金曜日, 4月 19, 2024
ホームつくば【どう考える?免許返納】1 返納した私 つくば市内で引っ越し 不便さ実感しつつ安堵

【どう考える?免許返納】1 返納した私 つくば市内で引っ越し 不便さ実感しつつ安堵

【橋立多美】NEWSつくば記者の私は2017年12月、68歳で車を手放した。記者にとって取材は原稿書きの根幹で、車は取材と生活に欠かせぬ大切な足だが、60代の半ばから運転中にヒヤッとすることが多くなった。

ある日、スーパーに入ろうと走行する道路を左折して駐車場に乗り入れようとした時、左手から来ていた自転車を見落とし衝突寸前で急ブレーキを踏んだ。幸い自転車に乗っていた女子中学生にけがはなかった。

運転に必要な判断力と反射神経の衰えを自覚するようになったことで自主返納を考え始めた。返納したら仕事と日々の生活に影響が出るが、受け入れるという覚悟もできた。少しでも暮らしをカバーできるよう路線バスの停留所に近いつくば市内の住宅地に引っ越し、仕事も区切りをつけようと思った。

計画通りに引っ越しを終えて車を手放したが、やり残した仕事にケリをつけて退くつもりが未練がましく今も取材を続けている。移動手段はバスと自らの足だ。

そもそも私は車の運転が好きでも、得意でもなかった。ではなぜ運転したかと問われれば、2人の子どもとの生活の糧を稼ぐために必要だったからだ。大黒柱の私が交通事故を起こしたら、金銭的に窮地に追い込まれるという思いをずっと抱いていた。

子ども2人は独立し、私なりに親の役目は果たした。公共交通網が十分でない地方では自主返納になかなか踏み切れないが、すんなり返納できたのは、安全運転への重責から解放されたいという意識が働いたと今になって思う。

月3万円が5000円に

車を手放して良かったと思う事が2つある。1つは歩行スピードが速まったこと。ハンドルを握らなくなった直後、街中で私より年上の女性に先を越されてショックを受けた。それからは歩行姿勢に注意して歩く距離を伸ばすことを心掛けている。私の場合、車に乗り続けていたら歩行機能の衰えはもっと進んでいた可能性が高い。

もう1つが車の維持費がかからなくなったことだ。車に乗っていた頃は車検費用や保険、税金、駐車場代、ガソリン代などで年間約36万円。月割りすると約3万円かかっていた。

今は行き先によって路線バスか市のコミュニティバス「つくバス」を利用。つくバスは高齢者運賃割引証の提示で運賃が半額になる制度を活用している。交通系ICカードに月5000円チャージすれば事足りている。

良いことばかりではない。公共交通が市内全域を網羅できるはずもなく、おのずと行動範囲が狭くなった上に取材に時間がかかる。「老い」に伴う不便さを実感しつつ、交通事故の加害者にはならないことに安堵(あんど)しながら毎日を送っている。

◇   ◇   ◇

NEWSつくば編集部は8月「あなたはどう考える? 高齢ドライバーの免許返納」と題して、シニアの運転免許証の自主返納についてツイッターなどで読者の皆さんの意見を募集しました=8月9日付

自主返納については世論が分れるところですが、当事者や老親の運転に不安を持つ娘や息子などの思いを我が身に引き寄せて考えてみよう―という企画です。

ツイッターで募集した免許返納に対する意識の集計と、加齢に伴う身体機能の変化を自覚して免許を返納した人、返納することによるリスク、暴走事故を未然に防ぐための装置の研究など、つくば・土浦エリアの高齢ドライバーを取り巻く状況をシリーズで報告します。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

注目の記事

最近のコメント

最新記事

レインボーの中で、虐殺に抵抗する 《電動車いすから見た景色》53

【コラム・川端舞】毎年4月後半に開催される国内最大級のLGBTQ(性的少数者)関連イベント「東京レインボープライド」。今年も19日から3日間、予定されている。 例年、イベントにはイスラエル大使館がブースを出展していた。イスラエル政府はLGBTQフレンドリーであると世界にアピールすることで、パレスチナへの占領という負のイメージを覆い隠そうとしていると批判されてきた。「東京レインボープライド」もイスラエルのイメージ戦略に利用されているのではないかと、当事者団体などが指摘している。 今年のイベントも、パレスチナで虐殺を続けているイスラエルに製品・サービスを提供しているとして、世界中で不買運動が呼びかけられている企業が協賛しているため、イベントに参加するべきかどうか、当事者団体のなかでも激しく議論されている。 一方、毎年イベントに参加することを生きる目標にしている人もいるだろう。今の社会は、出生時に割り当てられた性別と、自認する性が一致し、異性愛である人を前提につくられ、そこから外れた人はいないことにされている。自分の性別に違和感を持ったり、同性に恋愛感情をもつことが周囲に知られた瞬間、偏見にさらされる危険性もある。 そのような社会でかろうじて生き延びるために、本当の自分を隠しながら毎日を過ごしているLGBTQ当事者がたくさんいるはずだ。過酷な状況を生きる当事者が「年に一度、本当の自分を認めてくれる仲間に会える」「東京なら、地元の知人に出くわす心配もなく、堂々といられる」などの思いで、「東京レインボープライド」に参加することを誰が責められるだろうか。 イスラエルがパレスチナでの虐殺を覆い隠すために、LGBTQを利用するのは決して許せないが、イベントでLGBTQの人権を祝うのが悪いわけではない。 LGBTQはパレスチナにもいる ……と偉そうなことを言っておきながら、私も今回のイベントに参加する予定だ。普段からLGBTQの社会問題に関心を持っているが、それを気軽に話せる場はあまりない。そんな私を気にかけてくれた高校時代の友人が、「一緒に行こう」と誘ってくれた。 しかし、イスラエルの虐殺に加担したくない。友人に相談し、イベント最終日のパレードにパレスチナの旗を持ちながら参加することにした。そもそも、LGBTQはイスラエルの専売特許ではないし、LGBTQ当事者は日本にもイスラエルにも、当然、パレスチナにもいる。LGBTQの人権と、パレスチナへの連帯を天秤にかけるべきではない。 きれいごとかもしれないが、LGBTQとパレスチナ、双方に連帯するために私は友人と一緒に歩く。(障害当事者)

元広告デザイナーとJリーガー 農業への思いつなげ地域の輪広げる つくば

20日 研究学園駅前公園で「ワニナルフェス」 広告デザイナーから転身しつくば市で新規就農した青木真矢さん(44)と、元Jリーガーの近藤直也さん(40)が、「農業×〇〇」で地域を盛り上げようと、地元農家の直売店を中心にキッチンカーなどが出店する体験型マルシェ「ワニナルフェス」を開催し地域の輪を広げている。20日、つくば市学園南、研究学園駅前公園で8回目の同フェスを開催し。およそ40店が出店する。 若者の活躍の場を提供したい 主催するのは農業を中心に地域活性化を目指す合同会社「ワニナルプロジェクト」(代表青木さん、近藤さん)。地域のコミュニティーをつくろうと2021年に立ち上げた。 青木さん(44)が広告デザイナーだった経験を生かし、農家に取材して発信していたところ、SNSで農業に関心のある地元大学生などとつながり、取材班を結成。昨年1月、市のアイラブつくばまちづくり補助事業で活動補助を受け、クラウドファンディングでも支援金を集めて、つくばの農業の魅力を発信する季刊誌「ワニナルペーパー」を創刊した。市内を中心に1万部を約200カ所で無料配布している。セカンドキャリア、セカンドライフで異業種から新規就農した人のインタビューを掲載し、農業に参入したいと考える人の情報誌としての役割も果たしている。 取材する中で、こだわりを持って栽培する農家の思いを知り、消費者が直接、生産者の顔を見て農作物や加工品を購入できるイベントを企画。農業を核としてスポーツや音楽など地域の若い人たちがクリエイティブに活躍する場にもなればと、昨年5月「ワニナルフェス」を始めた。月1回のペースで開催し、前回はおよそ500人が来場した。 異業種の2人がタッグ 代表の青木さんは京都府出身。現在つくば市上郷でブルーベリーの観光農園「アオニサイファーム」と併設のカフェを運営する。同じく代表の近藤さんは、元Jリーガーで「DOサッカークラブ」(土浦市荒川沖)などを運営する。アスリートのセカンドキャリアとして農業分野の活動を模索している。 異業種から農業に関わろうとする2人がタッグを組んだプロジェクトは「農業×クリエイティブ」、「農業×アスリート」の掛け合わせで新しい価値を産み出し、地域の輪を着実に広げ始めている。 青木さんは「こだわりあふれる地元農家の季節の新鮮野菜を中心に、キッチンカーや飲食店、雑貨、ワークショップ、スポーツ体験など、週末を満喫できるわくわくを集めた。つくばの多彩な魅力を感じることができる、まさに『輪になる(ワニナル)フェス』。ご来場をお待ちしてます」と話す。 20日は、筑波大の理系学生2人が作る「阿吽(あうん)の焼き芋」や、ワイン用ふどうを栽培する「つくばヴィンヤード」、米と日本酒を作る「四喜佳通販」など、農家の店10店が参加する。「乗馬クラブクレイン茨城」によるポニーのお世話体験や、ボクシングジム「アイディアル スペース(ideal space)」によるキックボクシングとミット打ち体験、絵本の読み聞かせなど、体験やワークショップのブースが充実し家族連れで楽しめる。(田中めぐみ) ◆「ワニナルフェスvol.7」は、4月20日(土)午前10時~午後4時、TX研究学園駅近くのつくば市学園南2-1、研究学園駅前公園で開催。入場無料。雨天決行、荒天中止。駐車場は周辺の有料駐車場利用を。問い合わせは電話029-811-6275(ワニナルプロジェクト、受付時間/平日午前10時~午後6時)へ。

伝説の「木辺鏡」用い天体望遠鏡組み立て 土浦三高科学部生徒

天文学習活動が盛んな県立土浦三高(土浦市大岩田、渡邊聡校長)科学部の生徒が、「木辺鏡」と呼ばれる伝説的な反射鏡を用い、口径206ミリの本格的な天体望遠鏡を組み立てた。16日に校内向けに披露され、5月には一般公開での天体観望会を予定している。木辺鏡は、「レンズ和尚」と呼ばれ戦後日本の天文学発展の基礎を支えた木辺成麿(きべ・しげまろ、1912-1990)が作成したレンズ。3年生の元木富太さん(17)が組み立てた。科学部顧問の岡村典夫教諭(62)に誘われ、2年次の探究学習で約1年をかけ望遠鏡作りに取り組んだ。反射望遠鏡は、天体からの光を受け取る主鏡と、反射した光を屈折させて観測者に送る斜鏡という一対の光学レンズからなる。2鏡の距離が適切となるよう、鏡筒と支持枠によって再構成し、木枠で台座につなぎとめる作業を行った。 前任の教諭が所蔵 反射望遠鏡の性能は、主鏡(対物鏡)で決まる。木辺鏡はガラスを凹面に磨き、アルミメッキして鏡面仕上げを施したものだ。浄土真宗の僧侶だった木辺は、京都大学花山天文台の中村要技官に学び光学技術者となった。戦後、レンズ磨きの名人として知られるようになり、同天文台のために口径600ミリの反射望遠鏡を作るなどした。1960年代、主に西日本各地の天文台などに採用されたが、関東地方での採用例は少なく、半世紀を経て、天文ファンの間では伝説的な科学遺産になっていた。この主鏡・斜鏡のセットを個人で所蔵していたのが岡村教諭の前任の地学教諭である宮沢利春さん(75)で、退任後に活用を岡村教諭に託した。経年変化から反射鏡のメッキが劣化するなどしていたが、岡村教諭が再構築を生徒に呼び掛けたところ、元木さんが応じた。同校科学部は望遠鏡を自作する天体観測などで知られ、その活動は直木賞作家、辻村深月著「この夏の星を見る」(2023年、角川書店)のモデルにもなった。岡村教諭によれば口径203ミリなら市販望遠鏡の鏡筒が使えたが206ミリの主鏡はこれに収まらない。天体観測ではこの3ミリ差は大きく、アルミ製の円筒3つを三角形の支柱でつなぎ合わせるトラス構造の設計を提案、元木さんが2鏡間の距離や構造の計算を行い、科学部メンバーの協力を得ながら工作に取り組んだ。主鏡を裏面で3方向から支える支持枠の固定に苦心し、留め具のねじ1本から手作りした。 土星の環もはっきり 概ね完成した反射望遠鏡は長さ1.3メートル、重さ11.5キロ、これを市販の三脚に取り付けて天体を追尾し観測する。校内での完成披露は16日に行われ、日没時の観測では天頂部にあった上弦の月を雲間にとらえた。関係した科学部メンバーや教師らが接眼部をのぞき込み「クレーターまできれいに見える」など歓声をあげた。元木さんは「今回は月を見ただけだが、この口径があれば惑星までとらえられる。土星の環もはっきり見えるはず」と上々の出来に胸を張った。今後、資金的なめどがたてば主鏡の再メッキを行いたい考えで、一般の観望会は5月17日に予定される。(相澤冬樹)

デイズタウンの「季彩 かがり」《ご飯は世界を救う》61

【コラム・川浪せつ子】コロナの終わりが視野に入ってきたといわれますが、つくば市内の飲食店に様変わりがありました。私の大好きだった居酒屋が閉店。悲しい。和食を食べるのにどこに行ったらいいのだろう…。そんなとき見つけたのが、TXつくば駅近く「デイズタウン」地下1階の「季彩 かがり」さん(竹園1丁目)。 デイズタウンは、この中にあったスーパーがなくなってから、足が遠のいていましたが、地下へ階段を降りてみて見つけました。かなり以前からあったのね。和風宴会だけかと思っていたら、ランチがすごい。おいしくて低価格。これでいいのか、こちらが心配になるほど。 今回はお刺身セットを注文しましたが、日替わり定食もあります。千円出しておつりがたくさんきます。 中でもお気に入りは「コロッケ定食」。絵にはしにくい、何でもないジャガイモコロッケなのだけど、おいしい。鶏のから揚げの上には大根おろし。体に優しい「とり雑炊」。私の好きな「親子丼」。グルメレポートはしないのですが、言いたくなってしまう。隠れ家的なランチ場所ですね。 夢が広がる空間 本屋さんも また、デイズタウンには、スーパーがあった所に書店が入りました。ララガーデンが1年ほど前に閉店し、そこに入っていた本屋さん。 ネットで何でも買える時代になりましたが、やはり書籍は手に取ってセレクトしたい。そして、本屋さんでは思いがけない、ステキな出合い本もあるのです。人生の方向性を示してくれる本があることも…。 この本屋さんでは雑貨なども販売。友人などへの、ちょっとしたプレゼントにも活躍しています。今、日本中の本屋さんが閉店の危機と聞きますが、これからは夢の広がる空間、物・体験を提案していってくれる場所になったらなぁ、と思います。(イラストレーター)