木曜日, 7月 9, 2026
ホームコラム《遊民通信》5 これでいいのだ―罪の意識とカタルシス

《遊民通信》5 これでいいのだ―罪の意識とカタルシス

【コラム・田口哲郎】
前略

日本人には罪の意識がないと言われます。しかし一体なぜこんなことが言われるのでしょう? 自分たちが悪いと思っていないから、日本人は過去の過ちを認めず、心のこもった謝罪をしないと言いたいのではありません。罪の意識というときに焦点になるのは、日本人と西洋人との違いについてです。西洋人というのは古い言い方ですが、キリスト教圏の欧米人という意味です。さて、西洋人と比べたときに日本人に罪の意識がない、と言うことができると思います。

罪の意識とはなんでしょうか? キリスト教には原罪という考え方があります。人間は生まれながらにして罪を負っているという思想です。禁断の果実を食べたことで神の怒りを買い、エデンの楽園からアダムとイブが追放されました。以来、人間には死が与えられ、食うために労働しなければならなくなりました。

これは創世神話に過ぎないと言われるかもしれません。でも、アダムとイブの過ちにまでさかのぼらなくても、人間は生きていれば大なり小なり罪を犯します。夏目漱石の『こころ』の「先生」は、労働不要の遊民でしたが、横恋慕(よこれんぼ)と略奪愛のせいで親友Kを自殺させてしまったという罪の意識によって自死に追い込まれます。

罪意識がいかに人間を不安にさせるかが分かります。罪の意識は人間が生きている限りつきまとう、どうしようもない不安なのです。この厄介な不安は現代社会にもまん延し、大勢の人がうつ病に苦しんでいます。

罪の意識とキリスト教

西洋人は原罪と二千年以上も付き合ってきました。キリスト教は、人間の原罪をキリストが代わりに背負ってくれたと考えます。キリストの犠牲のおかげで、人間は神と和解し、原罪から解放される、と。これは贖罪(しょくざい)思想と言われるものです。贖罪思想という強烈な浄化装置を西洋人は持っていることになります。

「これでいいのか?」を「これでいいのだ」にするカタルシスです。ニーチェの言う超人(強く生きる人)になる秘訣です。

人生の始まりから罪を背負っているなんて日本人は考えもしませんでした。西洋人のやり方を無理してまねる必要はありません。しかし、西洋人の方法論を知ることは、コロナ禍を生き抜くヒントになると思います。

アフターコロナの新様式社会では、社会のITC(情報通信技術)化が急激に進展し、個々人が主体的に選択をすることが求められるでしょう。自由である分、不安も増大します。選択が成功することもあれば、失敗することもあります。罪の意識に苛まれるかもしれません。そのときこそ罪を浄化するカタルシスは大いに役立つと思います。

自分は悪くないと開き直れと言っているのではもちろんありません。たとえ自分に都合の悪い状況でも、目をそらさないことです。そして、苦しみや悲しみが自分の罪に対する罰などではないと悟ることが大切です。それでは、ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

元日本代表の佐藤陽太郎選手 母校のつくば市柳橋小で水泳指導

アーティスティックスイミング元日本代表で筑波大4年の佐藤陽太郎選手(21)=ジョイフルアスレティッククラブ所属=が8日、母校のつくば市立柳橋(やぎはし)小学校を訪れ、授業の中で水泳指導を行った。 対象となったのは同校の5、6年の23人。初級、中級、上級の3つのコースに分かれ、各コースの児童を10分ずつ指導した。泳ぎが苦手な児童には、少しでも泳げるようになるための助言をしたり、泳ぎが得意な児童には、さらに技術を向上させるようなアドバイスをした。 この日は、担任教員の水泳指導を補佐するような形で、佐藤選手もプールの中に入った。佐藤選手が少しでも泳ぐと、児童たちからは「早い」「すごい」などと感嘆の声が上がる。 佐藤選手は児童たちに囲まれながら、基本的な泳ぎを教えたり、時折、水を掛け合ったりした。児童たちは「とても楽しかった」「水泳が好きになるかもしれない」など感想を話していた。 佐藤選手は、姉の佐藤友花選手と共に、2022年の世界水泳ハンガリー大会でアーティスティックスイミング・ミックスデュエット部門の日本代表として初の銀メダルを獲得するなど、世界で活躍する日本のトップアスリートの一人。 小学生の頃から姉を追い掛けるように、ジョイフルアスレティッククラブの水泳教室に通ったのがきっかけという。柳橋小から市立谷田部中を経て、常総学院に進み、現在、筑波大学4年。 柳橋小の坂本敬持校長は「世界的に活躍する卒業生に来てもらってとても感謝している。小学校教員は全教科を教えるのが基本なので、専門的な指導が深く出来ず、技術的なことは教えづらいところがある。今回日本のトップ選手が来てくれたことで、子供たちのモチベーションも上がり、技能的な面も上がってくるという効果もあるので非常にうれしく思っている」と話した。 佐藤選手は「9年ぶりに母校を訪れ、とてもなつかしくうれしい」と述べ「今は全国大会とインカレの優勝を目指して頑張っているところ。今できることを今精一杯やっていく、というやり方でやってきているので、それを続けたい」と語った。(榎田智司)

「TX沿線では売地が枯渇」つくばエリアの地価事情に精通 桂不動産の渡邉社長【キーパーソン】

国税庁が7月1日に公表した路線価(1月1日時点)で、TXつくば駅前広場線の地価が平方メートル当たり40万円になった。広さのイメージが湧きやすい坪当たりでは132万円。1年前に比べると11%もアップした。県内では断トツの上昇率だ。つくばエリアで起きている「地価バブル」の実態と対応策は? つくば駅と研究学園駅の間に本社を構える桂不動産(つくば市研究学園7丁目)の渡邉宗明社長(51)に聞いた。 実勢価は坪180~190万 ー背景と実勢価は? 渡邉 路線価は実勢価の7割ぐらい。つくば駅前の路線価を実勢価に計算し直すと、坪180~190万円になる。これはTX終点駅そばの価格だが、1駅前の研究学園駅近くでは2年前、坪160万円で売買されていた。今、TX駅の周辺では、売り物が少なく買い手が多い。土地の需給面から地価が上がるのは当然といえる。 ー値上がりは続く? 渡邉 収益目的でビルを建てるとき、用地だけでなく建設費も上昇している。一方で賃貸料はそう上げられないから、「これ以上地価が上昇すると何を造っても採算が合わない」という状況。TX沿線では売地が枯渇しており、地価はまだ上昇しているが、建築費や金利の上昇に伴い、地価上昇は止まってくると思う。 ー業界側の対応は? 渡邉 上昇だけでなく、横ばいエリア、弱含みのエリアもある。そちらでの仕事をやりながら成り立っている。TX沿線の宅地を探しに来られ、相対的に地価が安い常磐線沿線に流れる顧客もいる。牛久、荒川沖、土浦の南部エリアとか。 ーTX沿線で何か? 渡邉 数カ月前、つくば市が土地対策を打ち出し、研究学園駅近くの区画整理地域の周辺エリアを区域指定し、住宅などを建てられるようにした(3月17日付)。これにより、土地供給は少し増えると思う。まだ取引相場が読めないが、地主さんが売りに出れば需給は少し緩むのではないか。 3代にわたり無借金経営 こうした土地の価格や需給に桂不動産はどう対応していくのか? 同社の経営哲学や経営手法についても話してもらった。 ▽どんな相談も支店に 渡邉 うちは、県南エリア、水戸市、千葉県に、16の支店を配置している。各店には、賃貸仲介・管理、売買仲介、土地活用、新築相談などに応じる社員が控えており、「どんなことにも支店で相談に乗れる」体制だ。経営効率はよくないが、お客の利便性を考え、各店が独立した会社のように動いている。 ▽無借金の経営を貫く 渡邉 不動産会社は、地主が建てたアパートなどの管理を任してもらう仕事が多い。農家などの大事な資産を扱うので、うちを信用してもらうために無借金を貫いている。これは、祖父が経営していた落花生や食用油の製造販売会社(農家から作物などを買い付け)、父・桂一郎が起業した現不動産会社(農家などの土地を活用)の経営哲学だ。こういった考え方が評価され、管理を委任されている戸数+部屋数は現在2万6300件に上る。 ▽高齢者の相続を支援 渡邉 団塊世代の高齢化に伴い、これから資産相続が増える。そこで、社内に相続サポートセンターを立ち上げた。相続に関する一連の相談に応じる。また少子化の中、大家が嫌う住宅確保要配慮者(高齢者や外国人)の居住ニーズが増えてきており、「安心して貸せる、借りられる」サービスの構築と環境整備をしていきたい。 【わたなべ・むねあき】1997年、日本大学法学部経営法学科卒、三井不動産リアルティ入社。3年後に退職し、父が経営する桂不動産(当時の本社は土浦市)に入社。龍ケ崎支店、阿見荒川沖支店、ひたちの牛久支店、つくば本店などの開設に携わり、2015年、社長に就任。現社員は286人、今9月期の売上高は80億円を越す見込み。全国賃貸管理ビジネス協会理事、全国賃貸住宅経営者協会連合会・県南支部長など。土浦市出身、 【インタビュー後記】東京圏発の土地・住宅価格上昇は外国勢の不動産投資が活発化しているのが主因。超金融緩和で銀行が融資に狂奔しバブルが発生した40年前とは背景が違う。渡邉さんの話でも施工者の採算重視対応は至ってクール。それにしても桂不動産が無借金経営とは驚いた。支店展開・運用でも住宅要配慮者対応でも堅実かつ賢明といえる。(経済ジャーナリスト、坂本栄)

世捨て人のような、この半年《ハチドリ暮らし》63

【コラム・山口京子】主治医から、もう一回、抗がん剤治療をしましょうと言われました。そして、CT、MRI、PET、血液検査の結果を踏まえ、手術を見極めたいようです。がん治療を始めて半年がたちました。この間、世捨て人のような状態だったと思います。ニュースを見ていても上の空…。 がん関連や死に関する本を読みましたが、生きている間は生きていることに向き合おう―なんとなく、いろんなことが気になっています。 自民一強、あまりにも自分勝手 テレビのニュース番組で、行列のできるお店は放映するのに、各地で行われている様々なデモについては放映しない。あれこれ検索していた時、デモカレンダーというものを知ったからです。デモは市民の大切な意思表示であり、市民の声を伝えることは報道にとって大事なことではないのかと。 デモを裏で扇動している組織があるといった声がありますが、私たちの行為はさまざまな情報に扇動、洗脳、誘導されていると気づいた方が、自分の身を守るには役立つと思うようになりました。 また、サッカーフィーバーの陰で、国会でどんな法案が通り、その意味することはなんなのか―適切な解説がないことも気になります。あるのかもしれませんが、自分は適切な情報にアクセスできていません。 選挙で自民党が一強状態になり、あまりにも自分勝手に見えてしまいます。選挙で勝ったといっても、実際の投票数はどうなのか? 公職選挙法や政治資金規正法をどうにかしないと、まともな選挙はできない、国民を代表する議員を選べないのでは、と。議員定数減よりも、そっちの方をどうにかしてほしい、と。 国庫に帰属した土地はどうなる 相続土地国庫帰属法を利用して、田と畑の処分を検討した自分としては、法律のその後が最近新聞記事になったのを読み、考えさせられました。国庫に帰属した土地がその後どうなるのか? 簡単にいうと、二束三文で民間に売り出されるようです。 戦後の農地改革から80年。農地から農民を追い出すような政策が、連綿と続いてきた日本農業の歴史。昔、農家は甘やかされているという声が随分ありましたが、結局、農業収入では生活できませんでした。相続人が手放した農地が国庫から民間へ…。はやりの投資ファンドが利用するようになるのでしょうか? (消費生活アドバイザー)

「つちまるを引き上げて」土浦駅前に第3弾のトリックアート

土浦駅西口前のうらら大屋根広場の床面に、同市のイメージキャラクター「つちまる」のトリックアートが出現した。地面に空いた穴に落ちそうな「つちまる」を描いた作品で、同市が2024年度から取り組む市役所本庁舎のシャッターや壁面を活用したトリックアートの第3弾になる。 作品の大きさは縦約2メートル、横約3メートル。トリックアートの制作で知られる栃木県那須町の企画制作会社エス・デーのアーティストが、6月22日から24日まで、3日間かけて制作した。制作費は55万円。 シャッターや壁面に描いた第1弾と第2弾の作品は見て楽しむことが中心だが、今回の床面のトリックアートは、作品の上に立ったり、ポーズをとりながら写真を撮ったりすることで「作品の世界に入り込んだような体験ができる」と市商工観光課はPRする。 安藤真理子市長は「土浦市、頑張ろうよ、という気持ちを込めた。高校生が写真を撮っている様子も見られ、壁面の作品より受けている感じがする。ぜひみんなに、つちまるを引き上げてほしい」と話している。 街中に彩りをつくろうと同市は2016年から、高校生が中心市街地の空き店舗のシャッターに絵を描くなどしてきた。24年からはトリックアート制作専門会社が市役所1階のシャッターに、つちまるがシャッターを持ち上げているようなトリックアートを描き、昨年は市役所1階の壁に、つちまるが壁を突き破って飛び出してくる作品を描いた(25年9月1日)。