【コラム・中尾隆友】日銀の異次元緩和が始まってもうすぐ10年になる。異次元緩和の最大の問題は、いくら政府が借金を増やしても日銀が国債を引き受けてくれるので、放漫財政が常態化してしまうということだ。
政府債務は恐ろしく膨らんだ
実際に、一般会計の総額は10年連続で過去最高を更新し、近年は補正予算の規模が数十兆円に膨らむ事態となっている。
その結果、過去10年間で政府債務は恐ろしく膨張した。税収で返す必要がある普通国債の発行残高は、2023年度末に1068兆円になる見通しだ。政府債務はGDPの2.5倍超にまで拡大し、持続的な金利上昇に脆弱(ぜいじゃく)な財政になってしまったといえるだろう。
日本の成長率は大幅に低下した
それに加えて、異次元緩和は経済効率を高める金利本来の機能を損ない続けてきた。その典型的な事例は、金融機関の融資に占める不採算企業の割合が一貫して増加基調で推移してきたということだ。その帰結として、2022年末までの10年で実質GDPは4%程度しか増えず、その前の10年とほぼ変わらない低成長から抜け出せなかったのだ。
この間の日本の潜在成長率は0.8%から0.2%まで大幅に低下した。この点においても、日本は金利上昇への耐久力が著しく弱まったといえる。金利が上がっても成長率が高まっていれば、債務が膨らんでも何とかやりくりもできるだろう。しかし、逆に低くなってしまったのでは、金利が上がると利払い費に窮する局面が訪れるかもしれない。
問題は日銀よりも政治の劣化
この重大な責任は、日銀だけが負うものではない。選挙向けの安易なばらまきに終始し、構造改革を実行してこなかった政府にも大きな問題があるからだ。日銀が大規模緩和をする間、政府は構造改革を進めて経済成長率を高めていくという約束をしたはずだ。その約束を果たさなかった政府の怠慢には、非常に残念でならない。
特に2010年代以降の日本を見ていて不安に思うのは、政治の劣化が深刻だということだ。「政府がいくら赤字国債を出しても、日銀が無制限に引き受ければ問題ない」というジョークを本気で信じる政治家が意外に多いことを、皆さんはご存知だろうか。
これは国政に限らず、地方でもよく見られる現象だ。構造改革を伴わない財政拡大では、その甚大なツケを支払うのは市井の人々だということを忘れないでほしい。(経営アドバイザー)