つくば市、土浦市で9日、成人式が開かれた。昨年は新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止となり、両市共に開催は2年ぶり。今年は感染拡大防止対策として、つくば市は式典を9日、10日の2日間に分け、それぞれ午前・午後の2部制とし、計4回の各式典への参加者数を絞っての開催となった。入場に際しては、17日に発表された知事からの要請に基づき、ワクチン2回接種済証、もしくは陰性確認の検査済証の提示が義務付けられた。
「君が生きていたなら…」歌詞の一節贈る つくば
式典開始30分前、会場のつくばカピオ前には晴れ着に身を包む数百人の新成人が集まっていた。大穂出身の飯島直人さん(19)は、「成人式が近づく中で、コロナ感染が急激に拡大し、開催できるか不安だった。無事開催できて安心した。久しぶりの友人達との再会がとても嬉しかった」と喜びを表現した。
会場脇のスペースには、筑波大学が昨年開発した、PCR検査ができる国内初の災害医療用水素燃料電池バスが、検査を受ける新成人に応対した。車両開発を担った筑波大学、鈴木広道教授が現場に立ち合い、「今春ごろに予定していた最初の社会実装を繰り上げての実装機会となった」と話す。
式典には、市内の出身中学校を3~5校ずつに分け、参加者を各回500人程度に制限した。参加者は入場時に氏名、住所、電話番号とその日の体温などをあらかじめ記入した入場券を提出し、ワクチン2回接種済証か、陰性確認の検査済証を提示し入場した。
式では新成人代表の高橋創さんが、コロナ禍を振り返りつつ「大人としての責任と社会の一員としての自覚をもち、これからの人生を歩んでいきたい」と今後への誓いの言葉を述べた。五十嵐立青市長は、厳しい状況で成人を祝えた喜びを伝えると共に、重い病や障害など、さまざまな理由でこの場に立ち会えない若者がいることに触れながら、「君が生きていたならそれでいい」という、「命に嫌われている」(作詞:カンザキイオリ)の一節を新成人におくった。
式の最後にはアトラクションとして、つくば市を拠点に活動する男女のボーカルユニット「森と林」がオリジナル曲を3曲熱唱し、新成人の背中を押した。(柴田大輔)
「ピンチをチャンスに変える力持っている」土浦
土浦市は9日、同市東真鍋町、クラフトシビックホール土浦(市民会館)で式典を催した。出身中学校を3~5校ずつ2グループに分け、午前・午後の2部制とし、振り袖やスーツ姿の新成人が合わせて921人出席した。
今年はコロナ対策として会場の敷地境界に規制線を設け、市の担当者が入り口で新成人全員の検温を実施し、ワクチン接種の有無を口頭で確認した。未接種者のため抗原検査ができるスペースを用意したが、出席者はワクチン2回接種を済ませており、午前、午後いずれも抗原検査を実施した新成人はいなかった。新成人は受付でさらに、あらかじめ氏名、住所、電話番号などを記入した入場券を提出して入場した。
午前の部の式典では、安藤真理子市長が「皆さんは高校を卒業するころからたくさんの影響が出て、進学先の学校では入学式ができなかったり、就職しても入社式ができなかったり、学校に行けなかったり、オンラインで仕事をしたりした人たちもたくさんいた。皆さんはコロナで誰よりも家族や友達に直接会える大切さを感じていると思う。コロナで急速にIT化が進んだように、ピンチをチャンスに変える力を皆さんはどの世代よりも持っている」などと呼び掛けた。
新成人を代表して大学2年の富田龍心さん(20)が「私は高校の時の恩師から言われた『人間的成長なくして技術の進歩なし』という言葉をモットーに、人の見本となれるようにと日々努力することで成長した。これからも一生懸命、目標や夢に向かって前向きに歩んでいきたい」などと誓いの言葉を述べた。
式典は市長による贈る言葉、新成人の謝辞のほか、来賓の紹介のみで30分ほどで終了した。
4月からコンピューターシステムを運用する都内の会社でエンジニアとして働く専門学校2年の千田衣良(ちだ・そら)さんは「式典は思ったより短かかったけど、成人式が開催できて良かった」などと述べた。スポーツインストラクターを目指している都内の大学2年の坂本絢美さん(20)は「大学に広島出身の友人がいて(まん延防止重点措置が適用され)広島では急に成人式が延期になった。友人からは土浦はうらやましいと言われている。開催できて良かった」などと話していた。
会場には警察官が出動し警備に当たったが、今年は酒を持ち込んだり、大騒ぎをする新成人はなかった。参加した新成人は式典が終わってもしばらく会場に残り、数年ぶりに会った友人らと名残惜しくおしゃべりをして旧交を温めていた。(鈴木宏子)