日曜日, 2月 22, 2026
ホームつくば変わりゆく公務員宿舎映す2つの作品展 つくば美術館

変わりゆく公務員宿舎映す2つの作品展 つくば美術館

解体が進むつくば市内の公務員宿舎に焦点を当てた映像と写真などによる二つの作品展が同市吾妻、県つくば美術館で、同時開催されている。市内在住の美術作家、河津晃平さん(27)と、つくば出身の作家、松﨑綱士さんによるもの。変化する研究学園都市の姿を異なる視点で捉えた作品が並ぶ。

建物が持つ「気配」を表現

第1展示室で開かれているのが、河津さんによる「あなたの灰の中の骨へ 骨の中の灰へ」。役目を終えて解体を待つ公務員宿舎が持つ「気配」を、写真や動画、オブジェなど約30点を通して表現する。

福岡県出身の河津さんは2015年、筑波大進学を機につくばに来た。卒業後は東京芸大大学院に進学し、修了後はつくば市を拠点に作家として活動を続けている。

今回の展示作品のモチーフとなった公務員宿舎への関心は、筑波大在学中、教員に連れられ解体現場を見たのがきっかけになった。住む人がいなくなった無数の空き部屋から人が暮らした痕跡を取り除いた時に何が残るのか。その先で感じる気配を感じたかった。

大学時代は自転車で国内外を旅していた河津さん。作品制作のスタートは、学部時代に制作した1本の映像作品だった。7分28秒の作品には、大学内の教室や廊下、集合スペースなどから人が消えた無人空間が映し出される。主に、コロナ禍で学生がいなくなった大学内で撮影した。非日常の中で河津さんは、静寂に包まれたかに見える場所から聞こえてくる音に気がついた。自動販売機や空調、屋外で揺れる木々の音。それまで気づかずにいた空間にある多様な「気配」に美しさを感じた。その感動が、河津さんの、その後の制作活動の原点になった。

制作活動の原点となった映像作品「Room for」も上映されている

今回展示されている作品制作は、許可を得て、200軒あまりの公務員宿舎の空き部屋を訪ね、その中で約100軒の部屋で人の痕跡に向き合うように室内を清掃することから始まった。その様子は動画として記録し、解体される宿舎の映像とともにスクリーンで流される。また、掃除を経た室内の写真が大判プリントで壁面に展示される。

河津さんは「(作品の)モチーフである空間が解体を迎えるという現実にどう向き合えばよいか考えるようになった」という。そして「都市が新陳代謝しているのを前にして、この街に暮らす一人として、それをただ傍観するのではなく、どんな眼差しを向けられるのか。そこにどう参加しアプローチができるのかを作品を通じて一緒に考えていけたら」と話す。

解体される「故郷」を記録

第2展示室では、つくば市出身の作家、松﨑さんが記録した、解体される宿舎の写真と映像作品約50点が展示されている。6、7歳まで自身が暮らしていた「故郷」の記録でもある。「個人的に記録しておきたい」と考えたのがきっかけという撮影は、2018年から始まり、コロナ禍を経て23年末まで続いた。写真作品は、細部まで鮮明に記録することができるフィルムの中判カメラを使用した。

解体されて空き地となった公務員宿舎跡地を撮影した松崎さんの作品

「ロケットには宇宙人が住んでいるという噂があった」と話す。自宅があった宿舎からもよく見えたという、つくばエキスポセンターに現在も立つ高さ約50メートルの実物大のH2ロケット。90年代に過ごした街の記憶が、解体途中の建物の背景に写される。

来場者からは「何気なく横を通っているだけでも、公務員宿舎があるだけで良かった」「まだ住めた。もったいなかった」という声もあったという。松崎さんは「人が暮らすことがなくなっても、地域にはそこを拠り所にする人がいるのだと知った。意味がある場所だった」と感じたと話す。近所に暮らしていた人との思わぬ再会があったのも、つくばで展示をしたからこそだった。

写真には、自身のノスタルジックな感情はあえて入れずに客観性を大切にしたという。「何かメッセージがあって撮ったわけではないが、記録として見て、何かを感じてもらえたら」と松崎さんは呼び掛ける。(柴田大輔)

◆河津さんによる作品展「あなたの灰の中の骨へ 骨の中の灰へ骨」は、県つくば美術館第1展示室で6月30日(日)まで。松崎さんによる作品展「アーキテクチュラル・パリンプセスト」は、同第2展示室で23日(日)まで。それぞれ、開場は午前9時半から午後5時まで。最終日のみ午後3時まで。月曜休館。入場無料。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

3 コメント

3 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

新党「中道」はこれからどうなる《文京町便り》49

【コラム・原田博夫】唐突に始まり、2月8日が投開票日だった総選挙は、自民党の歴史的大勝で、高市早苗首相の賭けは見事に当たった。急ごしらえの野党第一党、中道改革連合は壊滅し、議席数では3分の1に落ち込んだ。これほどのコントラストは、国民一般のみならず永田町の消息通や選挙プロも、事前には予想できていなかった。 実体のなかった新党「中道」の敗北を受けて、共同代表の野田佳彦(旧、立憲)氏と斉藤鉄夫(旧、公明)氏は責任を取り、ともに退任。敗退の原因は解明しきれず、「中道」の認知度も低いままだが、その新代表に小川淳也氏(香川1区、54歳)が選出され、幹事長には階毅維氏(盛岡1区、59歳)が指名され、新執行部が発足。翌18日には、特別国会で首相に指名されて、第2次高市内閣が発足した。 しかし、衆院を基盤とする中道は存在するも、参院では立憲と公明は継続し、国会議員総体では3党の連絡協議の場が設けられることになった。さらに、1976年総選挙以来の慣例で第2会派に当てられてきた衆院副議長ポストに関しては、打診された立憲・元代表の泉健太氏(京都3区、51歳)が拒否したため、石井啓一氏(比例北関東、67歳)が就くことになった。 気になる政治家、小川新代表 というわけで、新党・中道の船出は甚だ厳しい。小川新代表は、不退転の覚悟で議論を尽くして党内融和を図り、18日の議員総会では「巨大与党の権力の横暴や怠慢は絶対に許さない。権力監視の先頭に立つ」と言っているが、このスタイルは旧来の野党色を引きずっている印象がある。こうした対決色は果たして、有権者とりわけ20~40歳代にどれだけ届くだろうか。言い換えれば、無党派層に刺さるだろうか。 ここ数年の国政選挙で、国民民主、維新、参政、みらいなどの一点突破型新党が順繰りにそれなりの議席を確保してきたことを踏まえると、その時々のテーマやイシューに躊躇(ちゅうちょ)なく取り組む、進取性が求められる気がする。そうした潮目の変化を「つかむ」「引き出す」柔軟さと戦略性こそが、巨大与党に対峙(たいじ)するには必要ではないか。 たまたま私は、小川新代表と2000年ごろ、ロンドンで交流があり、その誼(よしみ)で夏の週末、リッチモンド野外で開かれたコンサートを家族連れで楽しんだことがある。 その時の小川氏の真摯(しんし)かつ謙虚な言動に感心し、政界に転じた後も折々の活躍を気にしてきた。この際、経済学者リカードの比較優位(自分の相対的に優位な分野に特化すべし)原理に基づいて、ご自分のキャラクターと年来のスタイルを貫き、かつグローバルに激動の時代の息吹を感じ取る柔軟性を発揮してもらいたい、と祈る。(専修大学名誉教授)

雪と氷とコハクチョウ《鳥撮り三昧》10

【コラム・海老原信一】今回の題は「雪と氷とコハクチョウ」ですが、北国に行けば普通に見られる光景です。県南地域ではどうでしょう。寒さが募る1~2月、時々雪が降り、公園の池や沼も結氷します。洞峰公園の沼でも、日陰になる場所の雪や氷が溶けることなく、厚さを増すことがあります。そんなときはカモたちの様子を楽しめます。 しかし、ゼロではありませんが、つくば市の洞峰公園の沼にハクチョウが飛来することはあまりありません。20数年前に数羽の飛来を確認できたのに、連続しての飛来がなかったのは残念です。 水戸市の大塚池や旧瓜連町の古徳沼は、ハクチョウの飛来地として知られています。土浦市の乙戸沼もハクチョウの飛来を楽しめる場所です。私の記憶では、主にコハクチョウでしたが、数羽で飛来したハクチョウが20~30羽に増え、多いときには90数羽にもなりました。 私が観察を始めてから数年、20羽前後で飛来していました。しかし、ここ数年は減っており、「気候温暖化」の影響かなと思っています。少なくなったものの、今でも12月末には飛来し、乙戸沼を散策する人たちは、2月中旬ぐらいまでハクチョウを楽しめます。 ところが、2025年12月末~26年1月初旬、その姿が見られませんでした。この原稿を書いている1月18日には飛来しているのか、分かりません。近日中に行ってみるつもりです。 降雪後の晴れて冷えた朝 乙戸沼でのことですが、「雪と氷とコハクチョウ」を経験できたことがあります。22年1月の雪が降った後の晴れて冷えた朝、水面は全面結氷。コハクチョウが数羽、岸近くの日が当たりそうな氷の上に身を伏せ、じっとしていました。 長い首を水中に差し込み、水底の水草の根などを食べる彼らにとって、氷が解けないことには食事ができません。人が与える食べ物を得るにしても、足元が氷では思うように動けません。身を守る上でも不利と思っているのでしょう。ひたすら氷解を待っていると、私は見ていました。 こういったコハクチョウの様子をうれしそうに見ている私を、彼らは「ひどい奴だ」と思っていたかもしれません。それでも「これからも来てほしい、楽しませてほしい」と、彼らの飛来を願っている私。そのために何ができるのかを考えながら、野鳥の観察を続けたいと思っています。(写真家) 追記:1月20日、11羽の乙戸沼飛来を確認し一安心。

つくば市平沢で林野火災 女性がやけど

【差し替え:21日午後2時35分】20日午後2時14分ごろ、つくば市平沢の山林で火災が発生、約3800平方メートルが焼けた。この火事で女性(73)がやけどを負い病院に救急車で搬送された。 火は同夜11時42分、延焼の危険がない鎮圧状態となり、21日午後0時半時点でほぼ鎮火した。市消防は完全に鎮火が確認されるまで引き続き巡回を続ける。 市消防によると、現場は社会福祉法人筑峯学園北側の山林で、市消防本部と消防団から消防車両14台と消防隊員ら75人が出動し、ジェットシューター(背負式消火水のう)などで消火活動を実施したほか、県防災ヘリコプターが上空から放水した。 鎮圧後も、残り火やくすぶりを完全に消し止める残火処理を含め、翌21日午後0時半まで、消火活動が実施された。 近くの人が庭先でごみを燃やし、燃え移ったのが原因とみられている。20日は筑峯学園の利用者らが一時避難した。

高市首相に土浦のレンコンをお届け 安藤市長ら

土浦市は、安藤真理子市長らが17日、高市早苗首相を表敬訪問し、生産量日本一のレンコンとレンコンの加工品を届けたと発表した。レンコンと花火を全国にPRしようと、安藤市長のほか、JA水郷つくばの池田正組合長、土浦商工会議所の中川喜久治会頭、市議会の勝田達也議長らが首相官邸を訪れた。 市によると、安藤市長らが、レンコンは穴が空いていることから先の見通せる縁起物の食材であることを説明したところ、高市首相は「今後、地方自治体の事業者の予見可能性を高めるべく、予算の組み方をがらっと変える」などと話したという。 表敬訪問にあたり高市首相には、贈答用の箱入りレンコン4キロ、レンコンが入ったレトルトカレー、レンコンの粉末が入ったバームクーヘンとサブレ―、レンコンと牛すね肉の煮物のレトルトパック、薄くスライスしたレンコンを油で揚げたレンコンチップスを贈呈したほか、今年度のれんこんグランプリ(1月30日付)で市長賞を受賞した羽成純さんのハス田で採れたレンコンを使ったきんぴらと酢の物を試食してもらったという。 土浦市長が首相を表敬訪問したのは初めて。地元選出衆院議員の国光あやの外務副大臣がとりもったという。