小松原佳織さん(25)と小松原優作さん(23)による二人展「いつものところ」が20日からつくば市二の宮のギャラリー、スタジオ’S(関彰商事つくば本社内)で始まった。2人は静岡県掛川市出身の姉弟で、それぞれ筑波大学芸術専門学群を卒業後、同大大学院に進学し絵画を研究している。佳織さんは「愛」を、優作さんは「生命」を、自然の中に見る光や色と共に作品に描き込む。油絵やアクリル画、手芸品など佳織さんが15点、優作さんが8点の作品を展示する。30日まで。
佳織さんがベージュ色の布製手提げバッグに描くのは、夕日に照らされるように赤やオレンジ、黄色に彩られた雲。部分的に盛り込まれた青や緑が色彩の鮮やかさを引き立てる。バッグの反対面には毛糸で表現した雲を縫い込んだ。「雲は、光の加減で見える色が変わっていく。人が感じる愛、心が動く瞬間を表現したい」と作品への思いを語る。「信仰」という作品では、ある作家の展覧会で見た、大型作品に引き込まれるように集まる観客を、無機質な四角形とそこに漂い集まる雲で表現した。
優作さんが描くのは「生命から感じる喜び、感謝、美しさ」。世界で続く戦争や貧困、差別を意識しながら日々の暮らしで感じる喜怒哀楽に心を寄せる。「生活の中で感じる命の大切さを作品に込めたい」と言う。よく足を運ぶというつくば市内の筑波実験植物園でみた光を描いたのが「植物園」。湿気がこもる温室に夕陽が差し込み、拡散する柔らかい光に包まれる植物に感じた生命の力強さを表現した。その他に、実家の台所で料理する母親の後ろ姿や、故郷に広がる田園風景に目を向ける父親を描いた作品が展示される。両親への感謝を込めたと話す。
姉弟で先に絵を始めたのは、姉の佳織さん。漫画などの絵を書き写すことが好きだったという小学生のときに近所の絵画教室に通い始めた。後を追うように、2歳違いの優作さんも小学1年で同じ教室で絵を始めた。その後は姉の後を追うように、同じ高校、大学、大学院へと進学し、互いに刺激し合いながら絵を探究してきた。
佳織さんは絵を描くことの魅力を「悩んだときや自然を見たときに絵を描くことが多い。気持ちを消化できる。描き始めると、周りの音が聞こえなくなるほど集中する」と言い、優作さんは「描いていく中で、自分が好きなものや嫌いなものがわかっていく。自己理解が進むのが絵の魅力」だと話す。
市内の義務教育学校で非常勤講師として美術を教えたこともある佳織さんは「将来は教員になる予定。子どもたちの吸収力のすごさに驚くし、どうすればよりわかりやすく教えられるか考えるのも楽しい。いろいろな教材を生徒に提供できるよう、布染めや金継ぎなどにも挑戦したい」と言い、優作さんは、「今回の作品には、おがくずを絵の具に混ぜて凹凸を表現したものがある。今後はアクリル絵の具を多く使ったり、千代紙を主体的に使うなど表現方法を広げていきたい。将来は作品を販売していきたい」と意気込みを語る。
壁面に「愛」を貼って
会期中29日まで、鑑賞者が自由に手を加えられる作品制作コーナーをギャラリー内の6メートルほどの壁面に設置する。壁に貼り付けられた無地の大型模造紙に、来場者がそれぞれ「愛」を感じる場面や瞬間を書いた付箋を貼り付けていくと、最後に「何か」が浮かび上がる。「人が人へ持つ愛、感じる愛が私の作品作りの大きなテーマ。皆さんが感じる『愛』を一緒に貼り付けながら、一つの作品として展示を一緒に盛り上げていきたい。ぜひ、参加していただけたら」と佳織さんが呼びかける。(柴田大輔)
◆「小松原佳織・小松原優作 二人展『いつものところ』」は、9月20日(金)から30日(月)、つくば市二の宮1-23-6 関彰商事つくば本社内、スタジオ’Sで開催。開館は午前11時から午後5時まで。29(日)は午前10時から、作家によるギャラリートークが予定されている。入場無料。詳しくはスタジオ’Sのイベントホームページへ。