水曜日, 5月 15, 2024
ホームつくば高校生に通学支援など つくば市新年度予算案 過去最大を6年連続更新

高校生に通学支援など つくば市新年度予算案 過去最大を6年連続更新

つくば市の五十嵐立青市長は1日、2024年度当初予算案を発表した。一般会計は前年度当初比3.0%増の1118億400万円、特別会計などを合わせた総額は同3.4%増の1763億8600万円で、いずれも6年連続で過去最大を更新した。主な新規事業として、人口増が続く同市に県立高校が少なく市外に通う生徒の通学費負担が大きいと指摘がある中、遠距離の高校に通う生徒に通学費の一部を支援する。

一般会計が3%(32億9400万円)増となり過去最大を更新した主な要因は、人事院勧告に伴って昨年12月議会で市職員らの給料や手当てなどを引き上げたことから人件費が同比7.7%(15億1900万円)増の212億円になったほか、民間保育園の増設や国の児童手当拡充により扶助費が8.1%(20億8200万円)増の278億6500万円となったことなどのため。

6000人に交付

主な事業の高校生の通学支援金は、公立、私立高を問わず、鉄道、バス、スクールバスなどで通学している高校生のうち、年間の定期代が計10万円以上の生徒に年3万円を交付し、6~10キロ以上離れた高校に自転車や原付バイクで通学する生徒に年1万円を交付する。新年度の予算額は約1億6100万円を計上し、約5000人に3万円、約1000人に1万円交付を想定している。つくば市在住の高校生は現在6000人程度で、市教育総務課によると平均通学距離は10キロほどという。県内では石岡、笠間、常陸太田市などが通学費補助を実施している。

児童生徒数の増加に伴う小中学校建設は、みどりの南小中学校が今年4月開校し学校建設のピークは超える。一方、24年度は新たに中根・金田台地区で小学校建設に着手する。建設費は24、25年度2カ年で計68億1600万円。みどりの駅北側の陣場地区などの人口増に対しては同地区3カ所目の学校の新設は実施せず、谷田部小学校に11教室などを増築するための設計費5200万円を計上する。増築校舎の完成は27年4月の予定。

不登校対策としては、小中学校の校内フリースクール設置校を現在の22校から全50校に増やし、3億500万円を計上して各校に専任職員と補助職員を配置などする。

スーパーシティの看板、ネット投票は実施せず

ほかに、スーパーシティの看板事業に掲げたインターネット投票は今年秋の市長選・市議選では実施せず、1300万円を計上して、投票箱を積んだワゴン車が障害者や高齢者の自宅前まで出向くオンデマンド型移動期日前投票を実施する。

昨年、環境省に選定された県内初の脱炭素先行地域づくり事業として、初年度となる24年に1億4000万円を計上し、大和ハウス工業が20街区プロジェクトに太陽光発電設備を設置するなど計5件の事業に着手する。

コミュニティバス「つくバス」は、運転手不足による2月からの減便に伴い、運行費などが23年度の3億7500万円から24年度は3億3500万円に約4000万円減額する。

旧上郷高校跡地に建設予定の陸上競技場は28年度下期完成を目指し、24年度に設計費5080万円を計上する。

中央図書館をリノベーション

中央図書館はリノベーション事業に着手、24年度は外壁改修工事費約610万円を計上し、中庭に面する外壁の改修と中庭の枯れたアカマツの伐採などをする。25年度は中庭に面するガラスを一部取り外して中庭への出入口を設け、中庭にウッドデッキを設けるなどする。

解体、撤去する計画だった茎崎老人福祉センターは、市民のたまり場・居場所づくりの一つとして、入浴施設を改修する。2026年度のリニューアルオープンを目指して、24年度は300万円で改修のための設計を実施する。

不交付団体に

一方、歳入は、自主財源の市税合計が1.7%増の526億6400万円となり、不交付団体となる見込み。市税の内訳は、人口増により個人市民税が3.2%増の208億4600万円、家屋の新築などにより固定資産税は1.8%増の231億2700万円を見込むのに対し、法人市民税は大口の立地企業による業績の下方修正があったなど23年度の実績を踏まえて、6.6%減の42億8300万円を見込む。

借金である24年度末の一般会計の市債残高は、前年度末より43億3200万円増え、721億7400万円になる見込み。水道事業など公営企業会計を加えた市債残高の合計は、同69億1900万円増え、1259億8700万円になる見込み。

新年度予算案は13日開会の市議会3月定例会に提案し審議される。(鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

5年ぶり200人規模に 18日 恒例の田植祭 JICA筑波

20年以上続く恒例行事の田植祭が18日、国際協力機構(JICA)筑波センター(つくば市高野台)内の水田で催される。当日は、JICA筑波で農業技術などを学ぶアフリカ、アジア、中南米からの研修員と地域住民が力を合わせて苗を手植えする。コロナ禍で2020年から2年間は開催が見送られ、昨年までは人数を制限して開催だった。今年は5年ぶりにコロナ前同様の200人規模での開催となる。 当日は「ネリカ米」を使ったエスニック料理の試食会もある。ネリカ米はアフリカの食糧事情改善を目的に開発され、JICAも品種開発と普及を支援する。 「日本は途上国を一方的に支援しているわけではなく、開発途上国に支えられている」とJICA筑波連携推進課の西岡美紀さん(38)はいう。食料自給率は4割未満。さらに近年は労働力人口の減少から、途上国とのつながりなしでは人手不足も解消できなくなりつつある。「田植祭の目的はJICA筑波の活動を知ってもらうと共に、交流を通じて、地域の方に日本と世界のつながりや途上国への関心を持ってもらうこと」だと話す。 つくばだからこそできる国際協力 全国に15カ所あるJICAの国内拠点の中でも特に農業に特化する筑波には、各国の政府機関や自治体から来る年間700人余りの研修員が、それぞれの国が抱える課題を解決しようとやってくる。各国の主要な作物について、品質や収量の向上、病害虫対策など、研修員は自国が直面する課題に対する実験計画を立て、日本の指導員と取り組み、最後にテクニカルレポートを作り上げて帰国する。 研修業務を担当する須田麻依子さん(45)は、近隣にある多様な専門機関と連携できるのがJICA筑波の特色だと話す。「つくばには、近距離に専門機関がたくさんある。気候変動を例にすると、農業分野でどう適応していくかを学びたい方がいれば農研機構の専門家にレクチャーしてもらうし、森林分野の問題では森林総研に最新の研究について講義をお願いする。筑波大の先生から海岸地域の気候変動対策に関するお話を伺い実際に施設を見せてもらうこともある。バスで15分も行けば専門家から直接レクチャーが受けられるのは国内でここだけ。オンラインで海外や日本全国の専門家と接続することは可能だが研修でしか学べないことがたくさんある」と話す。 道の駅を自国でオープン 近年は農業県である茨城の特色を生かし、自治体や農家を交えて多角的な視点で農作物に付加価値を付け、市場を広げる研修にも力を入れている。道の駅のアイデアを自国に持ち帰り、実際にオープンさせた例もあるという。 2020年からは研修員と、途上国での活動に関心を持つ企業や大学を結びつけるためのプロジェクト「農業共創ハブ」をスタートさせた。「企業にとっては現地の人の声を聞ける機会になり、研修員にとっても企業から話を聞くことは非常に有益。JICA筑波がハブとなり、日本の民間企業や大学と途上国のつながりが生まれるよう立ち上げた」と連携推進課の西岡さんは言う。 18日の田植祭は、交流を楽しみにする地元住民らから多数の応募があり、予定より早く募集を締め切った。 「アフリカでも若者の農業離れが進んでいると聞く。田植えは研修員にとっても日本人との貴重な交流の場。日本語を勉強している人もおり、地域の日本人との交流の機会になってよかったと言っている。双方向の文化の理解につなげたい」と西岡さんは企画への想いを語る。(柴田大輔) ◆田植祭は5月18日(土)午前10時40分から12時30分まで。場所はJICA筑波圃場内にらう水田で開催する。秋には収穫祭が予定され、例年9月に研修員と稲刈りを楽しみエスニック料理を食する。詳細はJICA筑波ホームページへ。

すてきな「つくばローズガーデン」《ご近所スケッチ》10

【コラム・川浪せつ子】「せめて連休中に咲いてほしいなぁ」と思っていたら、温暖化のせいか、バラの開花時期が数年前から半月ほど早まりました。今回のテーマは「なぜ人は絵を描くのか?」です。 2年少し前、実母が没した年齢を超えました。いつ「お空」に行くか、わからない。じゃあ、仕事を辞めて本当に好きなことをしよう。絵を描くことに集中しよう、という思いはよかったのですが…。 人生いつまでたっても、たくさん初体験。今年は3カ月半の間に5回も絵の展示。必死でお絵かき。 そうしたら、首から肩の痛みが取れない。絵だけの生活になって、ひどいギックリ腰を2回。展示会前日の夜まで描いているため、膀胱炎にも。疲労から?仕事では締め切り前に徹夜もして、どうにか乗り越えてきましたが…。 24時間絵のことばかり考えて 年齢を重ねたからということだけではなく、24時間絵のことばかり考えて…。仕事はルーチンワーク。自分の絵は新規の世界。全力で毎日走っているような。 仕事をしていると通帳の残高の数字は大きくなるけど、お絵かき(趣味)は残高が減るの…。でも止められないのはなぜ? そんな中、絵の仲間がたくさんできました。結論は出せないけど、「山になぜ登る」というのに似ているかもしれません。 登ったその風景を見たいから。そして自分の登ってきた足跡を振り返ることができるのは「生きてきた」証拠。そんなことで病み付きになるのかもしれません。 今回の「つくばローズガーデン」(つくば市古来)は本当にステキ! 上の絵も下の絵も10年前くらいに描いたものです。(イラストレーター)

点字本で「宇宙と物質の起源」 高エネ機構、筑波技術大と共同制作

「私たちはなぜ存在できているのか」という根源的な問いに迫る研究の成果を、視覚障害のある人にも共有してもらおうと高エネルギー加速器研究機構(KEK、つくば市大穂)素粒子原子核研究所(素核研、齊藤直人所長)が点字本「宇宙と物質の起源 『見えない世界』を理解する」を制作した。点訳や図版を触ってたどる触図化などに筑波技術大学(技大、つくば市天久保)障害者高等教育研究支援センターのチームが共同で取り組んだ。 素核研は素粒子、原子核、宇宙という微細と広大の両極を対象に、理論と実験の両側面から研究を行っている。点字本プロジェクトは2022年春に始まった。人文科学系の図書は点訳が比較的容易だが、自然科学系の図書は内容に精通した点訳者が少なく点訳や触図作成が難しいため、あまり流通しておらず、視覚障害者が物理学など自然科学に触れるのは難しい状況だった。 研究が宇宙と物質の起源という「見えない世界」を扱うこともあって、宇宙や物質について「もっと知りたい、学びたい」という視覚障害者の思いにこたえるべく点字本を企画した。同書の原本になる同名タイトルの書籍は今年3月、講談社ブルーバックスシリーズから発刊になっている。研究者がこれまでの知見や、今後の研究で解明が期待されることなどをやさしく解説した入門書となっている。 点字本は、書籍の本文部分が掲載された点字版と、書籍の図の部分が掲載された触図版で構成されている。研究者10人が「宇宙は何でできているのか」「元素の起源」「質量の起源」「力の起源」などのテーマごとに分担して執筆した原稿を、技大のチームが点訳を行った。元素の遷移を元素・陽子・電子・ニュートリノなどの記号を用いて解説したり、物質に質量を与えるとされるヒッグス場のポテンシャルエネルギーを示す式を提示したり、丁寧に説明している。 技大では、在籍する視覚障害の学生たちのために普段から教科書などの点訳を行っているが、素粒子分野の点訳を執筆者と共同で行うことは初めて。一般的な点訳は、すでに出版されている書籍が対象のため、障害者にわかりづらい文章や図の表現が含まれている。そのような場合、点訳者が原本を解釈して点訳を行い、点字本を作成する。しかし今回は、執筆者が原稿を執筆した後、視覚障害当事者による試読を経て文章を校正し、障害者にわかりやすい表現に修正した。 特に、書籍中のグラフや概念図のほとんどを省略することなく、文章と触図で表現した。点字の専門家である大学教職員と素粒子分野の専門家である執筆者が昨夏の1カ月間、議論を重ねたという。 点訳チームのメンバーの一人で、視覚障害当事者でもある技大の田中仁講師は「点字は創案以来、見えない人たちの新たなチャレンジとともに進化してきた。言葉、楽譜、数式、化学式、情報処理、図・表にわたる点字表現の豊かさはそのチャレンジの証です。点字表現の可能性を信じて点訳した」とコメントする。 素核研の齊藤所長は「今回とても印象的だったのは、視覚障害者が視覚以外の情報から対象を理解しようとするその集中力と情熱の深さ。もともと目には見えない素粒子や量子場を研究している我々は、いわば手探りで理解を積み上げていくという意味では、視覚障害者と同じ立場にある。力を合わせて一緒に探求できれば、新たな理解が生まれるのではないか」と期待を述べた。 触図版は個人や大学、研究機関などに貸し出しが可能。「宇宙と物質の起源 『見えない世界』を理解する」(新書判320ページ、定価1320円=税込み)で執筆者の受け取る印税は全額、寄付され、視覚障害者向け図書普及のために使われるそうだ。 ◆素核研の点字本プロジェクトポータルページはこちら

悪役どくろ仮面の正体は?《映画探偵団》76

【コラム・冠木新市】映画が始まった。タイトルバックから月光仮面の登場で「どこの誰かは知らないけれど 誰もがみんな知っている」と主題歌が流れると、館内は少年少女たちの大合唱となった。私も歌った。映画館で合唱を経験したのは後にも先にもこのときだけだ。 『月光仮面』は、1958年に作られた国産テレビ映画で大人気を巻き起こし、東映で劇場用映画が製作された。原作は川内康範、主演は大村文武、公開は7月30日。夏休みのときだった。白ずくめのスタイルと黒のサングラスが印象的だった。敵は黒頭巾に銀色のどくろ仮面。白は正義、黒は悪。一目で分かる対照的なコスチュームだ。 月光仮面の正体は祝十郎探偵であることを、子どもたちはみんな知っていた。だが、どくろ仮面の正体は分からなかった。 国際スパイ団の首領、どくろ仮面には、多くの手下がいる。一つは、首領に似た白のどくろ仮面をつけた黒マントの手下ども。もう一つは、黒のソフト帽にトレンチコ一ト姿で顔半分を黒覆面で隠している部下たち。あと一つは、素顔をさらした部下たちで、三つのグループに分かれていた。 私は首領に似た仮面を付けたグループの位が上だと思って見ていたが、黒のソフト帽の男たちのほうがが上のようだった。いささか過剰な組織だが、序列がしっかり決められていた。一方、月光仮面側、つまり祝十郎探偵側には、助手の五郎八らがいるものの階級制はなく、チ一厶といった印象だった。 後編の『月光仮面 絶海の死斗』で、どくろ仮面の正体が分かる。実は善人と思われていた科学者の赤星博士が、悪の親玉だったのだ。演じていたのは佐々木孝丸。オ一バ一な演技ではなく、リアルな大人の演技を見せていた。後に、新劇界の名優だと知る。 正義のフリした悪いやつ 赤星博士は、世間に信用された科学者。私もまんまとだまされた。それにしても、あの3種類の部下たちをどこでリクルートしたのだろうか。部下たちにも科学者がいるのか。赤星博士にとっては、科学者の姿が仮面であり、どくろ仮面の姿が本性なのだ。世間の肩書やイメージを信用しない私のクセは、映画『月光仮面』から始まったようだ。 『月光仮面』を見た後、少しおいて別の東映作品を見た。題名は忘れてしまったが、なんと正義の味方祝十郎役の大村文武が、悪党一味のチンピラ役で出ていたのだ。子ども心に軽いショックを受けた。正義のイメージを裏切られたからだ。映画会社も残酷なキャスティングをするものだ。 当時、作品と作品、映画と現実は地続きに思えていた。だから、正義の味方も悪いやつに変わる場合があると知って驚いた。 ところでテレビの『月光仮面』だが、子どもが月光仮面ごっこでケガしたり、物語に悪い代議士が登場したりしたためか、「俗悪番組」のレッテルを貼られ、正義側のPTAのやり玉に上がり、打ち切りとなる。ひどい時代だった。 正義のフリした悪いやつ。悪いやつに見えるがいいやつ。何事もイメージに流されないように、注意深く観察して正体を見極めようではないか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)