【コラム・小泉裕司】「日本最大級の3万発」をうたう第38回利根川大花火大会(茨城県境町)の実況中継直前、スタッフからの無茶ぶり質問。「国内で打ち上げ発数が最も多い大会はどこですか?」。「諏訪湖の4万発」と即答後、隠れてスマホで確認した。実は昨夏、諏訪湖を訪れ、その迫力を体感していた。
花火大会のランキングについては、各種の情報サイトが「人気」「打ち上げ発数」「人出」などに分けて公表している。このうち「人気」は水物なので、今回は「打ち上げ発数」と「人出」に着目、少し解説したい。
打上発数ランキング
まず「打ち上げ発数」について、国内最大の花火大会はどこか、AIに聞いてみた。「最も打ち上げ発数が多い花火大会は、長野県諏訪市で開催される『諏訪湖祭湖上花火大会』です。例年、約4万発もの花火が打ち上げられます。次に多いのは、利根川大花火大会(茨城県境町)約3万発を打ち上げ、4人の花火師が競演するのが特徴です」との答え。
この回答には、諏訪湖は2023年から打ち上げ発数を公表していないことでランキング外となったことや、今月6日(土)に開催された「室蘭満天花火」(室蘭市)が3.5万発だったことが反映されていない。ランキングは室蘭が初登場でトップになった。
したがって「利根川大花火」の全国第2位は変わらず。大会当日に体感した物量感を含めて、「日本最大級」の触れ込みに誇張はないようだ。
打ち上げ発数が、大会の規模を理解するための指標となることは間違いないようだが、煙火消費の許可申請書の数値がベースとなるだろう。過去には、「PL花火」(大阪府富田林市)が、1本の筒から広がる小さな星までカウントしていたことから、「10~12万発」という耳を疑う数字を発表したこともある。
人出ランキング
「人出」についても、AIに聞いた。100万人を超える大会は、天神祭奉納花火(大阪府)の約130万人、関門海峡花火大会(福岡県・山口県)の約105万人、神宮外苑花火大会(東京都)の約100万人、隅田川花火大会(東京都)の約91万人―など。土浦の花火も約60万人でランキング入り。
これらの数値は、当然、有料客席外も含めていることは明白だが、どこまでのエリアの数値なのか、各大会の客観的基準はない。土浦の場合、混雑状況を勘案して、前回マスコミに発表した数字を基準に増減してきた経緯があると聞く。「昨年は50万人で今年は混雑度が増しているので60万にしよう」といった具合に。
乱暴に聞こえるかも知れないが、過去の新聞記事は見出しに数値が入る時代もあった。ところが、8月30日の全国花火競技大会(大仙市大曲)の場合、過去に人出は60万人としたこともあるが、朝日新聞秋田県版は今回、会場に限定しての来場者数を10万人にした。
最近はこうしたケースが増えつつあるようだ。当然だが、人出は都市部の大会ほど多くなっており、必ずしも花火大会の規模や品質と結びついていない。
AIの末尾に「日本三大花火大会(長岡、大曲、土浦)は、歴史や規模、技術的な水準で評価されることが多く、必ずしも来場者数のみで順位付けされるわけではありません」とあった。これは然り。本日は、これにて打ち留めー。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)