金曜日, 11月 22, 2024
ホームコラム土浦博物館の論争拒絶 市民研究者が猛反発 《吾妻カガミ》163

土浦博物館の論争拒絶 市民研究者が猛反発 《吾妻カガミ》163

【コラム・坂本栄】この欄では、158「土浦市立博物館が郷土史論争を拒絶」(5月29日掲載)、159「…市法務が助言」(6月5日掲載)、160「…議論沸騰」(6月19日掲載)で、市民の歴史研究者に対する博物館のおかしな対応について取り上げました。その後、市教育委員会も博物館の「論争拒絶」をかばう姿勢を示したため、この研究者は強く反発しています。

館長面談2回、質問書手交5

郷土史論争の概要や博物館の対応については、上記3コラムの青字部をクリックして読んでください。整理するとこういうことです。

▼誰と誰?:市立博物館の学芸員(主役は中世史家の糸賀茂男館長)VS.郷土史研究者の本堂清氏(広報課長兼市民相談室長や社会教育センター所長も務めた元土浦市職員)

▼主な争点:筑波山系の市北部は古くから「山の荘」と呼ばれていた(本堂氏)VS.そう呼ばれるようになったのは中世以降である(博物館)、「山の荘」は桜川南岸の現つくば市北部を中心とした「方穂荘(かたほのしょう)」の一部だった(博物館)VS.いや「方穂荘」は「山の荘」まで延びていない(本堂氏)

▼接触回数:本堂氏は2年の間に11回も来館し学芸員の業務に支障が生じた(博物館)VS.質問書への文書回答がなく回数が増えたが、この中には館長面談(2回)、単なる質問書手交(5回)も含まれる(本堂氏)

▼論争拒絶:2023年1月30日付最終回答書で「口頭・文書いかなる形式でも今後一切回答しない」と論争拒絶を通告(博物館)VS.市民研究者に対するは博物館の対応は許せない(本堂氏)

「市教育委の課長に脅された」

つまり、博物館は本堂氏の論争スタンスに圧倒され、最終回答書(メモ書きに続く2回目)の中で論争打ち切りを伝えたということです。158では「アカデミックディスビュート(学術論争)を挑む市民をクレーマー(苦情を言う人)と混同するかのような対応」と書きましたが、市民にオープンであるべき博物館の在り方に逆行する対応といえます。

本堂氏によると、7月20日、博物館を監督する教育委員会の担当課長が本堂宅を訪れ、博物館との直接論争を止めるよう説得してきたそうです。「このまま続けたら、私の市職員時代の業績に傷が付くと、脅すような口ぶりだった」。その場で、1月30日付回答書への反論の書を入野浩美教育長に渡すよう頼んだところ、受け取りを拒否されたそうです。

本堂さんのメッセージ

本堂氏は博物館と教育委の姿勢に怒り、掲載写真のような書(清空は雅号)をしたためました。「目は二つ 耳も二つ 口は一つ 反対意見は二度聞くがいい 敵意よりも好意をもって もう一度」と書かれています。市の現文化行政に対するメッセージです。

次は市民窓口と議会文教厚生委

博物館の対応の問題と論争の中味の問題は分けて考えるべきでしょう。前者は対話型論争から博物館と教育委が逃げるという市民サービスの低下に関わる問題であり、後者は歴史解釈の内容に関わる問題(本堂氏は糸賀氏の説は間違いと繰り返し主張)ですから。この際、論争を学術誌の場にも広げ、対話型と紙上型を併走させるのも一案です。

本堂氏は「市民相談窓口を通じて博物館の市民軽視を改めさせ、議会の文教厚生委員会には博物館の市民対応の是非を審議するよう求める」と言っています。この問題、文化施設/文化行政の場から一般行政/市議会の場にエスカレートする?(経済ジャーナリスト)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

73 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

73 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

街の文化とは何か《遊民通信》101

【コラム・田口哲郎】 前略 前回(11月9日掲載)は街の文化について書きました。文化とは言っても、人それぞれ考え方が違うので、定義はさまざまでしょう。同じ一人の人間でもその時々、気分によって文化の捉え方は異なると思います。 文化を二つに分類すると、いろいろなモードがわかりやすくなるかも知れません。いわゆるハイ・カルチャーとサブ・カルチャーです。ハイ・カルチャーはハイをとって単にカルチャー、サブ・カルチャーはサブカルなどと呼ばれますね。 たとえば、近所にホールがあってクラシックのコンサートを鑑賞する、美術館で絵画を見る、劇場で歌舞伎を見る、寄席で落語を聞くといったことはカルチャーでしょう。短歌や俳句の会、お茶席もカルチャーですね。 一方、サブカルは幅広いです。あらゆることがサブがつけば、カルチャーになる。趣味も多様性の時代で皆さんさまざまな活動をされています。ハイが上位でサブが副的な意味ではなく、古くからあるか、新しいかとか、すでに定着しているか、これから普及するのかとか、区別はあまり重要ではないと思います。 「ふるさと」を思わせるなつかしさ 街の文化を考えるときに私が挙げたいのは、喫茶店と古本屋です。これはサブカルですね。そもそも街歩きがサブカル的だと思います。 とある地方都市に住んでいる大学の先生が感動していた、狭い路地に並ぶ飲食店、とくにバーや喫茶店。そして、神田神保町などにある古書店は文化の香りに満ちています。郊外の街にあるチェーンのカフェや古書店も、安定したサービスを提供してくれる点では街になくてはならないものだと思います。 でも、古い家並みになじんだ喫茶店や古書店にはなんともいえない雰囲気があり、不思議です。機能性を追い求める現代社会で、何かを守り続ける意志を感じるからでしょうか。時流から置いていかれたような場所に、われわれは安心を感じるのかも知れません。 それは「ふるさと」と呼べるものなのだと思います。たとえ初めて見るお店であっても、そこに時の流れに消されない何かを見とめたら、自分の心に響く懐かしさといとおしさが込み上げてくるでしょう。そんな文化的な場所が住んでいる街にあれば、生活が豊かになりますね。ごきげんよう。 草々 (散歩好きの文明批評家)

県営赤塚公園の秋《ご近所スケッチ》13

【コラム・川浪せつ子】今年のつくば市周辺の紅葉は例年より遅めのようです。つくば市で一番大きい洞峰公園のイチョウ並木も、今年は11月中頃でもまだ緑色。温暖化のせいでしょうか? ですが秋は日々深まりつつあり、至る所で紅葉が見受けられるようになりました。 つくば市役所のホームページによりますと、市内の公園は209カ所だそうです。面積の小さな、駐車場もないような近隣公園もあります。私のお薦めは県営の赤塚公園。駐車場は40台分。市営になった洞峰公園と遊歩道でつながっています。小さな池とかわいらしい水路もあります。 春の桜の季節は見事。とても静かで、近隣の方でないと気付きにくい穴場の公園です。絵のような東屋、ベンチも配置されていますので、ユックリできます。先日は、家族連れの外国の方々が、お子さん達を遊ばせながら、ランチタイム。また、大きな袋を持った女性が、木の枝や実を拾っていました。 近くには、映画館、日帰り温泉… お隣には茗溪学園や住宅。子供たちが遊びに来るからでしょうか、大きな時計も設置されています。先日は、全く水鳥は見えなかったのですが、鳥たちも集まっていることが多いです。自然をそのままに残しているような公園、小さいながら本当に素晴らしいです。 最近、研究学園駅周辺など、新しく移住してくる方が多いですが、どうぞ少し足を延ばしてみてください。赤塚公園の前には、映画館、日帰り温泉、ジム施設などもあります。ジムのボルダリング施設は、オリンピックに出場したスポーツクライミング選手、森秋彩(あい)選手が練習もした所です。(イラストレーター)

中止による減収2億3千万円 土浦花火大会 市が追加負担を決定

市長らの給与減額し道義的責任 土浦市は20日、第93回土浦全国花火競技大会の中止に伴って桟敷席などの収入が無くなり2億3000万円の減収があったとして、同額の補正予算を19日、専決処分で決定したと発表した。併せて、中止により多くの人に心配と迷惑をかけた道義的責任を明らかにするため市長と副市長の給料を減額するとした。 同花火大会は11月2日に開催する予定だったが台風21号の影響により中止。荒天の場合、3日または9日に延期する予定だったが、労働力不足により順延日の警備員を確保できず大会自体を中止とした(11月1日付、5日付、17日付)。 桟敷席の設営や撤去などすでに実施済みの委託業務や、中止に伴い新たに発生する経費を速やかに支払うため、議会の議決を経ないで決定する専決処分としたとしている。2億3000万円は、市が事務局を務める土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)に追加補助する。市は当初予算ですでに同実行委に8500万円の補助金を計上しており、中止となった大会の事業費は計3億1500万円になる。全額を市が負担する。 給与の減額は市長が月額20%、副市長が10%を12月から来年2月までの3カ月間減額する。12月の期末手当も市長が20%減、副市長が10%減となる。3カ月間減額する条例についても19日、専決処分とした。 安藤市長は「中止による減収を補うため新たに補助金を増額する結果となってしまったことについて、市民の皆様に心よりお詫びします。開催を心待ちにしていた皆様、 煙火業者の皆様、全ての関係者の皆様に対し、多大なご心配とご迷惑をお掛けしたことについて会長として責任を強く感じています。 今後は花火大会への信頼回復に努め、大会の運営等、様々な課題を検証し、次回の大会につなげて参ります」とするコメントを発表した。

オリジナルレンコン料理専門店開業へ 土浦市産業祭で一部メニューお披露目

日本一の産地である土浦のレンコンを使用したレシピを開発し提供するオリジナルレンコン料理専門店を開業しようと、同市でインターネットテレビ「Vチャンネルいばらき」を運営する会社社長の菅谷博樹さん(55)と、つくば市下広岡で軽食店「ニッチDEキッチン」を運営する増田勇二郎さん(53)が準備を進めている。開業に先立って23、24日開催の第48回土浦市産業祭でオリジナルメニューの一部をお披露目し販売する。 店名は「土浦れんこん物語」。来年1月ごろ土浦駅西口近くの同市川口、ショッピングモール「モール505」の空き店舗に開業し、ランチを提供する予定だ。店を運営する合同会社「土浦れんこん物語」を近く設立する。 菅谷さんによると、土浦にスイーツ店を構えたことがある増田さんと今年9月頃、土浦の活性化について話した際、「レンコン専門店で土浦をもっとアピールしたい」と意気投合したのがきっかけ。 菅谷さんは「レンコンといえば土浦市だが、あまり県外に浸透していないと感じている」と言い、「レンコンを使ったオリジナルメニューを提供し、市内はもちろん全国、海外にも発信したい」と、食を通じた観光促進と地元産業の活性化を目指したいと語る。新店舗のコンセプトについて「農家+料理の職人がコラボレーションしてオリジナルの新しいレシピを作り出していくこと」だと話す。 提供するメニューには、土浦市とJA水郷つくば主催の「日本一のれんこんグランプリ」で2022年と23年に2年連続最優秀賞を受賞した「市川蓮根」(同市田村、市川誉庸代表)」が生産したレンコンを使用する。メニューの開発と監修は、筑波山温泉ホテル一望(つくば市筑波)の料理長を務めた逸見千壽子さんに依頼した。 提供するランチは700円から2000円程度とする予定で、ほかにキッチンカーでの販売も予定し、インターネット販売なども模索している。 コロッケとお焼きを販売 すでにいくつかのオリジナルメニューが完成しており、そのうち「れんこんコロッケボール」と「れんこんお焼き」を23日、24日、モール505で開かれる産業祭で、「ニッチDEキッチン」のキッチンカーで販売する。 れんこんコロッケボールは、レンコンのすりおろしとジャガイモを9対1の割合で配合し、真ん中にカットしたかみ応えのあるレンコンが入っている。食べやすいよう一口大のボール型にしカップに複数入れて販売、クシで刺して食べてもらう。「れんこんお焼き」は、逸見さんオリジナルのレンコン甘辛味噌が入ったお焼きだ。 菅谷さんは「レンコンを使ったオリジナルメニューを今後も開発、提供し、モール505の活性化にもつなげたい」と意気込みを語る。(伊藤悦子)