大規模地震で走行中の列車が被災した事態を想定し、つくばみらい市筒戸にあるつくばエクスプレス(TX)総合基地で16日、2026年度異常時総合訓練が開かれた。実施したのは、TXを運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区)。開業翌年の2007年から始まり、今年で19回目。乗客の避難誘導や負傷者の救護、連絡・通報体制などを、地元の消防、警察と連携して確認した。今年は新たな取り組みとして、近年、列車内でも発生が相次ぐモバイルバッテリーの発火を想定した訓練も実施された。
訓練は、守谷―みらい平駅間の高架上を走行中の列車が緊急地震速報を受信して停止。直後に発生した震度6強の地震で車両の一部が脱線、架線や線路も損傷し、乗客11人が負傷したとの想定で行われた。地震の揺れで乗客が落としたモバイルバッテリーが発火した想定も加え、車内での初期消火などを訓練した。TX職員のほか、常総市水海道地区、守谷市、つくばみらい市の3市を管轄する常総広域消防本部、県警常総、取手両警察署などから約200人が参加した。

乗客が初期消火、障害者や外国人の避難誘導も
午後1時20分、緊急地震速報を知らせるサイレンで訓練が始まった。緊急停車した列車内で、乗務員が乗客や車両・設備の状況を確認。その最中に乗客のモバイルバッテリーが発火し、居合わせた乗客が初期消火に当たった。
消火を確認した後、先頭車両正面の非常用扉と次号車から非常用はしごを使って避難誘導を開始。乗務員と駆け付けた駅係員らの先導で、まず視覚障害者、聴覚障害者、軽症者の役を務める参加者らが、乗務員やほかの乗客の手を借りながら降車した。外国人乗客役には、あらかじめ登録したメッセージを多言語に翻訳して発信できる「多言語メガホン」を使って避難を呼びかけた。

続いて、5号車に残る重症者役の2人を担架で搬送し、はしご車を使って高架下へ移送した。車内に残った鎮火後のモバイルバッテリーは、到着した消防隊員が、隣接する守谷駅から持参した耐火バッグに収納して車外へ搬出した。
このほか、油圧ジャッキを使って脱線車両を線路に戻す作業や、破断したレールの修復なども行われた。

「乗客と一緒に考えていかなければ」
訓練後、首都圏新都市鉄道の渡辺良社長は、実際の災害では複数の事象が重なり、状況が複雑化する可能性があると指摘した。現場での状況把握や情報共有、迅速な対応を訓練を通じて磨くとともに、消防や警察との連携を深め、限られた作業スペースで負傷者を安全に搬送するなど、実践的な対応力を高めていく考えを示した。
また、モバイルバッテリーの発火については、乗務員がすぐに対応できない車内で火災が起きた場合、周囲の乗客の協力も重要になるとし、車内の通話装置を使って乗務員に連絡することが基本となる一方、乗客にどこまで協力を求められるかは難しい課題だとした。その上で、「電車は、閉鎖された空間の中で高速移動しているという特殊性がある。その中での心構えといったことを、お客様と一緒に我々も考えていかなければならない」と述べた。鉄道各社や国とも連携し、乗客と協力して対応する方法を検討する必要性を強調。外国人や障害のある乗客への対応も含め、緊急時に備えた取り組みを進める考えを示した。

同社の安部雅俊鉄道事業本部長は、モバイルバッテリーの発火が近年増加していることに触れ、「どんな事象が起きても、今日の訓練を生かして冷静沈着に判断し、迅速かつ的確に対応していきたい」と語った。
つくばみらい消防署の森田誠署長は、今回の訓練について、「列車の脱線に伴う火災と負傷者の発生を組み合わせた複合的な想定だった」と説明。「実際の災害では複数の事象が同時、あるいは連続して発生する可能性があり、乗客の避難誘導や救出・救護、初期消火、情報収集など、多岐にわたる対応が求められる」と述べた。その上で、「乗客の安全を最優先に現場の状況を把握し、関係機関が情報を共有しながら活動することが重要。今回の訓練では、TX職員や消防、警察など各機関が役割分担や情報伝達の方法を確認できた。今回確認した事項を今後の訓練や対応計画に反映し、より実効性のある体制づくりにつなげる必要がある」と語った。(柴田大輔)





