つくば市が運行する乗合タクシー「つくタク」の運賃について、市が値上げを検討していることが分かった。旧町村区域などの地区内利用で現在1回300円(高齢者や障害者などは半額の150円)の運賃を3.3倍の1000円(同500円)に値上げする案が最有力だ。実施するのは2025年4月からで、インターネット予約の導入と合わせて値上げする方針。値上げされれば、つくタクの運行が始まった2011年以降、初めてとなる。
18日開かれた市公共交通活性化協議会で担当の市総合交通政策課が明らかにした。合併前の旧町村区域などを超えた地区外の駅、病院、大型商業施設、市役所など(共通ポイント)を利用する場合は、1回1300円(同650円)の運賃を1.5倍の2000円(同1000円)にする案が最有力という。
2022年度の実績で、市のコミュニティバス「つくバス」は利用者1人1回当たり357円の公費を投入して運行しているのに対し、つくタクは同3189円の公費を投入しているなどから、持続可能な地域公共交通サービスを継続するため値上げを検討する。
利用状況は22年度の実績で、地区内の利用が96%を占め、1回当たりの平均乗車距離は5.5キロ、運賃が半額になる高齢者の利用が9割を超えることから平均運賃は177円で、同じ距離をタクシーで移動した場合、2100円以上かかるとしている。
県南、県西の周辺11市との比較では、周辺市の運賃は1人1回当たり250~800円なのに対し、つくば市は実質177円で、乗合タクシーの運行経費に対する運賃収入は、土浦市が31.8%、牛久市が11.1%なのに対し、つくば市は5.5%と11市で最も低いとしている。
さらに23年度の一般市民アンケートでは、運賃の許容金額として500円が42.8%、300円が36.5%だったとしている。
その上で、最有力案で値上げした場合、年間運賃収入は現行の860万円から2600万円に増え、収支率は5.5%から16.6%に上がり、市の負担額は現在の1億4900万円から約1700万円減って1億3200万円になるとしている。
18日の同協議会では、値上げに対する異論は出なかった。
ネット予約、3分の1にとどまる
一方、現在、電話のみで受け付けている乗合タクシーの乗車予約については、予約が集中して電話がつながらない状況をなくすため、来年4月から全車両にネット予約を導入し、電話とネットの両方で予約できるようにする。AI(人工知能)で運行を最適化するAIオンデマンドシステムの機能を導入する方針で、導入にあたっては、事業者からプロポーザルでシステムの提案を受け、今年秋ごろ事業者を選定する予定だ。
導入に先立って昨年12月1日から今年2月末までの3カ月間、高齢化率が高い茎崎地区で実証実験が実施されている(23年12月28日付)が、昨年12月1カ月間の実績はネット予約の利用者が延べ73人で、電話予約と比べ3分の1にとどまっていることが18日の同協議会に報告された。
実証実験のために同地区では、運行している乗合タクシー3台のうち1台をネット予約専用、2台を電話予約専用に当てている。1台をネット予約専用にしたことで、電話予約専用の2台の利用が実証実験前と比べ17~19%増えたなど、最初の1カ月間についてはネット予約が浸透していないことが浮き彫りになった。
市は実証実験の開催にあたり、同地区に回覧でちらしを全戸配布したり、スマホアプリの使い方説明会を4カ所で開催したり、スマホ相談会4回開催したなど周知に努めてきた。
ネット予約の利用者が少ないことについて市総合交通政策課は「説明会では、スマートフォンに専用アプリをダウンロードすること自体、難しいという高齢者がいたが、24時間365日予約できるネット予約の方が、電話予約よりも早くて便利だということが浸透すれば利用は増えると思う」としている。(鈴木宏子)