【コラム・坂本栄】本サイトが報じた案件で土浦市とつくば市の議会が苦慮しています。土浦のケースは、車いすの中学生がいじめを受け続けたのに市の対応が不十分だったという話。つくばのケースは、県から譲渡される洞峰公園に関する市の予算説明が不正確で議会が判断に迷っているという話。いずれも市側の「逃げの姿勢」に問題があるようです。
いじめ問題をどう調査するか
前回コラム「土浦市のいじめ回答拒否 個人情報保護が盾」(10月2日掲載)では、市立中学校で起きたいじめ問題を取り上げ、市議会はプライバシー保護を理由に調査を見送ったと書きました。ところが、いじめに遭った本人が市議会の議長と文教厚生委員長に調査要望書を提出したことで、議会はこの問題を放置できなくなったようです。
私が入手した要望書「共生社会の実現への協力を要望します」(保護者連名、10月1日付、A4版5枚)には、2019年春から22年春にかけて受けたいじめの実態と学校・教育委員会の不手際の数々が報告されています。加害生徒に対する学校・教育委の調査の仕方がいい加減だったという件(くだり)はなかなかリアルです。
ある有力市議は「要望書が出たことで状況は変わった。議会としてどうするかまだ決まっていないが、何らかの対応は必要になる」と言っています。関係者のプライバシーを保護できるか、当時の加害生徒からヒアリングできるか―といった問題もあり、どういった調査が可能か苦慮しているようですが、この問題の表面化を恐れていた教育委はもう逃げられないでしょう。
洞峰公園の予算をどうするか
つくば市のケースは、県から無償で譲渡される洞峰公園の維持管理+補修+更新に必要な予算についての説明が不正確だった、という話です。
6月議会で執行部は、洞峰公園予算は年間1億8600万円(維持管理費1億5100万円+施設補修費3500万円)と説明しました。ところが、本サイトの記事「施設の補修・更新費34億円超 洞峰公園 つくば市、議会に示さず」(9月23日掲載)によって、毎年の1億8600万円のほか、31億円(市長のツイッター)の更新費(20年で順次更新するとすれば年平均1億5500万円)が必要であることが明らかになりました。
維持管理費+施設補修費+施設更新費=関連予算総額を隠したのは、金額を少なめに見せて、関連予算を渋る議員をなだめたかったからでしょう。これは情報操作でないかとの私の指摘に対し、市長は感情的に抗弁しています。要約すると、体育館などの設備・器機は更新せず、修理・修繕で済ませれば、県が数年前に算出した更新費31億円は必要ない―と。
議会がチェックすべき選択肢
どう計算するか議会は苦慮しているようですが、①更新軽視で施設や諸設備・器機が老朽化するのを承知で譲り受ける(市案可決)、②つくば市自慢の都市公園だから更新費用はケチらない(同増額修正)、③新規支出を避けるために洞峰公園を譲り受けない(同否決)―の3案を審議し、決を採ったらどうでしょう。
①ないし②で決まった場合でも、公園関係予算はもっと増えるかもしれません。というのは、洞峰公園問題のほとぼりが冷めたころ、県は洞峰公園とセットで造った赤塚公園の無償譲渡も仕掛けてくると予想されるからです。その維持管理費も、①ないし②に上乗せされると覚悟しておいた方がよいでしょう。(経済ジャーナリスト)
【参考】
<いじめ関連記事とコラム>
▽「いじめをなぜ止められなかったのか… 」(9月3日掲載)
▽コラム166「…車いす生徒に冷たい土浦市」(9月4日掲載)
<洞峰公園問題の関連記事>
▽「つくば市への無償譲渡は妥当 県議会…」(9月25日掲載)
▽「全員協開き説明を つくば市議16人が…」(10月11日掲載)