金曜日, 4月 10, 2026
ホームつくばコロナ禍経て次は自販機で逸品を発信 つくばの飲食店主ら

コロナ禍経て次は自販機で逸品を発信 つくばの飲食店主ら

駅前で冷凍食品販売

つくば駅前のつくばセンター広場(つくば市吾妻)2階ペデストリアンデッキに、県内の飲食店や食品加工会社自慢の加工食品を冷凍で販売する自動販売機が設置されている。コロナ禍、フェイスブック上で県内の飲食店のテイクアウト情報などの発信を続けた「旨がっぺTSUKUBA」(2020年4月10日付)が、同市中心市街地のまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(同市吾妻、内山博文社長)と立ち上げたプロジェクトだ。

つくば市竹園のうなぎ専門店「とよ長」を経営する豊嶋英之さん(46歳)が発起人となり、県内の飲食店有志数店舗と「旨がっぺTSUKUBA実行委員会」(川根せりな代表)をつくり運営する。今年の8月初めから販売を開始し、徐々に認知度も高まって販売数も増加しているという。

現在、自動販売機では、豊嶋さんのうなぎ店の豚なんこつの角煮、つくば市東新井のスペイン料理店「Spanish Bar Bonito(スパニッシュ・バル・ボニート)」のラムチョップグリルなどのほか、もつ煮、焼きサバずし、チャーシュー丼、ラーメンなど5店舗の6商品が販売されている。食品は電子レンジや湯せんで温めるなど簡単な調理ですぐに食べることができる。販売食品の種類は半年に1回程度、入れ替える予定だ。

プロジェクトの目的について豊嶋さんは「売り上げを上げるということよりも、茨城県のおいしい食材、食品を気軽に手に取っていただき、店舗に還元することで、地域を盛り上げていくことを目指している」と話す。

コロナ禍のダメージ続く

コロナ禍、飲食店は休業を余儀なくされるなど利用が制限されることも多かった。豊嶋さんらのフェイスブック「旨がっぺTSUKUBA」は、飲食店が個々に情報を発信するのではなく、一定のまとまりの中で地域に情報を届ける役割を果たした。

今回、新たに自動販売機での販売に着手した経緯について「やはりコロナで飲食店はダメージを受けている。そのような中、人の往来が多いつくばの中心部で、県内の飲食店などの商品を販売することは、お客様に喜んでいただけるだけでなく飲食店を元気づけ、勇気づける効果がある」と豊嶋さん。

つくばまちなかデザインと共同でプロジェクトを実施することについては「まちなかデザインとは理念が合致している部分も多い。センター広場では日々、人の集まるイベントが行われており、そうした場でプロジェクトを行うことは意義がある」と話す。

実行委員長を務めるつくば市在住の川根せりなさん(26)は「コロナ禍をきっかけに始まったプロジェクト。新しい商品の企画などで飲食店と協力させてもらっている。よりよいプロジェクトをつくっていきたい」と話す。

「自動販売機への出品店舗は広く募集している」と豊嶋さん。自動販売機を通した販売にあたって、各飲食店は、基本的な利用料を支払う。商品が売れ、利益が上がった場合は、出店店舗側の利益となる。自動販売機の運営には、自動販売機本体のレンタル費用、商品の入れ替えや釣銭の管理にかかる運用費用、電気代などがかかっており、これらについては出店店舗が支払う基本的な利用料の中から支払いを行っている。(山口和紀)

◆問い合わせ窓口はつくばまちなかデザイン(電話029-869-7229)へ。

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「おひたじ」のまち土浦《くずかごの唄》156

【コラム・奥井登美子】 「土浦は『おひたじ(醤油=しょうゆ)のまち』と聞いていたけれど…」 「うちの隣りのあの大きな倉も、昔、醤油を作っていたらしいわ」 「おひたじ、使い過ぎですよ。漬物にまでかけるのね」 私の母は明治時代、京橋で生まれて育った人。醤油のことを「おひたじ」と言っていた。常陸の国の「ひたち」が下町風になまって、「おひたじ」になったらしい。 私が3人目の女の子を出産したときだった。奥井家の親戚の男の人から「女っぱら…」と言われ、私は何のことやら、さっぱりわからなかった。家が重んじられた江戸時代、女の子ばかり産んでいる母親を「差別用語」でそう呼んだらしい。 まだそのような差別用語が、土浦には残っていたのかと、びっくりした。 醤油ジャブジャブの夫 私の夫、奥井清は94歳まで日本山岳会に入っていて、山登りを楽しみながら、明るく、たくましく生きて、天国にみまかった。 彼は76歳のとき、東京のお茶の水で大動脈解離を起こし、救急車で当時の東京医科歯科大学病院に運ばれた。大動脈の中膜が脳へ行く1センチ下からの解離で、脳味噌も何とか機能を保持しながら退院ができた。 3人の娘たちは、子育てしながら仕事をしていたが、介護の私を実に細かくサポートしてくれた。「女っぱら…なんて言われたけれど、女の子が3人いて本当によかった」。彼はしみじみとそう言って、3人の娘たちに感謝していた。 退院のときに医者から強く言われたのは、食事の塩分制限だった。お醤油をジャブジャブ使う夫の舌を、どうやって改造し、塩分を減らしていけばいいのか、私は途方にくれてしまっていた。 千葉大学病院で胃がんの手術をしていた外科医だった兄も、「大動脈解離の後、いつ何が起こるか分からない状態だから、2人とも覚悟して生活を変えなさい」と、心配してくれた。 医者の言うことは聞いてくれるが、私が言えば反発するに違いない。当時、霞ケ浦医療センターに栄養指導の部門があったので、そこへ2人で通院することにした。(随筆家、薬剤師)

「水エンジン」量産へ 東大発 宇宙ベンチャーがつくばに生産拠点

小型人工衛星向けの推進機(エンジン)を開発する東京大学発の宇宙ベンチャー、ペールブルー(Pale Blue 本社・千葉県柏市、浅川純社長)がつくば市内に建設していた「つくば生産技術開発拠点」の開所式が8日、大井川和彦知事、五十嵐立青つくば市長ら関係者30人余りが参加して催された。同施設では、同社が開発した「水」を推進剤とする独自のイオンエンジンの量産に向け、技術開発から製造、検査、出荷までを1カ所で完結させる。 拠点は、つくばエクスプレス(TX)万博記念公園駅周辺の工業地域に立地する。鉄骨造3階建て、敷地面積は約1900平方メートル。当初は25年8月の操業開始を予定していたが、実際の稼働は今年2月となった。 用地は県が土地区画整理事業を実施したTX沿線の上河原崎・中西地区内で、県有地をペールブルーが約9800万円で落札し、取得した。土地取得費を含む総事業費は約16億円。成長産業の本社や研究所などの誘致を目的とした県の企業立地促進補助金に、2023年12月に採択された。補助見込額は約1億5000万円。主に人材の雇用に対する奨励金として活用される。 施設内には、真空状態となった内部で機器の試験を行う真空チャンバー、振動試験機、クリーンルームなどの主要な設備があり、推進機の生産技術開発から最終検査・出荷までを自社で完結できる「一気通貫」の体制を構築した。 拠点は今年2月に稼働を開始し、現在は約15人が勤務する。生産拡大に合わせて段階的に人員を増やし、将来的には最大60人体制を目指す。生産技術や品質管理、調達などものづくり関連の人材を中心に採用を強化している。 県プロジェクトの目玉企業 ペールブルーは2020年、東大大学院で航空宇宙工学を専攻した浅川さんら研究者4人が創業した。従来の推進剤には毒性の高いヒドラジンや、希少で高額なキセノンが使われ、取り扱いに制約があった。これに対し同社は、安全で調達が容易な水に着目し、水蒸気やプラズマを噴射して推進力を得る独自の推進機「水イオンエンジン」を開発した。エンジンの重量は、水を含めて約1.5キロ、大きさは約10センチ四方と、従来型では難しかった小型化を実現。浅川さんは水の利点として「安全性、入手性、コスト」の3点だと説明する。2025年9月には宇宙空間で水イオンエンジンを稼働させることに、世界で初めて成功した。 同社が開発する推進機は、ロケットで打ち上げられた人工衛星が宇宙空間で切り離された後に初めて役割を発揮する装置で、推進剤となる水を宇宙空間に噴射し、その反動で衛星を動かす仕組みだ。機能は大きく四つある。衛星を目的の軌道に送り届ける「軌道投入」、空気抵抗や重力の影響で生じる軌道のずれを定期的に修正する「軌道維持」、運用を終えた衛星を大気圏に落下させる「軌道離脱」、増加が問題となっている宇宙ごみ(スペースデブリ)との「衝突回避」だ。 近年は多数の小型衛星を連携させて運用する「衛星コンステレーション」が急速に広がり、年間数千機規模の打ち上げが続く。衛星の数だけ推進機が必要となるため、需要は世界的に増加している一方で、供給が追いついていないと浅川さんは言う。 県は2018年、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携し宇宙ビジネスに取り組むベンチャー企業などを支援する「いばらき宇宙ビジネス創造拠点プロジェクト」を立ち上げた。大井川知事は開所式で「宇宙開発は新たな段階に入りつつある。つくばを中心に宇宙ビジネスに貢献できる企業を集積したい。ペールブルーはプロジェクトの中でも目玉の企業であり、県としてしっかりと支援していく」と述べた。 五十嵐市長は「世界から注目されるペールブルーの新拠点がつくば市にオープンしたことを光栄に思う」と歓迎し、約4年前から欧州の宇宙産業をリードするルクセンブルクの機関と連携協定を結び、市内のスタートアップを現地に派遣するプログラムを実施しており、ペールブルーの海外展開についても支援する意向を示した。(柴田大輔)