火曜日, 1月 20, 2026
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長者と金持ち《ひょうたんの眼》61

【コラム・高橋恵一】岸田首相は就任以来、基本的な経済政策として、これまでの新自由主義的経済から、「新しい」資本主義を掲げ、「成長と分配の好循環」「コロナ後の新しい社会の開拓」を目指すとし、新たな経済対策として、物価高対策、賃上げ、国内投資促進、人口減少対策、国民の安心・安全確保を掲げている。

首相に有言実行してほしいのは、賃上げだ。それも、教師と看護師、介護職員の賃上げと働く環境の改善だ。経営者にお願いしなくても、配置基準と給与額は、政府が決められる。下からの「トリクルアップ」で、非正規雇用と人手不足を解消できる。

バブル期に至る前の日本経済は、高度成長期。国全体の経済力の拡大とともに、個人所得も豊かになったが、まさにバブルの言葉通り、安易な浪費を行い、将来の高齢化社会に備えた社会保障の仕組みや産業基盤、安定的な生活基盤の整備をおろそかにしてしまった。

当時、高度成長は、西欧諸国も同じであり、特に北欧は、堅実に社会保障基盤を固め、ジェンダーフリーの条件を整え、女性の社会進出を実現した。日本は、それを横目で見ていたが、21世紀の今日、両翼飛行の北欧諸国の1人当りのGDPと1.5翼飛行の日本の1人当り所得には、大差がついてしまった。

バブル崩壊後の日本経済は、停滞し、アメリカを習って、新自由主義経済に傾倒した。いわゆる小泉改革であり、経済の効率化、極限のコストカットであった。

アベノミクスの失敗

人助けが巡り巡って自分を救うという落語の枕で、「長者」と「金持ち」の違いについて、長者は周りのみんなも豊かにする人、金持ちは自分だけが豊かになる人と仕分けした。時代の寵児(ちょうじ)の投機家が「お金を儲けることは悪いことですか?」と発言したとき、私と友人の陶芸家は、同時にテレビに向かって「悪い!」と叫んだことを覚えている。一方が得することは、他方から搾取することだ。

日本のコストカットは、人件費。職場での人員削減で、女性や外国人、再雇用の高齢(?)労働者などを、安月給の非正規職員として置き換えた。これらの雇用形態をより定着させたアベノミクス政策は、格差社会を拡大し、日本の個人消費を30年以上停滞させているのだ。さらに、年金の値切り、社会保険料の値上げなど、弱者の収入を抑制した。

政府は、企業経営者に賃上げを要請しているが、株主の最大利益の確保を使命とする企業経営者に賃上げはできない。ノーベル経済学賞のジョセフ・スティグリッツは、新自由主義経済を批判し、公共部門が人々の真の需要を満たすサービスの提供を担うべきと主張している。

スティグリッツは「子どもや親をケアすることは、私達の人生で最も大切なことだから、子どもや親の面倒を見る人々、教師や看護師に、労働に見合った賃金を支払うべきです」と言う。その公共が実施できる賃上げは、労働力の需給を通じて、賃金水準を引き上げ、格差解消にもつながる。

真に人々が求める需要、賃上げで労働力を確保すべき課題は、人権問題、地球環境の回復など多様であり、大多数の人々の幸福実現に対応する支出は、応能負担の税で賄う公共部門の役割であろう。(地図好きの土浦人)

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