日曜日, 4月 6, 2025
ホームコラム結婚したい《短いおはなし》8

結婚したい《短いおはなし》8

【ノベル・伊東葎花】

秋晴れの日曜日。

バラの花とハートの風船で飾られた、素敵なウエディングパーティ。

新郎新婦はとびきりの笑顔で、世界で一番幸せそう。

職場の先輩は、宣言通り30歳の誕生日前に結婚式を挙げた。

白いドレスがまぶしくて、思わずうっとりしてしまう。

フィナーレは、独身女性が目の色を変えて挑むブーケトス。

私は居並ぶアラサーたちを押しのけて、最前列を陣取った。

そして若さと得意の運動神経で、ブーケをこの手にキャッチした。

「はっ? 何でいちばん若いあんたが取るのよ」

先輩たちの冷たい視線を感じながら、私はブーケを空に掲げた。

「次は私の番だー」

ごめんね、先輩方。

若くても、私は焦っているんです。

結婚したいんです。できれば春までに。

2次会を断って、大好きな卓也が待つ家に帰る。

今日こそ、結婚の話をちゃんとしよう。

「ただいま、卓也」

ちらかった部屋でゲームをしていた卓也がちらりと私を見た。

「おかえり。きれいな花だね」

「ブーケトスでね、私のところにブーケが飛んできたの。すごいでしょ。これって運命よ」

「ふうん。よかったね」

「花嫁さんからブーケを受け取るとね、次に結婚できるのよ」

「ふうん。そうなんだ」

卓也は、たいして興味がなさそうに言った。

彼は、ブーケよりも引き出物のケーキに興味があるみたい。

私は卓也のためにケーキを切り分けて、となりに座った。

「ねえ、卓也。10月ももう終わりだね」

残り少ないカレンダーを眺めながら言ってみた。

「11月22日って、いい夫婦の日なんだって」

「へえ」

「いい夫婦って、何だろうね」

「知らないよ。オレに聞くなよ」

「そうだよね」

「ねえ卓也。私が、結婚したいって言ったらどうする?」

「結婚? 誰と?」

「誰って…それは…」

「うん。別にいいよ。結婚したかったらしなよ」

「いいの? だって、卓也、私と結婚したいって言ってたじゃない」

「いつの話だよ。それ、2年くらい前でしょ。オレ、もう違うから」

「そうか。そうだよね。うん。わかった」

私は、一抹の寂しさを感じながら、卓也をそっと抱きしめた。

「卓也、春までに、絶対ステキなパパを見つけるからね」

「うん。オレ、一緒にサッカーしてくれるイケメンのパパがいい」

口の端にクリームをつけた卓也が、元気いっぱいに笑った。

17歳で子供を産んで、ひとりで育てて来た。

卓也は6歳。生意気だけど可愛いの。

卓也が小学校に上がるまでに、収入が安定したパパを見つけなきゃ。

ねっ、卓也。ママ、頑張るね。(作家)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

4 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

4 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

「動物に触れ合い、愛情と根気を」 つくば国際ペット専門学校で入学式

動物分野で国内有数の専門学校、つくば国際ペット専門学校(つくば市沼田、東郷治久理事長)の入学式が5日、つくば国際会議場で催された。ペットビジネス学科のドックトリマー、愛玩動物看護師・動物衛生看護、ドッグトレーナー、ペットケア総合の4つのコースに、全国各地から206人が入学した。 高橋仁校長は「皆さんがこの学校を選んでくれたことはとてもラッキーなこと。美しい場所で学べる幸福も含めて、新しいことに挑戦してほしい。皆さんには(在学中ずっと生徒1人が1匹の子犬を世話する)パートナードッグが待っている」と式辞を述べた。 東郷理事長は「来年30周年を迎える(犬のテーマパークの)『つくばわんわんランド』をバックボーンにしている当校は最高の環境。必要なものは愛情と根気であり、動物に触れ合うことによって身に付く。皆さんの夢をかなえるために教職員一同尽力します」と祝辞を述べた。 続いて在校生代表を代表してドッグトリマーコースの大須賀新奈さんが歓迎の言葉を述べ「学校生活は忙しかったが、発見の連続でやりがいがあった。投げ出さず、あきらめずやっていければ、技術を身に付けることができると思う。学校、先生、自分自身を信じて思い出をたくさんつくりましょう」とエールを送った。 これを受けて新入生を代表しドッグトレーナーコースの松島リザさんは「大きな期待と希望をもって、夢の実現のため頑張っていきたい。動物たちとの触れ合いや仲間たちとの支え合い、助け合いを通じて成長していきたい」と決意を述べた。 入学式に参加した新入生の中山桃夏さん(18)は「動物が大好きなので、この学校に入れてうれしい。友達もたくさんつくりたい」と話していた。 式典では併せて、3月29日に東京ビッグサイトで行われたジャパンケネルクラブ主催のトリミング競技大会で、トリマーコースの小堀美空さんと大友愛希が最優秀技術賞、遠藤晴希さん、小橋川花蓮さん、田島由紀乃さんが優秀技術賞を受賞し、同校が優秀養成機関賞を受賞したことが報告され、同クラブトリマー試験委員の高尾諭さんから東郷理事長に賞状とトロフィーが授与された。(榎田智司)

悠仁さま、筑波大入学

開式を待つ間に談笑も 筑波大学(つくば市天王台)で5日、大学と大学院の入学式が開かれ、生命環境学群生物学類に入学した秋篠宮家の長男、悠仁さま(18)も参加した。大学の入学式は学群ごとに2回に分けられ、悠仁さまは午前9時から始まる最初の式典に参加した。 悠仁さまはスーツにネクタイ、黒いリュックを背負い、式典開始45分前に席に着くと、隣りに座る他の新入生と談笑しながら開式を待った。入学後は、東京・元赤坂の秋篠宮邸から通学するほか、大学近くにある単身用の民間の集合住宅の一室を借り、併用していくという。 一人の夢のみならず豊かな未来社会実現へ研鑽を 式典であいさつに立った永田恭介学長は「現代の社会課題の解決には複数の分野にわたる総合的な知識と、それぞれの分野の原理的な概念が必要になる。皆さんにはぜひ、グローバルな視点で社会の変化に関心を持ち、これらの課題を自分のこととして認識し、専門分野にとらわれずに学びの幅を広げ、社会に出てから責任ある考え方に基づいて行動できる力を身につけてほしい」と新入生に語りかけると、「一人一人の夢の実現のみならず、豊かな未来社会を実現するために、ともに日々の研鑽に励んでいきましょう」と呼び掛けた。 医学群に入学する水戸一高出身の益子隆生さん(18)は、地域医療を担う医師を養成する「地域枠」で入学した。「期待より不安も多い」としながら「県内には医師不足に直面する地域があるが、各地の特色を理解し医療に取り組み、地域の方々に安心を届けられるような医師になりたい」と目標を語った。中国・北京市出身で、情報学群に入学するホウ・シキさん(20)は「大学では図書館の検索システムとともに、AIを活用した図書推薦システムについて研究したい。中国では登山が趣味だった。つくばには、日本百名山の筑波山がある。在学中に、他にもいろいろな山を巡ってみたい」とつくばで過ごす学生生活への思いを膨らませていた。 同大の今年度の入学者数は、学部にあたる学群が2230人、大学院が2568人、はり、きゅう、あん摩・マッサージ指圧を視覚特別支援学校で教える教員を養成する理療科が9人。午後からは大学院の入学式が開かれた。(柴田大輔)

天才たちの老後(3)学園都市という場《看取り医者は見た!》39

【コラム・平野国美】前回(3月14日掲載)書いたように、私が関わっている患者さんの中には「ギフテッド(天賦の才)」と呼んで差し支えない方が存在します。筑波研究学園都市という街は研究者が集積する場所なので、お会いする機会が必然的に多くなるわけです。そのため、その天才たちの老後を見させていただいており、彼らの生い立ちは私にとって興味深いことです。 まず、ギフテッドの定義について、いくつかの観点から説明します。国や機関によって異なりますが、一般的には①非常に高い知的能力②優れた創造性③高い学習能力④特定の分野における顕著な才能―などを持っている人です。 単にIQ(知能指数)が高いだけではなく、特定の分野について強い好奇心と異常なまでの探求心を示す人たちです。ところが、他の分野や生活一般には、全くと言っていいほど興味を示さないのです。お話を聞いていると、独特のセンスやユニークさを感じる方が多いです。 それゆえ、彼らは奇人と言われ、決して幸せには見えない方も多いのです。しかし、彼らにとっての幸せは、自分の興味の分野に身を置けるかどうかであって、一般的な幸せの基準とは違います。そこに、現代人が求める「承認要求」などはありません。 魚にこだわる「さかなクン」 会ったことはないのですが、フギョギョの「さかなクン」は、この範疇(はんちゅう)に入ると思います。魚類という特定分野への強いこだわり、並外れた知識と記憶力、ユニークな言葉遣いや表現力には独特の気質が見えます。 さかなクンの周辺の人に話を聞いたことがありますが、普段から、あの話し方とキャラクターで過ごしており、決して営業用ではないそうです。 そして、誰よりも魚類に対する愛は深いそうです。学校の勉強は苦手でしたが、今ではイシガキフグの研究などが評価され、東京海洋大学の客員教授に就任し、皇室の方の前で講義をしたこともあります。彼は自身の興味や才能を生かし、多くの人々に魚の魅力を伝えています。彼の存在は、多様な個性を持つ人々がその能力を発揮することの素晴らしさを示していると思います。 脳の多様性を尊重するエリア 私の患者さんや、そのご家族にも似たような資質の方が存在します。昆虫、惑星、草木、鉱石に対する無限の「渇望」で生きてきた方がおられます。視線を広げると、芸術分野でもおります。さらに広げると、マニアやオタクの世界にまでたどり着きます。 多様性という言葉はジェンダーの世界で主に語られますが、もっと広げると、ニューロダイバーシティ、つまり脳や神経に由来する多様性を相互に尊重することではないでしょうか。その場所が、つくばエリアではないかと思うのです。(訪問診療医師)

「人格の完成を目指せ」 日本国際学園大つくばキャンパスで入学式

2期生87人が入学 昨年4月に開学した日本国際学園大学(橋本綱夫学長)の入学式が4日、同大つくばキャンパス(つくば市吾妻)で催され、第2期生87人が入学した。旧筑波学院大学から大学名を変更し2回目の入学式となった。 総代として、白い民族衣装をまとったスリランカ出身のサンタナ・デワゲ・ハルシ・ナワォデヤ・デウミニ・シルバさんが橋本学長から入学許可書を受け取った。新入生87人のうち44人は留学生で、中国、スリランカ、ベトナム出身者などが多いという。 橋本学長は式辞で「本学を支えている考え方は、大学で幅広い教養や知識を習得するだけではなく、問題解決能力や創造力といった、人格の形成を目指している。実社会に出たら必要なものはコミュニケーション力であり、本当に役に立つ人間を目指してほしい」とメッセージを送った。 新入生を代表して茂木翔太さんは「恵まれた環境で学ぶことができることはとてもうれしい。それぞれの目標に向かって勉強するのはもちろんのこと、物事を多くの視点から見られるよう、学び、社会に貢献していきたい」と述べた。 在校生を代表して経営情報学部ビジネスデザイン学科の寺門光穂さんは「この大学の特徴は、先生と距離が近く何でも親身になって相談できるところ。学生生活を送るにあたって、時間をかけて待つだけではいけない。自ら進んで行動することが大事」だと新入生に向けてエールを送った。 当日は3日間続いた雨も止み、桜が咲く中での入学式となった。中国出身の新入生で留学生の森拓也さん(18)は「まずは日本語の会話がちゃんと出来るようにしたい。これからは情報が大事だと思うので、AIなど学べれば良い」などと話した。 同大は1990年、東京家政学院大の筑波短期大学として開学。96年に4年制の筑波女子大学になり、2005年に男女共学の筑波学院大学になった。大学の運営は19年度に東京家政学院から学校法人の筑波学院大学に移り、23年からは学校法人名を日本国際学園に変更した。昨年からは姉妹法人の東北外語学園(仙台市、橋本理事長)が運営する仙台市の東北外語観光専門学校に新たに日本国際学園大学の仙台キャンパスを設置した。(榎田智司)