農業用の水路や貯水池などの水利施設で大発生し、通水パイプなどを詰まらせるなどの問題を引き起こすカワヒバリガイを、農業・食品産業技術総合研究機構(NARO、つくば市観音台)は18日、侵入後間もない低密度な段階で検出する技術を開発したと発表した。NARO農業生態系管理研究領域の伊藤健二上級研究員と芝池博幸研究領域長による成果。
カワヒバリガイは中国・朝鮮半島が原産の固着性の二枚貝で、駆除の対象となる特定外来生物に指定されている。霞ケ浦では2005年に初めて確認され、18年には湖岸のほぼ全域に分布を広げた。
水利施設などの通水障害の原因になるほか、水利施設を経由し水系を超えた範囲まで分布を拡大させることから、密度が低く分布が限られた段階で駆除対策を実施する必要がある。だが、水面下に固着する貝を侵入初期の低密度の状態で、目視で発見するのは困難だった。
水を採取するだけ
伊藤上級研究員らは、カワヒバリガイのDNAを特異的に増幅する「プライマー対」(※メモ)を新たに開発し、コウロエンカワヒバリガイなどのカワヒバリガイに近縁な二枚貝の中から、カワヒバリガイ由来のDNAのみを高感度に検知することに成功した。
これにより、水利施設で表層水1リットルを採水してDNAを分析するだけで、カワヒバリガイの有無を確認することが可能になった。DNAは成貝のだけでなく、生まれてから10~20日の間、約0.1mm程度の大きさで水中を浮遊する幼生についても検出することができた。
今回開発された方法は水を採水するだけでカワヒバリガイの有無を検知できるので、通水パイプなどのように目視観察できない所での検出にも応用できる。DNAにより侵入が確認された水利施設については、非灌漑期に水を抜いて半月程度乾燥させることで成貝を死滅させることができる。伊藤上級研究員は「水利施設の運用にほとんど影響を及ぼさずに、早期発見と防除が可能になる」としている。(如月啓)
※メモ=【プライマー対】ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に用いる数十塩基対程度の短い核酸の断片。