土曜日, 3月 14, 2026
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つくばに花咲く 匠の技に触れるイベント開催

14日、つくばセンター広場

科学の街・つくばで活動する、優れた技を持つ職人や芸術家らにスポットを当てるイベント「つくば音楽祭・つくばな匠」が14日、TXつくば駅前のつくばセンター広場(同市吾妻)で開催される。会場に設けられたステージでのライブ演奏とともに、職人たちがブースを構え、ワークショップや作品を通じて匠の技に直接触れることができる機会となる。

市内で家屋のリフォームや家具制作業を営む主催団体「MSO」の山崎誠治さん(68)は「昨年開催した『つくば音楽祭』に続くイベントで、その技術や歌声を肌で感じてもらいたい」とし、「今年はさらに『職人』にスポットを当てたかった。つくばで活躍する高い技術を持つ人たちと市民の出会いに場になれば」と企画への思いを語る。

県内唯一の刀匠

つくばで技術を磨く宮下さん=つくば市蓮沼、筑波鍛刀場

カン!カン!カン!

「筑波鍛刀場」(つくば市蓮沼)で、赤く焼けた鉄の塊に手槌(てづち)を振り下ろすのは、刀剣作家の宮下正吉さん(38)。甲高い金属音が室内に響くたびにオレンジ色の火花が跳ね上がる。宮下さんが行うのは、水で濡らした金敷の上で高温の鉄を叩く「水打ち」という作業。熱した鉄の表面に溜まる酸化鉄や不純物を水蒸気で飛ばし、表面を綺麗にするためのものだ。「火の仕事は手早くやる必要がある。限られた時間でいかに集中するかが大切」だと、額ににじむ汗を拭う。

宮下さんは、日本美術刀剣保存協会主催の「新作名刀展」で、2013年に新人賞と努力賞を受賞するなど高い評価を得てきた。刀鍛冶になるためには刀匠資格を有する刀鍛冶の下で5年以上修業し、文化庁主催の「美術刀剣刀匠技術保存研修会」を修了する必要がある。現在日本国内にいる刀匠は約250人。高齢化などによりその数は減り続けている中で、宮下さんは県内唯一の刀匠だ。

小学2年で奈良県からつくば市に家族と転居すると、茗溪学園中・高を経て群馬大学に進学し、超伝導に関する研究をした。日本刀との出合いは大学在学中。ある展覧会で人間国宝の故・大隈俊平の作品を見て「鉄そのものがもつ美しさ」に魅了された。卒業後は、正倉院に納められた刀子や稲荷山古墳から出土した鉄剣など古刀の復元を手がける刀匠・宮入法廣氏に弟子入りし、刀剣作家としてのキャリアをスタートさせた。「ふるさと」であるつくば市で工房を構えたのは2014年。以来、筑波山を望む田園地帯で美術刀剣を手がけている。

つくばでは、理系のキャリアを生かして物質・材料研究機構(NIMS)の鉄素材に関する研究に協力したり、中・高で所属していた吹奏楽部の仲間らと定期演奏会を開くなど、地域に根ざした活動をしている。

作品作りに欠かせないものとして師から伝えられたのは、「感じることの大切さ」だ。「それは『五感を鍛える』こと。幼少期から眺めてきた筑波山の麓で、自然に囲まれ仕事ができるのは何よりの環境」だと語る。イベントでは、金槌と鏨(たがね)を使い自分の名前をステンレスの板に刻む「銘切り」のワークショップを開催し、ネームプレートを作成する。「作業に触れてもらうことで、僕が抱いた感動を皆さんにも知ってもらいたい」と話す。

「参加型」作品で木の魅力を伝える

取手市の井野団地を利用した、取手市と東京芸大、URによる「井野アーティストヴィレッジ」にアトリエを構えるつちやさん=取手市井野、井野アーティストヴィレッジ

「木そのものが持つ音色だけでなく、加工の仕方で音の響きが変わるんです」

木による音の魅力をこう話すのは、つくば市在住の木工作家・つちやあゆみさん(41)。木材による大小さまざまな歯車やレール、木球を複雑に組み合わせ、それらがぶつかったり、転がったりしながら響かせる音や、木そのものの感触を大切にした作品を作っている。

今回のイベントに出展するのは、つちやさんの代表作である、人の背丈ほどの大型木琴「輪唱の◯(輪)」。階段状の本体の各段に木琴の鍵盤を1枚ずつはめ、上から木球を転がすことで鍵盤が鳴り、一つの曲を奏でる作品だ。2体で1組となる本作品は左右対称にできていて、設置の仕方でS字や円状に木琴の姿を変えられる。その曲線の内側に立つことで、木と木の柔らかい音が身体の周りを駆け巡るのを体感できるのも特徴だ。「日常の中に優しい時間をつくりたい」。そんな思いを込めた作品だと、つちやさんは話す。

同作品は2012年、凸版印刷社による無印良品のプロモーション企画で採用され、世界三大広告賞の一つとされる「One Show(ワンショウ)」のインタラクティブ部門「One Show Interactive(ワンショウ インタラクティブ)」でメリット賞を受賞した。

つちやさんが作品作りを始めたのは、会社勤務を経て2008年に進学した多摩美術大学でのこと。建築系の学部に入り、「ある空間に人が集まり行動することで、そこにどんな場が創造されるのか」を研究した。卒業制作では「実際に触れるものを作りたい」と木材を取り入れ、肌触りや音など木が持つ魅力に引き込まれた。

「輪唱の○(輪)」を訪れる人は、見るだけでなく、自由に鍵盤を入れ替えて、自分で好きに「作曲」や「演奏」ができる。作品がこうした「参加型」であることも、「空間」「場作り」を学んだつちやさんのこだわりだ。「作品があることで、そこに集まる人の間で思っても見ない行動やコミュニケーションが生まれることがある。お客さんが参加することで作品が完成する」。そのために、より自由に触れてもらえるよう丈夫さと安全性も重視する。

「音の作品」を作る背景にあるのが、幼少期に出会ったある作品だった。それは、自動で音を奏でる、モーターで動く鉄琴だった。つちやさんはその音に引き込まれながら、「好きに鍵盤をはめ替えて、自分の好きな曲を作れたらいいのに」と思ったという。

「見ているだけより自分も何かしたい。作品を使っている人が主役であって欲しい。自分が主役なのって楽しいじゃないですか」と微笑むと、「大人も子どもも楽しめる作品です。自由に触れて、遊んでもらえたら」と当日の来場を呼びかける。

つちやさんが展示する「輪唱の◯(輪)」。自由に鍵盤をはめ替えることで、大人も子どもも自由に曲を作ることができる(つちやあゆみさん提供)

その他、「つくばな匠」には、つくば市や国内外で活動する三味線奏者で和楽器職人の深田有馬さんや、市内在住の画家・上渕翔さん、染色家の飯塚優子さんによる「ぷにの家」、牛久市の人形映像監督・飯塚貴士さんら9組がブースを構える。

「つくば音楽祭」では、マリンバやジャズバンドをはじめ、ウクライナ、インドネシア、フィリピンなど国際色豊かな演奏とともに、三味線、人形浄瑠璃など14組がステージに上がる。(柴田大輔)

◆「つくば音楽祭・つくばな匠2023」は、10月14日(土)午前11時~午後5時、つくば市吾妻1-10-1 つくばセンター広場で開催。入場は無料。

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学生宿舎値上げめぐり紛糾 筑波大 大学側の強行姿勢に学生ら批判や撤回要求

平均1.4~1.5倍に 筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)が今年4月1日から実施するとしている学生宿舎の寄宿料値上げをめぐって、大学側の強行姿勢に学生や卒業生らから批判が高まり、学生たちから値上げ撤回を求める動きが相次いでいる。 値上げ幅は平均で1.4倍から1.5倍近くで、最大2.1倍。金額ベースでは7210円から最大で4万8750円の値上げになる。学生宿舎の居室は全部で3517室あり、例年新入生の約4割が入居している。賃料と分離して新たに共益費8600円を徴収する。 昨年12月10日、大学側が学生たちに向け、学内情報システムの掲示板で値上げを発表した。宿舎賃料値上げは2008年にも実施されたが、値上げ公表後に学生への意見聴取会を3回行うなど約2年かけて丁寧に実施した。しかし今回は発表が値上げの約4か月前と突然だ。 12月10日の発表について、複数の筑波大生は「事前予告も何も無かった。大学から『決定事項』と伝えられた」といい、大学公認の学生代表組織「全学学類・専門学群・総合学域群代表者会議」(全代会、大学の学生会や学生自治会に相当)にも大学側から事前通告は無かったと話す。 大学側が昨年12月発表した「学生宿舎寄宿料改定のお知らせ」によると、値上げの理由は▽維持管理費および光熱水費の高騰▽宿舎施設の老朽化に伴う修繕費の増加▽生活環境の維持、向上のための設備更新(居室へのエアコン設置)など。 大学の発表を受けて全代会は12月中、急きょ全学生を対象にアンケートを実施。回答した831人のうち現在宿舎に住んでいる学生が512人と約60%を占めた。 アンケート結果は、82%が通知時期について「遅かった」と答え、宿舎に住む学生に限っては83%が「通知が遅かった」と回答した。 宿舎に住む学生への質問では、大学への要望(複数回答)として、値段の維持(65%)▽値上げ幅の縮小(50%)▽学生との合意形成(36%)▽値上げの延期(34%)▽宿舎設備の改善(29%)と、値上げの凍結や値上げ幅縮小、値上げ延期を望む意見が多く寄せられた。 アンケート結果を受けて全代会は、今年1月7日付で学生担当の千葉親文副学長に対し▽値上げについて学生と議論を通じての合意の形成▽寄宿料、共益費の値上げを2027年4月1日まで延期▽経済的に困窮している学生に対して、援助の方法を用意し周知を行うことによって保護を与えること―の計3項目からなる要請書を提出した。 全代会とは別に、学生有志の団体「筑波大問題を考える会」も永田学長宛てに、値上げに関する事項などの質問状を提出している。 録音録画やSNSでの公表禁止 こうした状況を受けて1月20日、大学構内で初の学生向け説明会が行われた。学生によると、約4時間にわたり紛糾したが、説明会に関する録画録音やSNS上での公表禁止など、内容を非公開とすることを求められた。 その後2月15日、同大学OBで人権派弁護士として知られる指宿昭一弁護士が、筑波大生有志から相談を受け、説明会のやりとりの内容を自身の弁護士事務所の公式サイトで公表した。 公表文書などによると、千葉副学長は説明会では終始高圧的な態度で「学生さんが入る会議とか、ミーティングっていうのは存在しません」などと、学生軽視ともとれる発言をしたという。また賃貸住宅・アパートなどに住む借主の権利を定めた借地借家法の適用に関し「借地借家法の適用はノーです」などと話したという。 さらに、全代会が1月7日付で出した値上げ延期などを求める要望については、対応は行わない旨の発言があったという。 内容公表に踏み切った指宿弁護士はサイト上で「学生の言論の自由に対する不当な制限であり、憲法21条1項に違反する人権侵害行為」だと、外部への公表禁止を強いた大学当局を強く批判した。その上で今回の賃料値上げを「学生の生活の基礎となる寄宿料を一方的にしかも大幅に値上げすることは許しがたいことであり、しかも、その説明会の内容について批判する言論すら封殺するという行為は真理探究の場である大学がやってはならないこと」と、反対の姿勢を示した。 その後、2月16日に2回目の学生向け説明会が実施された。出席した学生によると、2回目は前回と違って副学長の態度は丁寧だったが、説明内容は前回と同じで、値上げ時期の延期や値上げ額の見直しは無かったという。NEWSつくばは取材を申し込んだが、大学側は「学内の事なので」などの理由で説明会の取材を拒否した。 学生有志が「撤回求める会」結成 大学側の強硬姿勢に対し、学生有志らは「筑波大学学生宿舎寄宿料増額の撤回を求める会」を結成。3月2日に大学側に賃料値上げ撤回や値上げ延期を求める要求書と交渉申入書を提出した。 申入書は、賃料値上げ撤回や値上げ実施延期の他に、学生宿舎入居者代表や全代会との協議や同意なしで値上げを行わないことや、学生が申し入れをしたことを理由に学業や生活上の不利益を一切与えないことの確約などを求めている。 同会代表の男子大学院生(22)は取材に対し「決して世間知らずの学生が騒いでいるわけではなくて、今回の(賃料値上げ)問題は大学の自治のあり方、運営費交付金を巡る国の教育施策のあり方にもつながってくる問題」だと話す。 同会ではネット上で署名活動も展開しており、同会の大学院生は「関心のある方は署名してくださるとうれしい」と呼び掛けている。 同会の申し入れに対し、同大広報局は取材に「学生からの要望について、大学の対応状況は公表しておりません」と回答している。(崎山勝功) 【メモ】学生宿舎は民間アパートと違い、敷金礼金などの費用や保証人、家賃保証会社の保証が不要で、初期費用が保証金3万円と入居月分の賃料で済むことから、地方出身の学生や外国からの留学生などの需要が大きい。ただしどの宿舎に入居するかは学生本人が選べないため、設備が古い宿舎に入居する事もあるという。▽4月1日からの値上げでエアコン未設置の居室については、エアコン設置までの間は月々の賃料から2500円を減額する。▽値上げ幅が最大の「ショートステイハウス一の矢32・33号棟」には、身体障がいを持つ学生向けのバリアフリー対応居室があるといい、筑波大生によると「つくば市内でも(民間アパートの)エレベーター付き物件は極めて少なく、電動車いすでの入居は困難」という。