日曜日, 10月 12, 2025
ホームつくば「戸籍」作り14年間調査 シジュウカラの暮らし知る企画展 筑波実験植物園

「戸籍」作り14年間調査 シジュウカラの暮らし知る企画展 筑波実験植物園

国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保、遊川知久園長)で5日から、企画展「シジュウカラの社会ー鳥の眼で見る植物園」が始まった。同園内のシジュウカラの暮らしをつぶさに知ることができる展示で、餌となる昆虫や天敵の蛇、タカなど、園内に生息する多様な生き物との関係を通じて、同植物園を新たな視点で見るきっかけとなる展示でもある。園内で14年間、調査が続けられてきた。企画を担当する同館の濱尾章二名誉研究員は「2012年から続けてきた研究の成果を見ていただきたい」と思いを込める。

展示されているシジュウカラの標本

ひなから生涯を追う

シジュウカラは体長14センチ、体重14グラムほどの大きさ。手のひらに乗るくらいの小型の鳥で、市街地、住宅地など全国各地で見ることができる。近年の研究では、異なる意味を持つ鳴き声を⽂法に従って組み合わせ、⽂章をつくりコミュニケーションをとっていることが知られている。

同園では濱尾さんが中心となり、2012年から園内に30個の巣箱を設置しシジュウカラの観察をスタートさせた。現在は36個の巣箱を約50メートル間隔で設置し、つがいから生まれたひなを1羽ずつ把握しながら「戸籍」をつくり、それぞれの成長の過程と共に、次の世代を生み出す様子を観察し続けている。

パネル展では園内で見られる昆虫類についても知ることができる

死別により伴侶変える

シジュウカラは、オスとメスがつがいとなり子育てをする「一夫一妻」。他の鳥類でも見られる繁殖形態で、オスとメスが協力して巣を作り、抱卵、餌やり、ひなの世話などをする。主に3月から5月にかけて繁殖期を迎え、中には年に2回、繁殖するつがいもいる。一度の産卵で8から10個の卵を産む。ひなは40日ほどで巣立っていく。

これまでの研究でわかったのは、「一夫一妻」のシジュウカラが伴侶を変えることがあることだと濱尾さんはいう。生まれてから生育の過程で毎年半数の個体が、天敵の蛇やタカに襲われるなどして死んでいく中で、死別によって相手を変えていることがわかったのだと話す。これまで観測してきた中で最も長く生きた個体は7年だった。大半が、卵や孵化して間もなく、巣の中で天敵に食われるなどして1歳未満で死んでしまう。近年は、増え続けるアライグマも天敵の一つに加わった。

巣箱で育つシジュウカラのひな

園内に二つの「名家」

こうした過酷な環境を生き抜く中で、4代にわたり、95羽を巣立たせた2つの家族がいる。約8年前から継続して観察している植物園が誇る「名家」だ。2024年には両家の間でつがいが生まれ、親族関係になったことが確認されている。

濱尾さんは、「シジュウカラは身近なところにたくさんいて、非常に調べやすいのが特徴。特に巣箱を使うと、生態を細かく観察できる。見るほどに、つがい関係や親子関係などを追跡できるのも魅力」と話す。また「今回は、植物園で開催する鳥の展示。鳥が好きな方だけでなく、植物に関心がある方、研究に関心がある方などにも見てもらえるような展示にした。展示をきっかけに、お子さんにも研究の面白さを知ってもらいたい」と思いを込める。

教育棟と研修展示館1階、2階の3会場で企画展が開かれている。教育棟では植物園での14年間にわたるシジュウカラ研究の成果を記したパネル展、研修展示館1階ではパネルや標本、実際に生きている昆虫の展示などを通じてシジュウカラと関わる植物園内で見られる動植物の生態について展示している。同2階では、中高生による鳥研究ポスターや、研究者の研究方法などが紹介されている。(柴田大輔)

◆企画展「シジュウカラの社会―鳥の眼で見る植物園」は5日(土)から13日(日)、つくば市天久保4-1-1、国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時から午後4時30分(入園は午後4時まで)。入場料は一般320円、高校生以下と65歳以上、障害者などは無料。会期中、7日(月)と13日(日)午後2時からは、濱尾さんによる鳥類学研究にまつわる講座が開かれる。研修展示館2階の「観察、研究への誘い」は8月31日まで開催される。詳細はイベント公式ホームページへ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

人件費の上昇が顕著 筑波総研 経営コスト調査

筑波銀行グループの筑波総研(本社土浦市、瀬尾達朗社長)は9月、同行取引先334社(製造業122社、非製造業212社)を対象に今年の経営コスト動向を調査し10月上旬に集計した。それによると、人件費が上昇したと回答した会社が73.4%に達した。1年前の調査に比べ増えており、原材料費・商品仕入高上昇(81.9%)などのほか、人件費増が経営の負担になっていることが改めて明らかになった。 アンケート調査を担当した上席研究員の山田浩司氏は「資源価格上昇の一服と政府の緩和措置などによって燃料費や水道光熱費は低下したが、賃上げや最低賃金引き上げが続いたことで人件費や外注費が上昇した」と解説している。 「コスト増転嫁できない」18% コスト上昇を販売・サービス価格に転嫁できたかとの質問には、「1~2割転嫁できた」と回答した会社が34.4%と最も多く、「まったく転嫁できていない」会社が17.7%あった。 山田氏は、回答の中から「取引先には、材料コスト上昇については理解を得られるが、人件費に関しては認められにくい傾向がある」(繊維製造)、「大企業の外注費単価が上がらないため、給与アップには限度がある」(情報通信)、「仕入れ分は価格転嫁できているが、燃料費や光熱費などは企業努力で吸収している」(木製品製造)などのコメントを紹介してくれた。 「デジタル化している」7割強 筑波総研は同時に「デジタル化の取り組み状況」も調査した。それによると、デジタル化を進めている会社が7割強を占めたものの、依然としてアナログな業務が多いと回答した会社が3割弱あった。「デジタル化は従業員規模が大きい会社ほど進んでいる。だが、その経費の負担や担当人材の不足が課題になっている」と言う。 デジタル化の内容については、「インターネットバンキング」が一番多く(全産業で79.5%)、「給与管理ソフト」(同65.3%)、「紙書類の電子化・ペーパーレス化」(同44.2)の順だった。 中小こそAI活用のチャンス 全体の傾向について、山田氏は「従業員が多い会社ほど多くの項目で採用している割合が多い。今回調査項目に入れた生成AI(人工知能)は、中小企業向けのツールも存在しているため、従業員が少ない企業でもその活用が期待できる」と、中小企業こそビジネスに生成AIを活用するよう勧めている。(坂本栄)

子会社が不正アクセス被害 最大延べ1万5000人の個人情報漏えい 関彰商事

関彰商事は10日、子会社で人材派遣会社のセキショウキャリアプラス(つくば市東新井)が第三者によるサーバー内部への不正アクセス被害を受け、ベトナム人やインド人最大延べ1万5559人と日本人最大延べ270人の個人情報の漏えいが判明したと発表した。現時点で漏えいしたデータの悪用は確認されていない。同社は国の個人情報保護委員会に被害を申告し、茨城県警に被害届を出した。 発表によると、9月10日、顧客から問い合わせがあり、セキショウキャリアプラスが一部の業務で使用しているサーバーから、顧客情報漏洩の疑いがあること分かり、即座に同サーバーを外部と遮断し運用を停止した。サーバーは、子会社でベトナム現地法人のセキショウベトナムが運用していた。 さらに対策チームを設置し、外部専門機関の協力を得て調べたところ、セキショウベトナムが運用しているサーバーが第三者による不正アクセスを受け、保管されていた個人情報を含む社内データが、今年5月から7月ごろの間に漏えいしていたことが10月6日に判明した。 漏えいしたデータは①セキショウキャリアプラスとセキショウベトナムが、ベトナムとインドで開催した就職支援イベントで参加登録したベトナム人とインド人最大延べ1万5535人の氏名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスと解読されない暗号化されたパスワードなど。②セキショウキャリアプラスが運営を受託し県内で2021年に開催された「副業・兼業meet UP in茨城」に参加登録した日本人延べ42人の氏名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスと解読されない暗号化されたパスワードなど。③ ①と②のイベントに出展した日本人とベトナム人の企業担当者最大延べ252人の氏名、メールアドレスと解読されない暗号化されたパスワードなど。いずれも銀行口座番号やクレジットカード番号は含まれていない。 同社はすでに対象者に個別に連絡し、安全性を高めるためパスワードを変更するよう依頼しているという。 再発防止策として同社は、サーバー及びアプリを最新バージョンで再構築した上で、セキュリティー監視ツールを整備し、不正侵入や新たな脆弱性を予防・検知するほか、定期的なアクセス、操作ログの分析と脆弱性診断を実施するとしている。さらに個人情報の適正な管理を徹底し、システム開発・運用に携わる従業員を対象にセキュリティ教育を強化し情報管理に関する意識向上を図るとしている。 同社は「お客様及び関係者の皆様に多大なご迷惑とご心配をお掛けし、深くお詫び申し上げます。セキショウグループでは本事案を重く受け止め、セキュリティ対策の徹底を図り再発防止に全力を尽くします」などとするコメントを発表した。

35人学級移行と高校審議会《竹林亭日乗》33

【コラム・片岡英明】7月から「2027年~33年の高校のあり方」を議論する県の高校審議会が始まった。私たちは同審議会に要望を提出しているが、狭い既定路線を進むのでなく、充実した議論と子どもたちに希望を与える答申が出ることを期待している。 今期の高校審の主要な論点は3つあると考える。これらについて、県の大方針である「県民が日本一幸せな県」の実現に向けて深めてほしい。 ⑴ 前回答申を基に作成された高校改革プランの実施状況の点検と評価 ⑵ 生徒減に合わせた県立高の魅力アップと地域に必要な学校づくりの提起 ⑶ 生徒が増えているつくばエリアの高校不足への事実に基づいた議論と対策 26年から中学は35人学級に もうひとつ、議論を期待するテーマがある。それは27年~33年で必ず課題となる高校35人学級である。 5月に県は26年度から中学1年にも35人学級を実施し、順次広げると発表した。これにより、教室にゆとりが生まれ、教職員の多忙化が少し軽減される。すでに、秋田県では2001年から30人学級が始まり、山梨県でも21年から25人学級が始まっている。生徒の個性を伸ばす少人数学級への期待は大きい。 一方、市立中学と同時に、県内13校の県立中学も今までの男女別募集枠が廃止された上、35人学級となる。つくば市内の並木中等は4学級160人募集が140人に20人減。つくばエリアの水海道一高付属中も40人→35人。土浦一高付属中は2学級80人→70人、下妻一高付属中も40人→35人などとなる。 県立高不足のつくばでは、県立中学進学は高校受験のバイパスの側面があるので、ここが絞られると一段と進路選択が厳しくなる。県には泣き面に蜂のような定員削減ばかりでなく、竹園高校の学級増や県立高新設などの抜本的定員増を求めたい。 29年から県立高も35人学級? 26年入学の県立中1年生が高校に進む29年には、県立高の35人学級が当然テーマになる。国が方針を決めていないので県は先走りしないと言うかもしれないが、審議会ではぜひ議論してほしい。 25年の県立高募集枠は432学級である。40人学級が35人学級になると、ここで生徒減の2160人を吸収することになり、審議会の生徒減対策の基本に関わってくる。 それに伴って、県立高不足に悩むつくばエリアではもっと深刻な問題が発生する。現在、つくばエリアの県立高は58学級。これが35人学級となると、さらに290人の募集定員減となる。これは35人学級の8学級分であり、高校1校分の定員削減になる。 昨年、県は定員見込み試算を発表した。私たちの会が同一資料で計算すると、つくばエリアは14学級不足だった。これに加えて、審議会資料では24年~33年のエリア生徒数は382人増。それに見合う必要学級数は7学級になる。さらに35人学級を実施すれば、新たな学級不足が8学級上乗せとなるのである。 高校審議会は、以上のような点を視野に入れて十分な議論を行ってほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

外国語を翻訳し即時に字幕表示 つくば市役所窓口に導入

音声をリアルタイムで字幕表示する「字幕表示システム」がつくば市役所の窓口に導入された。外国語を即時に翻訳して字幕で表示するほか、耳が不自由な障害者や、会話が聞き取りにくい高齢者なども字幕スクリーンを介して日本語でやりとりできる。外国人や障害者などと、より円滑なコミュニケーションを図る目的で導入した。 市役所1階 市民窓口課の八つある窓口の一つに1台設置された。透明なアクリル板に、縦18センチ×横30センチの透明なスクリーンが貼り付けられ、マイクに向かってしゃべると、スクリーンのそれぞれの面に、双方の言語に合わせて、日本語や外国語の文字が表示される。134の言語に対応できる。価格は月額3万円のリース。 聴覚障害者などはキーボードを打ちながらやりとりしたり、会話を聞き取ることが難しい高齢者などは、字幕を確認しながら会話できる。 スクリーン上には、文字のほか、あらかじめ登録しておいた図や写真も表示される。同市では現在、マイナンバーカードや健康保険証の図、市役所の建物や駐車場の配置図、筑波山の写真などを登録している。 8月1日、つくば市が県内市町村で初めて導入した。現在は水戸市と鉾田市などでも導入されている。 市によると、これまで約2カ月間で外国人による利用が約10件あった。導入前は、英語なら複数の職員が対応できたが、英語以外の外国語はスマートフォンの翻訳機能を使って対応するなど時間がかかっていたという。