熱中症の危険を呼び掛けるため、環境省と気象庁は28日から「熱中症警戒アラート」を全国で開始した。近年、熱中症による死亡者数・救急搬送者数は増加傾向にある。つくば市では、2019年、20年の2年間に207件の熱中症による救急搬送があった。
全国では昨年、熱中症による救急搬送者数が約5万8000人を数えた。08年夏季(7〜9月)は約2万3000人だった。熱中症による全国の死者数は18年以降、年間1000人超で推移し、65歳以上の高齢者が8割を占めている。
警戒アラートは、気温や湿度、日差しの強さなどを元に算出された「暑さ指数(WBGT)」をもとに、熱中症になる危険性が高くなると予測したときに発表される。環境省の熱中症予防サイトや、自治体の防災無線、報道などを通じて知ることができる。
前日の午後5時と当日の午前5時の2回、気象庁の予報区ごとに発表する。運用は、4月28日から10月27日までで、茨城県を含む関東甲信の1都8県では昨年試行されていた。
政府は今年3月「熱中症対策行動計画」を策定し、熱中症による年間の死亡者数を1000人以下にする目標を打ち立て、危険が特に大きい高齢者への予防行動促進に重点を置いている。
ビニールハウスで死亡例も
農作業中に熱中症にかかる人も多い。全国では2020年までの10年間で、農作業中の熱中症が元で251人が命を落としている。そのうち70歳以上が8割を占める。つくば市では、19年から20年、2年間の救急搬送のうち9件が農作業中による熱中症だった。
JA茨城中央会によると熱中症の事例として、室内が40度を超えることもあるビニールハウスで作業時の死亡例があるという。また、夏に向け作業量が増加する、水田や畑の畦(あぜ)などに生える雑草の除草作業時に熱中症によって救急搬送される事例も多いという。
県内在住の農家、大倉史江さん(42)は、田畑には日陰がなく直射日光を浴び続けること、また、地表からの熱、水田の照り返しも危険だと話す。特に高齢者が無理をして長時間一人で作業することの危険性を指摘する。

対策として、つくば市消防本部救急課長補佐の金子清志さん(51)は、体調を崩した時にすぐに対応できるよう、複数人での作業が重要だと話す。そして少しでも体調に異変を感じれば作業を中断し休憩を入れること、その際、風通しのよい日陰等での休憩に加え、必要があれば車内でクーラーを適切に使用し体を冷却させることを勧めている。
その他に留意点として、作業中だけでなく、作業前からこまめな水分補給をとること、気温の高い時間帯の作業をなるべく避けることの重要性を指摘する。飲料水はお茶や水よりも、スポーツドリンクを飲むこと、また合間に塩飴をなめるなどして塩分を補給する必要だと話す。
政府は、コロナ禍における熱中症予防行動として「高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがある」とし、屋外では2メートル以上の十分な人との距離を確保した上で、マスクをはずすよう呼び掛けている。(柴田大輔)