土曜日, 11月 15, 2025
ホームつくば学校に必要な環境整備は【LGBT法、つくば市議アンケート】中

学校に必要な環境整備は【LGBT法、つくば市議アンケート】中

つくば市議26人へのLGBTに関するアンケート調査。後半は教育環境の整備について、各議員の考えを聞いた。

昨年6月に施行されたLGBT理解増進法では、学校は児童生徒に対し、性の多様性に関する理解を深めるため、啓発や相談体制の整備などに努めるものとされた。アンケート調査では「公立学校などで、性の多様性に関する啓発や相談、教育環境の整備をおこなうことは必要だと思いますか」と質問した。「必要、どちらかといえば必要、どちらかといえば必要でない、必要でない」のいずれかを選んでもらい、その理由と、必要だと思う場合は、その具体的な学校での取り組みの内容を、それぞれ50字程度で書いてもらった。

回答のあった16人のうち、15人が「必要」または「どちらかといえば必要」と回答した。具体的な取り組みについては多岐にわたったが、児童生徒・教員・保護者への「理解啓発」、当事者の児童生徒への「相談体制の整備」、性別に関係なく使えるトイレの設置などの「物理的環境の整備」、制服の選択制や、男女別名簿の廃止など「性別で分ける仕組みの変更」に大きく分けられる。

市学び推進課によると、現在、市内ほとんどの中学校・義務教育学校で、性自認に応じた制服を着用できるほか、必要な場合は多目的トイレや職員用トイレの使用を認めている。また、宿泊を伴う行事の際、部屋割りや入浴をどうするかは、児童生徒本人と話し合いながら決めているという。また、昨年度から4年間かけて、市内の学校の全教員に対しLGBTに関する研修を行うなど、悩みを抱える生徒が担任教員だけでなく、どんな教員にでも相談しやすい環境づくりを進めている。

各議員の回答は以下の通り(敬称略、議席番号順)。

小村政文 必要
(理由)家族になかなか打ち明けにくいことでもある。しかし、理解者や相談できる人がいないと、周囲を気にして本当の自分の素直な生き方を押し殺してしまう可能性があるため、教育現場で多少でも支えになる必要がある。
(具体策)性別に関係なく、様々な服装が選べるようにする。性別よりも、一人ひとりを個人として尊重した教育ができるように、教職員の負担を減らし、余裕をもって教育に励める環境整備。

川久保皆実 必要
(理由)性的少数者の児童生徒が安心して学校に通えるようにするため、及び性的少数者に対する差別の無い社会を実現するために学校教育は重要であるため。なお、LGBT 理解増進法においても努力義務として明記されている。
(具体策)性的少数者への理解増進に繋がる授業。教職員に対する研修。性的少数者に関する書籍、レインボーフラッグ、誰でもトイレの設置。制服の選択制または廃止。男女混合名簿。呼称を「さん」で統一。トイレや保健室などでの更衣、プールではラッシュガード(肌の保護)の着用、宿泊学習では個室の利用及び個室内シャワーの利用を認める。健康診断では他の児童生徒から見えないようパーテーションを設置する。学用品や掲示物の性別による色分けの廃止。各種書類の不要な性別欄の削除。

川村直子 必要
(理由)SOGI(性的指向や性自認)に起因するいじめ、その他の生きづらさが、不登校や、子どもの自殺にも繋がり、子どもの命に関わる大問題であるため。
(具体策)保護者にも打ち明けられない子が多いため、教職員のLGBTQへの理解は、子どもたちの命に直結する。そのため、教職員への研修が必要(現在進行中)。

中村重雄 どちらかといえば必要
(理由)LGBTは認知されつつあるが、まだ不十分な所もあると思うので、教育環境の整備も進めると良い。
(具体策)性別に関係なくスカートかスラックスを選べるようにする(つくばでも始まっている)。トイレ・更衣室の整備を進める。

あさのえくこ 必要
(理由)現在ほとんど保障された環境になく、苦しんでいる生徒が少なからずいると思われるから。
(具体策)いつでも相談できる体制の存在を児童生徒に周知する取り組み。当事者の希望を学校に表明できる機会の保障。保護者への啓発活動。

山中真弓 必要
(理由)子どもの時からの性の認識、性自認の教育は必要不可欠。相談窓口も各学校につくるべき。
(具体策)制服の選択制は、すでに市内で実施している中学校がある。ただし、セーラー服にはスラックスは合わず、履きにくいという意見がある。制服のデザインの見直しも必要。

小森谷さやか 必要
(理由)早い子では就学前から自らの性に強く違和感を持つことがあることから、なるべく早いうちに性の多様性について学ぶことが必要。
(具体策)授業で扱い、アウティングなど禁止事項も伝える。書類等の性別記入欄、男女別名簿をなくす。だれでもトイレ、更衣室を用意する。中学校で女子はスラックスを選べるが、男子がスカートを選べるようにはなっていないので、選べるようにする。

高野文男   どちらかといえば必要
(理由)多感な時期の小中高校生については、いつ頃から多様性に関しての啓発や相談を始めるべきなのかは個人差もあり繊細に対応すべきことだと考える。専門家からの意見等を参考にしていく。
(具体策)専門家からの意見等を参考にしていきます。

黒田健祐 どちらかといえば必要でない
(理由)つくば市では、教職員への啓発、また県からの通知を受け、各中学校において対応チームを作り個別対応している。まずは教職員が理解を深め、様々個別具体に慎重な対応が求められる。

皆川幸枝 必要
(理由)性自認が確立される小中高校生の段階で、当事者は自分のアイデンティティに深く悩む。その段階で、当事者も周りもLGBTQについて学び、理解を進めるべき。
(具体策)LGBTQについての授業。カウンセラーの配置。教員へ研修し、子ども達が相談しやすい体制作り。性別に関係なく使えるトイレを設置。制服の選択制。私服で通学可能にする。

五頭泰誠 どちらかといえば必要
(理由)上記質問と同じです(私のSNSにて、表記しています。ご一読ください)。         
(具体策)トイレなどは今まででよいかと。

木村清隆 必要
(理由)LGBTを理解しえある児童生徒の成長過程を創る事が大切。LGBTを思い込みや一部の報道・噂などで得た情報・知識で、児童生徒が成長し良し悪しを判断するのは問題が起きる。
(具体策)児童生徒に対して取り組む前に、教職員の研修と保護者への啓発が大切。LGBTに対して、教職員と保護者がバランスの良い判断基準を持たなければ、児童生徒に対する言動(良し悪しの判断)で問題が起きる。児童生徒に対しては、様々な先進事例等を参考に取り組めば良いかと考える。

浜中勝美 どちらかといえば必要
(理由)H27年の「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応の実施等について」を確実に実施。
(具体策)PTA等での研修会や話し合いの機会を設ける。

橋本佳子 必要
(理由)固定観念を持たず、すべての人を認め受け止めるという視点を育てる事は子どもたちのその後の生き方につながっていくから。
(具体策)性別に関係なく使えるトイレ。男女分けする教育内容の見直し。

小野泰宏 必要
(理由)性の多様性に悩む児童生徒への不安や差別をなくし、有意義な学校生活を送れるようにするため。
(具体策)自認する性別の制服・衣服や、体操着の着用を認める等、従来のルールや扱いについて、「性の多様性」に基づく扱いに改める。

金子和雄 必要
(理由)一人ひとりの人権の尊重を守る取り組みの推進。つくば市の男女協働参画推進基本計画でも多く触れられているが、協働の対応で進めたい。
(具体策)学校教育を通じて今と将来を一人の人として生きていく教育として必要だから。

(川端舞)

続く

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緊急消防援助隊が合同訓練 1都9県の隊員ら1400人が集結 

県内で20年ぶり 大規模災害発生時に全国各地に駆け付ける緊急消防援助隊 関東ブロックの合同訓練が12日、土浦市小高にある採石場、塚田陶管柳沢工場の敷地内で実施された。1都9県(東京、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡、福島)の緊急消防援助隊による合同訓練の一環で、県内での開催は20年ぶりとなる。 12日と13日の2日間、土浦市のほか、ひたちなか、神栖、鉾田、鹿嶋、水戸市の13会場で、1都9県の緊急消防援助隊員や関連機関など約1400人が参加し、倒壊建物救助訓練、多数負傷者救助訓練、石油コンビナート火災対応訓練などのほか、宿営地設置・運営など後方支援訓練や、指揮本部運営訓練なども実施されている。 土浦の集落が孤立したと想定 訓練は、連日の大雨により河川氾濫や土砂災害が発生している中で、茨城県沖を震源とする震度6強の地震が発生したという想定で行われた。津波や大規模火災などが県内各地で発生し、多数の負傷者や孤立者が出た複合災害の状況を想定した。 土浦市の会場では、東京、埼玉、栃木の3都県の緊急消防援助隊210人と、茨城県内の消防広域応援隊14部隊60人が参加。同市東城寺地区の集落が土砂崩れにより孤立したと想定し、消防隊員らが専用重機で道路の障害物を除去したり、崩れた土砂に埋もれた車両や倒壊した家屋の中からの救助、ヘリコプターによる上空からの救助などの訓練が実施され、部隊同士や関係機関との連携、指揮系統の確認などが行われた。 ほかに自衛隊、国土交通省、茨城DMAT(災害派遣医療チーム)なども加わり、がれきが散乱して通行が困難な場所でも走行できる救助車両や消防ヘリコプター、照明車など約80台が救助訓練に当たった。 鬼怒川水害では支援受け入れ 緊急消防援助隊は、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに創設され、大規模災害時に消防庁長官の要請などにより、他の都道府県から派遣される。2011年の東日本大震災や24年の能登半島地震でも活躍した。県内では、15年の関東・東北豪雨による鬼怒川水害の際に支援を受けている。 緊急消防援助隊ブロック合同訓練は、1996年から全国を6ブロック(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州)に分け、各ブロック内の都道府県が持ち回りで実施してきた。茨城での開催は2005年以来となる。 茨城県消防安全課は今回の訓練について「県内での大規模災害の発生を想定し、近隣都県の緊急消防援助隊の応援を受け入れ、多くの関係機関とともに実施する今回の訓練は、受援体制の強化に大きく寄与する大変意義深いもの。本訓練を通じて、本県の受援体制の見直しを図り、茨城県緊急消防援助隊受援計画へ反映させていきたい」と話している。(柴田大輔) https://youtu.be/OkVy1R0cUdQ