木曜日, 3月 19, 2026
ホームつくば作谷の森で楽しい技法を求めて 飯塚優子さん【染色人を訪ねて】4

作谷の森で楽しい技法を求めて 飯塚優子さん【染色人を訪ねて】4

これまで訪ね歩いた染色家との対話で、「作谷には行きましたか?」という問いかけを、同じようにいただいた。この連載は当初、3回でまとめるつもりだったのだが、「それでは一人足りない」とも告げられた。

つくば市北部の作谷に伺うと、染色家達に教えられたように、森の中にアトリエがあった。「ぷにの家」である。

このアトリエを営む飯塚優子さん(50)は、藍染もこなすが専門は草木染だ。草木染は、前回紹介したfutashiba248(フタシバ)の関夫妻の項でも記したとおり、弥生時代までさかのぼる染色技法だが、飯塚さんの場合、以前勤めたことのある工房が厳しく守ろうとする伝承文化としての格式を認めながらも、染色はもっと広く楽しく多くの人々に知ってもらうものではないかと思い至り、その世界から独立した。

飯塚優子さん

「この森と屋敷は祖母の家を受け継いだもので、古い鶏小屋をアトリエに改造したのです。草木染めは独立するまで東京の自宅で行っていましたが、いろいろなチャレンジ、本格的な染色をするためには、マンションの室内では限界があったから」

飯塚の姓は旧姓。彼女は本サイトで2019年、つくば市立秀峰筑波義務教育学校が開校の記念に作成した「秀峰筑波かるた」の企画制作者として、柿崎の姓で紹介されている。本来そちらが現在の名字だが、「ぷにの家」においては旧姓で仕事をしている。

「作谷の森には、1996年頃にやってきました。今もあまり変わりませんが、あの頃は、こんな田舎に隠遁してしまって暮らしていけるかと頭を抱えることもありました。でも今は、主人と4人の子どもたちと過ごしています」

ぷにの家の花畑から臨む筑波山

飯塚さんが作谷に定住したことによって、大きな出会いを得ることになっていく。

染色家としてのなりわいは、地域の保育園での卒業制作としてミニトートバッグなどの体験染色を請け負い、オリジナルデザインや文字入れを施した手ぬぐい、シャツなどの受注をしながら、定期的に草木染めを主体とした工房体験教室を開いてきた。つくば市内を中心に各地の地域イベントにも出店している。

こうして名前と顔が地域に広まっていく中、2010年のある日、近隣の北条地区にかつて所在した染物工場が使っていた「型紙」を譲り受けることになった。

譲り受けた型紙

「工場は半世紀前には失われていましたが、縁者の方から、あなたが役に立てなさいと言われて、3000枚ほどの型紙を委ねられたんです。大半が劣化していて使用に耐えられるものは300枚くらいでしたが、旧筑波町に確かに染め物を営む人がいらした証をいただけた。染色家の1人としては、これは大変なことになったという思いをしたのです」

この型紙は、展示会などで紹介する一方、型紙そのものをベースに、体験教室でも型紙を起こすプロセスを加えるなど、染色技法と歴史の一環として体験参加者とともに再現活動を行っている。

型紙(上)と型紙を起こした作品(下)

「次第に活動内容が大きく複雑になってきました。1人でやっていくのが大変だなと感じているところに、この数年、若手の染色家がつくば発の活動を始めているわけです。最初はね、お互いに顔見せすることもなかったんですよ。といって、私は25年前からここにいるのよ、遊びに来てよとも、初めのうちは言えなかったの。少しずつ交流を始めて、丹羽さん、渋谷さん、関さんご夫妻と情報交換するネットワークを作りました。私は染染(そめそめ)クラブと呼んでいます」

天然素材にこだわる若手染色家たちに比べて、飯塚さんの染色は、化学的に開発された市販の抜染糊(ばっせんのり)を積極的に用いた型押し抜き。あらかじめ藍染された布に、型紙だけでなく木の葉などを使って抜染糊を置く。その部分だけが、薬品反応と湯煎の熱処理によって白く色が抜け文様となる。体験教室にやってくる子どもたちは、そのプロセスと出来映えに興味津々だ。

型押し抜きの完成

「藍染は、若手にお願いしようと考えています。私は草木染の伝統技法だけにこだわらず、新しいアイデアとの組み合わせを通して、型押し抜きの面白さや、栽培しているマリーゴールドの花がどんな色で布地を染め上げるかを楽しんでいるから」

飯塚さんに会うまで、作谷の森にいるのは魔女や魔法使いやらの例えだろうかと考えていたが、染色は論理と化学と自然を融合させるものと言っても良い。それを大幅に広い意味で解釈すれば、彼女は染分野の錬金術師なのだと感じた。

飯塚さんは今後、「ぷにの家」を「ぷにの邑」へと発展させるという。染色以外の活動では、「秀峰筑波かるた」の地域性をつくば市内の他地区ごとに広げた「つくばかるた」の制作も温めている。作谷の森の錬金術師は人々の優しさをつなぐために、染の魅力を振るっている。(鴨志田隆之)

飯塚優子(いいづか・ゆうこ)
草木染の大家であった故・山崎青樹の姪。大学時代に草木染を始め卒業後にその道へ進むが、自らの理念を貫き独立。草木染以外の様々な染料や技法を研究し、誰もが楽しめる染物を提案している。
ぷにの家 : https://www.instagram.com/puninoie/?hl=ja

終わり

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

「人生という旅を楽しんで」 日本国際学園大学で卒業式

日本国際学園大学つくばキャンパス(つくば市吾妻、橋本綱夫学長)で19日、卒業式が催された。同キャンパスで学んだ49人の卒業生を前に橋本学長は「人生百年時代の中で、皆さんはこれから80年先の未来に向けて歩むことになる。80年前のことを考えると時代が大きく変わってきたことがよくわかる。これから苦難が待ち受けているかも知れないが、人生という旅を楽しんで欲しい」とエールを送った。 卒業生を代表して経営情報学部人文科学専攻の朝妻翔さん(22)は「大学の4年間で自分ができることは積極的に挑戦し、成長すること、そして一人で解決しようとするのでなく周囲の人の助けを借りることの大切さを学んだ。自分が気づかないことでも他の人の客観的な視点が必要なこともある。SNSやオンラインゲームで簡単に世界とつながれる時代だからこそ信頼できる関係を築くことが大事だと思う」と答辞を述べた。 式典では、同学部情報・デザイン専攻の伊藤祥一郎さんが橋本学長から学位記の授与を受けた。さらに優秀な成績や功績があった卒業生に褒賞が授与され、同学部人文科学専攻の朝妻翔さんと情報・デザイン専攻4年の伊藤祥一郎さんにそれぞれ学長賞が、佐藤緑咲さんに前身の東京家政学院創立者、大江スミの名を冠した大江賞が贈られた。 取手市出身の卒業生、千葉譲さん(22)は「4年間は授業とアルバイトに追われて忙しかったが、無事に卒業出来てよかった。これからはバスの運転手になるので、社会人として頑張っていきたい」と語った。 同大は1990年、東京家政学院大筑波短期大学として開学。96年に4年制の筑波女子大学になり、2005年に男女共学の筑波学院大学になった。大学の運営は19年度に東京家政学院から学校法人の筑波学院大学に移り、23年からは学校法人名を日本国際学園に変更した。一昨年からは姉妹法人の東北外語学園(仙台市、橋本理事長)が運営する仙台市の東北外語観光専門学校に新たに日本国際学園大学の仙台キャンパスを設置した。 つくばキャンパスは、経営情報学部ビジネスデザイン学科に、国際教養モデル、現代ビジネスモデル、公務員モデル、AI・情報モデル、コンテンツデザインモデルの五つがあり、各モデルから選択し専門の学びを深めることができる。外国人留学生は日本文化ビジネスモデルで学ぶことができる。(榎田智司)

土浦の新小学1年生に黄色い帽子を寄付 JA水郷つくば

新年度に土浦市内の市立小学校と義務教育学校に入学する全ての新小学1年生に向けて、JA水郷つくば(土浦市小岩田西、池田正組合長)が883個の黄色い交通安全帽子を土浦市に寄付し、18日同市役所で寄贈式が催された。池田組合長から安藤真理子市長に目録などが手渡された。 交通安全帽子の寄付は同JAが地域貢献活動の一環で1977年から始め、今年で49年目となる。以前は男子がキャップ型、女子はハット型と性別で形が異なっていたが、2024年度から性別を問わず共通のハット型とした。 式典でJA水郷つくばの池田組合長は「この事業が始まった時は農協が合併する前だった。自分が入所した頃からやっていることなので感慨深い。小学1年生は、黄色い帽子をかぶっているのが知れ渡っているので、運転手も気をつけてくれる。今後も支援を続けていきたい」と話し「帽子ではなくヘルメットという声もあったが従来通り黄色い帽子となった」と付け加えた。 寄付を受けた土浦市の安藤真理子市長は「交通安全は市としても大事なことなので、長い期間寄付を続けていただき大変感謝している。子供たちには毎日元気に登下校してもらいたい」と述べた。 寄贈式では土浦市が1976年から毎年、入学祝い品として新1年生に無料で贈呈しているランドセルも用意された。ランドセルも今春から性別に関係なくジェンダーレスの薄い茶色になる(25年5月2日付)。 新小学1年生に対するJA水郷つくばの交通安全帽子の寄付は、土浦市のほか、管轄する龍ケ崎、牛久、かすみがうら、利根、美浦、阿見の7市町村全ての公立小学校と義務教育学校に対して行われる。(榎田智司)

つくばエクスプレスの車窓から《ご近所スケッチ》22

【コラム・川浪せつ子】今回はつくばエクスプレス(TX)の窓から見えた筑波山とつくば市内の絵です。TXは2005年8月に開通しました。都内からつくば市に引っ越してきた私は、それまで乗用車でJR荒川沖駅まで行き、常磐線で東京に通いました。免許証を持っていなかったので、教習所に通わねばならず、いろいろ大変でした。 TXは待ち望んだ電車でした。今は都心部から帰るとき、TXに乗り、筑波山が見えると心が休まります。車窓からの風景は穏やかで、都会の喧騒(けんそう)を忘れさせてくれ、地方の良さをつくづく感じます。つくば市に来てよかったと、しみじみ思うときです。 交通の便は良くなったものの、つくば市の「景観の方はどうかしら?」と思っていました。そんなとき2月に「つくば市景観講演会」という市主催の企画があったので、参加してみました。建築業界の隅っこで仕事をしていますが、これまで景観のことはあまり考えず、受けた仕事をこなしているだけの生活でした。 「便利」だけでなく「景観」も 「つくば市の景観100」「つくば景観ルートマップ」という冊子、ご覧になったことありますか? 少し前に発行されたものですが、時々見て、絵を描く資料にしていました。つくば市とその周辺部には、ステキな自然や景観がたくさんあります。 電車も通り、人口も増え、便利にはなったものの、それは景観の悪化につながっているのだと、今回の企画で感じました。仕事で「あれ?こんなのいいの?」と思うような看板を描いたこともありましたが、ソレです。「再生エネルギー」の太陽光発電パネルが、筑波山に造られたこともありました。コレ、禁止なんじゃないの? 大学の先生の話も面白かったです。先生+市民の協力で、街を再生・進化させた事例など。 上の絵のように、つくば市はまだ開発中ですが、「便利」だけでなく「景観」も、「住みやすい街」には大切と思いました。(イラストレーター)

学生宿舎値上げを1年延期 筑波大

永田学長「値上げかなわなければ宿舎廃止」 筑波大学(つくば市天王台)が4月1日から実施するとしていた学生宿舎の寄宿料値上げ=3月11日付=について、永田恭介学長は18日の定例記者会見で、値上げを1年間延期すると発表した。一方で「残念ながら値上げがかなわなければ、宿舎廃止が順番に行われる」とも発言。学生らからの反発は必至で、大学側と学生側との話し合いにも影響が出そうだ。 永田学長は会見で「宿舎値上げについては、かなりご理解をいただいている」と、大半の学生から理解を得ていると強調し「一部の学生さんにはまだご理解いただけていない」との見解を述べた。その上で「さらに対話を続けるという意味合いで、もう少し値上げの時期を遅らせるということにした」と述べ、宿舎値上げを1年間延期するとした。 一方で「いろんな意見交換を行いながら最終的に値上げを行いたい」と、値上げへの強い意向を示し「残念ながら値上げがかなわなければ、宿舎廃止が順番に行われる」と強硬な姿勢をちらつかせた。 その上で永田学長は「国立大学の財産の部分であり、当然ながら安心安全が見込めない建物は使えなくなる。僕ら(筑波大学)が廃止するよりも、廃止せざるを得ない状況になると思う。改修については概算要求で認められることはほとんどなく、校舎などもほとんど自力で直している」と説明した。 一方で経済的に厳しい学生や、障害を持つ学生への配慮については「少し思慮が足りなかった部分があるので、来年(2027年入学)の学生が入るまでに順序良くチャートを作って、それぞれが適正なところに入れるよう、その準備が必要になる」との考えを示した。 平均で1.4倍から1.5倍に及ぶ賃料や共益費の値上げ幅圧縮などの選択肢の有無について永田学長は、宿舎にwi-fi環境を整備することを挙げて「値下げするのは非常に難しい」との考えを強調した。 弁護士「全く反省してない」 これに対し学生有志の代理人である指宿昭一弁護士は「(大学側は)全く反省していない。この値上げを聞いて宿舎から出て行った学生もいる。学生の声を聞かずに一方的に(値上げを)決めてしまったことを反省してほしい」と憤りを見せた。その上で「大幅値上げをしないで宿舎を維持できるよう大学側は追求すべき」と、同大に対し宿舎維持方策の検討を求めた。 宿舎値上げをめぐっては、大学公認の学生代表組織「全学学類・専門学群・総合学域群代表者会議」(全代会)が1月7日付で学生担当の千葉親文副学長に対し▽値上げについて学生と議論を通じての合意の形成▽寄宿料、共益費の値上げを2027年4月1日まで延期▽経済的に困窮している学生に対して、援助の方法を用意し周知を行うことによって保護を与えること―の計3項目からなる要請書を提出。学生有志らで作る「筑波大学学生宿舎寄宿料増額の撤回を求める会」は3月2日、賃料値上げ撤回や値上げ実施延期のほかに、学生宿舎入居者代表や全代会との協議や同意なしで値上げを行わないこと、学生が申し入れをしたことを理由に学業や生活上の不利益を一切与えないことの確約などを求める要求書と交渉申入書を提出している。(崎山勝功)