【鈴木宏子】住民投票で白紙撤回となったつくば市の旧総合運動公園用地(同市大穂、高エネ研南側約46ヘクタール)を民間に一括売却するという市の方針を調査検討する市議会調査特別委員会(小久保貴史委員長)が、9月議会開会日の27日開かれた。利活用方針について任期中に結論を出すことができず、改選後に持ち越しとなった。
市議は今年秋に改選となることから、9月議会が任期中の最後の定例会となり、利活用方針の提案が待たれていた。
同日開かれた調査特別委では、小久保委員長から中間報告の提案があった。内容として「新型コロナ感染拡大の影響で議会活動の自粛を余儀なくされ、論点整理後の議論の場を持つことができなかった」とし「改選後も引き続き調査検討を重ねていく」とする案が示され、全会一致で了承された。9月議会最終日の9月18日、本会議で報告される。
一方、委員からは「(前回の市長選で)市長が(元所有者のUR都市機構に)返還するという大きな公約を出して、売却に変わり、(利子も含め)28億円マイナスを出しても売るということになった。今は利活用に流れが変わってきているが、特別委を設置したときは3月までに結論を出そうということになっていた。ずるずるして、4年間何も結論が出ないまま。新しい議員で検討するというが、こういうことをやっていると市民の期待に沿えない」「改選後(の議員)に縛りをかけるのは極めて異例」などの意見が出た。
小久保委員長は取材に対し「委員会として一つの方向にまとめるまでには時間が足りなかった」と説明し、「(市の方針に対し)反対、賛成と両方の立場があった。論点整理をして、それぞれの考え方の共有まではできたが、事業を(提案)する場合の財政面の検討や実現性を含めて、(議会の意見を)まとめるには時間が足りなかった。ただし議員それぞれの考え方は見える化されたと思う」と話した。
市は陸上競技場の検討開始
旧総合運動公園用地をめぐっては昨年3月、五十嵐立青市長が一括売却方針を示し(19年3月20日付)、4月に事業提案を公募した(同4月26日付)。結果、1社から、40億円で用地を購入し、倉庫や大型商業施設、老健施設などとして利用するという提案があった(同8月19日付)。
その後、9月に住民説明会が開かれたが、一括売却に異議を唱える意見が相次ぎ(9月7日付)、市議会に調査特別委員会が設置された(9月27日付)。
特別委では多数の委員から、一部公共利用すべきだとする意見が出された。具体的には陸上競技場、屋内プール、アリーナ、避難所、防災拠点、道の駅、市営墓地、研究所などの提案が出た(同11月7日付)。この間、計4回の委員会と3回の勉強会を開いたが、意見をまとめることができなかった。
一方、市執行部は、調査特別委が設置されたのを受けて、議会の結論を踏まえる方向に転換し、昨年9月以降、売却に向けた手続きをストップさせた。しかし議会の結論が見えない中で、市は7月に陸上競技場整備基本構想策定検討会議を設置し、旧総合運動公園用地も含めて場所や規模の検討を開始している(7月31日付)。