土曜日, 1月 25, 2025
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自然死の介護体験 《くずかごの唄》85

【コラム・奥井登美子】わが家の愛犬「ミミ」、外へ行きたくなると鎖を引きちぎって脱走する。散歩が大好きで、朝早く、ワンワンほえて散歩の催促をする。平成15年(2003)3月3日生まれの雌の野犬。18歳(人間にすると100歳に近い)なのに、昨年末まですこぶる元気がよかった。

今年の1月半ば、後ろ足がおかしくなって歩けなってしまったが、前足をひっかいて結構移動する。歩けなくなって一番困るのがウンチとオシッコ。それまでは犬の紙おむつというものが世の中に存在するのさえ知らなかった。ペットショップコーナーへ行ってみて驚いた。尻尾の大きさによって大中小の穴の開いた紙おむつが、たくさん並んでいる。

庭の犬小屋は寒いので家の中に連れてくる。おむつがぬれたり、ウンチがついたりすると気持ちが悪いらしく、ほえるのですぐわかる。鎖をやめても、2メートルくらい前足で移動してしまう。元の位置に戻すと怒る。

よく食べるのに体は骨と皮。肉がほとんどない。肉がないのに移動するせいか、褥瘡(じょくそう)が方々にできてしまった。中には化膿(かのう)した褥瘡もあり、よく洗って拭いて、抗生物質の軟こう、亜鉛華軟こうなど、いろいろ塗ってみる。人間と違って、犬は毛が生えているので、膿(うみ)を拭き取ったりするのに人間より時間がかかる。3月末に褥瘡は8か所になってしまった。

愛犬ミミちゃんありがとう

食べ物もペット用の介護食。固体、半固体、流動食、いろいろな種類のものが売っている。材料も鶏肉入り、豚肉いり、チーズ入りなどと凝ったものもある。値段もかなり高価だ。

犬は鼻がいい。その日食べたくなる餌の好みの匂いが問題だ。何種類も買ってきて用意し、その日食べてくれるものを口に押し込む。歯は健在でかむ力は最後までかなり強かったので、食べさせながら自分の手の指を何回もかまれてしまった。立てなくなってからは水が飲めないので、水は注射ポンプの太いもので口の中に入れてあげる。

4月。目も真っ白。白内障でほとんど見えなくなってしまった。「ミミちゃん」呼ぶと反応したのに、反応しなくなる。4月末、ほえなくなる。5月2日、とうとうご臨終を迎える。私の腕の中で、満足そうな顔をしながら少しずつ冷たくなっていくミミちゃん。

自然死というものはどういうものか。介護体験をしながら、いろいろ考えさせられた。「ミミちゃんありがとう」。(随筆家、薬剤師)

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