金曜日, 10月 18, 2024
ホームつくば共生社会創成学部を新設 筑波技術大 2025年度から

共生社会創成学部を新設 筑波技術大 2025年度から

「手に職」から社会創造へ

聴覚と視覚に障害のある学生を対象とした国内唯一の国立大学、筑波技術大学(つくば市天久保、石原保志学長)が2025年度から新しく、共生社会創成学部を開設する。定員10人の視覚障害コースと、5人の聴覚障害コースの2コースを設ける。新学部は、障害者を含む多様なマイノリティが活躍できる社会システムをつくる人材の育成を目指すとし、専門技術を持つ職業人の養成に取り組んできた同大にとって新しい取り組みとなる。

一方、定員割れとなっていた学科で定数を減らす。保健科学部保健学科鍼灸学専攻が定員10人減、産業技術学部産業情報学科が3人減、同総合デザイン学科は2人減とする。

筑波技術大学の石原保志学長

石原学長(67)は「学生の希望職種が多様化する中で、大学で高度な技術を身に付け就職しても、職場での障害に対する理解不足から力を発揮できずに体調を崩すなどして離職してしまうケースを見てきた」とし、新学部では「総合的な教養と権利意識を身につけ、自信を持って意志を伝え、障害があっても生き生きと能力を発揮できる社会を主体的につくっていける人材を育てたい」と語る。

国は企業や公的機関に対して一定の割合で障害のある人の雇用を義務づけ、今年4月からは、音声読み上げソフトや筆談の導入など、障害の特性に応じた配慮をする「合理的配慮」が民間企業にも義務化された。障害者が社会に参加するための制度が整備されつつある一方で、「障害者を採用する企業の人事は合理的配慮の意味を知っていても、配属される現場での理解が進んでいない」と石原学長は言う。

障害者政策をつくる人育てる

新学部で重視するのは、必要な支援と権利を自ら説明する「セルフアドボカシー」と、意見を伝えるために自分に自信を持つための「エンパワーメント」だと石原学長は説明する。在学中は、誰もが必要とする情報に簡単にたどり着き利用できる「情報アクセシビリティ」や、障害と社会の仕組みを学ぶ「障害社会学」などの授業を通じて人権意識を身に付ける。一般的なインターン制度よりも長期間、企業や公官庁で就業体験をすること通じて、より実践的な職場体験を積むカリキュラムも設ける。

さらに、バリアフリーに対応する企業に障害当事者として意見を伝えるなどし、社会の一員としての意識を育てるとする。他大学と共同で授業を行うなどの連携や、新学部内で視覚障害学生と聴覚障害学生が同じ教室で学ぶ授業を通じて自分の障害を客観的に知る機会を積極的に設けるなどするという。

石原学長は「周囲との関係の中で、適切な環境を自発的に作るための具体的なスキルを在学中に身に付けさせたい」とし、「障害のない人と障害者が同じ暮らしを送ることができる環境作りを、国や自治体の中に入り、政策として築いていける人材を育てたい」と話す。

「昔は(障害者は)かわいそう、自分の身内に生まれるとできるだけ隠しておこうという時代があり、障害があることで、どうしても遠慮してしまう人もいる」とし、「これからは、それぞれが身を置く場所で生き生きと能力を発揮できる、自信を持って自分から前に出ていける学生を育てていきたい。今は、社会環境が整備され、将来の可能性はますます広がっている。障害があってもなくても、誰もが幸福に生きられる社会の実現を目指し、それぞれの社会環境に合わせて能力を発揮できるような意識と意欲をもってこの大学に入ってきてほしい」と呼び掛ける。(柴田大輔)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

筑波大「野球・ソフトボール室内練習場」整備へ 関彰商事が運営

最先端のスポーツ科学生かし運動分析とコーチングを提供 筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)は民間資金を活用し、大学構内に新たに「野球・ソフトボール室内練習場」を整備する。関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)が費用を負担して施設を整備し完成後は同大が所有する。来年9月のオープンから2041年3月まで15年間は関彰商事が施設を管理運営し、事業収入を得て、整備費用などを回収する。 投球や打撃の動作や弾道などを測定し分析する最新の機器を備える。野球の動作分析とコーチングを研究する同大の川村卓体育系教授の知見を生かして、様々な選手に最新のスポーツ科学を基にした運動分析やコーチングを提供するのが特徴となる。平日昼間は大学の授業や硬式野球部の活動で使用し、平日夜間と休日は、一般向けにスクールや運動分析プログラムの提供などをする。 大学構内の野球場北側に新設する。10月に着工、来年9月1日の開設を目指す。 室内練習場の敷地の広さは約3200平方メートル、施設は1階建て鉄骨造、延べ床面積約1700平方メートル。内部はトレーニングエリア、打撃エリアとブルペン、ウエイトトレーニングエリアなどがあり、打撃レーン3カ所、ブルペン2カ所、フリーのトレーニングエリアなどで構成される。エリア間は用途に合わせ、可動式の間仕切りで仕切って利用することもできる。 各エリアに最新の測定機器を備え、質の高いトレーニングができるほか、それぞれのエリアでパーソナル指導を行ったり、個人練習やスクールの運営などを実施する計画だ。 同大にはこれまで野球・ソフトボールの屋内練習場がなく雨の日は練習できなかったことなどから、大学資産の有効活用を目的に同大が昨年12月、公募を実施し事業者を選定した。一方、関彰商事は昨年、スポーツアナリティクス事業を立ち上げた。

1年後の私へ、生き延びていますか?《電動車いすから見た景色》59

【コラム・川端舞】2025年10月の私は、ちゃんと生きていますか? つくばを離れ、群馬に引っ越して、半年たった頃だと思います。少しは新しい生活に慣れてきましたか? 2024年10月、今の私は自分を押し殺して、何とか生き延びています。曲がりなりにもライターである私が、自分の思いを素直に書けないのは、想像したより辛いことでした。未来の自分になら少しは本音を書けると思い、手紙を書きます。私にとって、言葉を綴(つづ)ることは生き延びるための処世術だから。 言うまでもなく、障害者は社会から生きづらさを押しつけられる存在です。この社会は障害者の存在を前提にしておらず、障害者のことはあくまで例外としか考えていないから。そんな中、車椅子でそのまま室内まで入れるアパートを群馬で見つけられたのは奇跡だと思います。健常者なら、アパートの室内に入れるかどうか、心配することさえないのでしょうが。本当に羨(うらや)ましいです。 社会から常に爪弾(はじ)きにされてきた障害者なのだから、同じように社会から差別されてきた女性や性的少数者たちの立場も理解できるのでは。今から1年前の私はそう信じていました。しかし、それは幻想なのかもしれません。障害者団体の中にも女性や性的少数者に対する差別が歴然とあることを、この1年で私は痛感しました。 当然ながら、障害者団体の中にも女性や性的少数者はいるはずなのに、彼ら・彼女らの声は軽視されがちであることに、私は気づいてしまいました。「そんなことはない。それは、あなたが対話をしなかったからだ」と、私を責める人もいるでしょうが、この1年、私がどれほどもがき苦しんだか、未来の自分なら分かってくれますよね? もう少し上手な対話の方法があったのかもしれませんが、私にはあれが限界でした。私は負けたのです。 来月でこのコラムも最終回 私は来年、15年暮らしたつくばを離れ、故郷の群馬に引っ越そうと思っています。群馬には、以前から関わりのある性的少数者の支援団体もあるので、その団体とも繋(つな)がりながら、障害者と性的少数者の連帯を模索するつもりです。 このコラムも、次回で終わりにしようと思います。ちょうど60回、丸5年で幕を下ろすことになります。私の拙い文章を毎月読んでくださった方がいるのなら、ライター冥利(みょうり)に尽きますね。最終回のコラム、私は何を書くのでしょうか。それでは、お元気で。誰かの評価を得るために、無理に頑張らないでください。 あなたの悪い癖です。そんなことより、自分で自分を認められるような生き方をしてください。(障害当事者)

棄却も「市政の信頼大きく損ねた」 つくば市監査委員 生活保護行政の不適正事務

生活保護行政をめぐって、つくば市で不適正な事務処理が相次いでいる問題で、元市議の塚本武志さんが市監査委員(高橋博之委員ら)に出した住民監査請求(9月7日付)の結果がこのほど出された。生活保護費の過払いや過支給は「違法・不当な公金の支出に当たる」と認定しながら、「市の損害が確定していない」などとして請求を棄却とした。一方で「市民の市政に対する信頼を大きく損ねた」とし、「不適正な事務を一掃するという覚悟を持って今後の業務に取り組む」よう求める意見を付けた。 監査請求は7月に出された。生活保護費の過払いや過支給によって市に生じる計約3842万円の損害額について、市長や歴代管理職が同額を市に返還するよう求めていた。9月には、昨年まで生活保護業務を担当していた現役の市男性職員が請求者代理人として異例の陳述を行い「不適正事務の原因は、市が発表しているような管理職の認識不足などではなく、ずさんな債権管理と、誤った支給が発覚するのを恐れた管理職の故意、重過失が原因だ」などと告発していた。 監査結果は9月27日付で出された。各誤支給に対しては、市が現在、生活保護受給者に対し返還を進めており、市の損害額はまだ確定しておらず「対象職員に対する損害賠償請求権は成立していない」などとした。さらに、市の損害が生じた場合、市は対象職員の損害賠償も検討すると主張しているので、市の損害が確定した後、職員の損害賠償責任を判断すべきだとした。 その上で再発防止策の検討として、統一的な手順で正確な業務遂行ができるよう事務処理マニュアルを整備し、制度の理解を深めるため、職員を外部機関への研修に積極的に参加させるなどを求めた。 監査結果に対し請求人の塚本さんは「残念な結果。損害額が確定してないと言っているが、確定している額もある。でたらめな福祉行政だったことを示しており、きちんとやってほしい」と話し、今後、住民訴訟の訴えを起こすか否かについては「関係者と協議したい」とした。請求代理人として陳述した市職員は「(結果については)残念。時効確定分の4分の1は市の損害額として確定しているので、もう少し踏み込んで議論していただきたかった」とする一方、監査委員が付けた意見について「あまり例を見ないものでしょうし、職員の責任について言及した点については一定の評価をしている」とした。 一方、五十嵐立青市長は11日の市長定例会見で「真摯(しんし)に受け止めたいと思っている、調査を進めながら速やかに改善を進めたい」とする一方、今後の調査のスケジュールについては明らかにしなかった。(鈴木宏子)

インドレストラン・ニューミラ《ご飯は世界を救う》64

【コラム・川浪せつ子】インドレストラン・ニューミラー(つくば市天久保)は、東大通沿いにある筑波実験植物園のお隣。市内でインドの方が経営しているお店の中では老舗中の老舗。つくば市内、その周辺地域は、インド料理屋さんが多めです。 インドカレー初体験は、洞峰公園付近を散歩していて見つけたお店。カレーもおいしかったけれど、ナンの大きさとお代わりできちゃう、太っ腹精神。それから病み付きになり、本場のカレーを求めていろいろなお店を訪ねました。 インドネパール料理・マヤデビ インドネパール料理・マヤデビ(つくば市竹園)もかなりの老舗店。スーパー近くで便利です。マヤデビとは、お釈迦(しゃか)様のお母様、マヤ夫人にちなんだ名前だそうです。店内テレビではインドの映画や風景を映していて、これも楽しいです。 ひよこ豆などの食材も大好き 実は、私は辛いのが苦手。インドのカレーは激辛もあるけれど甘口もあって、本当にうれしい。辛くなくてもカレー? カレーは元々、スパイシーに重点があるのです。南インドの方と3年間ほどお付き合いしたとき、各種スパイスを見せてもらい、カレー以外のお料理もたくさん食べさせてもらいました。 また、インドカレー屋さんでのお気に入りは、ひよこ豆などインドの食材を販売していることです。ひよこ豆は、ヒヨコのように鳥のくちばしのような突起がでて可愛いです。一度にたくさんゆでて、小分けにして冷凍。良質な植物性たんぱく質が豊富に含まれているので、料理のトッピングに最高です。(イラストレーター)