木曜日, 10月 16, 2025
ホームつくばルワンダで障害と向き合う 義足を作り続ける夫婦がつくばで講演

ルワンダで障害と向き合う 義足を作り続ける夫婦がつくばで講演

東アフリカのルワンダで義肢装具を製作し、紛争や病気で手足を失った人たちに無償提供するルダシングワ真美さん(60)と夫のガテラ・ルダシングワ・エマニュエルさん(68)による講演会が22日、つくば市吾妻、つくば市民ギャラリーで開かれる。障害者の自立生活支援に取り組む当事者団体「つくば自立生活センターほにゃら」(同市天久保、川島映利奈代表)が企画した。

2人がルワンダの首都キガリ市で活動を始めたのは1995年で、約100日間に80万人以上が命を奪われた「ルワンダ大虐殺」の翌年だった。96年にNGO「ムリンディ・ジャパン・ワンラブ・プロジェクト」を立ち上げ、97年から義肢装具の製作を開始し、これまでに延べ1万2000人以上に無償提供してきた。

危機からの再出発

「窮地からは脱して再オープンしました。今は日常に戻り、義足作りをしています」と、真美さんが現在の状況を語る。

2020年2月、夫妻の活動拠点であるキガリ市にある「ワンラブ・ランド」が突如、ショベルカーで壊された。そこには義肢装具の工房とともに、活動資金を捻出するために建てたゲストハウスやレストランがあり、地元の人たちも数多く働いていた。近年、度々洪水の被害に遭っていたことから、政府は一帯の住民に対して「また大雨が降る、今すぐこの場所を出るように」と、立ち退きを迫っていた。「すぐに移動はできない」と断るも、翌日には重機が押し寄せ家屋は取り壊された。

多くの時間と労力をかけて築いた施設が、目の前で壊されていく。あまりの衝撃に、「自分たちの活動に意味があるのか、本当に必要とされているのだろうか」と葛藤した。しかし「ルワンダで私たちにできることは他にない。これをやるしかない」と思い至った。

同年10月、施設再建の資金を募るためクラウドファンディングを立ち上げると、3カ月で1200万円を超える支援が集まった。この資金を元手に、翌年新たな場所に施設を新設した。

キガリ市の義肢製作工房の様子(同)

2人の出会い

2人の出会いは1989年。ルワンダの近隣国でのことだった。神奈川県出身の真美さんは当時、勤めていた日本の会社を辞めて語学留学でケニアを訪れた。そこで出会ったのが民族対立が続くルワンダから避難してきたガテラさんだった。ガテラさんは幼少期に受けた医療ミスで右足にまひがあり装具を付けていた。真美さんにとって障害以上に印象に残ったのは、大きな体とドレットヘアー、そして誠実で明るい人柄だった。

「私にとって、彼と知り合う以前に障害のある人との出会いはほとんどありませんでした。彼を通じて障害への純粋な好奇心を持ったんだと思います」

1991年にガテラさんが来日し、滞在中に壊れた装具を治すために訪ねたのが、神奈川県の「平井義肢製作所」だった。そこで目の当たりにした高い技術にガテラさんは「これをルワンダの人のために役立てたい」と思いを強くし、真美さんはその夢を実現するため平井さんの元に弟子入りを志願し、5年の修行の後に国家資格を取得した。ルワンダに渡ったのは大虐殺翌年の95年。その間ガテラさんはケニアへ逃れ無事だった。暴力の傷が色濃く残るルワンダで再会し、2人は新しい暮らしをスタートさせた。

ルワンダで気づいた「自由」

95年当時、町なかには手足を失った人があふれていた。初めての患者は地雷で足を失った男性だった。満足に材料が手に入らないなど予期せぬトラブルがあったが、無事完成すると、男性は、歩行訓練の中で徐々に、再び働くことへの希望を取り戻していったという。

以来、様々な障害のある人たちと関わってきたルワンダで、真美さんが居心地の良さを感じたのが「楽天的」なところだという。「うちにはレストランがあるので、障害のある人にお酒を振る舞うことがあるんです」と言いつつ、こんな例を挙げる。

「酔っ払って音楽があれば、みんな杖(つえ)つきながら踊るんですよ。それでお開きになると、2、3本、杖が置きっぱなしになってることがある。本来、杖ついて来たはずなのに、どういうこと?どうやって帰ったの?って、思いますよね。酔っ払って誰かに抱えられていったのかもしれないし、片足で歩いて帰っちゃったのかもしれない」

「酔っ払って転んじゃってる人もいる。ただの酔っ払いのおじさんと変わらないそんな姿を見て、いいなと思ったんですよね。誰だって酔って転ぶことあるじゃないですか。転ぶのはその人の勝手。障害があろうがなかろうが、私がタッチすることじゃない。杖を忘れて転ぶくらい放って置かれていい。それくらい自由がいいと思ったんです」

「日本では、転ぶ前に手を差し伸べたり、必要以上の心配をしてくれちゃうことがある。『これできないから、よろしく』って言われた時に、『はいよ』って手を差し伸ばせる関係がいいんじゃないかって。それが、お互いに気持ちがいい状態でいられる関係なんじゃないかって気がしたんです」

激動の30年と「アフリカの奇跡」

ルワンダは近年、「アフリカの奇跡」と呼ばれる高い経済成長率を記録し、国民が悲劇の記憶を乗り越えようとしている。また女性の国会議員の割合が世界1位となるなど、女性の社会進出でも注目を集めている。

真美さんはこれまで日本の「師匠」の元に約10人の若者を派遣し、技術を学ぶ機会を作ってきた。そのうち4人が独立して工房を構え、2人はワンラブ・ランドの工房で共に汗を流している。「大きな夢はないんです。このまま義足を作っていければいいなと思っています」と今後について話すと、「普通に場所を構えて、人が来るのを待って、地方に出向いて必要な人に届ける。後継者というか、任せられる人がいればいつでも死ねるかな、なんて思ってます」と語る。

30年の間にルワンダは大きく変化した。この激動の歴史の中に身を置いてきた記憶を語る講演会は、これまで全国で多数開催されてきたが、茨城では今回が初めてになる。(柴田大輔)

◆講演会「義足と歩むルワンダ」は、7月22日(土)午後2時から、つくば市吾妻2-7-5 つくば市民ギャラリーで開催。参加費は無料。申し込み・詳細はイベントの特設サイトへ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

「いっぱい笑った」つくばの保育園で初公演 イタリア劇団 ラ・バラッカ

0歳から6歳までの小さな子供たちのための演劇作品をつくるイタリアの劇団「ラ・バラッカ」の公演が16日、つくば市鬼ケ窪、私立みらいのもり保育園(久松恵園長)で催され、0歳から5歳の園児93人が笑ったり、立ち上がったりしながら、舞台を楽しんだ。同劇団が日本の保育園で公演したのは初めて(10月7日付)。 文化交流団体「日伊櫻の会」(沢辺満智子代表)が主催した。4歳の園児からは「全部おもしろかった」「もう1回見たい」「いっぱい笑って楽しかった」などの感想が出された。 一般向けの公演は19日につくばカピオホールで催される。今回の来日公演は関彰商事がスポンサーとなっていることから、セキショウグループの関耀会(葉章二理事長)が運営する保育園で一足先に特別公演が実現した。 言葉を使わず、身振りや動作だけで表現する40分間の二人芝居で、多様な家族の在り方を問い掛ける演目「ファミリエ」が上演された。舞台の道具をころがしたり、蹴ったり、2人でふざけ合ったり、マネキンにいろいろな服を着せたりしながら、ユーモアたっぷりに演じ、家族の多様性を表現した。 公演後は、共に舞台に立った芸術監督のアンドレア・ブゼッティさん(45)と俳優のロレンツオ・モンティさん(35)との交流の時間が設けられ、2人は「見てくれているみんなに(いろいろな服を着たマネキンが)どんな顔をしているのか、どんな家族か考えてもらいたくて、わざと顔が無いマネキンを使った」などと話し掛けた。子供たちからは「好きな食べ物はなんですか」という質問が出て、ブゼッティさんは「ピザ」、モンティさんは「ラーメン」と答え、会場を沸かせた。 公演後、2人は「0歳から3歳は目を見開いて、何が起こっているのか熱心に見て、スポンジにように吸収してくれる。3歳以上はいろいろな質問が出てくる」と話し「舞台を見て何かの答えを得るというよりも、見てくれた子どもたちが疑問をもって、お母さんやお父さん、友だちに話して、家族ってなんだろうと考えてくれたら」と述べた。 同園の久松園長は「身近なものを何かに見立てて遊ぶ『見立て遊び』や、別のものになったつもりで遊ぶ『つもり遊び』は子供たちの世界を広げる。ラ・バラッカの舞台は言葉が無いからこそ、子供たちの心に響き、子供たちの想像力をかきたてると思う」と感想を話し、保育士の山田沙織さん(37)は「舞台のマネキンの顔が無かったことで、子供たちはマネキンの顔を一人一人想像しながら舞台を楽しんだと思う。(マネキンに赤い服と青い服を着せる場面などを通し)女の子は赤い服とか、男の子は青い服とか、決まっているわけではないというメッセージは、今後の保育の仕事にも役立つと思う」などと話していた。(鈴木宏子)

茨城ロボッツ敗れる 開幕1勝4敗に 

男子バスケットボールBリーグ1部(B1)2025-26シーズンが10月3日開幕し、茨城ロボッツ(本拠地:水戸市、ホームタウン:水戸市・つくば市)は開幕5戦目となる15日、日立市東成沢町の池の川さくらアリーナでサンロッカーズ渋谷(SR渋谷)と対戦、82—84で敗れ、1勝4敗となった。 ロボッツは昨シーズン、15勝45敗と低迷し東地区7位に終わった。今シーズンは30勝を目標に掲げるが、4日の開幕戦はアウェーで仙台89ERSに連敗。ホーム開幕戦となった11日は延長戦の末に群馬クレインサンダーを破りホームで初勝利を上げた。しかし翌12日は敗れ、ここまで1勝3敗でSR渋谷戦に臨んだ。会場には平日にもかかわらず満員の3157人のファンが熱い声援を送った。  2025−2026 B1リーグ戦 (10月15日、日立市池の川さくらアリーナ)茨城ロボッツ 82ー84  サンロッカーズ渋谷 茨城 23  16  21  22    = 82渋谷 20  18  18  28    = 84 ロボッツは序盤から終始リードを奪いながらも終盤に逆転を許し、悔しい敗戦となった。第1クオーターは中村功平のシュートで得点するとその後は一進一退の攻防が続いた。昨年までSR渋谷に2シーズン在籍し今季からロボッツに移籍したつくば市出身の小島元基が、古巣を相手に終了間際にシュートを決め、第1クオーターは渋谷にリードを許さなかった。 第2クオーターは直後に逆転を許すが、タイラー・クックのダンクシュートに、ロバート・フランクスと駒沢颯が3ポイントシュートを決め、前半を39ー38と1点リードで折り返す。フランクスは「自分の強みを見せられたので、今後も自分の強みを継続して見せられるようにステップアップしていきたい」と話した。 後半もロボッツは、フランクスを中心に得点を重ね、最大10点のリードを広げる。だが徐々にSR渋谷の反撃に遭い逆転を許すと、残り5秒を切ったところでクックのシュートが決まり同点とする。しかし直後に勝ち越しを許し、敗れた。 チーム最多の29得点を挙げMIPを獲得したフランクスは「最後の方に自分たちにミスが多く出てしまった。チームとしてしっかり戦えたのはいいことなので、ポジティブに考えてやっていきたい。次のアルバルク東京は強いチームだが、そういうチームに対しても戦えるということを証明できていると思うので、自信を持って、チームとしてしっかり準備をしていけば勝てると思う」と次の試合に意欲を見せた。 クリス・ホルム ヘッドコーチは「今日の負けは痛かった。全体的なプレーは良かっと思うが、SR渋谷が何かをして勝ったというよりも、集中力が欠けてしまったり、シュートを打てるときに打てなくてチャンスを自分たちでつぶしてしまったことが40分間通して積み重なってしまったのが自分たちの課題」と悔しがった。次節は18日、19日アウェーでアルバルク東京と対戦する。(高橋浩一)

廃校をサイクリスト拠点やレストランに 旧斗利出小 土浦市が地元企業に売却へ

小中一貫の新治学園義務教育学校(同市藤沢)が開校したのに伴って2018年3月末で廃校となった同市高岡、旧斗利出(とりで)小学校跡地(約1.3ヘクタール)の利活用について、土浦市は15日、公募型プロポーザルを実施した結果、サイクリスト向け拠点やレストラン、マルシェ、子供たちの遊び場などとして利活用すると提案した地元の太陽光発電設備販売会社、アクセスシャイン(同市中)が最も優れた提案をしたとして優先交渉権者に決定したと発表した。今後、提案内容をもとに基本協定を締結し、合意すれば同社に用地と建物を売却する。 同社の提案内容は、同小跡地は、サイクリングロード「つくば霞ケ浦りんりんロード」に近く、つくば市春風台から桜川に架かるさくら大橋を通って国道125号につながる、土浦とつくばを結ぶ県道藤沢荒川沖線に近いなどの立地にあることから、立地条件を生かし、①2階建ての校舎をコミュニケーションゾーンとして常時、地元企業が出店したり、レストランを開いたり、地域交流スペースとして活用する②体育館をサイクリストゾーンとして常時、サイクリスト向け拠点とするほか、災害時は地域住民の一時避難所として活用する③校庭はイベント広場として、休日にキッチンカーなどによるマルシェを開いたり、イベント開催時以外は子どもの遊び場として利活用するーなど。 同小の跡地利活用について同市は、5月30日に公募を開始し、市内外の3事業者から応募があった。プレゼンテーションとヒアリングを実施し、市のプロポーザル選定委員会が参加事業者の資質、事業内容、購入価格などについて審査した結果、アクセスシャインが優先交渉権者に決定した。 校舎は改修が必要で、体育館は耐震基準を満たしていないなどから、市は、今後必要になる校舎の改修費用や体育館の耐震補強費用などを差し引いて、最低売却価格を578万円として提示していた。公募でいくらの提示があったかは非公表としている。 今後については、11月ごろまでに利活用の提案内容について市と同社とで基本協定を締結し、年内に住民説明会を開催。さらに同小は市街化調整区域であることなどから、県の開発審査会の承認が必要となるほか、開発許可などの法令手続きに1~2年かかる見通しで、改修工事着手はその後になる。 新治学園義務教育学校の開校に伴って、新治地区では斗利出小のほか、藤沢小、山ノ荘小の3校が廃校となった。旧藤沢小は現在、体育館が地域の避難所となっているほか、日ごろ地域のスポーツクラブなどに利用されている。旧山ノ荘小は日立建機ICTデモサイトとして、情報通信技術を用いた建設機械のデモンストレーションや体験をする場に利用されており、旧斗利出小だけが利活用方法が決まってなかった。(鈴木宏子)

油彩画、水墨画など70点 筑波銀行退職者の会が美術展 つくば本部ギャラリー

筑波銀行の退職者でつくる筑波嶺会の土浦支部美術展が15日、つくば市竹園の筑波銀行つくば本部ビル2階ギャラリーで始まった。昨年、会の名称を筑波銀行OB会から筑波嶺会に変更して2回目の開催となる。同会に所属する22人が、退職後に制作した油彩画、水墨画、写真、書、彫刻、陶芸など約70点を展示している。 小松崎綾子(78)さんは、押し花絵「竹林」など3点を展示。バラ、銀ポプラ、落ち葉、タブの新芽、木の皮、ケイトウなどを素材にして、絵の具を用いず仕上げた。「16年前から習い始めた。根気のいる作業で一つの作品を作るのに2、3カ月かかる。最初、形がないものがだんだん仕上がっていくのは感動もの。とても達成感がある」と話す。 堀越喜代子(78)さんは、鉛筆画「花明かり」など3点を展示。2Hから10Bの鉛筆を使い、ていねいに仕上げていく。作品は人物を描く。15年ほど前に習い始めて2018年には個展も開いた。「描くには手間がかかる、遠くから眺め確認する作業も必要。しかし完成すると充実感がいっぱいになる。人物によって筆が進むときと進まない時がある。また何か乗り移ったように筆が進むことがあるから不思議」だと語る。  今年は2024年9月に亡くなった会員、安斉克一さんの追悼展を加え、安西さんが生前に制作した油絵8点を展示している。 同銀行は2010年に関東つくば銀行と茨城銀行が合併し誕生した。筑波嶺会は水戸支部、下妻支部、土浦支部の3支部があり、今回、土浦支部が主催した。会員は60代後半から70代後半が中心。定年延長という時代でもあり、リタイアした後にすぐに会員になることは近年少なくなったという。 筑波嶺会会長の徳宿彰さんは「銀行の中でもこうした芸術関連のOB会があるのは珍しい。みんな同窓会のように楽しみにしている」と話す。(榎田智司)