リョウタとスミレ、終の棲家へ
土浦市中央の亀城公園で飼われていた2匹のニホンザルが14日、石岡市吉生の動物園「東筑波ユートピア」に引き取られた。23年を過ごした公園園舎からの引っ越し、世話をしてきた市シルバー人材センターのスタッフらは「寂しくなる」と見送った。
2匹はオスのリョウタとメスのスミレ、ともに生年は不明、公園での飼育は2001年にスタートしている。ニホンザルの寿命はほぼ25年とされるから、23歳を超えては相当な高齢。健康管理ができる環境が望ましいと判断した市は県動物指導センター(笠間市)と相談し、東筑波ユートピアに引き取ってもらうことにした。
同ユートピア事業は2019年、神奈川県川崎市に本社を置く猿まわしの会社、戦豆(せんず)へ譲渡されており、現在12匹のサルが飼われている。さらに旧小田原動物園(神奈川県)のサル7匹も受け入れることになっている。
2匹のうちリョウタはもともと東筑波ユートピア生まれで、群れから排除されたはぐれザルだった。かたや笠間市で農作物を荒らし回って捕獲されたのがスミレ。ニホンザルの習性から元の群れに戻すのは難しく殺処分もできないため、同指導センターの仲介で土浦市が引き取った。亀城公園では昭和30年代にミニ動物園を設置、サルやタヌキ、クジャクなどの鳥類を飼っていた施設があったためだ。
以来23年、2匹は公園の人気者となることはなかった。気性が荒く、人間ばかりか互いに敵意をむき出しにし、毛をむしり合って争うなど、つがいとは言い難い奇妙な同居生活を送ってきた。
公園を訪れる市民から「虐待ではないか」との通報もあったが、管理者の同市は園舎のサイズなど飼養状況は獣医師ら専門家から適正と診断されたとしてきた。
日常的な世話に当たってきたのが同市シルバー人材センターのスタッフで、計6人が当番制で毎日園舎を清掃し、1日1回のエサやりも行ってきた。
その担当スタッフが見守る中、引っ越しは14日午前から始まった。動物園の担当者がサルをなだめすかし、移送用のオリに追い込む作業が行われた。担当者の誘導に特にリョウタは終始抵抗し、約1時間かかる作業になった。
スタッフの1人、山崎さんは「面倒をみて3年、スミレはようやく慣れてきて、好物のサツマイモを持って園舎に入ると後からついてくるようになった。引っ越しは突然のことで驚いている。寂しくなる」と話す。
同社では「2匹は別個に飼う形になるだろう。他のサルと同じ猿舎で飼うことはない」とする。余生を過ごす終の棲家(ついのすみか)が用意されそうだ。山崎さんは「必ず様子を見に行くからね、サツマイモを持ってくね」と見送った。
同市公園施設管理課によれば、亀城公園の園舎は「特定動物」飼育の許可を28年まで取っていたが、新たな動物を飼育する計画はなく、このまま廃止される見込みという。(相澤冬樹)
➡亀城公園のサルの過去記事は2019年1月11日付、同12月22日付
【15日午後1時5分】3段落目、戦豆の社長名に誤りがあり削除しました。