水曜日, 12月 10, 2025
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つくば高エネ研などでかや刈り 応援ボランティア募集 石岡の保存会

かやぶきの営みを次世代に

石岡市八郷地区で、かやぶき民家と里山の営みを後世に伝える「やさと茅葺き(かやぶき)屋根保存会」(萩原寿盈代表)が、屋根に使うかやの刈り取りを手伝う応援ボランティアを募集している。かや刈りは12月21日からつくば市の高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)、葛城の森、石岡市の県畜産センターなどで実施する。同会事務局の新田穂高さん(61)は「かやぶきを維持する『営み』自体に価値がある。昔から続く営みを新しい形で次の世代に引き継いでいきたい」と思いを語る。

同会ができたのは1998年。住民が協力し作業する習慣や、管理されたかや場が減るなどし、当時かや集めに苦労していた。そんな中、つくば市大穂の高エネ研敷地内にかやぶきに用いるススキが相当量、生い茂っていると知った八郷町(当時)の関係者らが、高エネ研敷地内のかや刈りをしようと設立したのが同保存会だ。現在、かやぶき家屋の持ち主や、石岡市内外のボランティア70人ほどが参加し、毎年かや刈りに取り組んでいる。

刈ったススキを束にする。6束で馬1頭が背負うことができる量を表す単位「1駄」になる

人が集うのが価値

新田さんが暮らすのは、石岡市真家地区にある江戸時代後期に建てられた築170年以上のかやぶき家屋。地域は献上柿の産地として知られる。かつては養蚕や葉タバコ栽培が盛んだった場所だ。

「田舎暮らしがしたかった」という新田さんは、地元の農家からかやぶき家屋を譲り受け、1998年、妻と幼い2人の子どもと出身地の神奈川県から移住してきた。今年は9月から12月初旬にかけて、移住後4度目となる屋根のふき替えを行っている。作業には地元の2人のかやぶき職人と、延べ100人余りのボランティアが参加した。「人の輪が広がる楽しみがかやぶきの面白さ」だと新田さんは言う。

移住した当時、石岡市内に90棟以上あったかやぶき家屋は、神社なども含めて現在は40棟以下にまで減っている。民家に限れば現存するのは15棟余り。「70、80代の方が家を維持してきたが、次の世代にとってかやぶきが『負の遺産』になるという考え方が一般的になった」と言う。

新田さんは「(かやぶきは)職人だけではできない。家人らは『かや刈り』『かやごしらえ』などの下準備、かやぶきが始まれば職人を補助する『地走り(じばしり)』、『手元(てもと)』と呼ばれる仕事をした。生活スタイルが変化し、集落内の協力で成り立つ『結(ゆい)』的な下地がなくなり、暮らしと密着したかやぶきもなくなりつつある」。

ふき替えたばかりの屋根が、西日に照らされ黄金色に輝く

時代の変化を前に新田さんは「かやぶきは、職人と仕事を支える様々な人たちが必要になる。文化財を保存する時、屋根や建物など『もの』の保存だけではなく、そこにまつわる『こと』を保存するのが保存会のテーマ。皆が集まり、力を結集して維持することが、かやぶき本来の営み。かやぶきの文化的価値はそこにある」と言う。

もう一つ、同会が取り組むのが「物質の循環」だ。地域には「屋根を直すと田畑が良くなる」という言葉があるように、取り替えられた屋根から出た大量のかやは、堆肥や野菜や果樹の「敷きわら」として使われた。現在は、多くが廃棄物として処理される。古い茅の再利用を地域の農家と取り組んでいる。

12月から1月、つくばなど各所で

12月から翌年1月にかけて同会は、高エネ研を始めつくば市内各所や、石岡市、桜川市などからかやぶき家屋5、6軒で使われるススキを刈り取る予定だ。15年以上参加する常連のボランティアらに支えられる一方で、将来を見据えて新しい世代の「茅刈り隊」への参加を呼び掛ける。

新田さんは「ボランティアの方には、刈り倒したススキを集めて束にする作業をしていただきたい。午前9時に集合して午後4時ごろまで。お茶にお昼、茶菓子も用意します。割と気持ちよくできる作業だと思う。マイペースで、気持ちよく体を動かし、かやぶきの維持保存にも貢献できる」と話す。

かや刈りの日程は▽12月21日(土)、22日(日)=つくば市大穂1-1、高エネ研▽25日(水)、26日(木)=石岡市根小屋1234、県畜産センター▽来年1月以降はつくば市葛城の森、桜川市上曽トンネル用地、栃木県益子町の濱田窯長屋門茅場などで予定している。(柴田大輔)

◆かや刈りボランティア「茅葺き応援団茅刈り隊」への応募は専用のウェブサイトか、メール(kayayaneitonami@gmail.com)にて受け付け。活動の詳細は「やさと茅葺き屋根保存会」のブログへ。

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【コラム・斉藤裕之】伸びた庭木の枝でも切ろうかと思うが、まだまだ蚊がいたり天気が悪かったりして。絵を描くのも日がな一日というわけでもないので、さて、何をしようかと…。そこで目に付いたのが分厚い本。表紙カバーは光沢のある青に小さな魚の群れが描かれている。 実は英語で書かれている小説で、かれこれ20年以上前に東京の洋書屋さんで買い求めたもの。「FISH of the SETO INLAND SEA」つまり「瀬戸内海の魚」。このタイトルに引かれて買った。何の話か全く分からず、作者は日本の女性? 何度も読み始めては挫折して、結局放ったらかし。 でも、なんか気になって目につくところには置いてあった。ちなみに、私の英語の能力は高卒程度かつ年齢と共に退化中。 それから、これもノートとしてはかなり厚手のわら半紙製の、多分この先も使う当てのないものを引き出しの中に見つけて、和訳したものを書き始めた。日本の話ではあるし、それも舞台は故郷の瀬戸内海。頭の中に映像が浮かびやすい。それほど難しい言い回しもない。 とにかく、ボールペンでひたすら和訳文を書いていく。そこで今どき大変重宝するのがネット検索。パソコンを開いてわからない単語はもちろん、今一つうまく訳せない時には文章を打ち込むと、なるほどね。おまけにネイティブの発音まで聞ける。 しかし、目的はこの物語を読み切りたいということだから、単語や熟語を覚える気はさらさらないし、英語のお勉強をするという向上心もない。その上、人に見せるためではないので、悪筆走り書きで私自身も読み返すことができないほど。しかし、面白いことにこの方法で和訳をしていくと、ストーリーはもちろん、リアルな映像として頭に残っていく。 そばぼうろ、かりんとう、ふがし さて、楽しみながらの和訳も、いかんせん目が遠くてそう長くはやっていられない。そんな時目に留まったのが「みすゞ飴(あめ)」。いわゆるゼリー菓子。長野の上田にお店があるのは知っていたが、先日、千曲のギャラリーに行った折に初めて買ってみた。 食べるというより、セロファン製の包み紙の色合いが良くて、私の身の回りにはない色合いだから、絵を描こうと思って買ってきた。それを一つ二つ、まずは描いてみた。それから口に入れてみた。「?!」 思っていたよりもいい感じのかみ応え、しかもそれほど甘くない。思っていたゼリーとはちょっと違った。そして、私はみすゞ飴にはまってしまった(茨城のスーパーでも売っているのを発見)。 「みすゞ」とは、「信濃」にかかる枕詞だそうで篠竹のことだそうだ。言葉の響きもいいし、「ゞ」という踊り字もかわいらしい。今度生まれてくる孫は女の子だそうだから、「みすゞ」ちゃんという名前はどうだろう。上田は向こうのお母さんの故郷でもあるし…。 新聞の記事によると、世間ではグミがはやりというが、私はみすゞ飴をひとつ口に入れて和訳再開。この小説の時代設定にも、寒天と水飴でできたみすゞ飴が似つかわしい。さて、果たしてこの本を読み切ることはできるのか…。というか、最近、そばぼうろとかかりんとう、ふがしなんか買ってしまうのは、年齢のせい? 来年につづく。(画家)

6年ぶりに常陸大宮で農村歌舞伎《邑から日本を見る》189

【コラム・先﨑千尋】少し古い話題だが、常陸大宮市で10月25日に行われた「西塩子(にししおご)の回り舞台」を紹介する。 西塩子地区は常陸大宮市にある山間部の小さな里山集落で、戸数は50戸ほど。戸数は減り、高齢化も進む。ここで、江戸時代から地域の娯楽として農閑期の田んぼなどで農村歌舞伎が演じられ、住民らに親しまれてきた。しかし1945年を最後に行われなくなり、道具類は地域の倉などに納められていた。 1991年、当時の大宮町歴史民俗資料館の石井聖子さんらが調査に入り、同地区の組立式舞台が江戸時代後期の文政年間のものと判明した。現存する日本最古の組立式農村歌舞伎舞台で、回り舞台もある本格的な舞台だ。現在は県の有形民俗文化財に指定されている。 舞台は公演後には解体されてしまう。94年に回り舞台保存会が結成された。97年に隣県の歌舞伎伝承者らに指導を仰ぎながら、半世紀ぶりに公演を復活させ、原則3年おきに公演が行われてきた。これまで、定期公演の他に「ふるさと歌舞伎フェスティバル」など多くの催しに出演し、「サントリー地域文化賞」などを受賞している。 前回の公演は2019年。その後、新型コロナウイルスの拡大が活動を直撃した。さらに保存会メンバーの高齢化による担い手不足や資金集めなど課題が重くのしかかり、延期が続いた。 伝統の灯は消えなかった しかし、地域文化の伝統の灯は消えなかった。「ふるさとの伝統文化をなんとか残さなくては」と、有志の市民や茨城大学の学生らでつくるNPO法人が支援の輪を広げ、6年ぶりの公演再開が決まった。昨年10月には再開を支援するためのシンポジウムも開かれた。クラウドファンディングも実施された。 真竹や木材約500本で組み立てられる舞台は、間口、奥行き20メートル、高さ7メートルで、壮麗なアーチ型が大きな特徴。地元の竹林から竹を切り出し、屋根は「いぼ結び」という独特の結び方を駆使して作られる。今回は、高齢化や人手不足により、建設業者やとび職人の手を借りて約1カ月かけて作られた。学生たちも竹の伐り出しや桟敷席の設営などの手伝いをした。 そうして迎えた公演当日。あいにくの小雨模様だったが、客席は満員。午前10時半から子ども歌舞伎を地元の大宮北小の3~4年生が、常磐津「子宝三番叟」と「白波五人男」の稲瀬川勢揃いの場面を演じた。午後は、友好関係にある栃木県那須烏山市の山あげ保存会芸能部会が歌舞伎舞踊「蛇姫様」を演じ、続いて、市内の常磐津伝承教室で小学生が学んだ常磐津「将門」を披露した。 トリを務めたのは、西塩子地区の若手住民と大宮北小の児童らでつくる地芝居一座「西若座」で、「太功記十段目 尼ヶ崎閑居の場」を演じた。観客から拍手や喝さいが沸き起こり、「おひねり」も飛びかった。 保存会の大貫孝夫会長は「高齢化が進み、復活へなかなかやる気が起きてこなかったが、多くの方々に後押しされ、歩み出せた。地域の宝を残すために今後も続けていきたい」と話している。この取り組みはNHKテレビの「小さな旅」でも、11月30日に「常陸大宮市〝西塩子の回り舞台〞復活に向け奮闘する人々の物語」として全国放映された。(元瓜連町長)