【コラム・坂本栄】先の衆院選で各党が掲げた消費税の公約には強い違和感を覚えました。その範囲と程度に濃淡はあったものの、一様に消費税の縮小や廃止を訴えていたからです。減税や廃税を歓迎することはあっても反対する国民は少ないでしょう。選挙での消費税改廃合戦は、国民大衆に迎合して票の取り込みを図るポピュリズムの極みです。
消費税減税と廃税を競う
各政党が目玉公約に設定した消費税政策は以下のようなものでした。飲食品に限り2年間ゼロ(自民、維新)、同ずっとゼロ(中道改革)、全商品5%にカット(国民民主)、同5%にカット+いずれゼロ(共産)、消費税全廃(れいわ、参政、減税日本、日本保守、社民)、消費税でなく社会保険料をカット(チームみらい)。
飲食品限定か全商品が対象か、期間限定か恒久的か、一部廃止か全部廃止か、消費税でなく社会保険料を下げるか―各政党の政権への距離によって差はありますが、生活に身近な消費税をいじくり回し、票をかき集めたいという思惑が見え見えでした。
来年度予算122兆円の4分の1を国債発行(借金)で賄うというのが日本財政の現状です。この構造を直視せず、各党は減税あるいは廃税を競い、有権者に選択を迫りました。政府の借金がすでに巨額に上っていることを考えると、国民も随分バカに(愚民視)されたものです。
いま必要なのは「増税党」
消費税公約を読んでいて、元財務省次官だった矢野康治・神奈川大学教授の講演(2025年秋、ホテル日航つくば)を思い出しました。21年10月発行の月刊「文藝春秋」に「財務次官、モノ申す 『このままでは国家財政は破綻する』」とのタイトルで寄稿、大きな話題になった方です。講演では財政赤字拡大を憂慮、借金財政が経済を活性化、それが税収増につながるといった考え方には強い疑問を呈していました。
講演のあと、「講演行脚だけでなく、『増税党』を立ち上げ、財政再建を国民に直接訴えたらどうか」と、新党立ち上げを促してみました。笑ってかわされましたが、今思うと、「増税党」議員数は財政ポピュリズムへの「懸念指数」になるのではないでしょうか。
外国人奪い合いが現出する?
排外主義を目玉にする参政党にあおられたのか、外国人政策でもポピュリズムが蔓延(まんえん)、永住者と日本国籍取得の審査を適正化(自民)、外国人比率の上限設定を検討(維新)、観光公害対策として外国人の入国に徴税(国民民主)、低賃金労働力導入が目的の移民政策に反対(れいわ)、外国人の受け入れ総量と運用を厳格化(参政)―といった公約が並びました。
外国人規制が「受ける」のは、言葉や習慣が違う人たちは嫌いだ、自分たちの仕事が奪われる―といった気分や心配があるからでしょう。しかし、人口が減っていく日本の経済や社会は、外国人に手伝ってもらわないと成り立ちません。外国人問題は、ヒューマニズム(人道)やダイバーシティ(多様性)の問題だけでなく、プラグマティック(実利的)な問題でもあるのです。
懇意にしている高齢者施設の経営者が「施設を造っても、それに必要な介護職員を集められず、部屋が埋まらない。近い将来、人口が減っていく先進諸国の間で外国人労働力の奪い合いが起きるだろう」と話していました。
長期視野と構造対策が欠如
外国人問題は気分や心配に振り回されることなく、将来の人口減を展望して取り組む必要があります。また、物価高に消費税で対処するのは場当たり策であり、為替円高や市場機能を活用する抜本策が必要でしょう。先の衆院選では、こういった長期視野と構造対策の欠如が目立ちました。政治の劣化です。(経済ジャーナリスト)






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