【コラム・浅井和幸】参議院選挙は、盛り上がったでしょうか。いつもと同じだったでしょうか。それとも、いつもより関係のないイベントだったでしょうか。私は転換期を推測できるような盛り上がりがあったと感じています。
まあ、梅雨入り・梅雨明けが判定されるのは秋頃になるのと同じように、今回の選挙戦が本当に転換期なのかどうかは、10年後にならなければ分からないかもしれません。けれど、間違いなく私個人は盛り上がっていました。どちらが勝つか負けるかではなく、今回の選挙を取り巻く人たちがどのような心の動きをしたかという観点で、です。
自分や自分の仲間が不利益を得ているのではないか、排除されるのではないかという怖さから、差別するなと声を大きくする場面は、この選挙中に新聞やテレビ、SNSなどで多く見られたのではないでしょうか。もしこれが防衛機制で言う投影だとすると、排除される怖さではなく、自分の中にある排除したいという気持ちを、相手への批判につなげることで自己防衛をしているのかもしれません。
そうです。学校の保健体育で習ったであろう防衛機制で、この盛り上がりを見るという楽しみ方を私はしていました。インターネットで防衛機制を検索してみてください。面白いですよ。ただ、ちょっとした楽しみ程度にしないと、人の言動を、自分を守っているからそうしてるんだろうと論破したくなり、はてはケンカになり誰も得をしないので、そこそこにしたほうがよいのは頭に入れておいてください。
他の心理学的な概念も同じです。マウントをとるために使ってもしこりが残るだけなので、楽しみに使うか、相手と仲良く調和していくために使うことをおすすめします。
話は選挙に戻して、耳にしたくない、受け入れがたい言動に対して「否認」をし、相手の言動を邪魔するために「行動化」をする。自分の応援する対象を「理想化」し、選挙運動をすることにより日常でのストレス対処として「置き換え」をする、などなど。
過剰な防衛機制は目標達成を困難にしたり、人間関係を悪化させたりするので注意が必要です。しかし防衛機制の中で、成熟した防衛機制、ポジティブな建設的な方法があるとされています。それは、「ユーモア」や「利他主義」などです。「昇華」もその一つで、イライラや苦しい体験などをスポーツや芸術をすることで、より社会的に認められることで自己実現に向かうというものです。
今回の選挙で盛り上がって興奮冷めやらぬならば、批判や悪い行動化ではなく、敵と思える人ですら和して、社会的に認められるような振る舞いとは何かを考えてみるとよいでしょう。さらには、存在するもの全てが支え合えるような社会は何かを夢見てみるのも楽しいかもしれません。人には器というものがあります。抱えきれぬものを抱えすぎて苦しみ、自分を見失わないようにしてくださいね。(精神保健福祉士)