物質・材料研究機構(NIMS、つくば市千現)が製薬企業11社とともに発足させたマテリアルズオープンプラットフォーム(MOP)が25日、医薬品に関する共同研究を開始した。参加企業はアステラス製薬、エーザイ、沢井製薬、塩野義製薬、第一三共、大鵬薬品工業、武田薬品工業、田辺三菱製薬、中外製薬工業、東和薬品、日本新薬。医薬品開発に関わる候補化合物の物性評価と製剤開発に関わる共同研究を企業の壁を越えて進め、研究開発の基盤力強化、開発技術の共有、開発手法の標準化を目指す。
MOPは産官学連携の新しい枠組みで、研究所と企業の個別な関係を各者の水平な連携に広げて構築し、国際競争力強化を図る。各企業が自前主義の発想から脱却し、保有技術を結集して共同で基礎技術力を磨くことが必須と考えられることから、NIMSが中心になってプラットフォームをまとめた。NIMS機能性材料研究拠点医療応用ソフトマターグループの川上亘作グループリーダーがプラットフォーム長を務める。
従来の医薬品は低分子化合物が中心だったが、近年は抗体、核酸、細胞など用いる材料が多様化しており、製薬企業には柔軟な対応力が求められている。新しい材料による医薬品は疾患予防や治療の可能性を大きく広げており、例えば新型コロナワクチンはm(メッセンジャー)RNA 技術によって開発されている。
国内製薬企業は、海外の大手製薬企業と比べると人員規模において大きく劣るのに加え、経営の効率化で研究所の部分分社化なども進み、新しい基礎技術の開発が難しくなっている。一方で、核酸医薬などの比較的歴史の浅い治療法においては評価手法が確定しておらず、その開発と標準化が急務となっていた。
つくば・並木地区にオープンラボ
当面の研究テーマは、①抗体医薬の分析法確立②抗体医薬の製剤化技術の開発③核酸医薬の物性評価法確立④低分子薬物の消化管吸収メカニズムの解明⑤非晶質医薬品の安定化⑥イオン液体の製剤利用-の6つをあげている。参加企業の約100人の研究者と共同研究を行い、国内製薬企業の物性評価・製剤開発に関する基礎技術力の向上と、製薬における開発手法において世界に通じる標準化を目指すという。
共同研究はコロナ禍で急速に普及したオンライン会議技術を利用することによって、企業間、研究グループ間の情報共有を頻繁に行って進める。また参加企業の研究者はNIMSが所有する最先端機器も利用でき、つくば(並木地区)に開設するオープンラボは、参加者が自由に出入りできる予定という。(如月啓)