【コラム・海老原信一】小さな池のあるつくば市内の公園。そこには一時30羽ぐらいのバリケンが生活していました。環境的にはそぐわないほどの数です。どうしてこれほどの数になったのか? 豊富な食べ物は繁殖を促しますから、人の手による給餌が影響して繁殖が可能になったのでしょう。
「給餌をしないで」との立て看板が設置されたためか、餌は以前よりは少なくなった様子。まかれた餌はバリケンだけでなく、その他の野鳥たちの食料にもなります。当然、バリケンたちの取り分は少なくなり、繁殖への影響も出て来ます。少しずつ減っていくだろうと思っていましたが、急激な減少を見せたのです。カワセミと一緒の写真を撮影したとき、バリケンが2羽になっていました。
バリケンが木の上で休むことはあまり見たことがなく、珍しく思いました。地面より不安定な樹上で休むにはそれなりの理由があるはず…。バリケンにとっては地面が安全でなくなり、樹上へと向かわせたのでしょうが、一体何があったのか私には分かりません。

愛くるしいヒナたち
「思い出していたら悲しくなって涙が…」。写真展で上の写真をご覧になったご婦人の一言です。「いま公園にはバリケンが一羽もいなくなりました。季節には子供が生まれ、その可愛らしさに癒されていました。私ばかりでなく、みなさんヒナたち愛くるしい様に笑顔になっていました。思い出していたら悲しくなって…」。
いなくなった理由は分かりません。バリケンは家禽(かきん)として移入されたもので、それが野生化しました。割と多産で、黄色いヒナたちはにぎやかでかわいいし、見る者をハッピーにする魅力を持っています。ご婦人の寂しさはよく理解できました。
私自身、バリケンのヒナたちの様子を楽しみながら撮影していました。この公園にはもうバリケンが戻って来ないのでしょうか。(写真家)