土曜日, 1月 17, 2026
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圃場整備記念碑にも洪水の記述 つくば市池田【自然災害伝承碑の現在】㊥

登録された茨城県内の自然災害伝承碑のうち、2022年8月時点で最も新しいものは、常総市本石下に所在する「水害復興の碑」だ。18年1月に建立された。15年9月の関東・東北豪雨で受けた鬼怒川の溢水(いっすい)・浸水に端を発する水害と復旧工事の証だ。このように近年の建立碑であっても、それが災害と対峙した記憶を刻むものであれば、地域住民の意志によって自然災害伝承碑として登録することができる。

土浦市と桜川、霞ケ浦の水害は江戸時代から河川改修と治水との戦いが繰り返されている。それらは文献で知ることができる。興味を持って歩けば、埋もれている碑文を見つけることができる。つくば市の場合は、小貝川沿岸や桜川流域のような低地に足跡が刻まれている可能性がある。

常総市に所在する自然災害伝承碑(国土地理院提供)

1986年台風10号、水害記録の保有なし

つくば市北条出身で、現在は笠間市在住の主婦に、1986年8月の台風10号を経験した話を聞くことができた。

「当時、筑波西中(現在は秀峰筑波義務教育学校に統廃合)に勤務していましたが、帰宅時に桜川を渡る国道125号の橋が、見たこともない水位と濁流になっていました。私は北条内町に住んでいましたが、泉の子育て観音(同市泉、慶龍寺)近くに家のあった親戚が避難してきました。(慶龍寺近くの)小泉の辺りは大半が床下浸水となったそうです。でも小貝川の決壊の方が大惨事だったようで、皆さんの記憶はそちらの方が強く残っているのではないでしょうか」

氾濫の記録や河川復旧を記した碑文のようなものは、あるのかどうかまではわからないということだった。つくば市の危機管理課に尋ねてみたが、「地域防災計画の策定時に、1938年水害、1986年台風の被害範囲が反映されていますが、当時の詳細な記録は保有していません。過去の水害情報に関する、伝承碑等の情報も把握しておりません」ということだった。

地域防災計画に反映されていながら水害記録の保有がない。危機管理に関して一抹の不安を感じるが、文献ならば存在するということだろう。市への訪問はあくまでも自然災害伝承碑となりうる碑文・石碑のあるなしを確認するものだったので、確認できない現実もひとつの現状だ。

桜川の堰「洪水のたびに流された」

同時に現地を訪ねてみたものの、これと思しき石碑を見つけるには至らなかった。偶然、筑波山に近い同市池田地区の用水路で「治水と豊穣」の記念碑と出合った。2006年に竣工したこの地区一帯の圃場(ほじょう)整備を記念したものだが、碑文の冒頭には明治以前の先人が桜川に堰を築いたが洪水の度に流されたという記述がある。カーナビゲーション上では、一般の石碑記号で掲載されている。

このような石碑には、自然災害伝承碑の可能性があるのだろうか。それについては国土地理院の廣瀬勝環境地理情報企画官が説明してくれた。

「自然災害伝承碑は『過去に発生した洪水、土砂災害、高潮、地震、津波、火山災害等による被災の教訓を後世に伝えようと、先人たちが残した独立した恒久的な石碑やモニュメントであることが基本条件です。自然災害に関する発生年月日、災害の種類や範囲、被害の内容や規模、教訓が記載されたものが伝承碑と位置づけてられます」

その上で「自然災害の伝承要素がない治水事業の完成・竣工記念碑、自然災害とは直接関係のない慰霊碑や事故の鎮魂碑、長期間にわたる降水量の不足によって起こった干ばつに関する石碑等、個人の業績をたたえることのみを目的とした顕彰碑、寺社、記念館等の施設は、伝承碑には該当しません」と廣瀬企画官は付け加える。

集められた先人の記憶は必ず役立つ

この条件だと、池田地区の記念碑は伝承碑としての要素が薄いが、伝承碑登録申請の手引きには『石碑等に具体的な自然災害の伝承要素の記載がない場合、又は洪水や津波の水位が刻まれているだけで文章の記載に乏しい場合でも、恒久的な設置を意図した説明板が付随しており、この説明板に該当する具体的な自然災害の伝承要素の記載があれば伝承碑と判定する場合があります』と明記されており、工夫次第だと解釈できる。

「国土地理院では、関係機関等から得た情報があれば、随時市区町村へ提供しています。地域住民の防災意識の向上を図る等の理由から、地域等から声が寄せられ市区町村からの申請としていますが、集められた先人の記憶は必ず今後の防災対策に役立ちます」と廣瀬企画官。

今、自治体ごとに作成されるハザードマップが防災上の有効手段として将来へつなげられている。ハザードマップや地域防災計画という現代のツールは、災害伝承のために遺された碑文や石碑に端を発する。これからつくば市内のどこかで、先人の苦労の痕跡が発見されればと期待を感じる。(鴨志田隆之)

続く

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