木曜日, 12月 25, 2025
ホームつくばコロナ禍にかみしめる成人式 つくば・土浦で2年ぶり開催

コロナ禍にかみしめる成人式 つくば・土浦で2年ぶり開催

つくば市、土浦市で9日、成人式が開かれた。昨年は新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止となり、両市共に開催は2年ぶり。今年は感染拡大防止対策として、つくば市は式典を9日、10日の2日間に分け、それぞれ午前・午後の2部制とし、計4回の各式典への参加者数を絞っての開催となった。入場に際しては、17日に発表された知事からの要請に基づき、ワクチン2回接種済証、もしくは陰性確認の検査済証の提示が義務付けられた。

「君が生きていたなら…」歌詞の一節贈る つくば

式典開始30分前、会場のつくばカピオ前には晴れ着に身を包む数百人の新成人が集まっていた。大穂出身の飯島直人さん(19)は、「成人式が近づく中で、コロナ感染が急激に拡大し、開催できるか不安だった。無事開催できて安心した。久しぶりの友人達との再会がとても嬉しかった」と喜びを表現した。

会場脇のスペースには、筑波大学が昨年開発した、PCR検査ができる国内初の災害医療用水素燃料電池バスが、検査を受ける新成人に応対した。車両開発を担った筑波大学、鈴木広道教授が現場に立ち合い、「今春ごろに予定していた最初の社会実装を繰り上げての実装機会となった」と話す。

参加者へのPCR検査に対応した災害医療用の水素燃料電池バス=同

式典には、市内の出身中学校を3~5校ずつに分け、参加者を各回500人程度に制限した。参加者は入場時に氏名、住所、電話番号とその日の体温などをあらかじめ記入した入場券を提出し、ワクチン2回接種済証か、陰性確認の検査済証を提示し入場した。

式では新成人代表の高橋創さんが、コロナ禍を振り返りつつ「大人としての責任と社会の一員としての自覚をもち、これからの人生を歩んでいきたい」と今後への誓いの言葉を述べた。五十嵐立青市長は、厳しい状況で成人を祝えた喜びを伝えると共に、重い病や障害など、さまざまな理由でこの場に立ち会えない若者がいることに触れながら、「君が生きていたならそれでいい」という、「命に嫌われている」(作詞:カンザキイオリ)の一節を新成人におくった。

閉会後は、会場前で止まることはできず、隣接の公園前への移動をうながされる=同

式の最後にはアトラクションとして、つくば市を拠点に活動する男女のボーカルユニット「森と林」がオリジナル曲を3曲熱唱し、新成人の背中を押した。(柴田大輔)

「ピンチをチャンスに変える力持っている」土浦

土浦市は9日、同市東真鍋町、クラフトシビックホール土浦(市民会館)で式典を催した。出身中学校を3~5校ずつ2グループに分け、午前・午後の2部制とし、振り袖やスーツ姿の新成人が合わせて921人出席した。

今年はコロナ対策として会場の敷地境界に規制線を設け、市の担当者が入り口で新成人全員の検温を実施し、ワクチン接種の有無を口頭で確認した。未接種者のため抗原検査ができるスペースを用意したが、出席者はワクチン2回接種を済ませており、午前、午後いずれも抗原検査を実施した新成人はいなかった。新成人は受付でさらに、あらかじめ氏名、住所、電話番号などを記入した入場券を提出して入場した。

式典会場では一つ座席を空けて着席した=クラフトシビックホール土浦

午前の部の式典では、安藤真理子市長が「皆さんは高校を卒業するころからたくさんの影響が出て、進学先の学校では入学式ができなかったり、就職しても入社式ができなかったり、学校に行けなかったり、オンラインで仕事をしたりした人たちもたくさんいた。皆さんはコロナで誰よりも家族や友達に直接会える大切さを感じていると思う。コロナで急速にIT化が進んだように、ピンチをチャンスに変える力を皆さんはどの世代よりも持っている」などと呼び掛けた。

新成人を代表して大学2年の富田龍心さん(20)が「私は高校の時の恩師から言われた『人間的成長なくして技術の進歩なし』という言葉をモットーに、人の見本となれるようにと日々努力することで成長した。これからも一生懸命、目標や夢に向かって前向きに歩んでいきたい」などと誓いの言葉を述べた。

午前の部で安藤真理子市長を前に謝辞を述べる新成人代表の富田龍心さん(右)=同

式典は市長による贈る言葉、新成人の謝辞のほか、来賓の紹介のみで30分ほどで終了した。

4月からコンピューターシステムを運用する都内の会社でエンジニアとして働く専門学校2年の千田衣良(ちだ・そら)さんは「式典は思ったより短かかったけど、成人式が開催できて良かった」などと述べた。スポーツインストラクターを目指している都内の大学2年の坂本絢美さん(20)は「大学に広島出身の友人がいて(まん延防止重点措置が適用され)広島では急に成人式が延期になった。友人からは土浦はうらやましいと言われている。開催できて良かった」などと話していた。

式典終了後も数年ブリに会った友人とおしゃべりする新成人=同

会場には警察官が出動し警備に当たったが、今年は酒を持ち込んだり、大騒ぎをする新成人はなかった。参加した新成人は式典が終わってもしばらく会場に残り、数年ぶりに会った友人らと名残惜しくおしゃべりをして旧交を温めていた。(鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

32 コメント

32 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

「たくさんの応援で結果出せた」筑波技術大 星野選手ら デフリンピック

石原学長に活躍を報告 聴覚障害者の国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」に出場した筑波技術大学(つくば市天久保)の学生アスリート4人が24日、同大の石原保志学長に活躍を報告した。テコンドーで銅メダルを獲った阿見町出身の4年 星野萌選手(21)は「たくさんの皆さんの応援をいただいたお陰で舞台に立つことができ、結果を残すことが出来た」と話し、大会を機に「茨城県内でスポーツの面白さを伝えていきたい」などと話した。 4人は星野選手のほか▽男子バレーボールで6位に入賞した4年 大坪周平選手(22)▽男子ハンドボールで7位に入賞した4年 林遼哉選手(21)▽陸上1500メートルと800メートルに出場した2年 中村大地選手(19)。日本代表の鮮やかなオレンジ色のジャージを着用し、星野選手は銅メダルを手にとって石原学長に見せるなどした。 バレーボールの大坪選手は「自分にとって初めての大きな大会で、結果は6位だったが、たくさんのお客さんに来ていただき本当に感謝している。最高のチームだった」と振り返った。 ハンドボールの林選手は「8カ国中7位だったが、初出場で1勝することができた。海外のレベルを知ることができ、とてもいい経験になった。2年後のハンドボール世界選手権、4年後のギリシャ・デフリンピックに向けてハンドボールを続けたい」と話した。 陸上の中村選手は「結果的に負けてしまい悔しさがあるが、この気持ちをこれからの大きな大会につなげていきたい」と語った。 石原学長は「皆さんは一生に一度あるかないかのチャンスをものにした。改めてお祝いします」と選手をねぎらい「この経験は自分の人生の経験になり、これから仕事の面でも、生活の面でも、家族をもつことになっても、つながってくると思う。頑張ってくれて大変うれしい」と語り掛けた。 同大にとっての大会の意義について石原学長は「大学からはアスリートだけでなくたくさんの学生がボランティアとして参加した。学生たちはグローバルな体験をする中で、障害を一つの個性として自覚し、共生社会の実現に向け活躍してくれると思う」などと話した。 同大からは学生6人と卒業生11人の計17人が選手として大会に出場した。星野選手のほか、夫婦で出場した大学院生の沼倉昌明、千紘選手がバドミントン混合団体で金メダルを獲った。卒業生では、女子バスケットボールの橋本樹里選手が金メダル、女子サッカーの岩渕亜依選手と男子サッカーの杉本大地選手がいずれも銀メダル、男子柔道73キロ級の蒲生和麻選手が銅メダルに輝いた。 ほかに、学生(現在は卒業生)の多田伊吹さんが大会エンブレムをデザインしたほか、開閉会式には3年の伊東咲良さんと2年の瀧澤優さんの2人がパフォーマーとして出演。同大の学生約100人がボランティアスタッフとして大会運営を担った。(鈴木宏子)

つくば駅前に大型ディスプレイ登場 イルミネーションと共ににぎわいを

オフィスビル「T.S BUIL」 つくば駅前のオフィスビル「T.S BUIL」(同市吾妻)のペデストリアンデッキに面した2階部分の壁面に21日、縦2.5メートル×横4.4メートル、200インチの大型ディスプレイがお目見えし、クリスマス関連の映像が放映されている。 22日夜からは同ビル恒例のクリスマスイルミネーションも加わり、道行く人たちの目を楽しませている。駅前をもっとにぎやかにしたいと、同ビルを所有する不動産業の都市開発(塚田純夫社長)が新たに大型ディスプレイを設置した。 ディスプレイの設置工事は14日から始まり、1週間の工事期間を経て21日から放映が始まった。毎日正午から夜9時まで映像が流れる。クリスマスの現在は、クリスマスにちなんだクイズやイルミネーション点灯のお知らせなどが流れ、26日以降は年越しに関する映像に変わる。 今後は市の情報や警察関連情報、防災情報なども放映していく予定だ。「屋外広告物」という扱いのため、大きな音を出し大勢の人が集まるコンサートやパブリックビューイングを行うためには今後、市と相談しながらになるという。 イルミネーションは来年1月12日まで点灯する。3年前に始まり、昨年同様、同ビルのペデストリアンデッキに面する2階エントランスのガラス張り壁面全体がLEDで装飾され、ショーケースの中にはサンタクロースや雪だるま、トナカイ、クリスマスツリーなどが飾り付けられている。 ディスプレイに見入っていた市内に住む60代女性は「大型のディスプレイにびっくりした。世の中に季節感がなくなってきた時代なので、こんな感じでクリスマスなど季節を知らせてくれるのはありがたい。ディスプレイの前のペデストリアンデッキは広くなっているのでコンサートでもやってくれたら」と話す。近くの職場に通う50代の男性会社員は「ずっと殺風景だったので、とても良いと思う。どんどんにぎやかにすることをやってほしい」と話していた。 都市開発の霞学部長は「つくば駅前にあるつくばセンター広場のにぎわいづくりに協力出来たらということでやっている。防災も重要なので、行政の防災の取り組みに協力し、防災に関することも放映していきたい」と語る。また「今年、1階にスタジオを移転したラヂオつくばの中継も可能なので、ディスプレイで何が放映できるか考えていきたい」と述べる。 現在放映している映像の制作は20代の同社若手社員が担当した。管理部の藤沢花恋さんは「グラフィックデザインのソフトを使って動画を作ったが、初めてだったので大変だった。デザインなどは不慣れだが担当させてもらい、いい経験になった。今後の展開も考えたい」と話した。設置業者とのやりとりや申請業務など担当した営業部の高橋開人さんは「人が集まる場所が出来ればとてもうれしい」と述べた。(榎田智司)

サンタクロース《短いおはなし》46

【ノベル・伊東葎花】 今日、学校で男子とケンカした。だって、サンタクロースはいないって言うんだもん。私は絶対いると思ってる。プレゼントだって、毎年くれるもん。家に帰ってママに聞いた。 「ママ、サンタクロースはいるよね」 「そんなことより、今夜は冷えるから温かくして寝るのよ」 …そんなことって言われちゃった。 今、世界中が燃料不足で大変なのは知ってる。イブなのに、イルミネーションも暖房も自粛なの。お店は早く閉まっちゃうし、地球全体がどんより暗い。テレビも毎日「新しい燃料が見つからないと人類滅亡」とか言ってる。でもね、私はそんなことよりサンタクロース。今日は寝ないで、サンタクロースの写真を撮るの。私をバカにした男子を見返してやるんだから。 私は、ベッドにもぐりながら、その時を待った。すると、午前0時を過ぎた頃、窓の外が一瞬明るくなった。街中が真っ暗だから、すぐにわかった。サンタクロースが来たのかも。 耳を澄ますと、ピコピコと電子音のような音が聞こえた。サンタクロースは鈴の音と共に来ると思っていたけど、今どきは違うんだ写真を撮ろうと窓を開けると、緑色の少し小さめの人が飛び込んできた。あれ、サンタクロースは赤い服を着たおじいさんだと思っていたけど違う。緑色だ。 「いやあ助かった。船が故障しちゃってさ。地球って寒いね」 サンタクロースが言った。サンタクロースは、そりに乗って来ると思っていたけど、船で来るんだ。 「あ、仲間が助けに来てくれた」 サンタクロースが指さす先に、角が生えた黄色い生き物がいた。これがトナカイ? 本物のトナカイを見たことはないけど、角があるし、きっとそうだ。 「お邪魔しました。ありがとう地球人」 サンタクロースがトナカイと一緒に帰ろうとしたので、私は慌てて呼び止めた。 「あの、ちょっと待って…、プレゼントは?」 「ああ、親切にしてくれたお礼ね。地球人、意外としっかりしてるね」 サンタクロースは、持っていた袋から赤い石を取り出してポイと投げた。「石かよ!」と思ったけれど、世界中が不景気なので文句は言えない。「じゃあね」とサンタクロースは、あっという間に出て行った。きっとたくさんの家を回るから急いでいるんだ。 「あ、写真!」 慌ててシャッターを押したけど、UFOのような白い光が写っただけだった。ああ、失敗。 写真は撮れなかったけど、サンタクロースに会えた興奮でなかなか眠れない。それに、どういうわけか部屋の中が夏みたいに暑くて、毛布を全部蹴飛ばした。サンタクロースからもらった赤い石は、暗い部屋で不思議な光を放っている。なんだろう、これ。 この石が、燃料不足の地球を救うエネルギー源になる物体だと知るのは、少し後の話。地球を救ってくれたのはサンタクロースだって、私は信じてる。 (作家)

「つくばは第二の故郷」 日本人3人目のISS船長 大西卓哉飛行士

つくば市役所を訪問 日本人として3人目となる国際宇宙ステーション(ISS)の船長を務め、8月に帰還した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大西卓哉飛行士(50)が22日、つくば市役所を訪問し、五十嵐立青市長に活動を報告した。市役所入口では、職員を始め来庁中の市民が大西さんを出迎えた。ISSの船長には、過去に若田光一さん、星出彰彦さんが就いている。 大西さんは1975年東京都生まれ。2016年には第48次、第49次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに約113日間滞在した。第72次、第73次長期滞在クルーとして滞在した今回は、10年ぶり2度目の宇宙飛行となった。 ISSでは船長として緊急時の指揮を執るなど全体の安全確保と計画遂行を統括し、他の飛行士の活動を取りまとめた。またISSに設置された日本の実験棟「きぼう」で、ほぼ重力のない宇宙空間の微小重力環境を利用した科学実験に取り組んだ。 大西さんは船長としての役目について「良い意味でのプレッシャーと同時に、大きなやりがいを感じた。大切にしていたのは、一人一人とのコミュニケーション。さまざまな国出身の飛行士がいる中で、それぞれの性格や個性の振れ幅のほうが、国籍の違いよりも大きかった。決断を下す際に、きちんと説明して理解してもらうよう心掛けた」と話した。ISSの運用は2030年で終了することから「これが最後かもしれないなと思うと寂しさというのがあった」とし、帰還時については「宇宙に名残惜しさも感じつつ、地球に帰れることのうれしさも同時に感じているような、不思議な心境だった」と振り返った。 今後については「米国を中心に人を月面に送る計画がある。その計画に宇宙飛行士として貢献したい。また民間による宇宙ステーションなど新しい分野で、自分がこれまで得てきた知見を活用できるチャンスがあれば」と語った。 つくばについては「私たち宇宙飛行士にとって、つくばはたくさんの仲間がいる『第二の故郷』のようなまち。つくばに来るとほっとする」とし、子どもたちに向けては、「私たち宇宙飛行士が宇宙空間でどのようなことをやっているのかを伝えたい。宇宙をきっかけに科学に興味を持ってもらえたら。宇宙センターの特別展などへ足を運んでもらえるとうれしい」と語った。 つくば市によると、大西さんが搭乗したロケットの打上げ風景や、ISSでの実験風景、クルーらの様子が掲載された記念パネルは、23日から市役所庁舎1階に掲示予定だ。(柴田大輔)