土曜日, 1月 4, 2025
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三村山不殺生界碑 つくば市有形文化財に指定

鎌倉時代の僧侶、忍性が寺域整備を裏付け

つくば市小田にある石造物「三村山不殺生界碑(みむらさんふせっしょうかいひ)」が市有形文化財に指定された。貧者やハンセン病患者など病人の救済に尽力した鎌倉時代の僧侶、忍性が、不殺生界を定めて寺域を整備したことを裏付ける重要な歴史的資料という。ほかに同市臼井にある弘法大師像など「立野大師堂石仏群・175軀(く)」が市独自の市地域文化財に認定された。

市有形文化財の指定は2004年7月以来約20年ぶり、84件目。市認定地域文化財は13年1月以来11年ぶりで、筑波山ガマの油売り口上に次いで2件目となる。いずれも市教育委員会が1日、指定及び認定した。

三村山不殺生界碑の拓本(つくば市提供)

三村山不殺生界碑は高さ1.5メートル、幅1.3メートル、厚さ0.13メートル。黒雲母片岩で造られた板碑で「建長五年 癸丑/三村山/不殺生界/九月十一日」という銘文が刻まれており、鎌倉時代中期の1253(建長5)年に製作されたものだとわかる。現在小田にあるが、もともと宝篋山の山麓にあり、運搬されてきたと推測されている。現在は雨除けの屋根が架けられているが、風雨による経年劣化により表面がはがれやすくなっており、銘文の文字もかなり薄くなっている。現在は個人が所有している。

西大寺(奈良市、真言律宗)の僧侶だった忍性は鎌倉時代、布教活動のため関東に行き、宝篋山の南麓、三村山極楽寺を1252年に律宗に改めた。さらに小田氏の保護を得て整備、拡張するなど、同寺を関東の布教の拠点として整備していく過程が分かる資料という。

年号の刻まれた石造物としては市内最古。三村山極楽寺に関わる石造物は県やつくば市、土浦市が指定するものがすでに多くある。今回は他の石造物と比較しても歴史的な重要性は遜色ないという。

市教育局文化財課の石橋充課長は「最初、つくば市のボランティアグループから報告があり、文化財として指定してほしいという依頼だった。市で調査し、大変貴重なものだと分かった。今後は劣化を防ぐために覆いを作るなど支援していきたい」と語った。

市認定地域文化財に立野大師堂石仏群

立野太子堂入り口正面の石仏群=同市臼井(同)

立野大師堂石仏群はつくば市臼井、立野地区の大師堂に納められ、江戸時代後期から明治時代の弘法大師像87体、如来・菩薩・明王像88体で構成されている。

伝承では、江戸後期の1832(天保3年)、地区に住む皆川重兵衛が、四国八十八ケ所霊場の霊山寺から持ち帰った土で土地を清めて弘法大師像を安置したことに始まり、地域の大師講の信仰対象になったとされる。1913(大正2)年には、筑波山南麓に「新四国八十八ケ所弘法大師尊霊場」がつくられて巡拝経路が整備され、大師像は分散配置されていたが、その後、大師堂に収められることになった。

江戸時代後期から大正時代にかけて製作された大師講に関わる石仏群で、 地域の信仰の歴史を物語る資料であり、現在に至る経緯も明らかであること。さらに、堂内に多数の石仏が整然と並んでいる状況は市内でも珍しく、現在でも地区住民で大切に管理されていることなどが認定の理由。

現在、大師堂と石仏は立野区会が所管し、市道から立野児童館や蔵王神社に向かう途中にあるトタン作りの小屋に保管されている。地元住民で構成される「橘会」のメンバーが、弘法大師の月命日である21日に集まり、石仏の袈裟(けさ)を作るなどの行事や、維持管理を行っている。

立野大師堂の外観

立野区会では、石仏群が持つ地区の歴史を示す文化財としての重要性が広く知られ、次世代に継承されていくことを期待しており、同地区に住む菊地武司(69)さんは「大師堂は地域の6~7人が一生懸命守っている。地元の人でも由来など知らない人も多い。市の認定を受けたことで、整備管理など地区全体で関わっていかなければならないのではないか」と話していた。

市指定文化財は、補助金などの支援により特に貴重なものを保護していくもので、現状を変更することは規制される。市認定地域文化財は市独自の制度で、幅広い物件を文化財とし保存や活用を促進していこうというもの。補助金の支援はないが規制は緩やかになっている。(榎田智司)

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