月曜日, 9月 8, 2025
ホームつくばつくば市長、受け入れに難色 日本財団9000床整備計画

つくば市長、受け入れに難色 日本財団9000床整備計画

【鈴木宏子】新型コロナウイルスの感染拡大による医療崩壊を防ぐため、日本財団がつくば市南原、つくば研究所跡地に軽症者向け病床約9000床を7月末までに整備すると発表した問題で、地元の五十嵐立青市長は6日の定例記者会見で、「住民理解が不可欠だが、プロセス構築が極めて困難」だなどとして、受け入れに難色を示した。

五十嵐市長は「すでに医療崩壊が起き始めており7月末では間に合わない。筑波大附属病院は800床、9000床は全国どこにもない規模。移送体制や医療従事者はどう確保されるかなどさまざまな課題をクリアしなくてはならない」などと話した。

課題として①研究所跡地に残っている建物を取り壊すので7月末までという時間が掛かってしまう②施設に他地域の患者や医療従事者を移送することに課題がある③大規模施設は住民理解が不可欠だが、市役所職員は市内の感染拡大防止に集中しており、住民理解を得るためのプロセス構築は極めて困難ーと指摘した。

これに対し日本財団経営企画広報部は「ご理解いただいた上で、つくば市や茨城県と協議しながら進めていきたい」としている。

新型コロナウイルス感染者の軽症者向け施設として県に提供された、ゆかりの森 宿舎あかまつ森のセンター=つくば市遠東

ゆかりの森が軽症者施設に

一方、五十嵐市長は、医療崩壊を防ぐための軽症者などの受け入れ施設として、市の自然体験施設「ゆかりの森」(同市遠東)を県に提供すると表明し、公共施設は風評被害によって倒産する心配が不要なので、全国の自治体が公共施設を提供するというモデルを推進したいと強調した。

「各自治体が50床提供すれば県内だけで2000床以上になる」なるとし、日本財団には公共施設提供モデルを支援してもらえるよう協議したいとした。

軽症者向け病床となるのは、ゆかりの森内の宿泊棟、あかまつ森のセンター(36床)。今回は第1弾でさらに提供施設を増やす予定という。

県内4カ所に160室確保

現在、新型コロナウイルスの感染者は、軽症だったり症状がなくても入院することになっている。一方、感染者が増加すると医療崩壊する危機が指摘されていることから、 軽症者は宿泊施設や自宅など別の施設に移り、病院は重症者に重点を移した治療をすることが求められている。

軽症者について厚労省は2日、宿泊施設の療養環境マニュアルを出した。これを受けて大井川和彦知事は6日、軽症者向けの隔離施設となる宿泊施設を同日までに、県内に4施設160床を確保したと発表した。県の施設やつくば市の施設という。県は4カ所の施設名を公表しなかったが、そのうち1カ所がつくば市のゆかりの森となる。

軽症者向け施設については、県が入所先の施設を割り当てる。大井川知事は「神栖を中心に差し迫った状況のところがあるので、今週中のなるべく早い段階から(施設の運営を)スタートしたい」とした。現在病院に入院している軽症者や無症状者が退院して、軽症者向け施設に移ることも今後あり得るという。

県によると、軽症者向け隔離施設については、国のマニュアルに基づいて公共施設を優先して確保の調整をしていく。施設には、保健師または看護師が日中常駐する。医師は呼ばれればいつでも対応できるようにし、ICTツールも活用して毎日の健康状態を把握できる療養環境を整える。食事の提供や清掃など、施設をどのような形で運営していくかは県と施設設置者の間で今後、個々に協議し調整していく。療養にかかる経費をだれが負担するかについては国がまだ方針を示しておらず現時点で未定という。

➡日本財団のつくば市9000床整備計画の過去記事はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

吉田光男さんの随筆集「おとな日和」《邑から日本を見る》186

【コラム・先﨑千尋】水戸芸術館の設立と運営に尽力した水戸芸術振興財団元副理事長の吉田光男さんが亡くなって3年。このほど吉田さんの随筆集『おとな日和』が発刊され、私は佐川文庫を主宰する佐川千鶴さんを介して手にした。品格のある装丁とタイトルがいい。 吉田さんは私の高校の10年先輩で、水戸市内などで手広くガソリンスタンドやレンタカー・カーリースなどを経営している吉田石油のオーナーだった。粗野な私にとっては別世界の人で、生前にお目にかかることはなかった。元水戸市長の佐川一信さんの懐刀で、水戸芸術館の設立と運営に大きな役割を果たした人、という程度の知識しかなかった。 本書は「おとな日和」「芸術館開館に向けて」「日々雑感」など6章から成る。吉田さんが生前に書き残した随筆などをまとめたもので、軽妙洒脱な文が読む者を魅了する。 「水戸を日本一の文化都市に」 茨城県は今でも魅力度ランキング最下位の常連。水戸も「殿様」と「納豆」しかなく、文化果つるところ。その水戸を日本一の文化都市にしようと意気投合したのが吉田さんと佐川さんだ。ともに学問・芸術好きで、水戸学だの殿様などを評価しないこと、水戸に何かを付け加えなかったら水戸はダメだと焦っていること、などが共通点だったという。その新しい何かが水戸芸術館だった。 水戸芸術館は建築家の磯崎新の設計。遠くからも見える、正四面体を重ねてできた三重螺旋(らせん)の塔。それに、音楽ホール、演劇ホール、美術館の3つのホールが、緑の芝生を囲む形に配置されている。広場では縁日や野外劇などが行われ、暮れにはベートーヴェンの「第九」の演奏が名物になっている。 ホールはそれぞれ専用で、貸しホールにはせず、すべて独自のプログラムが組まれる。容れ物ができればそれでいいというのではなく、佐川市長は芸術館の運営に市の総予算の1%を充て、吉田秀和さんを初代館長にした。小澤征爾、森英恵、小口達夫などの超一流メンバーが集い、それぞれが水戸のために渾身の力を込めて一肌脱いでいる。 水戸芸術館管弦楽団は、世界中に散っている日本人演奏家の精鋭を集めて組織され、コンサートの切符はなかなか手に入らない。「芸術の梁山泊」が水戸芸術館だ。吉田さんは「日本にカジノを作っても、誰もその故に日本を尊敬する人はいない。政治の品性は一国の文化の程を決めてしまう」と書いている。 無類の本好き、骨董好き 本書を読んでわかったことだが、わが国の公害問題研究の第一人者である宇井純は、小学校時代、吉田さんと同級生だった。石岡市八郷地区で百姓暮らしをしている筧次郎さんは水戸の生まれであることは知っていたが、吉田さんの家の近くの人で、筧さんの野菜を食べていたという。 吉田さんは無類の本好きで、いつも本を読んでいた。本書にも古今東西の文献の引用が随所にさりげなく出てくる。水戸にゆかりのある作家の立花隆は「知の巨人」と言われていたが、吉田さんも知の巨人と言っていいのではないか。 また、無類の骨董好きでもある。この秋、水戸市泉町に開館するテツ・アートプラザ内の「クヴェル美術館」で、吉田さんが収集したシルクロードの仏教美術や陶磁器のコレクションが展示されるというので楽しみだ。なお、本書は非売品。水戸市内の図書館などで閲覧できる。(文中一部敬称略) (元瓜連町長)

塚本一也氏が再選 県議補選つくば市区

知事選と同日で行われた県議補選つくば市区(欠員1)は7日投票が行われ、元職でタクシー会社社長の塚本一也氏(60)=自民=が、元職で政党役員の山中たい子氏(74)=共産=を破り、2期目の当選を果たした、当日有権者数は19万9049人、投票率は34.05%。 【県議補選つくば市区】(22時48分確定)39,121 塚本 一也24,293 山中たい子 塚本氏は「つくば市を力強くけん引する県政を」をスローガンに掲げ、県歯科医師連盟、つくば市農協、県建築士会筑波支部の政治団体などの推薦のほか、大井川和彦知事、常井洋治氏、飯塚明夫氏ら自民党県議、国光文乃氏衆議院議員、加藤明良参議院議員らの応援を得て、自民党の票を取りまとめたことが奏功した。 これに対し山中氏は「自民党政治を変えて願いかなういばらきに」をスローガンに、県立高校新設・クラス増、東海第2原発廃炉などを訴えて市内各所で街頭演説。知事候補の田中重博氏のほか、塩川鉄也衆院議員、岩渕友参院議員、水戸市区の江尻加那県議、運輸大臣を歴任した二見伸明元衆院議員らの応援を得たが、及ばなかった。 「皆さんのため郷土のために働く」塚本氏 つくば市花畑の塚本氏の選挙事務所には午後8時過ぎから支持者が集まり開票を待った。 午後10時40分、選対事務局から「当選が決まったようだ」と報告があり、やがて塚本氏が会場に現れると、支持者から大きな拍手が起こり、塚本氏は支持者ら一人ひとりと握手を交わした。 祝勝会には国光あやの衆院議員、上月良祐参院議員、白田信夫県議、星田弘司元県議らが駆けつけ、選挙戦を支えた市議会会派、NEXTつくば(飯岡宏之代表)のメンバーらが顔をそろえた。 祝勝会で塚本氏は「3万9000人もが私の名前を書いてくれたことに責任の重さを感じている。つくばは政治や選挙が難しい中、私を支えていただいて、私を信じていただいてありがとうございます」と支持者に感謝の言葉を述べ、「3年前の忘れ物を取り返しますよと言った。ようやく忘れ物が届いた。これから皆さんのために、郷土のために働きます」と述べ、決意を新たにした。 塚本一也 60 タクシー会社社長 自民 元②【公約】①国や県との連携を重視する中でつくばの成長産業の育成②TX沿線No.1の教育環境の実現③高齢者、障がい者、育児家庭が暮らしやすい社会の構築など【略歴】つくば市出身。県立土浦一高、東北大学工学部建築学科を卒業後、筑波大学大学院環境科学研究科修了。1991年にJR東日本に入社し、2006年に大曽根タクシー社長に就任。18年から県議一期を務めた。現在は同社社長のほか、茨城県ハイヤー・タクシー協会会長などを務める。

開票始まる 県議補選つくば市区

P=開票作業の様子=つくば市流星台、市桜総合体育館

あす投開票 県議補選つくば市区

知事選と同日で行われる県議補選つくば市区(欠員1)は7日投開票される。立候補しているのは、いずれも元職で県議4期を務めた党県常任委員の山中たい子氏(74)=共産=と、県議一期を務めたタクシー会社社長の塚本一也氏(60)=自民=。元職同士の一騎打ちになっている。投票は同日午前7時から午後7時まで市内76カ所で投票が行われ、同夜午後8時20分から同市流星台の市桜総合体育館で即日開票される。有権者数は20万17000人(8月28日時点)、5日までの期日前投票の投票率は8.84%だった。 上ノ室で最後の訴え 山中氏 山中氏は「自民党政治を変えて願いかなういばらきに」をスローガンに、県立高校新設・クラス増、東海第2原発廃炉などを訴えてきた。塩川鉄也衆院議員、岩渕友参院議員、水戸市区の江尻加那県議、運輸大臣を歴任した二見伸明元衆院議員らが応援に駆け付けた。市内をくまなく回り、連日15~16カ所で街頭演説を重ねた。6日は北条郵便局を出発し、大穂、吾妻、竹園、並木、手代木の各所で街頭演説、同市上ノ室の選挙事務所前で最後の訴えをする。 山中たい子 74 政党役員 共産 元④【公約】①国保税、介護保険料、後期高齢者医療保険料の引き下げ②児童生徒数増に見合う県立高校新設とクラス増設を進める③危険な東海第2原発の再稼働をストップし廃炉に【略歴】福島県小野町出身、日本大学Ⅱ部法学部新聞学科卒。千葉県商工団体連絡会に勤務。つくば市に転居後、1984年から旧桜村議・つくば市議を4期を務め、2003年から県議を4期。前回2022年12月の県議選は次点。現在、共産党県常任委員など歴任 大曽根で最後の訴え 塚本氏 塚本氏は「つくば市を力強くけん引する県政を」をスローガンに掲げる。県歯科医師連盟、つくば市農協、県建築士会筑波支部の政治団体などの推薦、大井川和彦知事候補者、常井洋治氏、飯塚秋男氏ら自民党県議、国光文乃氏衆議院議員、加藤明良参議院議員らの応援を得て、連日、市内各所で街頭演説とあいさつを重ねてきた。6日は午後6時から、同市大曽根のガゾリンスタンド・エネオス大穂サービスステーション堀井商店で最後の訴えをする。 塚本一也 60 タクシー会社社長 自民 元①【公約】①国や県との連携を重視する中でつくばの成長産業の育成②TX沿線No.1の教育環境の実現③高齢者、障がい者、育児家庭が暮らしやすい社会の構築など【略歴】つくば市出身。県立土浦一高、東北大学工学部建築学科を卒業後、筑波大学大学院環境科学研究科修了。1991年にJR東日本に入社し、2006年に大曽根タクシー社長に就任。18年から県議一期を務めた。現在は同社社長のほか、茨城県ハイヤー・タクシー協会会長などを務める。 (柴田大輔、鈴木宏子)