【コラム・山口絹記】新年あけましておめでとうございます。 ということで、この時期になりますと、“新年の抱負”なんてことばを見聞きしますね。三が日の最終日に、この記事を外出先であわてて書いているような、いわゆる計画性が根本的に欠如している私からしてみれば、年単位の計画など絵空事なわけです。
今回は計画性のない私が、新年の抱負を述べる代わりにやっていることをご紹介したいと思います。よく見聞きするライフハック(仕事術)に、“何事もリスト化する”というものがございますね。ですがこのリスト、実現する前にだいたいどこかにいってしまうんです。こういったハイエンド(高性能)かつ整然とした暮らしというのは、計画性のない人間にとっては無縁なのでしょう。
そこで、私が代わりに提唱したいのが、紙とペンを持って喫茶店に行くこと。コーヒーでもジュースでもなんでもよいのですが、注文して飲み終わる前にやってみたいことを書き出しましょう。そして、店を出る前にその中から何か一つ選んで、その足で必要なものを買いに行くわけです。英会話の参考書でもよいですし、フルサイズの電子ピアノでもよいでしょう。
生活が崩壊しない範囲で清水の舞台からダイブするわけです。短絡的ですが、何と言われようと何も始めずにまた1年を過ごすよりは幾分かマシだと思うんですね。メモのなくなる暇を与えないというのがミソでございます。
大切なのは自分の直感を信じて速攻即決することと、へたにネット検索しないこと。まったく新しい物事に挑戦するにあたって、事前調査というものはほとんど役に立つことがありません。つまるところ、やってみなければ何もわかりません。
必要なのは、失敗する覚悟と勇気。そして転んでしまってもタダでは立ち上がらない気合です。精神論かよ、と言われてしまいそうなのですが、精神論なんですね。
セレンディピティ、プランド・ハプスタンス
このままですと、新年早々なんとも無責任なことばかり言い放っているだけになってしまうので、二つ、面白いことばを紹介しましょう。
一つはセレンディピティということばです。ざっくり説明すると、「何かを探している過程において、別の何か面白いものを発見してしまうこと」です。本屋さんでお目当ての本を探す途中でとんでもなく面白い本を見つけてしまう、みたいなものですね。
もう一つは、プランド・ハプスタンス(計画された偶発性)というものです。こちらはキャリア形成の中で「とりあえずで行動し続けていくなかで、『これは』と思えるものが見つかること」の大切さに関する理論です。
ソレっぽく横文字を並べてみたのですが、ようは「やってみようぜ」というおはなしなんですね。
自分の代わりに誰かが挑戦して、成功したり失敗したりといった経験談をいくらでも見聞きできる便利な世の中になっているわけですが、そうしてわかったのは、結局自分でやらなければ何もわからない、という端的な事実だったりするわけです。今からでも遅くはないので、喫茶店に向かってみてはいかがでしょう。(言語研究者)