【鈴木萬里子】石岡市太田の日本画家で昨年6月に逝去した小林恒岳(こうがく)の未発表作品が、このほど夫人の志津江さんによって発見された。30号(91×65㎝)の「滝」という作品で、土浦市中央、土浦まちかど蔵「大徳」で開催中の「第8回緑炎会作品展」で初公開されている。
今年12月13日から北茨城市の県天心記念五浦美術館で開催される「追悼―小林恒岳展」の出品作品を整理していた志津江さんが、アトリエに保管されている作品の中から見つけた。志津江さんは「とても驚いた。1993年頃しきりに滝を描いた時期があったので、そのうちの1枚だと思う。アトリエには作品が重ねて置いてあり、ほかにも未公開の5~6作品が見つかった。6月に遺作展を予定しているので、皆さんにも驚いて見てほしい」と話している。
小林恒岳は、県立土浦一高、東京芸大卒。父親で日本画家の巣居人(そうきょじん)が創設した「新興美術院」の代表的な画家として活躍し、霞ケ浦をテーマにした初期の作品は環境破壊に警鐘を鳴らした。1987年に石岡市の吾国山中腹にアトリエを構え、霞ケ浦や筑波山など地域の自然を豊かな色彩で描き続けた。
生前、土浦市の日本画同好会「緑炎会」を指導していたことから、同会の作品展で初公開されることになった。
指導受けた8人が力作展示
緑炎会作品展は、会員8人がそれぞれ2~6作品を出品し、「滝」を合わせた38作品が展示されている。日本画の持つ柔らかな色合いが、会場の蔵と調和し、優美な雰囲気を醸し出している。
会は小林さん亡き後、講師を招かず、制作活動を続けている。尾島和子会長は「会員らが意見を出し合い、その意見を入れて描き直したり、和気あいあいとやっています」と会の現況を話す。
来場した土浦市の70代男性は「力作ぞろいですごい。特徴的な日本画の色合いに春の季節の深まりが感じられる」と話していた。祖母と一緒に来たという同市の6歳の少女は「絵の色がすごくきれいで見ていて飽きない。ばらの赤色がすてき」とにっこりしていた。
◆「第8回緑炎会作品展」は10日(火)まで。開館時間は午前10時~午後5時(最終日は午後3時)。入場無料。問い合わせは℡029・824・9209(尾島さん)
◆「小林恒岳ー遺作展」は6月2日(土)~6日(水)、四万騎農園石蔵ギャラリーで開催する。開館時間は午前10時~午後5時30分。問い合わせは℡0299・44・3305(小林志津江さん)
