【コラム・浅井和幸】
Aさん「普通、ここまで気を使って、優しい言葉をかけたら、ありがとうって言うべきじゃないですか?」
浅井「ありがとうと言ってくれたら、うれしいですよね」
Aさん「そうでしょ? じゃ、なぜうちの息子はありがとうと言わないのか、私にはさっぱり分かりません」
浅井「そうはいっても、理想的なコミュニケーションって難しいですよね。タイミングもあるし、それぞれの性格もあるし、親子との関係性もありますから」
Aさん「じゃあ、優しくしないほうがよいのですか? ありがとうぐらい言うのは当たり前じゃないですか?」
浅井「Aさんの優しさはいつも通りだと思います。先日も同じようなことがありましたね。そのとき、息子さんはありがとうと言ってなかったですね。だとすると、今回も当たり前に同じことが起こったと、捉えたほうがよいでしょう。何か別の方法を考えてみましょう」
大きくずらした方法を試す
私たちの生きている現実は実験室とは違いますから、全く同じ状況はそろわないし、全く同じ結果は起こしにくいです。ですが、やっぱり似たような要因が集まれば、似たような結果が現れます。
どうすればよい結果が出るか分からないときは、前とは少し違った方法を試す、ときには大きくずらした方法を試みるのも、よいかもしれません。同じアプローチをしても、相手の受け取り方が変わることで、今までと違う結果が出ることもありますが、自分の言動を変えることで別の結果が出やすくなります。
これを裏返すと、自分が同じ言動をしても結果が変わったとしたら、自分が思っている以上に、相手や環境などの要素が変わったということです。それに気づけるのは、より自分の目的にあった次の手が打てる人と言えます。
今、目の前で起こっている現実を「信じられない」とか「あり得ない」とかで片づけずに、実際に起こっている事実を踏まえて、あり得ることとして受け止め、それに対しどのようなアプローチをすれば、目的の状況に近づけるかを考えて試していく。
うまく物事が運ばないと感じることが多く、自分は運がないとか、呪われていると考えることが多い人は、このようなことを今年1年試してみてください。解決能力のある人に相談するだけでも続けてみてください。
人とうまく話し合いたい、仕事の能力を上げたい、金持ちになりたい、何か趣味を持ちたい、体力をつけたい、嫌いな人から離れたい―など、具体的な目的・希望があったら、具体的な方法が見つかるはずですよ。(精神保健福祉士)