国が進めるスーパーシティ国家戦略特区の指定を目指しているつくば市は3日、高齢化率が高い小田と宝陽台の2地区を対象にスーパーシティ構想の住民説明会を開催した。2地区とも、住民の受け止めは概ね好意的だった。説明会で市は新たに、市独自の「つくばアプリ」を開発し、同アプリを使って、インターネット投票や自家用車に頼らない移動支援サービスなどを展開する計画を明らかにした。
小田と宝陽台地区は、国の指定を受けた場合、AIやビッグデータなど先端技術を活用した事業が展開される市内4地区のうちの2カ所。住民説明会の開催など住民意向の把握は、国の応募要件の一つとなっている。
小田地区の説明会は約30人、宝陽台地区は約50人が参加した。五十嵐立青市長、森祐介政策イノベ―ジョン部長のほか、同構想全体統括者(アーキテクト)の鈴木健嗣筑波大教授らが説明にあたった。
自動運転一人乗り電動車(シニアカー)などを活用した移動支援のほか、自宅で遠隔診療を受け処方薬を移動スーパーで受け取る事業、普段の食事や運動習慣、病院の受診歴などのデータを提供し、その人に合った食材の自動配送を受ける事業、災害時に避難所が開設されたかや現時点の収容人数などが分かる避難所・被災状況の可視化事業などについて説明があった。
小田地区では参加した住民から「周辺部は幹線道路以外、整備されておらず、段差があったり、ぬかるんだり、道路から自宅の玄関まで距離があったりする。一人乗り電動車は安全に走行できる車両か」などの質問が出た。宝陽台では「電動車は一人乗りだが、(介助が必要なため)2人でないと行動できない人がいる。2人乗りにはできないか」「スマホやタブレット端末は貸し出すのか」などの質問や意見が出た。「避難所の場所の周知が不十分」「防災無線が何を言っているのか分からない」など日ごろの市政に対する意見も出た。
一方、スーパーシティに指定されれば、データ連携基盤を通して複数の分野で住民のデータが共有されることから、個人情報保護に関する質問も出された。質問に対し市は「個人情報の保護やプライバシーポリシー、倫理面での配慮も事業者に求めていきたい」などと答えるにとどまった。
国に応募するにあたって市は、個人情報保護やサイバーセキュリティ確保のほか、実証実験やサービス実装のスケジュール、事業を実施する主要な事業者候補、事業の費用や負担する主体、事業を実施した場合の経済的社会的効果などを説明しなければならないが、この日の説明会で、住民への説明はなかった。
市は、スーパーシティ特区に採択されれば、それぞれの地区でどのような事業を展開するか、地区住民による区域会議で詳細を決め、基本計画を策定するので、その際に説明したいとしている。合わせて住民投票や自治会または議会などでの決定など、住民の意向確認も求められる。
「つくばアプリ」今年度に利用開始
新たに開発する「つくばアプリ」については、多分野のデータを共有するデータ連携基盤の開発と合わせて、つくばスマートシティ協議会が開発している。2021年度中に一部利用できるようにする予定で、スマートシティ構想のサービスが利用できるようにするほか、4地区以外の住民も利用できるよう、例えば、子育て世代の場合、保育所の入所手続きを知らせたり、予防接種の接種券をアプリで配信など、その人に合った市の情報を発信する機能を備えるという。
スーパーシティは4月16日までに国に応募する。採択されるのは5自治体程度で、結果は6月ごろ出されるという。現時点で25~30自治体くらいが応募するとみられており、倍率は5~6倍になる。(鈴木宏子)
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