや卵サンドを食べながらおしゃべりを楽しんだ。 首都圏のベッドタウンとして造成され約450世帯が暮らす同団地は、団塊世代が多く住む。子どもの数は、団地が造成され入居が始まった1970年代後半や80年代前半が最も多く、200人以上の子どもたちがいたという。同自治会の落合正水会長(78)は「育成会の倉庫があって、キャンプの飯盒(はんごう)がたくさん残っている。臼(うす)やきねもあって、餅つきもしていた」と振り返る。 団地造成から40年以上経った今年3月、団地の小学生は10数人となり、育成会は解散に至った。育成会元役員の母親(44)は「コロナ禍で育成会の行事が数年間中止となったこと、(共働きなどで)育成会の役員のなり手がなかなかいないこと、育成会は自治会の下部組織だが自治会に加入しない若い世帯が増えたことなどがあった」とし、収穫祭の招待について「地域の方となかなかお会いする機会がないので、お招きいただき本当にありがたい」と話す。 公園の清掃や花壇整備も 収穫祭を主催した桜寿会は会員約30人、平均年齢は82歳で、日ごろ、団地内の公民館で毎月1回、交流会「笑和(しょうわ)の集い」を開き、市内で活動するフラダンスやオカリナ、合唱などの愛好団体を招いて演奏を披露してもらったり、講師を招いて頭の体操などを実施している。ほかに役員や運営委員など10人ほどが団地内の公園を月2回清掃したり、花を種から育ててバスターミナルの花壇に植えるなどしている。 収穫祭に向けては、事前に収穫したサツマイモを役員らが洗って干すなどしたほか、当日は役員の一人が朝5時30分から石焼き芋を準備し、午前8時からは約10人が集まって調理をしたり、会場の準備をして子供たちにふるまった。 佐藤会長(71)は「普段、高齢者と子供たちが集まる機会はなかなか持つことができないので、年に1度でも出来る限り続けていきたい」と言い、「ただ私が一番若く、回覧板で入会を募っても(桜寿会に)新しい人が入らないので、あと何年できるか」とも言う。 ➡【シルバー団地の挑戦@つくば 桜が丘】1はこちら ➡【シルバー団地の挑戦】つくば 森の里編はこちら

「土浦の花火」中止に思う《見上げてごらん!》34

【コラム・小泉裕司】来年2025年は土浦の花火100周年。土浦全国花火競技大会実行委員会事務局は、今秋中止した大会の支出に対する予算措置にめどが立っていないことや中止決定への信頼回復もままならない状況で、「予算的にも市民感情的にも記念事業を考える状況にない」という。 赤字支出への対応 中止にもかかわらず、予算総額3億円のうち、桟敷席の設営や椅子などの借上料、警備委託費、花火製作費など主たる経費のほぼ全額に加えて、チケット代金の返還手数料などが支出となる。収入に計上した有料席代金や広告料2億2000万円が未収となるため、同額近くの新規予算化が必要となる。 詳細は、記事「来年100周年、運営再検討へ」(11月5日掲載)をご覧いただくとして、不足分は土浦市から大会実行委への「補助金」として、市議会の議決を要する案件。補助金削減を進めて来た土浦市、しかも議員の一部から、責任問題を追及する意見も聞こえてくるので、議決までの道のりは簡単ではなさそうだ。 それでも期限が迫っている経費もあり、支出が可能となる12月下旬の市議会定例会の会期末までは待てないという台所事情もある。 支出を急ぐ方法としては、臨時会の開催、市長の「専決」、12月定例会での「先議」が考えられる。臨時会を招集するいとまがないことや専決できるほどの軽微な案件ではないことから、最終日の議決を待つのではなく、会期中の早い時期に他議案に先駆けて議決する「先議」になるのだろうか。 異常気象下の中止決定 今年は、10月に入ってまで日本を直撃する台風が多かった。このコラム入稿時の天気図も、南方海上にトリプル台風が発生、そのうちの1個は日本方面に向かう予報。かつて経験のない気象を引き起こす気候変動が、通常化しつつある。 かつて土浦の花火が開催されていた10月は、東京五輪1964の開会日10月10日が「晴れ」だったことから、晴天が集中する季節との伝説が生まれたが、特段に晴れが多い季節ではなかった。土浦は、気候変動の影響を考慮し、それから1カ月遅い11月に変更し、3年が経過した。 今年は11月2日。大会当日、台風21号が温帯低気圧に変わり、秋雨前線に沿って東進。打ち上げ時間に合わせるかのようにピンポイントで雨脚が強まった。同時刻に開催した「NARITA花火大会」(成田市)のライブ映像では、開花高度の高い花火は大部分が雨雲に覆われ、雲の下層部にたこ足のように開花する花火の一部が見え隠れした。 この映像を見て、第82回大会(2013年)10号玉の部でのノーコンテストトラブルを思い出した。このときも、雨雲に隠れて10号玉のほとんどが見えず、創造花火やスターマインも一部が雲に隠れた。審査委員会は、見えない作品は一律に審査標準玉の点数をつけたが、公表の可否を委ねられた市長は「公表」を選択。 大会終了後、ノーコンテストではないか、開催決断が間違っていなかったのかという批判が多数寄せられ、市長は「なにしろ自然が相手」と断った上で、雨天決行したがゆえに、見えない状況になったことを謝罪した。今大会、この時の二の舞を演じなかった英断に敬意を表したい。 花火師の無念さ 土浦に参加する花火師は、土浦仕様の作品を持ち込む。事務局が、すべての出品業者に連絡、謝罪した際、中止判断への否定的な言葉はなかったという。 雨天にあったわけではないので、仕込み済の花火が夜空を彩る新たな機会はあるだろうが、花火師は、そんなことよりも、土浦に出品するために、いくつかの危険な手作業の工程を経て完成した花火作品への思い入れ、そして観客の皆さんに披露することがかなわなかった悔しさを、言葉にしなかっただけ。花火師の無念さはいかばかりか。 11月11日(月)に大曲の花火実行委員会が開催した「大曲の花火 感謝の集い」に出席した花火師から、「土浦で上げたかった」との発言があったという。 花火師ファースト 実行委は、今回明らかになった「順延・中止」に対する課題の検証や対応策を検討するとのこと。気象条件の精査や警備体制の確保、予算の増額など、多様な検討が行われるのだろうが、軸足を「花火師ファースト」で意思決定する体制を再構築してはどうだろう。 言うまでもなく土浦は「競技大会」である。オリンピック同様、中止はあり得ないと思っている。荒天の場合、いつに順延するかの判断基準、たとえば設置した桟敷席や設備の安全確保、借り上げ料の増額、観客の交通・宿泊など、多様な検討材料が多いが、「土浦の花火」を競技大会として存続していくためには、欠かせないコンセプトに思う。 チケット代金が払い戻され、私たちが残念に思う気持ちは、徐々に希薄になるのかもしれない。しかし、1年かけて準備を進めてきた地元茨城の花火師や実行委の職員が、抜けるような晴天の中、花火筒の撤収や案内看板を回収した悔しい思いを、私は、長く心に留めておきたい。 今回はこの辺で、打ち上げならず「ザンネーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長) <チケット代金の払い戻し> 実行委は、11月14日(木)10時から、第93回土浦全国花火競技大会の中止による有料観覧席の払い戻しの受け付けを開始した。来年1月14日(火)までの期限があるので注意が必要。実行委ホームページはこちら。