月曜日, 5月 6, 2024
ホームコラム遠くなった東京 《電動車いすから見た景色》29

遠くなった東京 《電動車いすから見た景色》29

【コラム・川端舞】今月末、どうしても東京に用事があり、どうやって行こうかしばらく悩んだ。感染予防を徹底して電車で行くべきか、お金はかかってもタクシーで行くべきか。結局、「東京まで運転できる」と言ってくれる介助者がいたので、福祉車両を借りて、介助者の運転で行くことにした。

思い返せば、コロナ前は講演会など様々な活動のために、月に1回は介助者と一緒に電車で東京に出かけていた。冬はインフルエンザの予防のため、こまめに消毒はしていたが、普通に駅のトイレを使い、何も考えずに、混雑したレストランで食事をしていた。今は外出時にどこのトイレに寄れば、比較的安全か考えてしまう。自分でもやりすぎではと思うくらい、潔癖症になってしまった。

コロナをそれほど恐れる必要はないという意見を聞くことも前より多くなった。私自身も、自分には内科的な基礎疾患はないから、かかっても重症化はしないだろうと思っている。

私がコロナになった場合、一番怖いのは、毎日家に来る介助者や、同じ介助者から介助を受けている他の障害者にうつしてしまうことだ。障害者の中には、基礎疾患を持つ人も多い。私の不用意な行動で、そのような仲間が重症化してしまったらと思うと、遠出をしたくても、無意識に躊躇(ちゅうちょ)してしまう。

障害者が街中に出ていく重要性

一方、本当に今の生活のままでいいのだろうかと思うこともある。昨年秋、感染者数が落ち着いていたころ、本当に久しぶりに都内に行くために電車に乗ったが、駅員がスロープを準備してくれるまでに、以前より手間取っているように感じた。

おそらく、コロナ禍で車いす利用者が電車に乗る機会が減り、駅員がスロープを出す頻度も減ったのだろう。障害者が日常的に駅を使うからこそ、駅員も障害者の対応に慣れていく。障害があっても暮らしやすい社会にするために、障害者が積極的に街中に出ていく重要性を改めて感じた。

しかし、街中に出ていくことには必ず感染リスクが伴う。障害者としてどう行動するべきか、答えの出ない問いが続く。(障害当事者)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

5 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

5 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

投網や釣り体験で交流 川守養成プログラム始まる 桜川

桜川に親しみ、川の環境を見守る人を養成する「桜川川守(かわもり)養成プログラム」(4月22日付)の第1回が5日、つくば市松塚、桜川漁業協同組合(鈴木清次組合長)の拠点広場で開催され、市内外から7組22人が参加した。中国やインド出身の参加者も訪れて投網や釣りを体験し、国籍や世代を超えて交流を深めた。 同プログラムは川の水質や生態系を見守る担い手を育てようと、川守養成プログラム実行委員会が企画した。桜川漁協や市民グループ「桜川ナマズプロジェクト」が協力し、NEWSつくばが後援している。 鈴木清次組合長(81)は参加者に、シジミやウナギなど多様な生き物が生息し、澄んだ流れだったという桜川の記憶や、近年アユやワカサギ、オイカワなど在来魚が急激に減少していることについて話した。桜川で伝統的に使われている漁具についても実物を見せながら紹介した。その後、参加者に投網の投げ方を教え、参加者は川沿いの広場で投網を何度も投げて練習した。桜川では遊漁者が投網を行うことは禁じられているが、漁協の組合員になれば投網を使用することができる。組合員によると、投網を正しく丸く広げられるようになるには10年の経験が必要だという。 投網体験のほか釣りの体験も行われ、体長60センチほどのアメリカナマズが次々と釣り上げられて歓声が上がった。15匹が釣れ、市外から参加した女子高校生が慣れた手つきでナマズをしめてさばいた。昼食時には市内の四川料理店「麻辣十食」(同市天久保)が、霞ケ浦のアメリカナマズを使ったメニュー2種類を提供し参加者が試食した。四川料理「ラーズーナマズ」は今年2月から同店でレギュラーメニュー化した一品(2月28日付)。市外から参加した中学生は「今日はアメリカナマズを釣り上げた。試食したナマズはすごくおいしい。人気になると思う」と話した。釣り体験で釣れたナマズは、その場でしめ、食用や骨格標本制作用として参加者がそれぞれ持ち帰った。昼食時には、鈴木組合長による投網の実演が行われ、外来魚のダントウボウやアメリカナマズ、オイカワなどが網にかかり、参加者から拍手が起こっていた。 在来魚が減少し、特定外来魚であるアメリカナマズが急激に増加するなど、近年桜川の生態系は大きく変化している。桜川はつくば市の水源である霞ケ浦に流れ込んでおり、川の水環境は市民の生活に密接に関係している。70年前、澄んだ水だった桜川で泳いで遊んだという鈴木清次組合長や組合員の鈴木孝之さん(81)は、当時の記憶を話し、かつての清らかな水質を取り戻したいと市民に向け発信を続けている。 市内在住の30代の男性は「NEWSつくばを見て、投網をやってみたいと思い参加した。子どもの時から桜川で釣りをして遊んできたので、桜川が好き。長く見ているので、桜川で釣れるものが変わってきたのを感じている」と変化についての実感を話した。同じく市内在住で北海道出身の30代男性は「桜川には観光としての魅力がある」と観光資源としての可能性を話した。 鈴木組合長は「いつでも遊びに来てください。楽しみながら川のことを知ってほしい。清らかな桜川を取り戻すのが私の願い」と参加者に話した。川の生態系の現状を知ってもらい、川を見守る担い手を増やしたい思いだ。 同プログラムは年5回実施の予定。4回以上プログラムに参加した人は、養成プログラム実行委員会が桜川の「川守」(桜川を見守るサポーター)に認定し、川の清掃活動などの情報を配信する。プログラムは1回のみの参加も可能で、来年度も実施を予定している。(田中めぐみ) ◆次回、第2回プログラムは6月9日(日)開催の予定。NEWSつくばページで5月11日より参加を募集する。

産んでも男の子は兵士になって死ぬんでしょ《ひょうたんの眼》68

【コラム・高橋惠一】私は、毎年5月3日には日本国憲法を読むことにしている。国際社会は2度の世界大戦の人類絶滅危機を恐れ、日本は310万人もの犠牲者を出しながら、加害責任を追及される結果を踏まえ、国と国民が共有する決まりとして制定した憲法である。 「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」として、無知と偏見が、人種、性、言語または宗教上の差別を可能にし、愚かな戦争に至らしめていると警告する「ユネスコ憲章」と、国民主権を人類普遍の原理とうたい、人権尊重と戦争放棄を決意することによって国際社会に名誉ある地位を占めたいと宣言する「日本国憲法前文」を、座右の銘と思っている。 統一教会との癒着や、不正な裏金によって確保した議席の多数によって、民主主義をねじ曲げ、挙げ句は、平和憲法の「改悪」をはばからない現政権に嫌悪感を持たざるを得ない。その与党に何を期待するのか、すり寄る一部「野党」や一部「マスメディア」にも落胆している。裏金問題の改革は、企業団体献金の禁止しかないのに、何を躊躇(ちゅうちょ)しているのだろう。 防衛費負担は従来の2倍に 日本のGDP(国内総生産)がドイツに抜かれ世界4位に転落した。さらに3年後にはインドに抜かれる見通しだ。1人当たりのGDPは21位で、世界第2位を誇った30年前の見る影もない。経済政策の失態なのだが、特に近年の「アベノミクス」という理念の無い経済政策の結果であり、だらだらと現在も続いている。 アベノミクスでは、企業業績の拡大を最優先に据え、円安に進んだ。また、経済活動の効率化を図るとしながら、その手段をコスト抑制に求め、具体には人件費=賃金の抑制と、原材料調達費=下請け企業の収益削減に負担を押し付けた。 少子高齢化の進行や災害復興の財政需要の拡大は、元々予定されるところだが、財源不足を国債に求め、デフレ状況下でも好調な輸出部門やIT関連企業からの税負担は採用せず、むしろ内部留保への特別措置など、大企業優遇が続いている。 そこに安全保障環境の悪化によるとする、防衛費についてGDPの2%負担を首相が国際会議の場で約束してしまった。1%増やすだけではなくて、従来の2倍にするということだ。世界第4位の軍事費大国になるということだ。 安倍政権に次いで、現政権も国会で議論せず、与党だけで調整し閣議決定で通してしまう。まさに国会という主権者の判断を仰ぐ機会を無視しているのだ。 子育て支援などと言うが… 滅茶苦茶な国政の運営も、要約すると、大企業が今後の稼ぎ頭にしたい防衛産業を拡大するために、社会保障や格差解消のための財源を削って、大企業優先の財政運営をする。子育て支援などと言うが、今日のコラムの見出しは、2人の子育て中の若い女性の言葉である。日本という国に、何の期待もできないのだ。(地歴好きな土浦人)

70歳からの正しいわがまま《看取り医者は見た!》18

【コラム・平野国美】先日、つくば市内で開かれた市民団体の講演会に呼ばれました。演題は拙著のタイトル「70歳からの正しいわがまま」です。私の仕事「訪問診療」で出会った患者さんとのやり取りなどに、私なりの解釈などを加えて話しました。 今、回収されたアンケートを読んでいるところです。22年間もこの仕事をしていると、変わるもの、変わらないものがあります。病名はほとんど変わりません。新型コロナが増えたぐらいです。変わっているのは、患者さんを取り巻く環境です。 いずれ詳しく書きたいと思いますが、今、患者さんに寄り添うのは御家族であることが少なくなってきました。独居と思いきや、そこに現れるのは同級生だったりします。内縁や不倫の関係者も現れます。また、ペットの犬や猫が家族以上の関係になっています。 講演会場に来られた良識の塊のような紳士淑女の方々には、内縁や不倫を絡めた話は抵抗があるかと思ったのですが、多くの方は「うらやましい」と受け入れていたようです。同じ日本人であっても、時代が変わり、世代が変わると、常識や価値観が変わるものです。 患者さんと話をしていると、そこに気がつくのです。例えば、日本を代表するアニメ「サザエさん」の家族状況を今の子供が理解できるでしょうか? 家の間取り、卓袱(ちゃぶ)台、家族関係などは理解不能でしょう。今、昔のドラマの再放送がされていますが、時代劇や古典劇を見ているような気がします。 変わる、病や死に対する考え 小学校の頃に見た「俺たちの旅」では、やたらタバコを吸いますし、殴り合いになります。学生運動をしていたことが発覚して就職できなくなることなど、今の大学生には理解できないでしょう。 患者さんの御宅で親子げんかをしているのを眺めていると、どちらも間違ってはいない、価値観の違いであろうと思うのです。戦前に生まれた親の世代からすれば「家や墓は守るもの」なのに、息子の世代は「いらない」になります。この価値観の変遷に気が付かないと、けんかは終わりません。 同じように、病や死に対する概念も変わっていくのです。このコラムでは、これまで「消えてゆく街並み」を書いてきましたが、これからは私の仕事を通して患者さんから学んだことも書きたいと思います。少し斜に構えれば、「庶民的な死生観」となるでしょう。(訪問診療医師)

「私たちは憲法の前でボーっとしてるんじゃないか」 つくばでデモ行進と集会

憲法記念日の3日、「憲法はボーっとしてんじゃねぇよメーデー」(主催:茨城アンダークラスメーデー実行委員会)と題して、市民団体がつくば駅周辺でデモ行進と憲法について考える集会を開催した。デモには県内外から16人が参加し、「アルバイトでも派遣でも生きていける社会を」「不当解雇するな」などと訴え、駅周辺を約1時間行進した。 集会では3人の話題提供者が、「地域に暮らす外国人の子どもの権利」、「思想・良心、学問の自由」、「憲法前文」などについて憲法をもとに問題意識を挙げると、来場者からは、職業や性差別、学歴、労働環境、在日外国人が置かれている環境など、日常の中で接する課題について意見が出され議論が交わされた。 デモと集会に参加した、東京・山谷で労働者を支援する向井宏一郎さんは「それぞれの地域には必ず厳しい環境で働く人がいる。(集会やデモをきかっけに)地元の支援団体が、労働問題を地域の生活問題として捉え、地域住民と関わることは重要」だと指摘する。 主催団体の加藤匡通さん(55)は「私たちは憲法の前でボーっとしてるんじゃないのか」と言い、「憲法は基本的人権と法の下の平等を規定し、職業選択の自由と勤労の権利と義務を記し、勤労者の団結権を保障している。しかし、それは紙の上だけのことではないのか。私たちはこれら憲法に書かれていることを、自らのものとしているのか」と疑問を投げかける。「人権が尊重されない職場で辞めることもできずに働き続ける人がいる。憲法が謳う基本的人権が空文化している。憲法に書かれている権利に対して、誰かがやってくれるだろうと思っていてはダメ。憲法を自分のこととして主体的に考えていかなければいけない」と、憲法記念日にメーデーをテーマとしたイベントを開催した意義を語った。(柴田大輔)