水曜日, 5月 18, 2022
ホーム コラム もうひとりの斉藤くん 《続・平熱日記》105

もうひとりの斉藤くん 《続・平熱日記》105

【コラム・斉藤裕之】4年生の時だったか、近所に同じ斉藤くんという名前の子が引っ越してきた。走るのが速く、バク転やバク宙さえも軽々とこなす彼は、すぐにクラスの人気者になり、同じ名字ということもあって私たちはすぐに友達になった。

当時、父は地方新聞を発行していて、小学校のころから、私と弟はわずかな件数ではあったが、放課後、その配達を手伝わされた。もちろんタダではなくて、1軒につき月20円をもらった。例えば20軒担当すると月に400円もらえる。小学生としてはいいお小遣い稼ぎだったのだろうが、雨の日も風の日も、決して休むことを許されないのは正直しんどかった。

しばらくたって、私は斉藤くんを新聞配達の助手にすることを思いついた。私たちは配達する新聞を半分に分けた。私はいつものルートを配り始める。そして、斉藤くんは配達ルートのゴール側からスタートする。ちょうど中間地点で鉢合わせれば、配達終了という寸法だ。

こうして2人で得た数カ月分の報酬をためて、いざデパートのおもちゃ売り場に買いに行ったモノ。それは「トランシーバー」だった。

トランシーバーをそれぞれ持ち帰った2人。私は興奮を抑えながら、あらかじめ決めた時間にスイッチを入れた。「応答せよ!応答せよ!」。ボタンを押して話をしても、返事がない。たかだか100メートルほどの距離だが、結局、斉藤くんの声が聞こえることはなかった。

今も元気にしているのだろうか

トランシーバーにはトランジスターという当時最先端の半導体が使われていた。あれから半世紀。次々と進化を遂げた半導体は私たちの生活を一変させた。

ケイタイに興奮し、スマホに狂喜し、人々はWiFiに群がった。かつての「一心同体」は今や「一心半導体」となったわけだ。しかし、ある日ハタと気づいた。むしろ電話もメールも来ない日々のなんと穏やかなこと。スワイプするのはほどほどに。イイネの数に意味はない。自分は自分、人は人。小さいころから言われてきたことじゃないか。

ある日の夕方、「ピンポーン」。どうやら新聞屋さんのようだ。少し前に購読料も上がって、そろそろ新聞も止め時かと、カミさんとも話していたところだった。でも、新聞を止めると本当に文字を読まなくなる。かといって、7割方の記事は見出しだけしか読んでいないのだけれど。すると「新聞、もう1年契約したよ。ストーブのたき付けも要るしね」。洗剤を抱えたカミさんが言った。

斉藤くんは今も元気にしているのだろうか。多分ね。知らないでいる方が幸せなことだってある。何もかもが明らかな世界は案外つまらない。トランシーバーのザーという音が今も耳に残る。(画家)

2 コメント

誹謗中傷するコメントはNEWSつくば編集局が削除します。
2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る

陽性確認者数(公表日ベース)の推移

つくば市

土浦市

スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

ラーメン「珍来」茎崎店のオバサン 《ご飯は世界を救う》47

【コラム・川浪せつ子】「ラーメンまで、描くのね!」。仕事仲間から驚かれました。うん、そう。でもラーメンを描いたのは、生まれて初めて。早く食べないと伸びちゃうし。そして難しそうで。でも今回描いて、いろんなことを思い出しました。 このお店「珍来」は、つくば市の洞峰公園の道路の向かい側、今はマンションになっている場所にありました。2階建ての雑居ビル。30年くらい前、よく食べに行きました。息子3人がまだ小さくて、外食ではじっとしていられないころ。ご飯を作るのがしんどい時、その珍来さんしか行けなかったのです。 テーブルコーナーは「コ」の字型で、出口部分に親がひとりずつ座ると、子供はウロチョロ出ていくことができません。そして帰り際、お店の方から「ぺろぺろキャンディ」をもらうのが楽しみで、おとなしくしてくれました。元気すぎる息子たちと、格闘の日々でした。 深々としたお辞儀にウルウル ほどなく洞峰公園店は無くなってしまいました。10年ぐらい後、牛久学園線を走っていた時に見つけた茎崎店(つくば市大井)。ふと寄ってみると、洞峰公園店のオバサンがいました。おいししいご飯を作ってくれていたオジサンは亡くなり、今は親戚の人が調理をしているとのこと。 その後ずっと疎遠だったですが、今年に入ってから行ってみました。そしてオバサンとお話。

不登校支援のあり方検討スタート つくば市 事業者選定の迷走受け

つくば市が昨年12月に実施した不登校児童生徒の学習支援施設運営事業者の選定をめぐって迷走した問題を受けて、今後の市の不登校支援のあり方について検討する「市不登校に関する児童生徒支援検討会議」の第1回会合が17日、市役所で開かれ、検討がスタートした。 市が、2020年10月から22年3月末までNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、本山裕子理事長)と協働で実施した「むすびつくば」の事業について検証するほか、今後の市の全体的な支援方針を策定する。 検討会議のメンバーは、森田充・市教育長と市教育委員4人の計5人。不登校の保護者など当事者は入っていない。来年1月までに計14回程度の会合を開く。今年9月ごろ、新たな予算を必要とする施策を決め、来年1月ごろまでに全体的な支援方針をまとめる。 むすびつくばの検証については、利用者の小中学生と保護者にアンケートをとったり、運営者のリヴォルヴに自己評価を作成してもらうなどする。リヴォルヴによる運営は、来年3月までの1年間延長されただけであることから、23年度以降どうするかについても検討会議で協議する。 今後の市の支援方針については、先進自治体を調査したり、市内の民間フリースクールの利用状況を調査したり、市内の不登校児童生徒と保護者にアンケート調査などを実施した上で、フリースクールのあり方や支援策などについて検討する。 検討を始めるにあたって、現在の課題については▽専門職であるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの人数が十分か注視する必要がある▽発達障害の早期発見や診断が遅れると個人の特性に応じた支援や対応が遅れる▽民間フリースクールは有料であるため公設の支援施設の利用者と負担に差が生じている▽不登校の児童生徒数が増えているのに対して公設支援施設の定員は2割程度しかない▽児童生徒数が増加している市南部に公設支援施設がない▽学校での別室登校による支援は専属の教員がいないーなどを挙げている。

望まれず産まれる猫の命をつなぐ 《晴狗雨dog》5

【コラム・鶴田真子美】子猫の季節がやってきました。動物保護団体には野良猫の産んだ子猫の相談が相次ぎます。先週も田植えをしていた近所の農家さんから、ダンボールに入った子猫があぜ道に捨てられていたと相談がありました。 まだ目も開いておらず、産まれてすぐに捨てられたであろう、幼い兄弟5匹。預かりボランティアさんが手分けして連れ帰り、必死の授乳中です。(その映像は以下に) https://www.youtube.com/watch?v=6rDM115ilJg&authuser=0 離乳前の幼い犬猫を自宅に預かり、ミルクを与えて育てるボランティアさんは「ミルクボランティア」と呼ばれます。この方々の存在なくしては、乳飲み子は救えません。 離乳するのは生後2カ月弱。授乳と授乳の間の時間は、成長するにつれて徐々に延びていきます。4時間から6時間おきに。犬や猫がだんだん体重を増やし、よちよち歩くようになり、兄妹で戯れて遊ぶようになるのを見るのは喜びです。

バス停見落とし、3人乗車できず つくバス

つくば市は16日、市のコミュニティーバス「つくバス」南部シャトル上り41便(茎崎窓口センター発つくばセンター行き)が、同日午後5時28分ごろ、同市高野台の国道408号を走行中、高野台停留所に停車せず通過し、バス停に待っていた乗客3人が乗れなかったと発表した。 つくバスは市が関東鉄道(本社・土浦市)に委託して運行している。市総合交通政策課によると、高野台停留所には同社の路線バスとつくバスの停留所が併設されている。つくバスが高野台停留所に近づいたところ、すでに路線バスが停車していたことから、つくバス運転手は、41便の停留所ではないと思い込み、通過したという。 高野台停留所には、乗客3人がつくバスを待っていた。41便が通過したことから、先に停車していた路線バスの運転手が、関東鉄道の営業所に連絡した。 連絡を受けた関東鉄道は、高野台停留所に送迎車を手配し、待っていた乗客1人を目的地まで送迎した。一方、2人はすでに移動していて送迎車到着時にはバス停にいなかったという。 市は関東鉄道に対し、安全運行の徹底と再発防止を指示したとしている。