木曜日, 6月 12, 2025
ホームつくば【どう考える?免許返納】1 返納した私 つくば市内で引っ越し 不便さ実感しつつ安堵

【どう考える?免許返納】1 返納した私 つくば市内で引っ越し 不便さ実感しつつ安堵

【橋立多美】NEWSつくば記者の私は2017年12月、68歳で車を手放した。記者にとって取材は原稿書きの根幹で、車は取材と生活に欠かせぬ大切な足だが、60代の半ばから運転中にヒヤッとすることが多くなった。

ある日、スーパーに入ろうと走行する道路を左折して駐車場に乗り入れようとした時、左手から来ていた自転車を見落とし衝突寸前で急ブレーキを踏んだ。幸い自転車に乗っていた女子中学生にけがはなかった。

運転に必要な判断力と反射神経の衰えを自覚するようになったことで自主返納を考え始めた。返納したら仕事と日々の生活に影響が出るが、受け入れるという覚悟もできた。少しでも暮らしをカバーできるよう路線バスの停留所に近いつくば市内の住宅地に引っ越し、仕事も区切りをつけようと思った。

計画通りに引っ越しを終えて車を手放したが、やり残した仕事にケリをつけて退くつもりが未練がましく今も取材を続けている。移動手段はバスと自らの足だ。

そもそも私は車の運転が好きでも、得意でもなかった。ではなぜ運転したかと問われれば、2人の子どもとの生活の糧を稼ぐために必要だったからだ。大黒柱の私が交通事故を起こしたら、金銭的に窮地に追い込まれるという思いをずっと抱いていた。

子ども2人は独立し、私なりに親の役目は果たした。公共交通網が十分でない地方では自主返納になかなか踏み切れないが、すんなり返納できたのは、安全運転への重責から解放されたいという意識が働いたと今になって思う。

月3万円が5000円に

車を手放して良かったと思う事が2つある。1つは歩行スピードが速まったこと。ハンドルを握らなくなった直後、街中で私より年上の女性に先を越されてショックを受けた。それからは歩行姿勢に注意して歩く距離を伸ばすことを心掛けている。私の場合、車に乗り続けていたら歩行機能の衰えはもっと進んでいた可能性が高い。

もう1つが車の維持費がかからなくなったことだ。車に乗っていた頃は車検費用や保険、税金、駐車場代、ガソリン代などで年間約36万円。月割りすると約3万円かかっていた。

今は行き先によって路線バスか市のコミュニティバス「つくバス」を利用。つくバスは高齢者運賃割引証の提示で運賃が半額になる制度を活用している。交通系ICカードに月5000円チャージすれば事足りている。

良いことばかりではない。公共交通が市内全域を網羅できるはずもなく、おのずと行動範囲が狭くなった上に取材に時間がかかる。「老い」に伴う不便さを実感しつつ、交通事故の加害者にはならないことに安堵(あんど)しながら毎日を送っている。

◇   ◇   ◇

NEWSつくば編集部は8月「あなたはどう考える? 高齢ドライバーの免許返納」と題して、シニアの運転免許証の自主返納についてツイッターなどで読者の皆さんの意見を募集しました=8月9日付

自主返納については世論が分れるところですが、当事者や老親の運転に不安を持つ娘や息子などの思いを我が身に引き寄せて考えてみよう―という企画です。

ツイッターで募集した免許返納に対する意識の集計と、加齢に伴う身体機能の変化を自覚して免許を返納した人、返納することによるリスク、暴走事故を未然に防ぐための装置の研究など、つくば・土浦エリアの高齢ドライバーを取り巻く状況をシリーズで報告します。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

集中豪雨に台風並み強風加え 極端気象を再現 つくば防災科研

自然の降雨状態を再現する装置としては世界最大級という防災科学技術研究所(つくば市天王台、宝馨理事長)の大型降雨実験施設に、毎秒20メートルを上回る強風を人工的に発生させる機能が新たに追加され、台風レベルの暴風雨環境を体感できる実験が11日に報道陣に公開された。 大型降雨実験施設は、豪雨を原因とする自然災害の防止・軽減を目的に、1974年から運用している防災科研ご自慢の施設。局地的に大雨をもたらすゲリラ豪雨に対する社会的な関心の高まりに応じ、2013年度には降雨強度を1時間に300ミリまで再現できるように機能強化を図った。 バケツをひっくり返したような雨、叩きつけるような雨を再現して、わが国では他に類例のない実験施設となったが、線状降水帯など極端な気象現象がみられるようになった近年、「風」を加えた暴風雨環境の再現が求められていた。 今回大型降雨実験施設内に設置されたのは、最大風速毎秒20メートルを上回る強風を人工的に発生させる装置。大型送風機を4機内蔵し、幅3メートル、高さ3メートルの吹き出し口に集中させ、秒速1〜25メートルの風速で稼働する。さらに降雨装置を同時に稼働させることで、台風レベルの暴風雨環境の再現を可能にした。 11日の公開実験では、今までに日本で記録された10分間雨量の最大値相当である50ミリ(1時間当たり300ミリ相当)の雨と同時に、毎秒25メートルの風を吹かせた状況を再現した。横殴りの雨、強風装置の吹き出し口には容易に近づけない極端気象の環境となった。 防災科研の酒井直樹大型降雨実験施設研究推進室長は「線状降水帯の場合、積乱雲が急速に発達することで雨も大粒になり強くなる、さらにダウンバーストという風も起きるので、一緒の環境を再現してみないと防災研究の観点からは不十分といえる」という。 大型降雨実験施設ではこれまで、大型模型斜面を用いた土砂災害軽減研究、土砂浸食に関する研究、「耐水害住宅」の実物大建物浸水実験の研究など、基礎から応用まで幅広い研究が進められている。施設は5つの実験区画と移動降雨装置などから成り、散水面積は44×72メートルの広さ、天井部に総数2176個の降雨ノズルがあり、粒径0.1から6ミリで調整した雨滴を16メートルの高さから落下させている。 防災科研によれば、この機能強化により今後、民間企業等と協働して従来の豪雨災害のための実験に加え、暴風雨環境下でも稼働が可能なドローンや自律走行が可能な車の実現などに寄与することが期待されるとしている。(相澤冬樹)

左足の骨折から4カ月《ハチドリ暮らし》50

【コラム・山口京子】左足の骨折から4カ月が経ちました。治ってきたものの、体力、気力、筋肉の低下に驚いています。歩ける距離が短くなりました。歩き方はゆっくりというか、オタオタというか。以前は重たいと感じなかった掛け布団が重く感じられます。疲れやすくもなりました。これらはフレイル(虚弱)の症状ではないかと不安になっています。 だんだんと老いるのか、病気やケガをきっかけに急に老いが進むのか。年をとるほど健康状態の個人差が開くのが分かります。普段の暮らしを持続させるため、意識的に体のことを考えないといけないと…。体力や筋肉を取り戻すには、まずは歩くこと、食事をしっかりとることでしょうか。 昨年は65歳以上の高齢者が3625万人になったそうです。要介護認定を受けた人が約700万人。長生きすればするほど、介護が必要になる人が増えます。その原因は、認知症、脳血管疾患、骨折・転倒、高齢衰弱、関節疾患などです。 一番多い認知症ですが、昨年、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、新しい認知症観が提起されました。「認知症になっても、一人ひとりが個人としてできることややりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間などとつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることができる」ことを掲げています。 そして7つの基本理念のもとに、認知症本人の意思を尊重することを地域や家族に求めています。認知症と診断されても症状は多様ですし、軽度から重度まで幅広く、一人ひとりに寄り添った対応が大事になるでしょう。 親や連れ合いの認知機能が衰えた場合、間違ったことを言ったとしても否定しない、急かさない、話を合わせ、できるだけ落ち着いてもらう。そして、できることは続けてもらう。それが本人も家族も穏やかに暮らせるヒントかなと…。 平均寿命、平均余命、死亡ピーク 自分は何歳まで生きるのかしら?と思ったとき、厚生労働省が出している2023年簡易生命表の概況を見ました。 平均寿命(ゼロ歳の赤ちゃんがこれから生きるであろう寿命)は男性が81歳、女性が87歳です。平均余命は、例えば70歳の人なら、男性はあと15年、女性はあと19年生きるそうだと。80歳であれば、男性はあと8年、女性はあと11年生きるそうです。死亡ピーク年齢は男性が88歳、女性が92歳となっています。 まだまだ山あり谷ありのことでしょう。大事なのはこれからの人生をどうしていくかという心構えでしょうか。(消費生活アドバイザー)

茨城町の「秋葉犬」《続・平熱日記》181

【コラム・斉藤裕之】久しぶりに愛犬パクの育った茨城町の古道具屋を、野暮用で山口から来ていた弟と訪ねてみることにした。実はここの御主人は一昨年、はるばる山口までトラックでやって来たことがある。以前何度か、この欄にも登場した粭島(すくもじま)の古屋に不要な家具があるという話をしたところ、ちょうど広島に引き取るものがあるから山口まで行くというのだ。その時に弟が現地で世話をしたこともあって、弟とはそれ以来、緩くつながっている仲。 しかし残念なことに、弟はよんどころない用事が出来て急きょ山口に帰ることになって、仕方なく私ひとりで訪ねることとなった。 車の荷台には不要な椅子を三脚と古い電灯を積んだ。捨てるには忍びないオンボロだけど、お店に置いていただければどなたかが引き取ってくれるだろう。看板もないお店は木々に囲まれたお社の様な雰囲気の場所にある。無造作に青く塗られた扉を開けると、犬たちがほえ始めた。 ここの御主人は仕事の傍ら保護犬のお世話もしていて、パクもここで私と出会った。私はご主人に山口のワサビ漬けを渡し、弟が来られなくなった旨を伝えるとご主人は残念がっていた。それから、犬たちとも会ってくれというので店の奥に行くと、そこにはパクと一緒に暮らしていた3頭と、新入りの犬が1頭いた。 「そういえばテレビで野良犬のニュースをやっていて、偶然にもこの茨城町と私の故郷である周南市の野良犬問題がいつも出るんですよね…」と私。「茨城町に秋葉というところがあって、そこに野良犬の群れがいるんですよ。この新入りもそこの野良犬で…」とご主人。「ところが、その犬たちが性格もよくてほえないし、人気が出ちゃって、秋葉にいるから『秋葉犬』というように呼ばれ始めて、今やちょっとしたブランドになっているんです…」 うちのパクは高貴な犬? 犬を飼っていると言うと、「何犬?」と聞かれる。「種類なんかないよ。犬だよ犬!」と言うと「雑種?」と聞かれるから、意地になって「だから犬だって」と答えてしまう。そもそも、生物学的には全ての犬は同じ種というではないか。普段、野良犬の姿を見かけることはなくなった。それはいいことだと思う。ただペットショップで犬を買うというのもなんかちょっと…。 先日、奈良県桜井市で卑弥呼と暮らしていた?という犬の復元模型が公開された。骨が出土した遺跡の名を取って「纏向(まきむく)犬」と言うそうだ。その纏向犬、色こそ違え、大きさ、形は我が家のパクにそっくりではないか(友人のマヨねえさんはパクのことを気品があるだの高貴な気がするだのと言っていた)。「まあ何犬だろうといいんだけどね」。パクはそう言いたげに今日も犬らしく我が家の一風景となっている。(画家)

免許失効したまま公用車など運転 つくば市職員 今度は7カ月間

つくば市は9日、市教育局の職員が昨年10月末から約7カ月間にわたって、自分の運転免許証が失効したまま、公用車や自家用車を運転していたことが分かったと発表した。 今月6日、本人が自分の運転免許証を確認し、昨年10月26日で失効していることに気付き、所属長に報告したという。 職員は今後、免許センターで早急に運転免許証の更新手続きを行うとしている。再発防止策として市は全職員に対し、運転免許証の有効期限の確認を徹底するよう通知し再発防止に努めるとしている。 同市では今年1月にも別の市職員が、運転免許証を失効した状態で約1カ月間、自家用車を運転していたことが発覚した。その際市は、全職員に対し運転免許証の有効期限を確認するよう注意喚起し再発防止に努めるとしていた(1月24日付)。