木曜日, 7月 23, 2026
ホームコラム《令和楽学ラボ》9 茨城の和紅茶づくり

《令和楽学ラボ》9 茨城の和紅茶づくり

【コラム・川上美智子】「古内(ふるうち)茶の紅茶ができたので1つ持っていってください」と、9月の茨城県議会の折に加藤明良議員から声をかけられました。水戸光圀(みつくに)が愛(め)でた古内の在来種の茶葉100%を原料にした紅茶は、きれいにパッケージされ、高安園の城里和紅茶と名付けられていました。

「昨年、この紅茶を銀座の茨城県アンテナショップ『Ibaraki Sense(イバラキ・センス)』に出品したところ、お客様から台湾の東方美人(オリエンタル・ビューティー)の香りがすると言われたんですよ」と、うれしい報告もありました。

東方美人は知る人ぞ知る最高級の赤烏龍(うーろん)茶です。100グラム〇万円もする高価なお茶で、現在ではなかなか手に入りません。今から25年前にその香りを分析する機会を得、マスカットのような独特の香りが、2,6-dimethyl-3,7-octadiene-2,6-diol(2,6-ジメチル-3,7-オクタジエン-2,6-ジオール)と本物質が脱水したHotrienol(ホトリエノール)の2つの化合物に起因することを突き止めました。

また同時期に、マスカットフレーバーが特徴であると言われるインド・ダージリンのセカンドフラッシュの紅茶試料も手に入り、分析を行うことになりました。この紅茶も、他の紅茶に比較し2化合物の含有比が高いことがわかり、ダージリン紅茶の特有香になっていることを明らかにしました。

そして、赤烏龍茶とダージリン紅茶の共通点を調べているうちに、どちらもウンカ芽(昆虫のウンカの加害を受けた茶芽)を原料にしていることを突き止めました。学会で加害を受けて生成する化合物の発表をしたところ、海外の科学者たちは色めき立ち、最終的に中国の著名な茶の研究者が、2,6-dimethyl-3,7-octadiene-2,6-diolは、加害を受けた茶芽がウンカの天敵の昆虫を呼び寄せるために作り出した化合物であることを明らかにしました。

ウンカの加害を受けた二番茶で

昨年5月、城里町で茶の香気研究の講演を依頼され、茶業者の方々にこのウンカ芽の話をさせていただきました。その折に、紅茶づくりはウンカの加害を受けてからの二番茶を使うとマスカットフレーバーが付与するので、「紅茶づくりは二番茶で」を強調させていただきました。それを忠実に実行して出来上がったのが城里和紅茶だとうかがい、本当にうれしく思いました。

ずっと以前に、静岡の茶業者への講演でも二番茶を使った紅茶製造をお奨めし、和紅茶づくりの火付けとなりましたが、この茨城でお役に立てることは研究者冥利(みょうり)に尽きます。近年、奥久慈や猿島でも和紅茶がつくられるようになりましたが、新参の古内のおいしい和紅茶をぜひお試しください。(茨城キリスト教大学名誉教授)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

カリキュラムと教育活動の連携《よぎさんの眼》3

【コラム・よぎ(P.ヨゲンドラ)】日本の学校教育には、長年続いてきた大きな課題がある。それは、授業、考査、学校行事、探究活動、部活動、校外学習などが、それぞれ独立して存在していることである。本来、教育とはすべての活動がつながり合い、生徒の人格形成や実践力育成へ向かうべきものである。しかし現実には、「授業は授業」「行事は行事」と分断され、生徒自身も「何のためにやっているのか」を理解できないまま、学校生活を送っている場合が少なくない。 生徒と宿泊行事に参加した際、企画運営を担当した生徒に「この活動から何を学んだか」と尋ねたことがある。最初、生徒は答えられなかった。そこで「社会人になって似たような企画を任されたら再現できるか」と問い直すと、「人を集め、計画し、役割分担をして、必要な情報を調べる」と、具体的に説明し始めた。つまり生徒は実践的な力を身につけていたにもかかわらず、それを“学び”として認識できていなかったのである。 「授業だけの学校」から脱却せよ ここに、日本の教育の大きなヒントがある。学校行事や探究活動は単なる思い出づくりではない。本来は、理解力、応用力、分析力、創造力、実行力、協調性を育成する重要な教育活動なのである。 だからこそ学校全体で「学びのストーリー」を設計する必要がある。例えば、情報の授業で学んだプログラミングを文化祭の受付システム開発に活用する。経営理論を学んだ生徒が、学校行事の予算管理や企画運営を担う。探究学習で調べた地域課題を、地域イベントや行政提言へとつなげる。このように、授業と実社会を接続してこそ、生徒は「学ぶ意味」を理解し始める。 私が校長を務めた土浦一高では、中高一貫6カ年構想のもと、学習・考査、特別活動、探究学習、課外学習、校外学習、学校行事の6領域を相互に連携させる改革を進めてきた。探究活動では、DX、ビジネス、マネジメント、中国語などを導入し、外部専門家や大学との連携を進めた。また模擬国連、模擬議会、海外研修、起業家講演などを通じ、生徒が教室外で社会と接続できる環境づくりを推進した。 学びの可視化、目的や目標の確認 さらに重要なのは、「学びの可視化」である。高校3年間で何をどの順番で学び、それがどの活動や実験とつながるのかを示さなければ、生徒は学習の目的を見失う。カーナビのない運転が不安であるように、学びにも道筋が必要なのである。そのためにも年度当初、学年ごとに、科目ごとに具体的なオリエンテーションを行うべきである。これから1年をかけて学ぶ内容、どこで山場がくるのか、参加する行事とその意義を確かめるとよい。保護者にも参加してもらうことで、二人三脚が実現できる。 教育とは、知識を点で覚えさせることではない。教科、活動、体験、人間関係を線と面でつなぎ、「生きる力」に変えていく営みである。日本の教育改革に必要なのは新しい科目を増やすことだけではない。学校全体を「ひとつの大きな学びのシステム」として再設計することなのである。(土浦一高・付属中学校 元校長)

154人のマイナカード署名用電子証明書が無効に つくば市が作業誤り

つくば市は22日、現在政府が進めている、自治体の基幹的な業務の情報処理システムを全国の自治体が統一した仕様に合わせる作業の一環で、人名などの複雑な漢字(外字)を、デジタル庁などが定めた標準文字に合わせる更新作業を実施したところ、作業工程に誤りがあり、154人のマイナンバーカード搭載の署名用電子証明書が失効してしまったと発表した。 自治体の基幹事務システムの統一・標準化は、全国の自治体がそれぞれ個別に構築してきた住民基本台帳、住民税、介護保険、児童手当て、選挙など20の基幹的な事務処理システムの仕様を、2025年度末をめどに、国が決めた標準仕様に合わせるもの。つくば市は、統一の仕様に合わせる作業を昨年12月末までに終え、今年1月から標準仕様に切り替えていた。 その後7月8日、来庁した市民から、5年に一度更新が必要なマイナンバーカードの署名用電子証明書の更新手続きを、自身のスマートフォンからも出来るようにしようとしたが出来なかったなどと申し出があった。 市情報システム課によると、原因を調査した結果、市が業務を委託して、人名などの複雑な漢字を標準文字に合わせる作業を実施した事業者が、複雑な文字を、デジタル庁が決めた約7万字に合わせる作業の中で、そのうち71字について、文字のデザインを若干太くするなど、標準文字のデザインを若干変更したことが原因と分かったという。戸籍の氏名にふりがなを記載する制度が始まったのと合わせて、システム上で、住民基本台帳ネットワークに登録されている氏名が変更されたと認識され、氏名の一部に71文字を使用している154人のマイナンバーカードの署名用電子証明書が無効になったという。 署名用電子証明書は、本人であることを確認する電子的な印鑑証明書として、税金の申告(e-Tax)やパスポート申請、住宅ローンの控除、オンラインバンキングの口座開設などに利用されている。市市民窓口課によると、標準文字の更新作業の誤りが原因で、マイナンバーカードの署名用電子証明書が利用できなくなった市民がこれまで何人いたかは不明という。一方、マイナ保険証として利用や、住民票など証明書のコンビニ交付、行政手続きのオンライン申請、年金や医療費など自分の情報を確認するマイナポータルへのログインなどは引き続きできる。 署名用電子証明書が無効になった場合、再発行手続きが必要になる。市は今後154人に対しお詫びの通知を出し、市役所本庁舎や各窓口センターに来庁の上、手続きをしてもらうよう通知するとしている。 委託事業者に対しては、市から、各作業の適切な履行の徹底と再発防止を図るよう要請したとしている。市によると、この事業者は他自治体からも標準文字の更新作業を請け負っていて、この事業者による作業の誤りが原因でマイナンバーカードの署名用電子証明書が無効になったのが分かったは初めてという。

森の7日間《短いおはなし》53

【ノベル・伊東葎花】 夏休み、彩は初めてママの故郷に来た。そこは深い森の中。ママと並んで、木漏れ日の中を歩いた。空が遠くて、夏を忘れるほど涼しい。 「気持ちいいでしょう」 「うん。涼しい。だけど昼間も暗くて、ちょっと怖いね」 「怖くないわよ。ママの遊び場だもん。あっ、でも一度だけ、不思議なことがあったわ」 ママは、大きな木の下で立ち止まった。 「ママが小学生のとき、この森で迷子になったの。毎日のように遊んでいた森で、7日間も迷子になっていたの。不思議でしょう」 「7日も?」 「そう。7日後に、この木の下で発見されたの」 「7日も何をしていたの?」 「まるで覚えてないの。神隠しにあったのだと、大人たちは言ったわ。昔からそういう言い伝えがあるの」 「神隠し?」 「そう、神隠し」 彩はその夜、なかなか眠れなかった。田舎の家の天井が怖かったり、お線香の匂いが気になったり、そして何より、ママから聞いた神隠しの話が頭から離れない。神隠しにあうと、どうなるの? 次の朝、彩は何かに導かれるように森に入った。もちろんすぐ帰るつもりだった。だけど森に入ったとたん、方向がまるで分からなくなった。おばあちゃんの家は見えるのに、歩いてもたどり着けない。次の瞬間、彩は木の上にいた。木の幹にしがみつき、大声で鳴いていた。彩は、蝉になっていた。 「ごめんね、彩ちゃん。7日間だけ体を貸して」 下を見ると、彩がいた。蝉になった彩に向かって大きく手を振った。 「あなたはこの先、何10年も生きるでしょう。私はたった7日の命なの。だから、あなたの7日間を私にちょうだい。7日後に返すから」 彩になった蝉がくるりと背を向け、森の中を駆けて行った。 ママが探しに来た。おばあちゃんも来た。近所の人や捜索隊、知らせを受けた東京のパパもやってきた。みんなで彩の名前を呼びながら、必死で探している。「ここにいるよ」と叫んでも、それは懸命に鳴く蝉の声だ。誰も気づかない。2日、3日、4日…彩になった蝉は、森の中を見つからないように走り回っている。彩は、木にしがみついて時が過ぎるのを待つしかなかった。 7日後、ママに肩を揺すられて目覚めた。大きな木の下で眠っているところを発見された。 「ああ、よかった」 ママとパパ、おばあちゃんと捜索隊。みんなに見守られて目覚めた。となりで、蝉が死んでいた。 迷子だった7日間のことを聞かれ、何も覚えていないと答えた。 「神隠しだわ。あの日のママと同じ。あなたも神隠しにあったのね」 ママが「もう大丈夫」と抱きしめた。ママの手をぎゅっと握って、わたしは、かすかに笑った。 あのね、ママ、同じじゃないよ。だってわたし、本当は7日間のことをよく覚えているの。楽しくて、楽しくて、この子に体を返すのが嫌になったの。 ごめんね、彩ちゃん。彩になったわたしは、死んだ蝉にそっと土をかぶせた。 (作家)

「人口県内一なのにつくばの県立高は水戸の3分の1」 市民団体が9回目の要望

「通学にお金と時間かかる、フェアでない」 つくばエクスプレス(TX)沿線の人口が増加し、つくば市の人口が水戸市を抜いて県内一になった一方、つくば市の県立高校は水戸市の3分の1しかないなどとして、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)は21日、柳橋常喜 県教育長宛てに、TX沿線の生徒数増に応じたつくばエリア(つくば、つくばみらい、守谷、常総市)の県立高校の新設や学級数増を求める要望書を出した(7月14日付)。県立高校の新設や学級増を求める要望書の提出は2021年5月の会結成以来、9回目になる。要望書を受け取った県教育庁の山口英司 学校教育部長は「貴重な意見としてお受けしたい」と答えるにとどまった。 同席した市民団体のメンバーからは「(子供の)高校進学を考えたくてもつくば市内に通える高校が少ない。知り合いの子が土浦市の高校に通っていてバス代が月3万円くらいかかると聞く。水戸市と比べて通学にお金がかかり、時間がかかる。フェアではない」などの意見が出された。 要望書提出には、つくば市の松本玲子副市長、山本美和、うののぶこ、ヘイズ・ジョン県議らも同席した。 考える会の試算によると、つくば市の人口は県内一になったが、水戸市内の全日制県立高が7校50学級あるのに対し、つくば市内は3校17学級しかない。中学卒業者数100人当たりで比較すると、水戸市は生徒100人当たり2.05学級(1学級は定員40人)あるのに対し、つくば市は3分の1の0.66学級しかないとしている。さらに県平均でも生徒100人当たり1.75学級になるなどとして、県平均水準まで改善されるよう、つくばエリアに県立高校の新設や学級増などを行うことや、スクールバスの運営費を補助し通学支援を行うことなど5項目を要望した。 要望に対し、県高校教育改革推進室の片見徳太朗室長は「県立高校の配置は(市単位ではなく、県内を12地区に分けた)エリアを基本にしている」「つくばエリアについては2024年10月に(現時点では定員増が必要との判断には至ってないという)見解を示している。つくばエリアに土浦、下妻、牛久を加えた対象の7市17校は充足していると試算している」など、これまでの見解を繰り返した。 考える会やつくば市議会などがこれまで要望してきた竹園高校2学級増について(24年5月28日、25年6月27日付、25年7月5日)、五十嵐立青つくば市長が一昨年、増設する校舎の建設費用を市が負担すると表明したことについて、つくば市の松本副市長が検討結果を県に尋ねたところ、県の片見室長は「市に(県立高校建設費の)負担を負わせることは財政法の原則からできない。財政法を理由に拒否するわけではないが、財政支援の有無にかかわらず、県の責任でつくるのが大原則」だなどと、竹園高の2学級増の要望も突っぱねた。 一方、県高校審議会が答申を出した2027年度以降の県立高校教育改革の方向性に基づいて(25年12月25日付)、現在、県教育庁が策定を進めている新たな県立高校改革プランの基礎資料となる将来の県立高校の入学者数と募集学級数の展望について片見室長は「将来的な見通しの数字は毎年見直している」と述べた。高校審議会で示された資料では、つくばエリアの学級数が25年度と比べ30年度に1学級増としているのに対し、33年度は30年度から2学級減としていることについて、確定しているわけではなく毎年見直しているなどと言及した形だ。(鈴木宏子)