イラストレーター「かえるかわる子」こと矢口祥子さん(50)の「土浦で生まれてよかった矢口新聞」展が20日から、土浦市大和町の市民ギャラリーで始まった。
土浦をはじめ県内外の街で見つけたお店や食べ物、人物を、色鉛筆を使った独特のタッチでつづる「矢口新聞」は2015年の創刊。手描きしてカラーコピーし、四つ切りの画用紙に貼り付けて読者の元に届けるスタイルの不定期刊行物で、途中で数えるのを止めたが7年間で300号以上の発行を重ねた。今回はこのうち約180号分を持ち込み、新たに新聞の4コマ漫画よろしく、新趣向の書き下ろし15話分を展示した。
矢口さんによれば「新聞の形式を借りて『読むアート』なんてうたい文句をつけてたけど、1枚にいろいろ詰め込み過ぎて、過去の展覧会では『読みにくい』と言われてしまった」そう。そこで、段ボール板に絵を描き、ちりめん素材などをあしらって4枚1組で「読みやすく」した作品を製作した。「れんこんのこけし」や「変な名前」「矢口酒店」などのタイトルがついている。
「矢口酒店」は土浦市中央にある矢口さんの実家で、同店所蔵の錦絵や土浦商店街との古い交流を伝える約50枚の手ぬぐいなども展示した。
同展は市民ギャラリーの自主企画展。矢口さんが2020年の岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)に入選したのをきっかけに、市教育委員会が声を掛け、約1年をかけて準備してきた。展示ギャラリーの第1~第2室合わせて280平方メートルをいっぱいに使い、昨年の岡本太郎美術館(川崎市)に出品した「土浦の情熱」の特別展示もほぼそっくり再現した。「こんな広い会場を使えて感動している。作品の搬入と展示だけでも大変で、教育委員会や市民ギャラリーのスタッフが一生懸命やってくれたおかげで開催できた」という。

矢口さんは同市内のアパートで、スマホやパソコン、テレビも持たないアナログ生活を送りながら創作活動を続けている(21年9月11日既報)。「エアコンのない部屋で、今年は扇風機も使わなかった」そうだ。14万市民全員に見てもらいたいとの「土浦の熱中」、なかなかにホットだ。(相澤冬樹)
◆「土浦で生まれてよかった矢口新聞」展 20日(土)~9月25日(日)。土浦市民ギャラリー(土浦市大和町 アルカス土浦1階)。入場無料。問い合わせは電話029-846-2950(同ギャラリー)