火曜日, 1月 14, 2025
ホームコラムアメリカから福島原発事故を考える《邑から日本を見る》175

アメリカから福島原発事故を考える《邑から日本を見る》175

【コラム・先﨑千尋】昨年12月16日、茨城大学図書館で見出しのテーマの講演会と読書会が開かれた。主催は同大人文社会学部市民共創教育センターで、市民と学生ら約50人が参加した。

第1部は、平野克弥『原発と民主主義―「放射能汚染」そして「国策」と闘う人たち』(解放出版社)の読書会。著者の平野さんはひたちなか市出身で、現在は米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の歴史学教授。

1999年に東海村の核燃料施設JCOで臨界事故が起き、2011年には東京電力福島第1原発が大事故を起こした。平野さんはこの2つの事故から、平穏な日常を一瞬にして奪われた人々の声や言葉を拾い上げ、後世に伝えることを思いついた。そして「放射能や原発事故に向き合ってきた人たちが、日本の『民主主義』『地方自治』『故郷』『豊かさ』をどのように考えているのかを聞き出し、言葉にして『思想』として読者に伝えたい」と、本書を編んだ。

話者は、村上達也、小出裕章、武藤類子、鎌仲ひとみ、鈴木祐一、長谷川健一、馬場有、小林友子、崎山比早子、里見喜生の各氏。大部分は福島原発の近くに住んでいる人たちだ。それぞれが平野さんと、原発と地方自治、原発廃絶の闘い、絶望と冷静な怒り、住民なき復興など、経験、体験をもとに語っている。

本書を読んで分かったことは、「原子力エネルギー政策は民主主義の原則と根本的に相いれない。国策の最大の犠牲者は常に子ども、女性。原子力政策は、都市部の巨大消費を支えるために地方を犠牲にする構造をもつ。私たちはライフスタイルの転換が必要」など。

読書会では、原発に関心を持つ市民活動家の谷田部裕子さんや村上志保東海村議など、ひたちなか市や東海村などで活動する住民や議員が同書を分担して読み込み、重要だと思ったところ、みんなで議論したいことなどを報告し、参加者と話し合った。

原爆と原発は命に関わる問題

第2部は、平野さんの「アメリカから福島原発事故を考える」と題する講演会。

平野さんは「原発は、第2次世界大戦後の世界の覇権をめぐる資本主義国と共産主義国の競争と対立から生まれた。アメリカとソ連の冷戦時代には、度重なる核実験によりアメリカや太平洋諸島の先住民たちが被曝し、人体実験の対象にされた。戦争は『国策』、核エネルギー政策も『国策』だ。『国策』とは、国民の同意や審議という民主的な手続きを経ることなく、国家が『国益』という大義名分により主体となって行う政策を言う」と語った。

さらに「日本の原発政策は、広島・長崎の記憶を払拭(ふっしょく)させ、核を新たなエネルギーとして産み出し、利益を得ることを狙いとして考え、位置づけられた。原爆や原発により犠牲を強いられてきた人たちは被害者であり、一方で文明社会を謳歌(おうか)してきた点で加害者でもある。戦争(原爆)やエネルギー政策(原発)は人と自然の命の問題であり、市民である私たちは暮らしを守り、命を守り、人権を主張する。そのことによって本当の幸せが得られる」などと述べた。

日頃あまり考えてこなかった原発と民主主義の関係について、学ぶことが多い集まりだった。(元瓜連町長)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

5 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

5 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

「足りてないこと数字で示したい」県試算につくば市長 県立高校不足問題

児童生徒数が増加しているつくば市で県立高校が不足している問題で、県教育庁が昨年10月「県立高校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」と題する資料を示し、「つくばエリア」(つくば、つくばみらい、守谷、常総市など)について「現時点では定員増が必要との判断に至ってない」とする方針を明らかにしたことについて(24年10月24日付、25年1月12日付)、つくば市の五十嵐立青市長は14日の定例記者会見で「(県立高校が)足りてないことを(県に対し)数字で示したい」と述べ、市としてつくば市やつくばエリアの県立高校の学級増を引き続き県に要望し協議を続けていく姿勢を示した。 五十嵐市長が昨年12月23日、つくば市の県立高校の学級増などを求めている市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)と懇談したことに関し、記者の質問に答えて、改めて市の姿勢を示した。 同市の県立高校不足問題について五十嵐市長はこれまで、昨年9月に実施した2025年度の県予算編成にあたっての要望活動の際、大井川和彦知事に対し、市内にある県立竹園高校の定員を1学年2学級80人分、3学年で6学級分増やすための校舎増築費用4~5億円を市が負担すると提案したとしているほか、翌10月に実施された市長選で、市建設費負担による竹園高校の学級増を公約に掲げた。 14日の会見で五十嵐市長は、昨年10月の県試算資料で記されたつくばエリアの状況分析について「実際にそもそも1時間というものが(通学時間の)基準として定められているが、(生徒の)通学時間をまず正確に把握し、正確なデータをもとに議論をすることが必要だと思っているので、それを市民団体と連携しながら進めていきたい」と話した。 その上で「(竹園高校の学級増という)私の公約は(増築校舎の)建設を県に提案したということだが、県としては『足りている』という認識が急に(昨年10月に)出てきたので、それに対し、足りていないということを数字できちんと示すことは大事だろうと思っている。これから実際の数字について(県と)お話をしていきたいと思っている」とした。 さらに「併せて県として今、定員割れしているところ(つくばサイエンス高と筑波高)は増員を進めているという話があったので、それについては今年の出願状況等をみてまた議論しましょうと知事と話をしているので、そういったことを継続して行っていきたい」と述べた。 この問題で市民団体は近く、県教育庁と懇談を予定している。(鈴木宏子) ➡昨年10月の県資料「県立高校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」はこちら

雨情とチャップリンとロッキー《映画探偵団》84

【コラム・冠木新市】チョビひげと旅する人生の姿が重なる茨城県出身の詩人・野口雨情と映画監督チャ一リ一・チャップリンは、ほぼ同時代に活躍した芸術家である。日本公開年度は少しずれるが、チャップリンの『黄金狂時代』(1925)、『街の灯』(1931)、『モダンタイムス』(1936)、『独裁者』(1940)が作られたころ、雨情は全国を旅して新民謡を作っていた(映画探偵団31)。 『街の灯』では、放浪紳士が目の見えない花売り娘のために奮闘し、ボクシングの試合に挑む姿などが描かれる。ラストでは、貧しい放浪紳士と手術で目が見えるようになった花屋経営者の女性との再会が描かれる。貧富の差を逆手にとった皮肉の利いたハッピ一エンドが胸をうつ。 50年ほど前、無名ボクサーが世界チャンピオンに挑戦する姿を描いた、低予算で作られた映画『ロッキー』(1976)を見た。脚本・主演を務めたシルベスター・スタローンは、実際のボクシング試合を見て物語を発想したそうだが、私はこの作品の元ネタは『街の灯』だと思った。 ロッキーがペットショップの店員エイドリアンにほれて、世界チャンピオンとの戦いに最後までリングに立ち続ける話で、誰もが共感できるリアルな作品に仕上がっていた。ロッキーとエイドリアンがリング場で抱き合うラストは、テ一マ曲と相まって素直に感動したものである。 その後、『ロッキー2』(1979)、『ロッキー3』(1982)、『ロッキー4/炎の友情』(1985)、『ロッキー5/最後のドラマ』(1990)、『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006)が作られた。50年近くたった今、ロッキー・シリーズを振り返ると、エキサイティングなボクシングシ一ンよりもロッキーの人間的な描写の方が印象強い。 チャンピオンの妻として強くなったエイドリアンの変貌ぶりにとまどうロッキー、試合に負けたロッキーが最期まで勝利を信じて亡くなるコーチを見送る場面、最愛の弟子に裏切られショックを受けるロッキー、親の七光りに悩む息子とそれを受け止めきれず親として悶々とするロッキーなどの方が思い浮かぶ。 シリーズ物の面白さはそこにある。時代の変化で印象が変わるのだ。私は青春映画の延長として見てきたが、現在の観客だと年を取った男がボクシングにこだわる物語にしか見えないのではなかろうか。そこが映画とともに歩んできた観客と後から見る客との違いではなかろうか。 茨城県の唄シリーズ 私はこれまで雨情さんの唄を独立した作品として、『筑波節』(1930)、『磯原節』(1932)、『水戸歩兵第二連隊歌』(1934)、『土浦小学校校歌』(1935)を見てきた。だが、雨情さんは、故郷に深い思い入れがあった人だ。これらの作品を茨城県の唄シリーズとして見たらどうなるだろうか。印象が変わらないだろうか。関連があるのではなかろうか。 『戦争は唄にはなりゃせんよ』と言っていた雨情さんが、なぜ『水戸歩兵第二連隊歌』を作ったのか。当然、軍歌にジャンル分けされるわけだが、ようやくその謎が解明できそうだ。なんとか1月25日のイベントに間にあった。私の中で、雨情とチャップリンとロッキーがつながった。 思わぬ発見をし、喜んでいる。雨情ファンよ、1月25日の「雨情からのメッセージⅢ 詩劇コンサート 」(山水亭)にご期待ください。サイコドン  ハ  トコヤンサノセ。(脚本家)

門出祝い「二十歳のつどい」 つくば、土浦 

成人の日を前に12日、つくば市と土浦市でそれぞれ20歳の門出を祝う「二十歳のつどい」が開かれた。つくば市はコロナ禍以来続く、式典参加を出身中学ごとに分けた午前・午後の2部制で催した。土浦市は市内のダンスチーム「モアナテア」がフラダンスやタヒチダンスを披露し、亀城太鼓保存会の和太鼓に合わせた共演も行われた。今年度20歳を迎えたのは、つくば市が昨年より135人多い2927人(男1595人、女1332人)、土浦市は7人少ない1348人(男女各674人)だった。 夢に向かって挑戦し続ける 「うわー!久しぶり!」「変わんないね!」 肌寒い曇り空の下、つくば市竹園、つくばカピオの屋外で式典の始まりを待つ新成人たちから、旧友との再会を喜ぶ明るい声が響く。 家族と会場を訪れた大学生の沢畠侑奈さん(20)は、朝7時から晴れ着の着付けに向かい式に臨んだ。現在は水戸市の大学で教員を目指して勉強に励んでいる。「将来はいろいろな人に寄り添える先生になりたい」と目標を語った。専門学生の森田創太さん(20)は市内の専門店ではかまを着付け、中学時代の部活の仲間と会場に足を運んだ。「やんちゃをしていた時期もあった。専門学校では機械設計を学んだ。就職も決まり、将来はいい家庭を築きたい」と思いを語った。 式典では参加者を代表し齊藤言葉さんが「一人ひとりが持つ夢に向かって挑戦し続け、困難にぶつかっても決して諦めずに前を向いて歩いていきたい」と思いを述べた。 あいさつした五十嵐立青市長は、昨年宇宙飛行士に認定されたつくば市出身の諏訪誠さんによる「きのうの夢は今日の希望となり、明日の現実となる」という言葉を引きながら、「諏訪さんは落選を経験しながら46歳で夢を現実にした。自分を信じて進み続けることの可能性を身をもって示してくれた」とし、「皆さんが活躍する中で、いろんなことを言う人、アドバイスする人がいると思う。基本的にそんなものは聞かない方がいいと思う。アドバイスは一旦置いておいて、自分を信じて自分がやりたいことを反対されても貫いていくことが一番人生にとって価値がある。やりたいことを実現し、いつの日かつくばで生かしてくれることを楽しみにしている」と言葉を贈った。 自分の手で未来を切り拓く 土浦市では午後1時から、同市東真鍋町、クラフトシビックホール土浦(市民会館)でオープニングアトラクションが開かれ、2時から式典が始まった。 現在は東京都に暮らし千葉県の大学に通う関皓樹さん(19)は、久々の帰省を懐かしみながら「同窓会を楽しみにしてきた。大学では電気電子を学んでいて将来は技術職に就きたい。学生の今だからできることにチャレンジしていきたい」と話した。 式典で成人を代表して押雄大さんは、これまでに経験した東日本大震災やコロナ禍を踏まえて「当たり前だと思っていた生活が一瞬で変わってしまう経験を幾度も重ねてきたが、私たちはどんな困難に直面しても力強く立ち上がり、未来を見据える力強さを身につけてきた」と言い、「自分の手で未来を切り拓く覚悟を持つことが、これからの時代を生きる私たちの使命。一歩一歩、世界に新しい価値を届ける挑戦を続けていく」と決意を表した。 安藤真理子市長は「みなさんは青春真っただ中の時期にコロナ禍を迎え、学校に行くな、誰にも会うな、外に出るなと言われてきた。ピンチをチャンスに変えて、コロナという大変な時期を乗り越えてきた人たち。これから土浦で仕事をし、家庭を持つこともあると思う。外に出て、全国、世界、宇宙で活躍する人もいると思う。皆さんが土浦で生まれ育ったこととを誇りに思って、土浦を離れても何かの時に戻ってきてほしい」とし、「自分の気持ちを周りにきちんと伝えることが大人。いろいろなことに感謝をできる人になってほしい」と話した。(柴田大輔)

つくばエリアの県立高、本来8学級増《竹林亭日乗》24

【コラム・片岡英明】茨城県教育委員会は昨年10月、2030年までの「県立高校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」を発表した。その試算1によると、30年の県全体の中学卒業生は24年に比べ2141人減少する。この中卒者減に対応して、県立高の定員を1480人(37学級分)減らすとしている。 今回の試算では、中卒者減に対する県立高の定員削減率は69.1%。減少する中卒者の7割に相当する県立高定員を減らすことになる。 県の試算は3学級増 県教育庁は県内を12エリアに分け、エリアごとの学級増減も示している。これによると、県全体では県立高定員が削減されるが、つくばエリアの中卒者は逆に477人増えることから、現在58の学級数を61にする。 つくばエリアの中卒者増に対する定員増加率は25.2%となっているが、県全体の中卒者減に対する定員削減率が69.1%であるならば、つくばエリアの県立高定員増加率も同様にすべきではないか。 つくばエリアの中卒者が477人増える(24年~30年)と推計すると、その中卒者増に見合う定員増は330人(中卒者増の69.1%)になる。ということは、本来8学級増を示すべきではないか。 本来8学級増なのに、なぜ3学級増なのか? 生徒が急増しているつくば市内には県立高が少なく、3学級しか増やせないと判断したのであろう。 竹園高には2学級増を 県教育庁が2019年に発表した「改革プラン」では、つくばエリアの中卒生は440人増加する(18年~26年)と推計していた。今回試算と同様に考えると、440人増には7学級増が必要だが、当時の学級数に2学級プラスした59学級に抑えられていた。 18年~30年、つくばエリアの中卒者は747人増える。この生徒増に合わせるには12学級増が必要となる。ところがその後、つくばエリアの学級は1学級しか増えていない(57学級→58学級)。改革プランと今回試算を合わせても、4学級増(57学級→61学級)に抑えられている。このことが、多くの小中学生の高校進学の悩みの元になっている。 この2年間、牛久栄進高の1学級増、筑波高の進学コース設置、サイエンス高の普通科設置など、県立高の定員問題は改善されている。しかし、中卒者増に学級増が追いついていない。つくばエリアの中卒生増に対応するために、2026年度には県立竹園高の学級を2つ増やしてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表) ➡「県立高校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」はこちら