金曜日, 7月 1, 2022
ホーム 土浦 「農color」の目指すもの 関将史さん、裕子さん夫妻【染色人を訪ねて】3

「農color」の目指すもの 関将史さん、裕子さん夫妻【染色人を訪ねて】3

前回まで紹介した染色人(せんしょくびと)は藍染に専念する人々だが、染色にはよりナチュラルな表現を伴う技法が存在する。草木染がそれだ。草木染の伝統は弥生時代にさかのぼる。天然素材としての木枝や草花を用い、生み出される色彩は古代から受け継がれたアースカラーなのだ。

「futashiba248(フタシバ)」を営む関将史さん(32)、裕子さん(31)夫妻は今年8月、土浦市板谷に工房を開設し、草木染のクリエイターとして活動を本格化させている。彼らの草木染は、剪定された木枝や規格外で市場に出ない野菜・果物などの農業廃棄物を、県内各地の農家から提供してもらい、その原料から生み出される色彩を「農color(カラー)」と名付けてアピールする。

「消費者の側にいる私たちは、農業生産物が作られるプロセスや生産者のことを意外に知りません。私自身もそうでした。茨城県北部の大子町でリンゴが栽培されていて、県内でリンゴ狩りができることも知らなかったのです」と、将史さんは語る。

土浦市板谷に開かれたfutashiba248

関夫妻は東京モード学園の同級生だった。互いにアパレル産業に憧れそれぞれ企業に就職したが、地域の農業生産者が抱える苦労や問題を見聞し、自分たちの持っている服飾の世界を通して何か手伝うすべはないかと模索し、出合ったのが草木染だった。

染料の素材と染色製品をもって、農業生産者と消費者をつなぎ、双方の縁を広げていくこと。それが「農color」だ。衣服の染色だけでなく、アクセサリーや小物もデザインし、オリジナルの形と色を販売する。

「日々、生産者の方々と連絡を取らせていただき、廃棄があるときに回収してきて、その日のうちに素材を加熱処理、つまり寸胴で煮込んで染料を作ります。翌日に実際の染色をするのですが、素材によってどんな色彩に染まるのかはやってみないとわからない。このドキドキ感はとても楽しいですよ」(将史さん)

漆から色素を抽出

大子町のリンゴをはじめ、ひたちなか市のサツマイモ、笠間市の栗、阿見町のトマト、つくば市のヤーコン、小美玉市のブルーベリーなど、収穫の時期によって素材は変わる。この時期は漆や柿の枝を煮込んでいる。桜や梅の枝木も材料となる。茨城の農資源を地産地消するという側面も大事にしている。以前はホームページと連動して、製品タグから農業生産者の情報を得られるQRコードを添えていたが、現在は「見てすぐにわかるように」と、タグに直接、情報を記載している。

なぜ「futashiba248(フタシバ)」というブランド名なのかも、郷土としての茨城に敬意を表した意味がある。

裕子さんによれば「フタシバの『フタ』は、2人で始めたブランドであることや、それまで捨てられてしまった農生産物を『ふたたび』世に送り出したいという願いを込めています。『シバ』は、私が柴犬が大好きなので」とのことだ。柴犬がどう郷土と関わるのかと思えば「茨城県の形が、犬が遠吠えしているように見えますから」(裕子さん)と、きちんとつながりを持たせていた。

阿見町のトマトから作られた染料

現在の課題は、染料を取り出すために使った木枝などの再利用。乾燥させ破砕してコンポスト化まではたどり着いている。その活用の道を模索している。すると、地域の人々が、コンポスト化までの手伝いのアイデアを助言してくれたことがあったという。

「将来、茨城県以外の素材も手掛けてみたいと思っていますが、今は県内の資源と、人々のつながりを見出すことが主たる目標です。この工房では予約制で体験染色も開いています。沢山の人々と出会いながら、茨城発の『農color』を伝えていきます」(関夫妻)

ささやかながら壮大なストーリー。草木染の新しい魅力が2人の手で産み出されていく。(鴨志田隆之)

農colorの作品

関 将史(せき・まさふみ)
出身地:茨城県つくば市
担当:染色、デザイナー

関 裕子(せき・ゆうこ)
出身地:長崎県諫早市
担当:染色、製作

URL : https://www.futashiba248.com/

誹謗中傷するコメントはNEWSつくば編集局が削除します。
0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る

陽性確認者数(公表日ベース)の推移

つくば市

土浦市

スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

日本はプーチンのロシアになるのか 《ひょうたんの眼》50

【コラム・高橋恵一】プーチンのロシアの理不尽なウクライナ侵攻を見て、日本の危機と防衛力の強化が叫ばれている。よくメディアに登場する「専門家」は、防衛省関係者・自衛隊幹部OB、あるいは旧大日本帝国の残影が残る関係者が大半だ。 「専門家」の解決策は、ロシアを押し返して、妥協できるところで停戦するシナリオだろうが、それまでにどれだけのウクライナ人が死ななければならないのだろう。ロシアの兵士は何万人死ぬのだろうか。世界の穀倉地帯の混乱で飢餓に陥る人々は16億人を超すとも予測されている。 プーチン大統領は、核兵器使用もいとわないという、無茶ぶりだ。NATO欧州加盟国は、防衛費をGDPの2%に増額するという。長期戦略として効果的かどうかも疑わしいが、少なくとも今のウクライナには間に合わない。 現在の日本の防衛予算は世界第8位。取りざたされているGDPの2%になれば、米国、中国に次いで、世界3番目の軍事費大国になる。 プーチンの侵略行為が、先の大戦のナチスドイツや大日本帝国軍の行動によく似ていることを考えれば、日本の防衛力強化は軍国日本の復活ともとられ、世界や日本国民が受け入れるとは思えない。世界は、そう見るのだ。 当然、中国もロシアも北朝鮮も、対抗して防衛力を強化する。それどころか、日本を警戒する意味で、韓国、台湾、フィリピンなどとの緊張も高めてしまうかもしれない。米国も、軍事産業部門以外からは、歓迎されないのではないか。

安売りカメラ店 《写真だいすき》9

【コラム・オダギ秀】また昔の話で、ゴメン。でも、店への愛を込めて書きたいのだ。とても若いころ、写真家仲間が頼りにしていた安売りカメラ店のことだ。 新宿の裏通りのその店は、間口が2、3間ほどだったろうか、住宅のような、お店とは思えないようなところだった。ガラスの引き戸を開けて入るとカウンターがあり、商品は並んでいない、カメラや写真の材料を売る店だった。近所にかつて浄水場があったので、その名前が付けてあった。 カウンターで「トライ、長巻き、2缶」のように言うと、無口な細っこいアンチャンが奥の棚から品物を持って来てくれた。貧しいカメラマンたちには、ありがたい安売り店だった。品物は並んでいないから、何というどんな商品か、価格はいくらならいいのか、わかる者だけが出入りする店だった。プロ機材ならまず手に入ったし、価格に不満なこともなかった。安かったのだ。 1年ぐらいしてからか、天井に穴を開け、2階の倉庫から品物をひもで吊り下げるようになって、品ぞろえとスピードが少し増し、店員も2人から5人くらいに増えたと思う。 昔、写真は、フィルムという感光シートか、それを細く巻いたロールで撮影していた。フィルムはパトローネという小さな金属ケースに巻き込まれていて、パトローネには36枚撮影分のフィルム入り、というのが普通だった。 プロやそのタマゴたちはパトローネ入りではなく、ずっと長くてコスパのいい100フィート入りの缶を買い、適当な長さにフィルムを切って、使用済みのパトローネに詰め、フィルム代を安くあげるようにしていた。

つくばの坂路で実証実験 森林総研に電動四足歩行ロボット

森林総合研究所(つくば市松の里、浅野透所長)は28日、ソフトバンク(本社・東京都港区、宮川潤一社長)と取り組む「電動四足歩行ロボット」による実験を公開した。スマート林業の実現と脱炭素社会をめざし、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受け、21年度からロボットの歩行実験を行っていたもので、6月から研究所内の施設で実証実験を開始した。 取り組むのは「NEDO先導研究プログラム/農山村の森林整備に対応した脱炭素型電動ロボットの研究開発」。傾斜角度が30度までの斜面の上り下りが全自動で出来るアメリカ製の四足歩行ロボットを採用して、森林環境において、高精度な自動歩行がどこまで可能になるか、通信の改善をどのように実現するか、など実地に検証する。 造林作業向けに開発 従事者の高齢化や担い手不足から、わが国の木材自給率は40%程度に留まり、国産材の供給力の強化が林業の課題になっている。近年は特に木材を伐採した後、新たに苗木を植えての「再造林」が進まないことが悩みになっているそう。 抜根や下刈りなどに人手を要するうえ、傾斜地での作業となるため労働負荷が大きい。この「造林」作業にマッチした走行性能を有するモビリティーの開発を目指している。具体的には、シカの食害対策のため設置する防鹿柵の点検、苗木の運搬、森林資源の調査・計測などの作業を想定している。 21年度は森林総研と連携協定を結ぶ北海道下川町で、造林地や急傾斜地、積雪などの環境下で電動四足歩行ロボットの歩行能力について調査・検討を行った。一定の条件下であれば斜面や障害物などがあっても安定した歩行ができることが分かった。

500号の大作も 県つくば美術館で「茨城の美術セレクション」展

茨城県で活躍中の作家たちの作品を展覧する「茨城の美術セレクション」展が28日、県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。県の美術界を代表する27人の作家による日本画6点、洋画16点、彫刻5点を展示する。 今年1月に県近代美術館(水戸市)で開かれた「第12回現代茨城作家美術展」に出品した100人の中から27人、27点の作品を選抜して展示する。19日までの県陶芸美術館(笠間市)に続く移動展覧会で、来年3月1日から12日には県天心記念五浦美術館(北茨城市)開催と、それぞれ異なる作品の展示となる。 昨年の開催では約1400人が来場した。作家自身が来場者に技法や制作への思いを話す「ギャラリートーク」が毎回好評だが、今回は来場者との対面スタイルでは実施せず、会期終了後にYouTubeでトークの動画を配信予定だという。 会派やジャンルの垣根を越えた大作が一堂に会する。展示された作品の中には、500号の大きさの絵画2つで構成された筑波大学名誉教授、玉川信一さんの作品「愚者の階梯(かいてい)」や筑波大教授、仏山輝美さんが自らの顔や手をモチーフとして描いた作品「月光」など、生と死を感じさせるような作品が並ぶ。 県美術展覧会事務局(水戸市千波町)の学芸員、天羽かおるさんは「生と死のテーマは作家が生きていく中で突き当たる必然。現役の作家が今まさに感じていることを表現している。コロナ禍以後は、作品にじっくり対面し丁寧に見られている方が多くなった。肌感覚だが、以前より特に男性で、お一人で来場される方が増えているように感じる」と話す。 市内から訪れた男性は「図書館に寄ったついでに見に来た。近代的な感じの作品が多く、おもしろい展覧会」と話した。(田中めぐみ)