木曜日, 1月 8, 2026
ホームつくば旧郵便局舎と巡り合う【北条宿でコーヒーブレイク】2

旧郵便局舎と巡り合う【北条宿でコーヒーブレイク】2

つくば市北条は、正しくは宿場町ではない。農村の様々ななりわいが集積した在郷町(ざいごうまち)と称するのがふさわしい。街道(県道138号石岡つくば線)に面して発展した歴史を持つ街並みには、いくつかの登録有形文化財指定を受けた近代建築が残る。

旧常陸北条郵便局もそのひとつ。切妻造妻入と切妻屋根のポーチを持つ、洋風外観でありながら和風建築との融合を果たした局舎と住宅だ。

登録文化財の旧郵便局舎が利活用される店舗

1933年に建てられ、1962年まで使われていたこの建物は、2008年に喫茶店として蘇った。その名も「カフェ ポステン」。スウェーデンの言葉で郵便局を意味する。

思い付きだったコーヒー修行

店主の椎名祐一さん(51)が1人で切り盛りする。椎名さんとコーヒーとの出合いは、数奇な縁が下地となっている。

「学生のとき、就職活動中に見た学内掲示板の『ブラジルへの交換留学』がきっかけでした。これを主催していた団体は今はもうありませんが、留学と就職目標の両方に選び、先方からは『どちらかに絞って』と言われて卒業後の留学となりました。1995年から1年間、ブラジルのコーヒー企業で豆の卸業や直営店での接客など、いろいろな経験をさせていただきました」

この時点ではまだ、喫茶店を営む考えも構想もなかった。サッカーとサンバとコーヒーの国に、たまたま出かけていったらラテンの陽気さが肌に合った、という程度だったそうだ。

帰国後しばらくして、つくば市古来の「珈琲倶楽部なかやま」に就職した。本格的なコーヒー修行はここから始まる。

「亡くなられたオーナーからはコーヒー屋の全てをたたき込まれました。もうひとつ、栃木県の黒磯(那須塩原市)にある『ショウゾウ コーヒー』さんのスタイルに憧れまして、ラテンどころか日本の昭和の風合いを感じさせる場所で、その当時の時間にも浸ることのできる店舗を描いたんです」

ブラジル発・なかやま仕込みのブレンド

古民家に住み物件探し

90年代、つくば市にも古民家活用の波が訪れていた。椎名さん自身も北条の古民家を借りて住み始め、仕事の合間に物件を探しながら喫茶店の構想準備を進め、旧常陸北条郵便局舎と巡り合った。

「構想はできていましたが、資金繰りや資機材調達や局舎の借り受けに何も後ろ盾が無くて、なんとかなるだろうと見切り発車です。建物の持ち主には幾度も説明に伺い、内装を店舗化することも含めて理解をいただきました。知人友人の手を借りて改装を自分自身で手がけ、店員も雇用できないから1人で営業です」

オープンは2008年11月。手仕事で作られた器、地産の食材を使った献立、建物に存在する古さの活用ー。来客はほとんど無かったという。

「当時は宣伝もせず取材も受けなかったですから、PR効果以前の話ですが、それで良かったんです。何でも自分でやらなければ気が済まないけれど、1人でできることは限られています。お客さんと対話する時間がまた楽しいですから、大繁盛よりものんびりと店を構えていたい」

ランチの一つ、ベーコンレタスサンド

今は、地元の来客、口コミ情報を頼りに訪ねてくる人々で、週末は混雑するほどになっている。「ポステン」と名付けたのは郵便局舎を母体としているから当たり前なのだが、スウェーデン語にした由来を尋ねると、市内でガラス工芸を営む妻が、北欧でガラス細工の修行をしてきたからだという。店内にあるグラス類は妻の手仕事によるものだ。

「夏の間、クリームソーダを用意したら大人は懐かしんでくれて、若い人たちにはインスタ映えするかわいい素材だと、全く異なる感想ながら皆さん楽しんでくれました。コーヒーもランチも同様で、ここに来て自分だけの時間を手に入れていただければいいなあと思っています」

近傍遠方から人々が通ってくる場所。椎名さんの人生にとって、カフェは「山を一つ登って降りてきた」ようなものだという。次の山に登る計画は既に始まっている。「やりたいことは沢山あります。北条で次の山を目指したいし、さらに年を経たら椎名家ゆかりの地に赴いて、また別の山に挑みたいですね」(鴨志田隆之)

続く

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

産後ケア利用の男児が一時意識不明に つくば市 重大事故検証委設置へ

つくば市から委託を受けて、出産後の母子のケアなどを実施している「産後ケア施設」で昨年11月、施設を利用していた生後4カ月の男児が一時意識不明となり、救急車で病院に運ばれていたことが分かった。男児は現在、退院しているが、左手足にまひが残り、今後継続的に通院やリハビリが必要な状態という。 市は重大事故として、第三者による検証委員会を設置する方針を決め、7日開かれた市議会全員協議会に説明した。同市は2018年度から産後ケア事業を実施しているが、意識不明など重大事故が発生したのは初めて。 同市こども未来センターによると、男児は市内に住む。当時、母親と2人で施設を利用中、容体が急変し意識不明になった。施設が119番通報し、救急車で病院に運ばれ入院した。施設からは翌日、市に連絡があり、市は同日、県などに報告した。 男児が意識不明になった原因については不明という。当時、男児がどのような健康状態だったかや、意識不明になった経緯、施設で何をしていたかなど当時の状況について市は、公表できないとしている。 検証委の設置は、意識不明になった原因が不明であることから、昨年3月にこども家庭庁などから出された通知に基づいて設置する。検証委では、関係者へのヒヤリング、現地調査などを実施して事実関係を明らかにした上で、発生原因を分析し、必要な再発防止策を検討する。さらに事故発生の背景、対応方法、問題点、改善策などについて提言をまとめる。 市によると、検証委の委員として医師、弁護士、学識経験者、産後ケア事業者など5人以内を検討している。16日に開く市議会本会議で検証委の設置が可決されれば、すみやかに委員を選定し、年度内に第1回会合を開催したい意向だ。提言報告書をまとめるまでには1年ほどかかる見通しだという。 産後ケア事業は、出産後、育児に強い不安があったり、周囲に手伝ってくれる人がいないなど育児の支援が必要な、ゼロ歳児の母親などを対象に、相談に乗ったり、母子の健康状態をチェックしたり、食事や宿泊などを提供する事業。つくば市は現在、市内外の医療機関や助産院など19施設に委託して実施し、2024年度は261人の母親が子供と一緒に利用した。昨年11月に意識不明事故があったのは19施設のうちの一つという。(鈴木宏子)

霞ケ浦導水やTX延伸が話題に 土浦市で賀詞交歓会

土浦市の経済3団体(商工会議所、観光協会、商店街連合会)主催による恒例の新年賀詞交歓会が7日夜、同市内のホテルマロウド筑波で開かれた。地元の経営者など約250人が参加し、中川喜久治土浦商工会議所会頭や来賓の政治家のあいさつの後、食事をしながらの懇親を楽しんだ。あいさつでは、霞ケ浦導水石岡トンネルの開通やTX(つくばエクスプレス)の土浦延伸などが話題に上がった。 「泳げる霞ケ浦」が実現? 主催者を代表してあいさつした中川会頭は、霞ケ浦導水について「昨年暮れ、石岡トンネルまでつながった。2027年には土浦まで延び、那珂川の水を霞ケ浦に導く大プロジェクトが完成する。これにより霞ケ浦の水がきれいになる」と述べ、「単に那珂川の水を土浦岸まで入れるのではなく、その水を湖に噴水として落とすなど、地域を盛り上げることに使うのも面白い」と、持論の湖内大噴水構想をぶち上げた。 また、国会議員の最初にあいさつした国光あやの外務副大臣(比例)は「ここまで来るのに40年かかったが、導水路がやっと完成する。今春には石岡岸に那珂川からの水が入る。さらに土浦岸までつながると、湖の水はきれいになり、『泳げる霞ケ浦』の実現に近づく」と、霞ケ浦が観光資源になることに期待を表明した。 議会にTX特別委を設置 TXの土浦延伸については「将来の茨城県および首都圏の活性化や防災対策に大きく寄与する。私たちが長年にわたり要望してきたもので、早期に実現するよう、引き続き行政などと連携しながら活動を続ける」(中川会頭)、「TX土浦延伸という夢も、夢から目標に、そして現実へと動き出した。県の未来を切り開き、さらなる発展に向けて、引き続き実現を目指す」(安藤真理子土浦市長)といった発言があった。 また、乾杯の音頭をとった勝田達也土浦市議会議長は「議会にTX延伸特別委員会を設置する」と述べ、市議会としても延伸実現に向けて環境づくりを進めることを明らかにした。勝田議長によると、最初の特別委開催を1月下旬に予定しており、県の担当者から延伸工作の現状と展望を聴取する。 NHK「ばけばけ」を参考に! 来賓としてほかに地元衆院議員の青山大人氏、茨城区参院議員の上月良祐、加藤明良、堂込麻紀子、桜井祥子氏、地元県議の伊沢勝徳、八島功男、高橋直子氏が登壇した。 この中で八島県議は、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」に触れ、「小泉八雲が奥さんのセツから聞いた怪談を本にするストーリーだが、八雲はセツにオバケの話をするよう求める。分からない言葉は何度も聞き直し、八雲が納得した話が物語として完結した。これと同じように、私たちは、いろいろな考え方、難しいことをしっかり言語化することが大事だ」と述べ、対話の重要性を強調した。(坂本栄)

さて、今年はどうしましょうか?《気軽にSOS》168

【コラム・浅井和幸】明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。皆さんは新年の抱負は決めたでしょうか? 私は特に考えるわけではないのですが、あえて作るのであれば、「心身ともに健康で楽しく生活する」でしょうか。 自分自身、何十年も世界で一番幸せ者だと感じて生きてきたわけですが、幸せであることが「不幸に接しない」ことであるとは考えていません。たくさんの不幸、たくさんの苦しみ、たくさんの悲しみ、たくさんの悩みに対応してきましたし、これからも対応していくでしょう。 自分から積極的に苦しみに突っ込んでいくわけではありませんが、相談や依頼という形で私に頼ってこられる方に一生懸命対応し、希望に沿いたいと考えています。 私は今年で54歳になります。これは磯野浪平さんと同年齢になったということです。浪平さんは、漫画サザエさんのお父さんですね。一昔前であれば、定年1年前のおじいちゃんでしょうか。ちなみに、バカボンのパパは41歳(初老)だそうです。 明日が希望の世界であるように 今の54歳は、定年近くのおじいちゃんではなく、あと15年先が定年になるかもしれない時代となりました。健康寿命が延び、昔に比べて若々しい、もしかしたら先輩方から幼い、と言われてしまいます。私は個人事業主であり、いくつかの法人の理事ですので、定年退職はなく、もっと先まで動き続けると思います。 健康寿命が延びた現代、自分で選択していける時間も余裕も増えています。健康も、知識も、お金も、ほんの少しの積み重ねが功を奏します。逆に言えば、長い年月をかけて、不健康に、無知に、貧乏になることも可能です。自分の選択権を他人や環境に渡して、全てが「させられている」と感じることは大きな不幸です。 そうではなく、自分で考えて行動する、自分自身で選択する、健康で文化的に楽しく生活する―こういった生活を目指す人のお手伝いができれば、私も幸せになると考えています。すべての人にとって「明日が希望となる世界」でありますように、と。(精神保健福祉士)

19歳以上に1人5千円支給へ つくば市 政府の交付金活用

21万2000人対象 つくば市は7日、物価高騰対策として、概ね19歳以上の市民約21万2000人全員を対象に、一人当たり一律5000円を支給する方針を決めた。昨年12月に補正予算が成立した政府の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用する。各自治体が地域の実情に合わせて支給内容を決めることができる制度で、同市の場合、政府が推奨事業メニューに示した「おこめ券」や電子クーポン、プレミアム商品券などの配布は実施せず、だれもが使いやすい現金を支給する。 同日、市議会全員協議会を開き明らかにした。16日に市議会本会議を開いて審議する。可決されれば、4月以降に順次、指定の口座に振り込むなどして支給するという。 今回、5000円の支給対象からはずす18歳以下の児童手当支給対象者はすでに、経済対策として政府の物価高対応子育て応援手当を活用して一人当たり2万円を支給することが決まっている。 一人5000円の給付事業費は総額12億6200万円で、内訳は給付金が10億6000万円、事務費が1億9900万円など。 同市の同重点支援交付金は計15億6800万円で、物価高騰対策としてほかに▽特別養護老人ホームやデイサービスなどの介護保険サービス事業所271カ所に計4880万円▽放課後等デイサービスや児童発達支援事業者など障害福祉サービス事業所238カ所に計4460万円▽公立保育所と、民間保育施設155カ所に計4000万円▽児童クラブ41事業所に450万円▽病院19カ所と診療所455カ所に計4900万円▽畜産農家など15経営体に計2070万円▽農家など238経営体に計8360万円▽鉄道1社、路線バス2社、タクシー18社に計1500万円などを支給する。 ほかに、県による低所得の子育て世帯生活応援特別給付金として、児童扶養手当受給者5060人を対象に児童1人当たり5万円を支給する。支給総額は2億5600万円で、県支出金を充てる。 一方、土浦市は、政府の物価高騰対応重点支援交付金の活用方法について現時点で未定だとし、年度内に議会に諮って決めるとしている。(鈴木宏子)