19日 カピオ
乳幼児も楽しめる舞台作品をつくり続けるイタリアの劇団「ラ・バラッカ」の公演が19日、つくばカピオホール(同市竹園)で開かれる。演目は、多様な家族の姿をユーモアを交えて観客に問いかける「ファミリエ」(上演時間40分)。午前は0歳から2歳、午後は3歳以上を対象とした2部制で上演される。
主催するのは、桜の植樹や芸術活動を通じてイタリアとの文化交流を進める「日伊桜の会」(沢辺満智子代表)。同劇団によるつくばでの公演は昨年に続き2回目となる。

魔法のような時間
「以前は、小さな子どもが本当に演劇を楽しめるのか疑問もあった」と、主催団体理事の多田亮彦さん(46)は言う。
多田さんが初めてラ・バラッカの舞台を見たのは2019年。会の代表である妻の沢辺さんと、劇団の拠点であるイタリア・ボローニャ市を訪問した時だった。
ラ・バラッカは1976年、ボローニャで創設された劇団で、子どもを対象とした作品を50年近くつくり続けている。特に乳幼児向けの演劇分野で世界的に高い評価を得る。現在は地元自治体と協力し、教育現場に演劇を取り入れ、まちの中に劇場を整備するなど、日常的に子どもが演劇に触れる環境づくりを進めている。
多田さんらが劇場を訪ねて目にしたのが、演劇に夢中になる子どもたちと、子どもが手で触れられそうな距離で、全身を使って物語を表現する俳優たちだった。
「俳優の表情や仕草だけで十分伝わっていて、子どもたちの反応を引き出す魔法のような、幸せな時間だった。これを日本の子どもたちにも見せてあげたい」と感じた。
ボローニャは、世界最大の児童書の見本市が開かれることでも知られている。沢辺さんは現在、つくばで子ども向け書籍の出版会社を経営する。多田さんらの当初の訪問目的は、児童書の見本市を訪ねることだった。同時に、同市で活動するラ・バラッカを知り、「日伊桜の会」が進める文化交流・創造事業への関心から劇団を訪ねたのが、劇団との出会いのきっかけとなった。

昨年つくばで上演されたのは、突然いなくなった仲良くしていた野良猫を、マンションの上下階の住民が一緒に探す物語。セリフはなく、体の動きや表情の変化で思いを伝える。
2歳以下の子どもたちは保護者と一緒に舞台上に座り、手が届きそうな距離で役者の動きを目の当たりにする。俳優は、子どもたちとアイコンタクトを取り表情を見ながら、ときに手を差し伸べつつ、物語を表現する。観客も物語の中に引きずり込まれるような感覚を味わえる。年齢を超えて誰もが演劇を楽しめる仕掛けがあるという。
「あれは何だろう、これは何だろうと、子どもたちの好奇心が喚起され、本当に芸術を楽しんでいるのが伝わってきた」と多田さん。来場した保護者からも「自分の子どもがこんなに集中して見るなんて思わなかった」「小さな子どもでも演劇が分かると気づいた」などの感想が寄せられた。
「人を生き返らせる力がある」
ラ・バラッカの演劇は、決して鑑賞者を子ども扱いしないのが特徴だと多田さんは言う。「大人が思い描く子ども像に合わせてつくられていない。作品を通じて作り手が『私はこう思うけど、あなたはどう思う?』と問いかけるような、平等な関係がそこにある。だから、大人も見て感じることがあるのだと思う」「演劇には、人を生き返らせる力がある。芸術は子どもだけでなく、大人たちにとっても生活に必要なものだと思う」と語る。
今後について「つくばで舞台芸術を子どもたちに提供していきたい。みんながそういう機会に触れられるように頑張っていきたいし、つくば市で一緒に取り組みを進めていけたら」と思いを述べる。(柴田大輔)
二つのワークショップ開催
◆「つくば世界こどもシアター2025 劇団ラ・バラッカ『ファミリエ』」は、10月19日(日)、つくば市竹園1-10-1 つくばカピオホールで開催。公演時間は、0歳から2歳までは午前10時30分から、上演時間は各40分。3歳以上は午後2時30分から。入場料は大人3000円、17歳以下1500円。
◆16~18日に二つのワークショップを開催する。①18歳以上を対象にしたワークショップを16日(木)と17日(金)いずれも午後4時から、つくば市吾妻1-10-1 つくばセンタービル・コリドイオ3階大会議室で開催する。参加費は2日間通しで5000円(学生2500円)②親子を対象とした演劇ワークショップを18日(土)午後2時30分から、つくばカピオ2階リハーサル室で開催する。参加費は3500円(親子2人分)。いずれも事前申し込み制。詳細はイベント公式サイトへ。劇団が訪日する10月中に市内の小学校や保育園での上演も企画している。